原則4−13.
【情報入手と支援体制
 

 

2021年の改訂されたコードからまず見ていき、改訂前のコードについての説明は、その下に続けます。 

【補充原則4−13B】

上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきである。また、上場会社は、例えば、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を的確に提供できるよう社内との連絡・調整に当る者の選任など、社外取締役や社外監査役に必要な情報を的確に提供するための工夫をおこなうべきである。

 参考として、比較のために改訂前の原則を下に示しておきます

【補充原則4−13B】

上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきである。また、上場会社は、例えば、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を的確に提供できるよう社内との連絡・調整に当る者の選任など、社外取締役や社外監査役に必要な情報を的確に提供するための工夫をおこなうべきである。

  

〔改訂の背景〕 

フォローアップ会議では、内部監査部門についてCEO等のみの指揮命令下となっているケースが大半を占め、経営幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に果たされていないとの指摘や。また、内部監査部門によるデュアルレポーティングラインの重要性についても検討が行われました。

〔変更された点〕

@取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により

改訂された補充原則4−13Bは、内部監査部門と取締役・監査役の連携の確保のための方法の一つとして、内部監査部門が取締役会・監査役会に対して直接報告を行う仕組みの構築を示しています。

改訂コードの文言「内部監査部門が取締役会・監査役会に対して直接報告を行う仕組みを構築すること」は、例示にすぎず、それ以外の方法により内部監査部門と取締役・監査役の連携が適切に確保されることもあり得ます。もっとも、この補充原則が経営陣幹部による不正事案等が発生した場合に独立した機能を発揮することを期待して改訂されたことを踏まえると、少なくとも内部監査部門からの報告経路に経営陣が介在すべきではなく、「内部監査部門が取締役会・監査役会に対して直接報告を行う仕組みを構築すること」以外の方法によって、その機能の発揮を期待するのは難しいかもしれません。

なお、内部監査協会が公表する内部監査の専門職的実施の国際基準では、デュアルレポーティングラインとは2系統の指示・報告経路とされていますが、補充原則4−13Bでは報告についてのみ記され、指示については言及していません。監査役等が内部監査部門と連携するにあたって、報告を受けるのみで調査などの指示を行うことができる体制となっていなければ実効性が大きく減退することになり、取締役会から内部監査部門に対して指示を行うことができる体制を構築しておくことが望ましいと考えられます。

〔実務上の対策─開示事例〕

補充原則4−13Bは、各企業での取組みの開示を求めるものではないのですが、このような報告の仕組みを設けていることを任意に開示しているケースもあります。

(双日)

〔コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示〕

コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示事項を含め、基本原則・原則・補充原則の83原則全てに関し、「コーポレートガバナンス・コード各原則に関する当社の取組について」として、本報告書の末尾に記載しております。

<中略>

コーポレートガバナンス・コード各原則に関する当社の取組について

<中略>

【補充原則4-13B】

(1)当社の取締役会は、その下部組織として設置された内部監査小委員会が内部監査部門を管轄することにより、連携を取っております。

(2)監査役会は、監査計画および監査結果に関して、内部監査部門より報告を受けております。また、両者は定期的な面談を実施し、情報共有・意見交換を実施しております。

(3)社外取締役や社外監査役に必要な情報を適格に提供するため、取締役会の事務局である取締役会業務室、監査役を補佐する監査役業務室、秘書部が中心となって対応を行っております。

また、改訂後の補充原則4-13Bについて、監査役会への直接報告を行う仕組みの構築を今後進める旨を記載してエクスプレインしているケースもあります。

(廣済堂)

〔コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由〕

現在、未実施のコーポレートガバナンス・コードの原則は以下のとおりです。

2021年12月30日までの実施完了を目指してまいります。

<中略>

・補充原則4-13B

内部監査部門と取締役・監査役との連携という点では、内部監査部門が取締役会に直接報告する仕組みは構築済みであり、今後は監査役会へ報告する仕組みについても構築を進めてまいります。

 

 

 

 【原則4−13.情報入手と支援体制】

取締役・監査役は、その役割・責務を実効的に果たすために、能動的に応じ、会社に対して追加の情報提供を求めるべきである。

また、上場会社は、人員面を含む取締役・監査役の支援体制を整えるべきである

取締役会・監査役会は、各取締役・監査役が求める情報の円滑な提供が確保されているかどうかを確認すべきである。

 

 【補充原則4−13.@】

社外取締役を含む取締役会は、透明・公正かつ迅速・果断な会社の意思決定に資するとの観点から、必要と考える場合には、会社に対しての追加の情報提供を求めるべきである。また、社外監査役を含む監査役は、法令に基づく調査権限を行使することを含め、適切に情報入手を行うべきである。

 

 【補充原則4−13.A】

取締役・監査役は、必要と考える場合には、会社の費用において外部の専門家の助言を得ることも考慮すべきである。

 

 【補充原則4−13.B】

上場会社は、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきである。

また、上場会社は、例えば、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整に当たる者の選任など、社外取締役や社外監査役に必要な情報を的確に提供するための工夫を行なうべきである。

