補充原則4−11.B
 

 

 【補充原則4−11.B】

取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

 

〔形式的説明〕

@「取締役会評価」について

取締役会の評価というのは、日本では一般的ではないのですが、海外ではOECDのコーポレートガバナンス・コードでは求められていて海外の上場企業では広く実施されているものだそうです。その導入の目的は取締役会全体が適切に機能しているかを定期的に検証し、その結果を踏まえ、問題点の改善や強みの強化等の適切な措置を講じていくという継続的プロセスにより、取締役会全体の機能向上を図ることにある、とされています。また、評価の結果の概要を開示することで、投資家をはじめとしたステークホルダーの信認を獲得し、自社に対する支持基盤の強化につながることが期待されている、ということです。

この本補充原則において求められる分析・評価の対象は、「取締役会全体の実効性」ですが、その出発点として、各取締役の自分自身に対する評価も必要とされます。そして、分析・評価の手法としては、取締役会議長が中心となって取締役会が自ら評価を行なう自己評価と、外部の専門家に評価を依頼する外部評価の手法が考えられますが、この補充原則では、手法は特定されておらず、各社の合理的な判断に委ねられています。

当面の実務対応としては、この補充原則を機に、取締役会の自己評価を実施する上場会社が多くなるものと見込まれています。その具体的な評価の方法としては、個々の取締役に対しアンケートやインタビューを行った上で、取締役会の課題などについて議論を行うといったものが考えられます。具体的な評価項目としては、たとえば、取締役会の開催頻度、審議項目、審議資料、審議時間、議事運営のあり方等のほか、各取締役に対する情報提供の質、量、時期等が考えられるが、そのほか英国においてFRCが提供するガイダンスを参考にすることもあり得るということです。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@「取締役会評価」の趣旨

会社法で規定された取締役及び取締役会は、@会社の業務執行に関する意思決定を行い、A取締役による職務執行を監督ものとされ、実務上は、経営会議や常務会等の議論を経て総務部等により起案された議案等について、報告を受けて決議することが多いのではないでしょうか。これでは、上程された議案に対して大過なく報告を受けて賛否を表明することにとどまるものです。会社法での取締役会の機能は上程された議案に基づいた意思決定や職務執行の監督のみです。それに対して、このコーポレートガバナンス・コードでは、そもそもそのような決議だけの場としての取締役会の機能を、そんなところにとどまらずに、もっと向上させようと意図されたものであると考えられます。ここでの、取締役会の実効性に関する分析・評価は、取締役会の機能向上を図る上で、最も単純かつ有効な手段という意図です。すでに海外では一般化しつつあり、グローバル・スタンダードとなりつつある取締役会の分析・評価を行なうことは、とくに海外機関投資家に対する非財務情報として不可欠のものとなりつつあります。

A「取締役会評価」をどのように実施するか

以下で、検討していきますが、その前に参考として、すでに長年にわたって実施経験のある英国の取締役会の実効性評価の取り組みとして、英国のコーポレートガバナンス・コード(15ページ以下)を参考にできると思います。

1)分析・評価の目的

・ 取締役会の構成員である各取締役個人の職務執行の状況や取締役会全体が適切に機能しているかを定期的に検証し、その結果を踏まえ、問題点の改善や強みの強化等の適切な措置を講じていくこと(取締役会における機能向上のためのPDCAサイクルの一環)

⇒分析・評価は取締役会が自らの問題点や強みに気づき、その問題点の改善や強みの強化を推し進めることができる。

・ こうした分析・評価の開示を行うことによって、株主等との建設的な対話の材料とし、結果としてステークホルダーの信認を得て、支持基盤の強化につなげること

⇒分析・評価は、株主等の目線から見て、客観的で分かりやすいものが求められ開示の面での強化につながる。

2)分析・評価の視点・項目

・視点 @)取締役会が企業の成長に寄与し、牽引する存在となっているか 

A)取締役会が効率よく機能し、十分な成果を上げているか

・評価項目   取締役会の構成(能力、経験、知識、多様性の状況)

取締役会の運営方法

取締役会の議論に際して提供される情報の質と量・タイミング

審議、決議事項の適切性

実際の議論内容(生産性、創造性、リスクテイク等)

