原則4−8.
【独立社外取締役の
有効な活用】
 

2018年の改訂されたコードからまず見ていき、改訂前の原コードについての説明は、その下に続けます。 

 【原則4−8.独立社外取締役の有効な活用】

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである

また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にもかかわらず、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

 参考として、比較のために改訂前の原則を下に示しておきます

 【原則4−8.独立社外取締役の有効な活用】

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである

また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にもかかわらず、そのための取り組み方針を開示十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

 

〔変更された点〕

@自主的な判断により、

もとの原則の文章にあった、「自主的な判断により」を削除されました。以前は会社が総合的に事情を考えて自主的に判断する、すなわち、3分の1以上の独立社外取締役が必要であると判断した会社は自主的な判断により、つまり任意で取り組み方針を開示する内容でした。従って、3分の1以上の独立社外取締役を必要と考え、さらにその中で任意に取り組み方針を開示すべきと判断した会社で、それを開示していない場合にエクスプレインとなるという意味合いでした。それを、今回の改訂により、「自主的な判断により」を削除されたため、任意ではなく必然ということに内容がかわったということになります。つまり、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役が必要と考える会社はそれを実行していなければエクスプレインしなければならなくなったわけです。つまり、任意から必要にかわったということになります。

Aそのための取り組み方針を開示十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

この改訂は、端的に上場会社がやらなければならないことが置き換わったということです。すなわち、3分の1以上の独立社外取締役を必要と考えた会社は、これまでは開示すべきと自主的に判断した場合には、そのための取組の方針を開示するというものでしたが、今回の改訂により、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきということになりました。それは、前段のところで任意から必要に改めたことと関係していますが、必要になったのだから、そうしなければならないと考えたら、単にその考えを開示するためなら、口先だけになってしまう可能性もあるわけだから、それだったら無意味ですから、そんなことより実行することが重要というわけです。必要だったら実行するのが当たり前という内容になったということで。金融庁は、コーポレートガバナンス・コード改訂のパブコメに対する回答の中で、次のように述べています。“原則4−8の後段は、コード策定時に、「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える会社」は、そのための取組方針を開示すべきとされたところ、現状においては、取組み方針の開示にとどまらず、それぞれの上場会社の置かれた状況に応じて、十分な人数の独立社外取締役を選任することが十分な人数の独立社外取締役を選任することが重要ではないかとの指摘がなされたことを踏まえ、「少なくとも3分の1以上の独立取締役を選任することが必要と考える上場会社」については、自社において判断する「十分な人数」の独立社外取締役を選任すべきとの内容に改訂したものです。”

ただし、この改訂された原則は、「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社」に対して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任すべきとは言っていないことに注意しなければなりません。少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任しなければならないというのではないのです。選任すべきなのは「十分な人数」の独立社外取締役であるということです。理論的には「必要」と「十分」は違います。だから、少なくとも3人以上というのは必要であっても十分でない可能性はありえるからです。

ちなみに、関連している投資家と企業間の対話ガイドラインでは3−8.において“独立社外取締役として、適切な資質を有する者が、十分な人数選任されているか。”と記されています。

〔実務上の対策と個人的見解〕

実際の上場会社における独立社外取締役の選任状況について、フォローアップ会議の意見書「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」では“各上場会社による独立社外取締役の選任は着実に増加しており、取締役会の3分の1以上の独立社外取締役を選任している企業も東証第一部上場会社の1割以上に上っている。ステークホルダーの関心は、独立社外取締役の人数の増加だけでなく、その資質のバランスや多様性の充実に移ってきている。経営環境や経営課題に応じ、例えば社内では得られない知見や経歴を基に、中長期的な企業価値の向上に向けた経営戦略や経営陣幹部の選解任についての議論を含め、取締役会の役割・責務の発揮に積極的に貢献できる資質を持った独立社外取締役が、より多く選任されるよう、一層の取組みが期待される。”と述べています。つまり、補充原則では十分な人数の独立社外取締役の選任を求めていますが、実際のところ独立社外取締役の選任については人数の点では、形式的な整備が進んできて、現状では、そこからさらに進んで、実質的な内容の充実に重点が移りつつあるということなのです。