 

〔形式的説明〕

原則4−13の主語は取締役・監査役で、取締役・監査役に対して、適切にその職務を遂行するために必要となる情報については、受け身ではなく、自ら主体的に獲得することを求めています。上場会社や取締役会といった機構ではなく、取締役や監査役の各個人に対して行動を求めている原則なのです。

補助原則4−13@では、取締役と監査役に分けて、それぞれが実際のところ具体的にどのような行動をすべきかを提示しています。取締役・監査役が適切に職務を遂行するために必要となる情報については、特に社外者については、会社内部の情報へのアクセスが限られている場合が多いため、必要な情報を獲得するため積極的に行動することを求めています。

補助原則4−13Aでは、職務執行に必要な情報は会社内部の情報に限定されるものではなく、場合によっては外部の専門家からの助言を利用することも必要となることもあるので、敢えてそのことに言及しているわけです。

補助原則4−13Bになって、それまでの補助原則4−13@及びAにおいて取締役・監査役に対して情報入手のための積極的かつ主体的な行動を求めていたのに応じて、取締役・監査役からの情報入手の要請に会社側が応えることを含めた適切な支援を求めています。このような支援を実効的なものにするためには、とくに社外役員への適確な情報提供を確保するための措置や体制が必要としています。そのために例示として、社外役員の指示を受けて社内との連絡・調整に当たる者の選任を挙げています。

そして、これらの確保のために、原則4−13の後半において、各取締役・監査役の主体的な行動と会社の支援の結果、実際に情報の円滑な提供が実現されていることについて、取締役会及び監査役会がこれを確実に担保するための確認が求められています。

実際に、このような支援体制の整備や情報提供状況の確認は、通常は内部統制システムの中で実施されることになると考えられます。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@取締役・監査役が職務を遂行するために必要な情報

そもそも取締役・監査役が職務を遂行するために必要な情報とは、どのようなものかを確認しておいてもよいと思います。そまずは、その前提として、取締役会の役割を一応復習しておきましょう。されは大雑把に4つに分けられます。

1)経営戦略や経営計画を策定する役割。これは会社がどのような方向に進むか、具体的な事業計画としてどのように進捗させていくかという大きな会社のあり方です。

2)その経営戦略等に合わせて適切な経営者を選任し、その経営者ぶりをモニタリングすること。

3)経営戦略に照らして、会社の適切なリスク管理体制(内部統制システム)の基本方針を定め、それが適切に機能していることを不断にモニタリングすること。

4)重要な業務執行を決定すること。

取締役・監査役が職務を遂行するために必要な情報は、上記の機能を果たすために必要な情報です。その情報は次のように大きく4つに分類できます。

@)ガバナンスに関する知見であり、それは大別すると、ひとつは取締役会の役割についての知見で、これは自分たちが何をすべきかということに加え、会社のガバナンスのあり方や経営者の選任手続き等のあり方などといったことを含むものです。そして、もうひとつは取締役会の役割を果たすときの判断基準(物差し)に関する知見で、これは、それぞれの課題について、いかなる基準で是非を判断すべきかという物差しについての知見であり、たとえば取締役の経営判断に係る善管注意義務の内容、内部統制システムに係る善管注意義務の内容を含むものです。

A)業界や経営に関する基本的な知見です。これは、その会社を離れて、業界の技術革新の状況であるとか、グローバルな動向とか、あるいは経営者としてのあり方に関する知見など、普遍的な知見です。

B)その会社に関する知識です。

C)業績は順調なのかとか、内部統制システムは適切に運用されていて修正の必要は生じていないかといった情報です。

これは一人の取締役が必要なすべての知見を有しているわけではありません。そんな全てを兼ね備えたスーパーマンのような人はいないでしょう。取締役会は複数の取締役で構成されているのは、全体として満たしていると言えます。必要に応じて、足りない部分は、必要に応じて研修などで獲得していくことになります。とくに@)とA)についてです。また、B)の情報については、基本的には取締役は監督者であって、経営者から独立した者であることが求められるから、その会社の個別の情報については知らないことが前提です。したがって、B)の情報は、取締役就任時に集中的に研修を行って取得してもらう情報です。また、C)の情報はモニタリングそのものであって、それを入手すること自体が取締役の職責に含まれます。これは、@〜B)の情報と違って日々変動する情報であるから、一度入手すれば足りるというものではなく、日々更新されていく性格のものです。したがって、定期的に情報を入手する必要があるとともに、重要なイベントが生じれば随時入手する必要があるものです。

※情報に付随して、取締役会が何らかの決定をしようとしたとき、社内各部署と調整が必要です。たとえば新しい経営戦略を立てようと思えばそこでノンコアされた事業部門との調整が必要であったり、新しい情報入手ルートを設置しようと思えばそのためのシステム構築について社内調整が必要になることがあります。したがって、取締役が行動を起こすときに、情報の獲得だけでなく、調整という作業が付随することになります。