各取締役の参加・貢献状況

3)分析・評価の手法(評価主体)・頻度

・自己評価

・外部評価

4)分析・評価の開示

この補充原則において開示を求められていることから、分析・評価についておのずと開示を意識して進められることになるでしょう。

ステークホルダーからの信認を得るという目的を重視すれば、分析・評価の結果も含めて、できる限り多くの情報を開示することが望ましいということになるでしょう。しかし、その反面、結果の全面的な開示ということになれば、分析・評価が開示を意識するあまり、委縮したり、厳正なものではなくなってしまうおそれが生じます。また、インサイダー情報等の機密情報の漏洩につながってしまうおそれもあるでしょう。この補充原則においても「結果」ではなく「結果の概要」の開示を求めているのは、そのような事情からであると考えられます。

B実務上の対応

実務上、この補充原則に対するコンプライの評価とエクスプレイ、開示をどうするかということについてです。

まず、取締役会の実効性についての分析・判断を行うことに対しては、取締役会の機能向上を図るという有用な目的達成のための基本的な手段として、デメリットが考えられないことからエクスプレインすることは通常考えられない、ということになるでしょうか。エクスプレインするケースとしては毎年定期的に行う必要性がない、という程度ではないでしょうか。

次に、結果の概要を開示することについては、前項で議論した開示のメリットとデメリットを考慮してコンプライかどうかを判断することになると思います。

実際上のことを考慮すると、取締役会の分析・評価との関係では、取締役会の分析・評価の目的、手法、手順を決定し、それに基づいて行った結果を取締役会に報告・検証した上でコンプライかどうかを判断し、開示については、取締役会の分析・評価の目的、手法、手順の概要を述べて、結果については「評価の結果、特に問題はありませんでした」という程度の開示を行うというところで落ち着くのではないか、と考えられます。

C実施例から自社に合ったフォーマットをつくるためのヒントを探す

2016年6月の定時株主総会は、上場企業にとってコーポレートガバナンス・コード実施初年度の総会となりました。その結果を受けて、各企業では昨年12月までに提出したコーポレートガバナンス報告書について、その後の、つまり期末での項目の実施報告も加えて更新したものが提出されています。その中で、取締役会の実効性評価についても、期末時点で実施した企業が多いようで、その開示を見ながら、実際に取締役会評価を、どのように進めていくかを考えていくに際する、ヒントになるようなことを拾ってみたいと思います。

6割以上の企業がエクスプレイン

コーポレートガバナンス・コードの73の諸原則のなかで、取締役会の実効性評価に関する原則に対するエクスプレインが最も多く、コーポレートガバナンス報告書を提出した企業の6割以上がエクスプレインという結果でした。これは、法的な規制もなく、慣行でもなく、中には初めて聞くことで何をやったらよいのか分からない企業も少なくなかったのではないかと思います。しかし、初年度はそれでも仕方がないとして、2年目以降は、そうもゆきません。実際の評価を期末に実施するにしても、秋ぐらいまでには原案を作って、取締役会で検討してもらって、年明けくらいから実行の準備をしていく、くらいのタイムスケジュールでいる企業が多いのではないかと思います。

@)評価の主体

取締役会の実効性の分析や評価を中心となって実行するのは誰かということです。これについては、次の検討事項があると思います。

a.評価の客観性の担保

取締役会の実効性ということは、第一に取締役会で何が、どのように議論されているか、ということを検討しなければならないでしょうから、会議に出席している取締役以外には事務局くらいしか、内実は分かりません。そのため、取締役会の自己評価となるのは避けられません。それを株主のような外部の人が見た場合に、お手盛りと疑われる可能性があるということです。

また、実際にお手盛りで評価したとしたら、その評価にどれだけ有効性があるのかを考えると、取締役会で無駄な時間を費やすことになるわけです。

b.社外取締役の関わり方

上記の客観性の担保で、真っ先に考えられるのが社外取締役の関与によって、客観性を担保するということです。しかし、それをどの程度まで、どのようにするかを考えなければなりません。いくつかのパターンが考えられます。

ア.実施手続に関わるか否か

分析や評価の作業の一部または全部を社外取締役にやってもらうかどうかということです。作業を社外取締役が実施すれば、客観性という点では説得力は高いものとなると思います。しかし、実際面を考えれば、社外取締役は会社の事情や社風、社内慣行といったことには疎いため、突っ込んだ分析や評価は難しいことは否めません。また、作業に多大な労力を要するので、社外取締役にそこまで負担をかけられるかという実際上の問題もあると思います。

一方で、取締役会に対するアンケートの作成や集計等の作業は取締役会担当の取締役か事務局が行い、その作業がまとまった時点で、取締役会に提出する前に社外取締役に事前相談して、意見を聞く、あるいはコメントをもらうということが考えられます。

