補充原則4−1.B
 

 

 【補充原則4−1.B】

取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

 

〔形式的説明〕

原則4−1は、取締役会に対して、具体的な経営戦略や経営計画等について建設的な議論を行うことをもとめています。この経営理念や具体的な経営戦略を実現していくに当たって、最高経営責任者等の後継者の人選は最も重要な検討課題のひとつです。したがって、現職の最高経営責任者の一存に委ねることとしてしまい、取締役会としては一切関知しないというスタンスは、ガバナンスの見地からは望ましいとはいえない、という観点から、この補充原則で、取締役会に対して、「最高経営責任者の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行う」ことを求めています。後継者の計画(プランニング)を適切に監督するためには、形式よりも実質が重要であるとして、必ずしも計画書のような特定の文書を作成し、取締役会で承認してオーソライズするようなことまで求めてはいない、と説明されています。また、補充原則においては後継者の計画(プランニング)の内容について具体的に規定していません。そのため、この内容は、各上場企業が自社の状況を考慮して合理的に判断することになります。ここで、参考としてニューヨーク証券取引所は上場企業が策定するコーポレートガバナンス・ガイドラインの内容としてマネジメント・サクセッションの記載をもとめていて、その内容としては、CEOの選任・業績評価に関する方針・原則や、緊急事態またはCEOの退任時における後継に関する原則が挙げられています(NYSE上場規則303A.09)。また、詳細な後継者計画の事例として、日本取締役協会CEO委員会による「経営者後継のベストプラクティス」が参考にできるかもしれません。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

この補充原則では最高経営責任者といい、各上場企業で、該当する者を合理的に判断するといいながらも、実のところは、社長さんです。そして、実際のところ、日本企業の多くは、社長の後継者をどう育成し、最終的に誰を次期社長とするかは、社長の専権事項と考えられています。むしろ、社長の最も重要な仕事であると言われることもあります。それは、企業文化や経営の継続性といったことや、次期社長という人材の見極めは、その地位を経験し広い視野で全社的に見渡せる社長でないと選別できないというような理由からであると、考えられます。しかし、これには個人的な感情が加わる可能性が否定できません。時に、後継者に自分の息のかかった人物を指名して退任後も会長や相談役、あるいは顧問といった役職で隠然と権力を振るう保身に勤しむ、という極端な例ですが、そのようなことが往々にして行われる。海外の投資家や株主からは、日本企業は、たしかにそのように見られていることは否定できません。実際に、このようなケースでは社長がリスクをとって積極的な経営を推進することはありえません。それはつまり、取締役の保身が先に立ち、企業価値向上が後回しにされるという最悪の事態です。そのような最悪の事態を避けるために、最高経営責任者の後継者は、現職の権限の維持ではなく、企業価値向上にとって最適な人選を公明正大に行う仕組みを整えることが求められている、と深読みすると、そのようなところに行き着くと思います。

だからといって、現状の日本企業の後継者の育成や選定について否定しているわけではなく、絵画いょ含めた投資家や株主の理解を得るために、透明化。客観化という点で改善していくことで、適切な後継者を選定できるようにしていこう、という趣旨であると思います。

最適な人選を公明正大に行うためには、具体的にどのようなことを考えればいいのでしょうか。補充原則では、各上場企業が自身で判断しなさい、ということでした。それで、参考事例をみても、あまり具体的なことは開示されていません。そこで、少し調べてみて、簡単なモデルの指標のようなことを以下で考えてみたいと思います。

まず、次の3点をつくり、体制を整えます。

@サクセッション・プラン(後継者計画)の策定

サクセッション・プランの策定・実行において重要なのは次の点だそうです。

1)的確で精緻なプロセス…育成や選定の手続をキッチリと明確化(とくに機密保持、関係者の納得性、プロセスの監督)

2)後継者の要件を明確化

取締役の指名と経営責任者の指名の場合とでは、求められる要件が違う場合がある

どこの会社でもリーダーとして必要とされる普遍的な要件

その会社固有の条件、経営環境や業界環境、事業特性等から要請される要件

A指名諮問委員会などの社外取締役をまじえた後継者指名の方法の構築(原則4−10との関連)

役員選任について透明性・公平性を確保する手段として、取締役会が後継者計画を監督する手段の一つとして社外取締役をメンバーに含めた任意の諮問委員会の活用することが考えられる。

経営トップ自身が後継を決める場合、ある意味自己評価となってしまう点は避けられない。これに対して社内の取締役は、社内の上下関係(経営トップの部下ということ)そのたのことから十分な監督機能を果たすことが難しいケースもある。そこで社内の上下関係から独立した社外取締役の活用が考えられる。また、社外取締役であれば、社外の人材との比較も可能と考えられる。ただし、社外取締役が候補者の策定をゼロからできるわけではないので、諮問に答える程度が適していると考えられる。

