補充原則4−3.@
 

 

 【補充原則4−3.@】

取締役会は、経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明度の高い手続に従い、適切に実行すべきである。

 

〔形式的説明〕

この補充原則は原則4−3.の「適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を適切に反映」すること、の具体的な展開ということになると思います。取締役会による経営陣・取締役に対する「監督」として重要なことは、会社の業績等の評価と選任・解任権限等の人事権の行使を適切に行なうことです。特に、取締役会には、経営戦略や経営計画等を踏まえて会社の業績等を適切に評価し、当該評価に基づき現職の経営陣に経営を委ねるべきか否かを適切に判断することが期待されています。ここでは、経営陣幹部の選任の適切性をいかに確保するかに加え、真に必要な場合には、業績等の評価を踏まえて適切に「解任」することも取締役会が果たさなければならない主要な役割・責務であるため、この補充原則では、この点を確認する趣旨で「経営陣幹部の選任や解任」と書かれています。

つまり、取締役会が実効性の高い監督ができるということは、低い評価の経営陣幹部を解任し、それに代わる幹部を新たに選任することができるということなのです。形式的には、取締役会は取締役候補を指名する権限を有しており、取締役の解任は株主総会の権限ですが、辞任を求めることはできます。ここでは、それを前提にした上で、「公正かつ透明度の高い手続きに従い」と原則に書かれているように、解任の場合には、公正かつ透明であるためには、あらかじめ何らかの基準が公表されていることが最も典型的なものと考えられます。その前提には「会社の業績等の評価」があると書かれているので、基準にはその評価が反映していなければなりません。それがあって、はじめて適切に実行できることになります。つまり、会社の業績等と書かれていますが、何を評価の対象とするのか、そして、その評価のどの程度のところで解任を検討するのか、その基準を決めてあれば、コンプライということになると言えます。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

役員の選任については、原則3−1.の開示すべき事項の中で役員の選任に関する方針と手続きがあげられており、補充原則4−11.@において取締役会の活性化のために多様な人材を登用するため選任の方針に反映されることが挙げられています。この補充原則では、それらの方針との関連を考える必要があります。

それを、大きな視点から見下ろしていくと、基本原則4.において、取締役会は会社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を促していく義務を負っています。そのためには、会社の向かうべき方向を経営理念や経営計画として示し、それを企業の経営陣が具体化し実行する際に、適切なリスク管理などでたすけ、実績に対して公正な評価を施すことで、チェックと動機付けをしていくということで、その最後のところが、この補充原則で求められているところで、ここでの評価は、持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するものでなければなりません。その内容は、実際には基準が定められるはずですが、その基準は経営理念や経営計画に沿ったものでなければなりません。

 

〔Explainの開示事例〕

住友商事

取締役会の諮問機関として、半数以上が社外委員で構成される報酬委員会を設置しています。報酬委員会は、必要に応じ開催され、取締役及び執行役員の報酬・賞与に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申しています。

2015年度をもって上記報酬委員会を発展的に解消し、2016年度からは新たに、取締役会の諮問機関として、過半数が社外取締役で構成される指名・報酬委員会を設置することを予定しています。指名・報酬委員会においては、取締役・執行役員及び監査役の選任、指名等に関する検討、並びに取締役・執行役員の報酬体系等に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申することを予定しています。 

 


関連するコード        *       

基本原則1.

基本原則2.

基本原則3.

基本原則4.

原則4−11.

補充原則4−11.A

補充原則4−11.B

基本原則5.

 
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