イ.手続実施には関わらないが、分析・評価に関して社外取締役に個別にヒヤリングする

実務上、実施手続に社外取締役が関わるのか難しいという場合、取締役会のメンバーにアンケートをとったり、取締役会の場で評価について議論するのとは、別に事前に個々の社外取締役、あるいは社外取締役のミーティングを開いて、担当取締役か事務局が今期の取締役会や会社の状況を説明して、ある程度の情報を得てもらったうえで、取締役会の席では言い難いことも含めて、事前に意見や感想をヒヤリングし、その結果を評価に反映させるということです。

ウ.取締役会の前に任意の委員会などで検討する

指名委員会設置会社や監査等委員会設置会社であれば、委員会がありますし、監査役会設置会社で任意の報酬委員会を設けている企業であれば、上記のヒヤリングをもう一歩進めて、そこで評価を行ったり、事務局や担当取締役が作業した分析・評価の原案を検討して、そこにコメントを加えたり、承認をしたうえで取締役会にあげるというプロセスです。

このイ.とウ.は客観性のある意見を吸い上げるプロセスを踏むことで客観性を担保することになります。

c.外部機関の起用

弁護士事務所やコンサルティングに評価を依頼するという方法で、海外では一般化しているようですが、日本では実施しているところは少数のようです。実際のところ、これから自社の評価を始めようという会社は、まずは、自身でやってみることから始めるのが常道のように思えます。はじめから他人任せにできるものではないと思います。

A)評価の方法

評価方法として、どのようなことを行なうかということです。これはどうしても、取締役の自己評価がベースになるので、まず、その自己評価をどのよう行うか、ということで、次のような方法があると考えられます。

a.アンケート

作業実施担当者(事務局等)で評価項目を列挙したアンケートを各取締役に配り、回答を集計するものです。

b.ヒヤリング

担当取締役(場合によっては社外取締役)が各取締役と個別に面談して、評価にいてヒヤリングし、それを担当取締役が取りまとめ、その結果を取締役会に報告するという方法です。

c.アンケートとヒヤリングの併用

B)評価の対象、評価項目

取締役会の実効性評価といいますが、それをアンケートやヒヤリングで実施するといっても、一体、具体的に取締役会のどのような点を対象とするのか、実際のところ、アンケートにはどのような項目の質問をすればいいのか、ヒヤリングでは何を質問すればいいのか、ということです。

基本的には、コーポレートガバナンス・コードの中の取締役会に関する原則について質問することになると思います。取締役会の実効性ということは、とりもなおさず、取締役会が責務を果たしているかということになるはずですから。質問項目としては、次の内容が入ってくるのではないかと思います。

取締役会の構成(社外取締役の独立性、バランス取れた構成)、

運営(活性化の取組み、開催日程、情報提供、トレーニング)、

議題(多すぎないか、議論ができているか、権限委任)、

取締役会を支える体制(サポート体制) 

渇、将フードサービスが、取締役会の実効性評価について、かなり詳しい開示をしていました。質・量ともに、現時点では最大限のものではないかと個人的には思います。ですから、この開示を参考に、ここから適当な部分を参考にして自社に取り入れていく、というのが当面の対処として近道ではないかと思います。それで実施してみて、経験してから自社独自のやり方を徐々に加えていけばいいのではないかと思います。例えば、アンケートの質問票も開示していますが、これなど、そのまま他の会社で使えるものです。

  アンケートの質問票はこちらから   

    王将フードサービスの取締役会実効性評価への詳しい解説はこちらから 

 

〔開示事例〕

亀田製菓

当社は、年に1回程度、取締役会の実効性について分析・評価を行い、その概要を開示いたします。

 

デンソー

・原則1/月開催し、重要案件をタイムリーに審議・決議している

・資料をあらかじめ配布あるいは説明のうえ、取締役会では十分な審議時間を確保して活発な議論を行い、経営課題について十分な検討を行っている

・事務・営業・技術・生産等の様々な経験を持つ取締役及び企業経営に関する豊富な経験・知識を持つ社外取締役により経営課題を多角的な視点から検討している

・より戦略的な議論を行うべく、適宜、取締役会で決議すべき事項を見直している

・決議した案件の経過・結果の報告を行い、取締役の職務執行状況を監督している

 

エーザイ

当社は、当社のめざす最良のコーポレートガバナンスを実現することを目的として、その基本的な考え方を定めた「コーポレートガバナンスガイドライン」を取締役会で決議しています。このガイドラインの中には、コーポレートガバナンスの実効性を高めるために、当社取締役会の職務の執行がガイドラインに沿って運用されているかについて、取締役会は、毎年、自己レビューを行うことが定められています。