※日本企業の実態として、社内の様々な人々の仕事ぶりや自分が社長になってからの経営の中で誰がどのような役割を果たし、どのように貢献してきたかを一番責任ある立場で見てきたのは現職の社長であり、その視点で後継者に相応しい人材を選び、だれに引き継いで欲しいかと思うことの重要な意味は、変わらない。上記の社外取締役の活用は、このプロセスを透明化・客観化するためのものと位置付けられる。

Bサクセッション・プランの実施状況のモニタリング

これらの仕組みが構築できれば、コーポレートガバナンス報告書や株主総会の招集通知、有価証券報告書などに任意記載して、ある程度公開していくことで、株主との建設的な対話の契機とすることができるでしょう。そして、何よりも長期的な将来の経営者の対する理解を深めることができることになるとおもいます。なお、この際に育成中の後継候補者の指名や育成状況の開示ではなく、方針や仕組みを開示の限定することは言うまでもありません。。

 

〔開示項目としての対処〕

補助原則4−1Bは、開示項目ではありませんが、最高経営責任者の後継者の計画について検討せざるをえないことから、すでに計画を策定している企業の事例が開示されていれば、大きな参考になるとも思われるので、少ないなから事例を紹介したいと思います。

・後継者計画に言及している─HOYA

HOYAコーポレートガバナンスガイドライン

X 取締役会

1. 取締役会は活発な審議ができるよう上限を10 名とし、半数以上を独立性の高い社外取締役で構成することを定款に定める。

2. 取締役会の構成ならびに規模については毎年、指名委員会で次年度の取締役候補の審議の際に合わせて検討する。

3. 取締役会の運営方法やリーダーシップについて取締役会で定期的にレビューを行う。

4. 取締役会での審議には案件に応じた十分な時間をかけるものとし、各取締役は必要に応じ、追加情報の提供や社員へのアクセスを担当執行役に要求する。

5. 社内からの執行役候補輩出のためのサクセッションプランを取締役会で定期的にモニタリング、評価する。

6. 社外取締役による監視機能を確実なものとするため、取締役会の他に社外取締役だけで意見交換を行う場を設置するものとする。

・社長指名諮問委員会を設置し、次期の社長人事、緊急事態が生じた場合の継承プラン等を議論する場としている─オムロン

コーポレートガバナンス体制

取締役会 経営目標・経営戦略などの重要な事項を決定するとともに、執行を監視する。

監査役会 コーポレート・ガバナンスの体制と運営状況を監視し、取締役を含めた経営の日常的活動を監視する。

人事諮問委員会 社外取締役を委員長とし、取締役、執行役員の選考基準の策定、候補者の選定、現職の評価を行う。

社長指名諮問委員会 社外取締役を委員長とし、社長の選定に特化して次期の社長人事、緊急事態が生じた場合の継承プランなどを議論する。

報酬諮問委員会 社外取締役を委員長とし、取締役、執行役員の報酬体系の策定、評価基準の選定、現職の評価を行う。コーポレート・ガバナンス委員会 社外取締役を委員長とし、コーポレート・ガバナンスの継続的な充実と、経営の公正性・透明性を高めるための施策について議論する。

執行会議 社長の権限の範囲内で、重要な業務執行案件の審議・決定を行う

・比較的詳細な説明を行なっている─りそなホールディングス

りそなのサクセッションプランについて

当社では、持続的な企業価値向上を図るべく、当社及びグループ銀行の経営トップの役割と責任を継承するメカニズムとして20076月にサクセッション・プランを導入し、役員の選抜・育成プロセスの透明性を確保しております。

当社のサクセッション・プランは当社及びグループ銀行の「次世代トップ候補者」から「新任役員候補者」までを対象とし、対象者を階層ごとに分類した上で選抜・育成プログラムを計画的に実施しております。各々の選抜・育成プログラムは外部コンサルタントから様々な助言を得ることで客観性を確保しており、それらの評価内容は全て指名委員会に報告される仕組みとなっております。また、指名委員の活動としては評価内容等の報告を受けることに留まらず、個々のプログラムに実際に参加することなどを通じ、各役員と直接接点を持つことでより多面的に人物の見極めを行っております。さらに、それらの指名委員会の活動状況は社外取締役が過半数を占める取締役会に報告され多様な観点で議論されており、そうした全体のプロセスを通じ役員の能力・資質の把握と全体の底上げが極めて高い透明性のもとで図られております。

なお、当社では「役員に求められる人材像」として7つのコンピテンシーを定めております。指名委員会や役員が「求められる人材像」を具体的に共有することで、評価・育成指標を明確化させるとともに中立的な育成・選抜に努めております。

     


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