さらに、〔変更された点〕において参照した対話ガイドラインの3−8.について、実は一部しか参照しませんでした。ここであらためて前文を下で紹介します。

3−8.独立社外取締役として、適切な資質を有する者が、十分な人数選任されているか。

また、独立社外取締役は、資本効率等などの財務に関する知識や関係法令等の理解など、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に実効的に寄与していくために必要な知見を備えているか。

独立社外取締役の再任・退任等について、自社が抱える課題やその変化などを踏まえ、適切な対応がなされているか。

これらで、内容の充実として追求していこういうもの、例えば「実効的に寄与していくために必要な知見を備えているか」点についてはコーポレートガバナンス・コードの原則4−9において独立社外取締役の資質の内容であり、「独立社外取締役の資質のバランスや多様性の充実」の点については原則4−11において取締役会全体としての構成バランスや多様性の内容と言えます。それ以外の点として、独立社外取締役の再任・退任等についての課題は、この原則4−8が選任に関しての内容であるだけに、関連していると考えられます。この場合の実際的な課題として、独立社外取締役が選任された後、任期を迎え、そのあと再任されることはありうるわけです。しかし、再任が繰り返され、在任期間か長期化すると、形式的な要件は満たしていても、実質的な独立性が薄まってくることは避けられないはずです。当初は、社内取締役の経営陣からは距離をおいて独立した立場で意見を述べていた人も、在任期間が長期化すれば、経営陣と情が通じてくるのは自然なことです。そうなってくると、経営陣との距離が徐々に接近し、経営陣寄りの立場になるのはやむを得ません。その際に、実質的な独立社外取締役としての機能を十分に果たすことが可能かということが、これから起こってくると予想されます。

独立社外取締役については、議論は、そういうところまで進んできているというのが、フォローアップ会議の認識のようです。

しかし、実際の企業現場では、社外取締役が期待された仕事をしているのか、経営陣が社外取締役にどこまで期待しているのか、ピンからキリまで状況は様々であると思います。

 

 

 

原コードについての説明です。

 【原則4−8.独立社外取締役の有効な活用】

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである

また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にもかかわらず、そのための取り組み方針を開示すべきである。

 

〔形式的説明〕

@この原則で求められていること

この原則は独立社外取締役の有効な活用についてのもので、形式的に3点のことが要求されています。その3点とは次の通りです。

@)「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責任を果たすべき」

ここで求められているのは、単に社外取締役を選任するだけで十分というのではなくて、選任の効果を引き出すための方策を実行することだということです。つまり、企業が何らかの方策を実施することで、はじめて社外取締役は企業の成長に貢献することができるという考え方が採られているということです。例えば、資質を備えた人物を選任する、あるいは委員会を設置する等があると考えられます。

A)「資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」

この文章によって、独立社外取締役は複数名を選任しないと有効に機能しないという考え方が示されています。「2名以上選任すべき」と明言されているので、1名の独立社外取締役の選任した状態では、コンプライとはなりません。また、独立社外取締役について複数名ですから、会社法上の社外取締役であっても、独立社外取締役でない場合は、その人数にカウントされません。社外監査役も、その人数には入ってきません。

B)「総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にもかかわらず、そのための取り組み方針を開示すべき」

この部分は企業が自社の状況や自社の内容を勘案した結果、自主的な判断によって、取締役の3分の1を独立社外取締役とすることが必要と判断した企業に、対象が限定されます。この3点目に関しては、3分の1以上の独立社外取締役を必要と判断した企業が取り組み方針を開示する義務をおうことになります、たとえ未達成の企業でも達成に向けてのロードマップを開示することでコンプライとなります。されているわけでもありません。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@会社法改正との兼ね合い

2015年5月に施行された改正会社法の附則において、社外取締役の義務化及び複数名の選任について、再検討することが明記されています。そのため、この原則4−8において述べられている「資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」ということに対しては、単に各企業の現状を把握して、その現状に即した対応を考えるというだけでは、不十分で、将来的に社外取締役を複数名選任することが義務化される可能性も考慮して検討する必要があると考えられます。