2015年度も、4月開催の取締役会において、取締役会の職務の執行について自己レビューを行うとともに、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードへの対応状況についても自己点検を行いました。

その結果、2014年度の取締役会の職務の遂行において、当社「コーポレートガバナンスガイドライン」の各規定に沿わない運用等、問題となる事項は認められませんでした。また、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードの各原則についても、取締役会として直ちに対応すべき事項は認められませんでした。なお、業務執行における運用上の課題等については速やかにこれに対応することとしています。

 

〔Explainの開示事例〕

資生堂

当社では、現時点では取締役会の定期的な分析・評価は実施しておりませんが、これまでも必要に応じて取締役会における課題の把握のためのアンケート評価(自己評価)を実施していました。

今後は、取締役会の実効性向上のための課題を洗い出し、必要な対策に取り組んだ上でその結果を検証するPDCAサイクルを運用するために、取締役会の定期的な分析・評価を行っていくことを検討しています。

分析・評価の方法を定め、これを実施した時点で、分析評価の方法およびその結果の概要をお知らせします。

 

本多通信工業

取締役会全体の実効性の分析・評価およびその開示については、今後の検討事項とします。 

 

大和ハウス工業

平成26年度において、取締役会評価は実施しておりませんが、今般のコーポレートガバナンス・コードの制定を受けて、当社として取り組むべき事項について「コーポレートガバナンスガイドライン」を定めました。当ガイドラインにおいて、取締役会の果たすべき役割について、改めて議論し、新たな役割や実施すべき事項についても付記しており、取締役会評価の実施についても定めています。

(コーポレートガバナンスガイドライン第17条)

平成27年度より当ガイドラインに則った取締役会を運営し、取締役会の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示する予定です。

詳細については、当社ホームページにて開示していますので、ご参照ください。

http://www.daiwahouse.com/ir/governance/pdf/principle4-11-3.pdf  

 

大東建託

当社では、社外取締役全員及び監査役全員で構成される評価委員会が中心となり、毎年第3四半期に業務執行取締役同士の相互評価や評価委員によるヒアリングを行うとともに、評価委員会による相互評価等の結果確認を通じ、取締役会の実効性の分析や評価を行っています。

上記の結果の概要に係る開示内容については、今後の検討課題として認識しております。  

 

スタートトゥディ

当社は、社外取締役が各取締役に対して必要に応じ取締役会全体の実効性について分析・指導しております。

なお、開示については今後検討して参ります。

 

〔開示項目としての対処〕

補助原則4−11Bは、開示項目として、「取締役会全体の実効性についての分析・評価の結果の概要」を開示しなければなりません。ここでは、すでに開示している例から開示のパターンを分類してみたいと思います。

ここで開示を求められているのは取締役会の実効性について分析・評価した結果です。取締役会に対する分析・評価についての説明の開示までは求められていません。上のところで取締役会の評価について述べてきましたが、このことについて開示する必要はないわけです。だから、上述のようにことを素通りして、自己評価で取締役会の実効性には問題がないという結果だけを一文記載するということも可能ということになります。

しかし、求められているのが結果だけということでも、その結果が導き出されるためには、どのような分析や評価を実施したのか、つまり方法ですね、さらには、そのような方法を採用するには、その根拠となった方針とか取締役会はこのような実効性を持たせたいという理念があるはずで、丁寧な説明をしようとすれば、そこまで遡って説明をするということになるかもしれません。コーポレートガバナンス・コードに対しては各企業の合理的な判断に任されているので、企業によって事情に適した合理的な判断がなされているということになります。結果を一文で済ます企業は、そういう合理的判断をする企業であり、経営であるということでもあるということです。

では、既に開示している事例をパターンで分類してみていくことにしましょう。パターン分けをするといっても、漠然と分析することではないので、結果とその結果を導く分析・評価の方法に分けて、それぞれのパターンを見て行きたいと思います。

