補充原則4−11.A
 

 

 【補充原則4−11.A】

社外取締役・社外監査役をはじめ、取締役・監査役は、その役割・責務を適切に果たすために必要となる時間・労力を取締役・監査役の業務に振り向けるべきである。こうした観点から、例えば、取締役・監査役が他の上場会社の社員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきであり、上場会社は、その兼任状況を毎年開示すべきである。

 

〔形式的説明〕

この補充原則は、取締役会及び監査役会の実効性確保のための前提条件として、取締役及び監査役が、自身の役割・責務を果たすために必要となる時間・労力を確保しなければならないことを踏まえたものです。そして、株主が取締役・監査役の選任に際してもそのような点で重要な判断材料として兼任状況の開示を求めています。ただし、「他の上場会社の役員を兼任する場合には」という文言から、取締役・監査役のすべての兼任状況の開示が求められているわけではなく、開示が求められるのは、他の上場会社の役員との兼任状況に限られるものと考えてもいいでしょう。

なお、取締役・監査役については、会社法上、事業報告において「重要な兼職の状況」の記載が必要とされています(会社法施行規則119条2号、121条8号)。事業報告では重要性の限定がかかっていますが、他の上場企業の役員との兼任状況は記載している場合が多く、また、事業報告の観点から重要性のない場合は、通常、時間・労力の観点から些末な兼任状況であることが多いでしょうから、そのような場合は、事業報告の記載をもって本補充原則にコンプライするものも可能としてよろしいのではないでしょうか。

 

〔開示事例〕

亀田製菓

他社の役員の兼任について、従来当社では主に利益相反取引の観点から取締役会にて決議をしておりますが、今後は当社の取締役・監査役業務に時間・労力を振り向けることができる合理的な上場企業役員兼務数の目途について当社を含め4社とし、これを超える場合にはそのリスクについて取締役会で検討し、問題がない場合は兼務を了承する旨の決議行うことといたします。

 

新生銀行

取締役及び監査役の他社との主な兼任状況は、従来から事業報告書等において適切に開示を行っており、また、その兼任状況は取締役会又は監査役会のために必要となる時間と労力から見て合理的な範囲にあると考えています。

 

資生堂

当社の取締役および監査役の重要な兼職の状況は、当社の第115回定時株主総会招集ご通知(45ページ、73ページ〜79ページ、80ページ〜82ページ)に記載の通りです。

 また、社外役員の重要な兼職先と当社との関係を、当社の第115回定時株主総会招集後通知(46ページ〜49ページ、77〜78ページ)に記載して開示しています。

http://www.shiseidogroup.jp/ir/account/shareholder/2015/pdf/shm_0000.pdf

 

〔開示項目としての対処〕

補助原則4−11Aは、開示項目として、取締役・監査役の兼任状況を開示することを求めています。ここでは、すでに開示している例から開示のパターンを分類してみたいと思います。この開示のパターンとしては、従来より取締役・監査役の重要な兼職の状況として株主総会の参考書類や有価証券報告書等の開示書類に記載していました。そのため、コーポレートガバナンス報告書では事業報告等で開示している旨を記載するに留めるケースが多いようです。

・報告書に直接記載しているケース─三井住友フィナンシャルグループ

当社の取締役・監査役における他の上場会社役員との兼任状況は、次の通りです。

 (1)奥正之取締役

花王株式会社社外取締役、株式会社小松製作所社外取締役、中外製薬株式会社社外取締役、パナソニック株式会社社外取締役、南海電気鉄道株式会社社外監査役

 (2)宮田孝一取締役

ソニー株式会社社外取締役

 (3)國部毅取締役

日本電気株式会社社外取締役

 (4)野村晋右取締役

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社社外監査役、大日本印刷株式会社社外監査役

 (5)河野雅治取締役

株式会社ドトール・日レスホールディングス社外取締役

 (6)桜井恵理子取締役

ソニー株式会社社外取締役

 (7)宇野郁夫監査役

トヨタ自動車株式会社社外取締役、富士急行株式会社社外取締役、小田急電鉄株式会社社外監査役、東北電力株式会社社外監査役

 (8)伊東敏監査役

株式会社日清製粉グループ本社社外監査役、日本電気株式会社社外監査役

 (9)鶴田六郎監査役

TPR株式会社社外取締役、J. フロント リテイリング株式会社社外監査役

・事業報告に記載している旨を記載しているケース─三菱UFJフィナンシャルグループ

取締役・社外取締役の兼任状況は、第10期事業報告(http://www.mufg.jp/stock/meeting/pdf/jigyou1506.pdf)のP.20-23に記載しております。

 


関連するコード        *       

基本原則1.

基本原則2.

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基本原則4.

原則4−11.

補充原則4−11.@

補充原則4−11.B

基本原則5.

 
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