改正会社法の施行に伴い、6月の定時株主総会において会社法の新条文に拠る監査等委員会設置会社という新しい経営形態への移行を決議した企業が190社近くにのぼりました。これは、今後を見越して、監査役会設置会社のままでは、現状の複数の社外監査役のみならず、複数の社外取締役をも選任しなければならなくなる、選任の手間と、経営組織が複雑化してしまう弊を避けて、実際のところ、社外監査役を社外取締役にシフトしてしまうことで、選任の労力の節約と経営組織の簡素化を図ったものと考えられます。

おそらく、2016年の定時株主総会においては、1年前の導入事例の動向を見て追随する企業が増加することが予想されます。とりわけ、中小規模の企業では4名の社外役員を抱えることは有体にいえば負担感が大きいため、真剣に検討されていると考えられます。

A関連する原則との兼ね合い

社外取締役を複数名選任した場合には、補充原則4−8.@及び4−8.Aへの対応は必須となります。これらは、いずれも複数の社外取締役を活用するための原則であり、社外取締役が1名である場合には、実質的に用を為さないものであるからです。 

B独立した取締役とは、そもそもどういうものなのか

今般の会社法の改正により、一部上場企業の大部分が社外取締役を選任しました。しかし、社外取締役がいるからと言って、最近のT社の経営不祥事などのように先進的と見られていた企業でも、実質的に機能していなかったことが明らかになりました。それだけ、実際の日本企業ではおカミからのお達しで強制されたものとして形式的に選任していればいいというのが実態になっていて、だからこのコーポレートガバナンス・コードでも、わざわざ取り上げているということでしょう。

しかし、海外の企業で独立社外取締役が普及し一般化しているのは、それだけ実際のメリットがあり、機能しているからでしょう。そういう原点に一度返ってみる必要があるのではないでしょうか。例えば、ソフトバンクの孫社長が、以前にシスコシステムズの社外取締役であったときのことが日経のインタビュー記事にあります。シリコンバレーでは30歳くらいの若い経営者たちが社外取締役を互いに兼務し合っていて、それぞれの取締役会は他流試合の様相を呈するといいます。社外役員といえども株主から訴えられるリスクを負っているので、責任は重く取締役会は真剣勝負の場と化して、CEOや経営陣から出される説明が完膚なきまでに叩かれて、長時間にわたる議論で、不十分な提案は潰されてしまう。それが実質的なガバナンスとして機能し、役員自身も鍛えられるといいます。

似たような事例として、日立製作所が2012年に3MのCEOだったジョージ・バックリーら3人の外国人を社外取締役として選任したところ、取締役会で利益水準の低さをめぐって激論がたたかわされる、和の会議から議論伯仲に一変したという。

これらのケースは例外的かもしれませんが、と言って、社外取締役が経営にインパクトを与えて、本質的な機能を果たしているのが例外的というのはおかしいことです。これは、経営者にとっても厳しいことになるのですから、経営者自身が覚悟をもって、しかもその必要性を痛感しているから敢えて導入して、そういう人材を探し、招いたことで初めて実現したのだろうと思います。 

C開示事例の分析

この原則は東証のコーポレートガバナン報告書では開示が義務付けられているので、すでに開示している企業の事例を分析してみましょう。すると、いくつかのパターンに分けることができるのが分かります。この原則について検討する際に参考にしやすくなるのではないかと思います。

.Complyによる開示

a−1.独立者社外取締役を3分の1以上選任している例

亀田製菓

グローバル化等のリスクの高まりに対し健全に牽制する経営体制の構築・社外取締役による高度なモニタリングモデルの実現を図るため、当社は自主判断により、取締役会について3分の1以上を独立性の高い社外取締役で構成することとしております。

社内取締役においては、業務全般を把握し活動できるバランス感覚と実績、決断力を有し、多様な専門性をもったメンバーで構成されることが必要であると考えております。また、社外取締役においては、多様な視点、豊富な経験、高い見識と専門性を持った独立性のある多種多様な業界の経営者又は経営経験者で構成されることが必要であると考えております。

a−2.独立者社外取締役を2名以上選任している例─独立社外取締役を3分の1以上とする必要はない旨を開示しているケース

ニッカトー

・原則4−8 独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。

 