@分析・評価の方法

分析・評価をどのように実施したのかという説明です。これについてはさらに、分析・評価の手法と分析・評価の項目に分けてパターンを見ていきたいと思います

(@)分析・評価の手法─自己評価と第三者評価

イ.自己評価:取締役会が自ら評価を行う

イ.自己評価:取締役会が自ら評価を行う

・各取締役にアンケートを行う─第一生命保険オリンパス

・事務局によるヒヤリングや意見交換─三井住友トラスト・ホールディングス

社外取締役及び監査役に対して、取締役会事務局が定期的にヒヤリングの場を設け、取締役会の実効性、事前の情報提供やサポート等の運営体制、取締役会で取り上げるべきテーマなどの確認を実施し、結果を取締役会議長と共有のうえ、取締役会運営の向上に資する必要な改善を実施しています。直近は2014年度に実施しており、取締役会が実効的に機能している旨を確認しています。

・指名委員会が各取締役について評価を実施し、その上で取締役全体としての実効性について分析・評価を行う─マネックスグループ

指名委員会が各取締役についての評価を実施し、その上で取締役会全体としての実効性について分析・評価を行っています。2015年6月20日に開催された当社定時株主総会に提出いたしました取締役選任議案の内容を決定するに当たり、指名委員会は2015年4月に取締役会全体の実効性についての分析・評価を行いました。その結果の概要は次のとおりです。

ü 取締役会の規模、各取締役の知識・経験の多様性、独立社外取締役や業務を執行しない取締役のバランスは適切である。

ü 2015年4月時点で就任していた各取締役は、取締役およびその所属する各委員会の出席状況も良好であり、会議における発言も活発に行われている。

ü 他の上場企業などの役員の兼任がある社外取締役の発言内容も、その客観性、中立性、独立性を損なうものとは認められない。

ü 以上をふまえ、指名委員会においては現在の取締役会の構成を継続することが適切であると判断。

ロ.第三者評価:外部の専門家の関与の下で評価を行う

・各取締役について独立した有識者の面談・評価を行う─日本瓦斯

当社は、毎期に各取締役が自己の職務遂行状況等について自己評価を行い、その評価に基づき、各取締役は独立した有識者の面談・評価を受けています。取締役会は、経営方針を含めた当社グループの経営の在り方等について、半期毎に開催される3名の独立した外部有識者によって構成される経営評価委員会による評価を受けております。その上で、取締役会は、毎年、上記の各取締役の自己評価及び経営評価委員会の評価をふまえて、取締役会全体の実効性について、分析・評価を行い、その結果の概要を開示いたします。平成27年度の取締役会に係る上記結果の概要は、平成28年5月に開催される経営評価委員会の評価をふまえ、平成28年6月頃に開示します。

(A)評価の項目・内容─三者評価

・「経営計画の達成度」と「業務執行に対する監視・助言機能の実効性」を評価項目とする─ソフト99コーポレーション

当社の取締役会の実効性評価については、「経営計画達成度」と「業務執行に対する監視・助言機能の実効性」の二つを重要な評価の論点と位置付けております。平成28年度以降は、これらを取りまとめた評価結果を、毎年7月を目途に各種対外発表資料にて開示する予定です。詳細は、当社ポリシー内「1.合理的な経営システムの構築(1)取締役会の運営B取締役会の実効性評価」をご参照下さい。

・情報共有や課題解決のスピード感を評価項目にあげる─ミライト・ホールディングス

当社は、取締役会において法令等の遵守状況、リスク管理や情報共有、問題解決のスピード感など、取締役の職務執行についてチェックを行い、健全で効率的な経営に努めております。今後は取締役会全体の実効性をさらに高めるため、毎年、各取締役が自己評価を行う等、取締役会全体の実効性について分析・評価を行うことを検討していきます。

A結果の概要

・取締役会の実効性に問題はなかった旨を記載─エーザイ

当社は、当社のめざす最良のコーポレートガバナンスを実現することを目的として、その基本的な考え方を定めた「コーポレートガバナンスガイドライン」を取締役会で決議しています。このガイドラインの中には、コーポレートガバナンスの実効性を高めるために、当社取締役会の職務の執行がガイドラインに沿って運用されているかについて、取締役会は、毎年、自己レビューを行うことが定められています。

 2015年度も、4月開催の取締役会において、取締役会の職務の執行について自己レビューを行うとともに、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードへの対応状況についても自己点検を行いました。

 その結果、2014年度の取締役会の職務の遂行において、当社「コーポレートガバナンスガイドライン」の各規定に沿わない運用等、問題となる事項は認められませんでした。また、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードの各原則についても、取締役会として直ちに対応すべき事項は認められませんでした。なお、業務執行における運用上の課題等については速やかにこれに対応することとしています。