A取締役・監査役への支援の具体的内容

取締役・監査役への支援としては、上記の情報の獲得の支援が主となるでしょう。それを具体的に考えて、時系列的に内容を列挙してみましょう。

ア)取締役の就任決定時です。このときには@〜B)まで情報について研修が必要です。取締役が果たすべき役割、業界に関する情報、その会社に関する情報を提供することです。B)の会社に関する情報については、その時点での情報であり、ガバナンスの仕組み、経営方針や事業計画とその進捗状況、内部統制システムの全体像と情報入手システムの全体像等は必須と言えます。

イ)取締役会対応です。事前に議案や資料を届ける。そして質問や資料請求を受け付ける。担当者に聞けばわかるようなことは、なるべく事前に対応して、取締役会の時間をそのような初歩的なことに費やさないようにする。これは時間の短縮だけでなく、取締役会の議論を本当に必要な点に集中させるためと言えます。

これは一歩進めると、単なる情報提供ではなく、適切な議案書及び資料の作成の助言・指導の役割を事務局が担うということはあり得ます。事務局が情報を有していれば、取締役会の議案書としてどのような情報が盛り込まれるべきかとか、どのような記載ぶりが適切であるかいうことが判断できる。例えば、内部監査部門の報告であれば、どういう情報が取締役会にとって必要なのか(たとえば一番重要なのはリスク状況の変化に関する情報)を助言するなどです。事前に各部署から上がってきた議案書や資料をチェックして、必要な事項の追加や修正などを指示できると、取締役会の実効性が向上することになります。さらに踏み込むと、ガバナンス系の議題は、社内部門からは出てこないことが多い。例えば指名委員会を設置するかどうかとか、役員報酬体系をどのように構築すべきかといったことは、それを発案する部署がないことが多い。このようなガバナンス系の議題については、事務局が自ら発案する権限を持つと、ガバナンス系の議題については、事務局が自ら発案する権限を持つと、ガバナンスの機能が円滑に発揮できることになります。

このようにたんなる情報収集のお手伝いでなく、あるべきガバナンスへの強力な知のプラットフォームとなることは考えられます(望ましいともいえる)。

そのほか、庶務的な事項、例えばスケジュール調整や交通・宿泊の手配、会議電話等の手配、通訳の手配、議事録案の作成などがあります。

ウ)取締役会以外の場の支援としては、社外取締役と監査役、会計監査人、内部監査部門等の連係や、CEOとの面談の補佐があります。その日程調整やアジェンダの設定、資料の調整などです。

B取締役・監査役への支援の制度設計

このような取締役・監査役への支援を実際に行う部署のあり方について、社外取締役や社内役職員から信頼を得なければならないと言えます。そのため、次のような点が求められると考えられます。

A)部署のメンバーの人事に関して、社外取締役等が一定の関与をするということ。例えば人事異動や評価などにおいてです。これは内部統制における監査役スタッフが参考になると考えられます。

B)指揮命令系統について、経営者側、つまり代表取締役の指揮命令下に置くより、取締役会直属まとは社外取締役の下におけば、独立性が制度的に保障されます。

C)メンバーの秘密保持義務や秘密情報の管理体制、忠実義務のあり方などについて規程で明確化する。

D)社内の理解を高める必要性を踏まえて権限を規程で明確化する。

E)活動のための予算をしっかり付与する。

実際のところ、この担当部署としては、多くの企業で採用されている取締役会事務局、たいていは総務部などがその業務の一部として兼任しているところが少なくないと考えられます。しかし、上記の点を踏まえると、たんなる事務局ではなく、ガバナンスに関する統合部署とすることが望ましのではないか。実際のところ、規模の大きなかいしゃでなければ、その実現は難しいと考えられますが、総務部などの一部に事務局を置いているような場合でも、以下の具体的な事項を実質的に反映されることもできるのではないかと思います。

T)役割を明確化し、規程に明記する。

U)所管業務として、取締役会・社外取締役関係だけでなく、諸委員会やカバナンスにかかわる業務を所管する。例えば、指名・報酬委員会のサポートをすることとなると、人事、総務、法務、企画あるいはIRの権限を一部移管することになる。

V)指揮命令系統の設定について、執行側の指揮命令下に置くのではなく、取締役会の直属とする。そうなると、この部署のトップはガバナンス担当の役員などが考えられる。

W)独立性の確保できるスタッフ人事のあり方を考える。

なお、この部署の設置の手続きは、経営者側ですべてをしてしまうのではなく、取締役会や社外取締役も関与させることを考える。というのも、これは取締役会の支援体制であるので、その主役である取締役会が自ら設計すべきことであるといえるからです。

 

〔内部監査部門との連携について〕

2019年6月、経済産業省は「グルー・ガバナンス・システムに関する実務指針」を公表しました。その中で、内部監査部門について、監査役等との関係を強化し、経営者の監督という観点でコーポレートガバナンス上の機能を強化しようという意図の踏み込んだ記述がなされています。具体的には次のように整理されています。

 

 

 

 

 

 

 


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