平成27年6月19日開催の第145回定時株主総会において、独立社外取締役が2名選任されました。本コーポレートガバナンス報告書の機関構成・組織運営等に係る事項、取締役関係欄に記載のとおり、西村元昭(弁護士)と臼間真次(税理士)の2名は独立社外取締役としての条件を充たしております。

なお、当社は現状では業績・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、3分の1以上の独立社外取締役を選任する必要はないと考えております。

a−3.3分の1以上の独立者社外取締役を目指すことを開示している例

中国銀行

【原則4−8】

当行は監査役会設置会社であり、現在の体制において、各取締役による相互牽制機能、監査役による客観的かつ中立的な経営監視機能はいずれも有効に機能していると考えておりますが、今後、より一層のコーポレートガバナンスの強化を図るため、3分の1の独立社外取締役を選任することを視野に入れ、社外取締役の増員、監査等委員会設置会社への移行について検討を行っていきたいと考えております。

.Explainによる開示

b−1.独立社外取締役が1名なので増員する旨の開示をしている例

本多通信工業

2015年6月開催の定時株主総会において1名の社外取締役を選任しました。2017年開催の定時株主総会以降は2名の社外取締役を設置する方針です。

b−2.独立社外取締役が1名だが、それで十分である旨と増員も検討していることを開示している例

ただし、社外取締役1名であることを社外監査役もいるので十分としている内容は、会社法における社外取締役を置かないことが相当である理由を開示する場合に、社外監査役が十分機能しているからということでは理由として不十分と規定されていることから勘案すると、説明が不十分に見える。

スタートトゥデイ

当社は、社外取締役1名、社外監査役3名が在籍しておりますが、当該社外役員全員を独立役員として登録しております。

社外取締役は1名ではありますが、社外取締役独自の外的な視点から各取締役や監査役、経営陣等と頻繁に意見交換を行っており、現段階において当社の独立社外取締役としての責務を十分に果たしております。加えて、監査役により法令上与えられた権限執行が随時なされていることから、社外役員4名で十分に経営の監視及び監督は機能できるものと考えており、現時点で社外取締役を増員する必要はないと考えております。

ただし、今後当社を取り巻く環境が変化することで、社外取締役を増員する必要が発生する可能性もあり、必要に応じて候補者の選任を検討してまいります。

b−3.監査等委員会設置会社への移行など独立社外取締役の構成以外の取り組み開示をしている例

タカタ

【原則4-8】(独立社外取締役の有効な活用)

現在、グローバルに業務を展開する当社の事業活動に関し、広範かつ高度な視点から助言くださる候補者の検討を進めております。また、独立社外取締役の増員による解決のみに拘らず、監査等委員会設置会社への移行等、コーポレート・ガバナンス体制自体の再構築も視野に入れており、検討に時間を要しております。社外取締役1名、社外監査役3名が在籍しておりますが、当該社外役員全員を独立役員として登録しております。

b−4.取り組み方針を策定していないことを以ってExplain開示している例

資生堂

2015年6月末日現在、当社の取締役会は業務執行取締役3名と独立社外取締役3名の計6名で構成されており、取締役会における独立社外取締役の構成比率は50%です。

ただし、当社では、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役の選任を必要と考えるかどうかについて、ならびに必要と考える場合の取組み方針について、現時点では結論を持つに至っていません。取締役会における独立社外取締役の人数比率については、取締役会を監督機能に特化した機関として位置付けるのか、または業務執行機能の相当部分を担う機関として位置付けるのかの判断に直結する事項であると考えています。指名委員会等設置会社または監査等委員会設置会社のような委員会型の機関設計と、監査役会設置会社としての機関設計のどちらを採用するのかという議論にもつながるものであることから、現在慎重に検討を進めています。

当社としての見解・方針が定まった時点で、その内容をお知らせします。

 


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