・取締役会に実効性があるとし、その理由に触れ、取締役会の構成・議論の状況から実効性がある胸を記載─ニッセンホールディングス

当社の取締役会全体の実効性につきましては、コーポレート・ガバナンス委員会において主にガバナンスの観点から適宜評価を行うと共に、指名・報酬委員会における次年度取締役候補者の選任プロセスの中で、取締役会全体の実効性に多大な影響を与え得る取締役候補者の個別適任性および全体構成バランスについて分析・評価を実施しております。現在、独立社外取締役が取締役会議長を務め、社外取締役(うち、3名以上が独立社外取締役)で過半数を構成する当社取締役会の運営におきましては、多様なバックグラウンドを有する社外取締役が中心となり多角的な視点から活発な議論がなされており、十分な実効性が確保されているものと判断しております。なお、取締役会運営面での課題につきましては、取締役会の開催都度、独立社外取締役等からの評価・意見に基づき、適宜改善を行っております。

直前事業年度にかかる監査役会の分析・評価の結果の概要は、当社ホームページに掲載の、当該事業年度にかかる定時株主総会招集通知「監査役会の監査報告書謄本」に記載のとおりであります。

・取締役会の実効性について課題に言及した記載─花王

少なくても毎年1回、取締役会において全ての社外取締役及び社外監査役による取締役会の実効性についての評価を実施し、それに基づき出席者による議論を行い、取締役会の実効性を高めるための改善につなげます。

2015年5月度及び6月度取締役会において、全社外取締役3名及び全社外監査役3名からそれぞれ、コーポレートガバナンス・コードにおいて特に取締役会に期待されている以下の四つの視点を含め、取締役会の活動について意見が述べられました。

.企業戦略等の大きな方向性の議論(基本原則4)

.経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備(同上)

.独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督(同上)

.株主・投資家との建設的なコミュニケーション(基本原則3、5)

この意見を踏まえ、これら四つの視点を中心に実行性についての自己評価を実施しました。以下、その概要です。

.取締役会では、花王がどのような会社でありたいかのビジョンが明確に共有されたうえで、具体的な数値目標を掲げながら、中長期の経営戦略が議論されている。取締役会の年間の審議テーマが共有され、さらに毎月の取締役会の冒頭には、社長執行役員をはじめとする代表取締役から執行における足元及び中長期の関心事が共有されており、大きな方向性と直近の活動が的確に関連づけられている。この点は、更に不断の充実を図っていくべきである。

.充実したコンプライアンス体制に加え、投資案件の審議において経営指標の一つであるEVAによる評価が有効に活用されている。社外取締役は、「リスク」を取るにあたっての備えを確認しつつ、投資実行への賛否の判断を前向きに表明できる形で機能している。

.非執行の取締役である独立社外取締役が議長を務め議事進行を行い、社内・社外の枠を超えて活発な議論がなされており、これを社内取締役が意識して取り込む努力をしていることで、要所における社外監査役も含めた社外役員の多様な経験から生じる客観的な意見に基づいた監督が行われている。

.社長執行役員をはじめとする経営陣が積極的にIR活動を実施し、その内容は取締役会にもフィードバックされ、投資家との双方向のコミュニケーションができている。株主総会や株主見学会における株主と役員との質疑応答により建設的なコミュニケーションが実施されている。

.取締役会の今後の課題として、中長期の成長戦略、グローバル拡大のための戦略や人財戦略があるが、その実現のために、先ずは、今後さらにそれらの議論に時間を割いていくことが挙げられる。

・自己評価のアンケート結果を記載─第一生命保険

・取締役会の現状を説明することで説明に替えているケース─サントリー食品インターナショナル

当社は、毎年1月から3月にかけて、各取締役による取締役会の自己評価を実施いたします。また、取締役会事務局は社外取締役との間で、毎年1回取締役会の運営状況について意見交換を実施した上で、取締役会の監督機能の更なる強化につなげるべく、取締役会運営の見直しを行なっております。2014年度、取締役会は16回開催され、経営戦略やコーポレート・ガバナンス、M&A、設備投資等の様々な経営課題、業務執行について活発な議論が行われました。

当社においては、取締役会において使用する資料を、原則として取締役会の開催日の3営業日前までに各取締役に送付しております。加えて、社外取締役に対しては、原則として事前に、取締役会事務局から議案の内容及び議案の背景となる当社の事業状況に対する個別の説明を実施しております。このような事前の説明を通じて、社外取締役の理解を促し、取締役会における議論の活発化に努めております。

 

〔2016年に開催された定時株主総会の実際の状況と今後の傾向〕

取締役会実効性評価について、株主総会資料で株主に報告するかについて、コーポレートガバナンス・コードの主旨を鑑みれば、事業報告などに掲載するか、参考書類の取締役選任の説明に織り込むかするのが望ましいと考えられますが、実際に掲載した企業は3.4%と、ほとんどなかったという実績です。

・事業報告に掲載しているケース

エーザイ:「会社の現況に関する事項」において開示

オムロン、積水化学工業:独自の見出しをつけて開示

伊藤忠商事:「対処すべき課題」で言及し、結果開示のURLを掲載

・参考書類に掲載しているケース

塩野義製薬:取締役選任議案にご参考として開示

 

〔開示項目としての対処〕(海外の開示事例)

・GE社

@ガバナンス原則より

10.自己評価

取締役会および各委員会は、毎年自己評価を実施する。ガバナンス・広報委員会は、自己評価プロセスを監督する。当該プロセスは、取締役会および取締役会の各委員会によって、その有効性と改善の機会を決定するために利用される。毎年、各取締役は、取締役会およびその委員会の有効性ならびに取締役のパフォーマンスおよび取締役会の状況について評価を提供することが求められる。主任独立取締役またはコーポレートガバナンスに関する社外専門家は、少なくとも年1回、各取締役に対して、取締役会全体および当該取締役が担当している委員会、ならびに取締役のパフォーマンスおよび取締役会の状況についてコメントを求める。提供を求めるコメントには、人材開発、財務、その他の戦略、リスク、誠実さ、評判およびガバナンスに関する主要な問題を監督するという取締役会の主たる機能をどのように改善することができるかといった点が含まれる。特に、当該プロセスでは、取締役会と関連する委員会の双方について、下記事項に関するアイディアを取締役に求めることとしている。

a.課題の優先順位付けに関する改善

b.経営陣による文書、チャート、口頭によるプレゼンテーションの質の改善

c.これらの重要事項に関する取締役会または委員会における議論の質の向上

d.過去1年間における、具体的な問題のより適切な処理の方法の特定

e.今後検討すべき具体的な課題の特定

f.取締役会の機能にとって重要な他の事項の特定

主任取締役またはコーポレート・ガバナンスに関する社外専門家は、委員会の委員長と協力して、取締役会レベルまたは委員会レベルにおいて、改善に関する選択肢について寄せられたコメントを整理する。その後の取締役会および委員会では、実行可能な事項について議論して決定するための時間が割り当てられる。

A2017年度株主総会招集通知での説明

当会社における取締役会の有効性についての評価

年次評価手続:毎年、主任取締役または独立したコンサルタントが各取締役にインタビューし、取締役のパフォーマンス、取締役会の状況、取締役会とその委員会の有効性に関する評価を得ることとされている。2017年は、取締役会は独立外部コンサルタントを用いて評価を実施した。インタビューでは以下の点に焦点が当てられた。

─前年及び半期における取締役会のパフォーマンスのレビュー

─今後の取締役会のプロセスに関する潜在的な改善分野の特定

場合によっては、取締役は文書による評価を実施することもある。2017年の自己評価の後、外部コンサルタントは、ガバナンス委員会の主任取締役及び議長とともに結果を検討し、評価から得られた結果について議論するために取締役会全体と会合を持った。この評価プロセスの詳細については、取締役会のガバナンス原則を参照のこと。

2017年の評価に対応して実施された変更

2017年に取締役から寄せられたフィードバックを受け、取締役会は以下を含む多く変更を実施した。

─財務及び資本割当委員会の設置

─取締役会の規模を、2018年の取締役候補者12名に縮小(新任取締役3名を含む)

─会社が直面する最も重要なテーマに関して、双方向の深く掘り下げた、より厳格な対話を促進することで、取締役会の形式を現代的なものにする。

・Ramdstand NV社

2017年度年次報告書の取締役会評価に関する開示より

2017年12月に開催された各別の会議において、Supervisory Boardは、その構成、パフォーマンス、および委員会のパフォーマンスについて詳細に議論した。この自己評価は、外部アドバイザーであるLinda Hoviusによって進められた。準備の過程で、当該アドバイザーは、Supervisory Boardと経営陣のメンバー並びに会社秘書役にインタビューを行った。自己評価報告書には、Supervisory Boardの機能と経営陣との関係に関する種々の個別の見解が(匿名で)記載されている。評価の対象とされ、その後Supervisory Boardでされた項目は、(1)チームの有効性、(2)相互作用と対話、(3)能力、後継者、新人研修、(4)委員会の有効性と妥当性、(5)議題設定、(6)経営陣との関係、(7)ガバナンス、トップ構造、組織モデルである。

Supervisory Boardは、自己評価において、これらの項目の大半が肯定的に評価されていると結論付けた。チームスピリットは強いものであり、相互の信頼、率直な議論および取締役会メンバーの役割の明確な理解を促進するものと考えられている。Supervisory Board内の専門性は多様であり、補完的である。戦略に関する経営陣との対話は、特に年次の共同戦略オフサイトセッションにおいて、大幅に改善された。Supervisory Boardは、Ramdstandのデジタル戦略の定義付けと実行の成功、CFOの後継者育成計画が十分な管理、経営陣に関する新しい報酬政策が十分に検討されたものであり、チームワークと共同責任に重点が置かれていることに特に満足している。追加の重要な所見およびフォローアップのポイントは次のとおりである。

Supervisory Boardは監督および諮問の役割を拡大しているが、経営陣が直面し、Supervisory Boardが付加価値を提供することができる具体的な課題、戦略的課題およびジレンマについて、詳細な議論と意見交換を行うことで、更に改善することが可能である。準備とその後の検討の最適化のため、Supervisory Boardは、経営陣との共同の会議の前後に短い非公式の会合を開催する。

Supervisory Board内のダイナミクスは良好である。全員が専門知識を持ち込み、対話にオープンに貢献する。しかしながら、意思決定プロセスについては、個々の見解をより明確に表明することによって、さらに最適化することが可能である。

Supervisory Boardは、経営陣の各メンバーに関する、より体系的な業績評価とフィードバックのプロセスを設計するために、リーダーシップの育成に一層着目している。Supervisory Boardの議長と報酬委員会の委員長が率先してこのプロセスに参加し、経営陣の各メンバーと正式な評価に関する対話を実施している。

・企業の変革と全般的な進展を踏まえ、Supervisory Boardは今後、ガバナンス、トップ構造、組織モデル、および後継者育成計画にさらに着目していく。これにはガバナンス・指名委員会の設置が含まれるが、これは必然的に現行の報酬・指名委員会を分割することに繋がる。報酬委員会は、会社の報酬方針およびその実行に関連する全ての事項を引き続き担当する。戦略は主として共同責任事項と考えられるため、戦略委員会は廃止する。戦略については、現在も年間を通じて十分に取り上げられており、特に、合同の年次戦略オフサイト会合の中で取り上げられている。

〔コーポレート・ガバナンスに関する開示の好事例集から〕

2019年11月、東京証券取引所は提出されたコーポレート・ガバナンス報告書の記載を対象として、充実した取り組みが行われ、その内容が投資者に対してわかりやすく提供されていると考えられる開示例とりまとめ「コーポレート・ガバナンスに関する開示の好事例集」として発表しました。

そのなかで、本補充原則についての事例もあります。補充原則4−11Bは、取締役会全体の実効性についての分析・評価を実施し、その結果の概要を開示することを求めるというものです。

取締役会全体の実効性評価に関する分析・評価の実施に際しては、各取締役が自分自身及び取締役会全体についての評価を行うことが出発点になると考えられています。さらに、実効性の向上を果たすための重要なポンや企業における優先課題は常に変化していくものであるため、評価項目について定期的な見直しをすることも必要になってきます。そして、分析・評価の結果については、評価を通じて認識された課題を含め、適切にその概要を開示すべきであるところ、分析・評価の結果の開示に際しては、例えば、@評価方法、Aアンケート項目、B前年度の実効性評価の結果として認識された課題への対応状況、C本年度の評価結果、Dさらなる実効性向上に向けた課題等を示すことになります。

これらを踏まえ、好事例集では、三井物産株式会社の具体的なアンケート項目等を含めた評価方法、前年度に実施した実効性評価の結果を踏まえた本年度の具体的な取組みや今後さらなる取組み等が必要な事項についてこけまでの経緯を含めて説明している事例を紹介しています。また、株式会社荏原製作所は、分析・評価方法(評価項目)について第三者機関の利用も含めて記載しています。そして、アサヒグループホールディングス株式会社は、自社のウェブサイトで公表した評価結果の概要の参考資料において、図解を用いるなどして実効性評価の取組み・内容をわかりやすく説明しています。

 

 

 


関連するコード        *       

基本原則1.

基本原則2.

基本原則3.

基本原則4.

原則4−11.

補充原則4−11.@

補充原則4−11.A

基本原則5.

 
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