原則4−10.
【任意の仕組みの活用
 

 

 【原則4−10.任意の仕組みの活用】

上場会社は、会社法が定める機関設計のうちの会社の特性に応じて最も適切な形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機構のそらなる充実を図るべきである

 

 【補充原則4−10.@】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

 

 

〔形式的説明〕

この補充原則は、原則4−10の会社の機関設計の中でも、とくにし取締役の指名・報酬等の重要な事項を検討する際に独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきとしている。しかも、監査役設置会社や監査等委員会設置会社で、独立社外取締役が取締役の過半数に達していないという、独立社外取締役が、このような事項に関して関与を推進することが明確に制度化されていない会社に対象を絞っています。

取締役会による取締役候補者の指名や各取締役の報酬の決定というものは、企業統治の根幹を成すものであり、会社と取締役との間で利益相反を起こす可能性の高い事項です。したがって、これらの事項について独立社外取締役の適切な関与・助言を求めることを目的としています。

とくに監査役設置会社や監査等委員会設置会社で、独立社外取締役が取締役の過半数に達していない場合には、取締役会の機能の独立性・客観性に関して、株主や投資家の納得を得にくくなってくるのです。そこで、独立社外取締役の関与・提言を得るために何らかの工夫が求められるのであり、その例示として任意の諮問委員会の設置を、この補助原則では挙げています。実務上、監査役会設置会社においても、独立社外取締役を構成員とする(あるいは主要な構成員とする)任意の諮問委員会を設置し、そこから意見を得ることにより、独立社外取締役の関与を強めている例は少なくあのません。したがって、この補充原則は、こうした実務がこれまで以上に取締役会の独立性及び客観性の強化に寄与する仕組みとなり、その定着が図られていくことを期待するものです。しかし、このような任意の指名委員会は、あくまでも例示であり、別の方法で独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることができるのであれば、必ずしも任意の委員会の設置を義務付けるわけではありません。別の方法として、例えば、指名・報酬について取締役会の審議に先立って、原案を作成した取締役社長が独立社外取締役に対して事前説明を実施したり、あるいは、独立社外取締役と経営陣幹部・取締役新任候補者との事前の面談機会を確保するなどして、独立社外取締役と十分な意見交換を実施するなどのことが考えられます。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

外国人投資家は取締役会をモニタリング・モデルで見てしまいます。しかし、日本企業の取締役会は業務執行を行う取締役が中心となって取締役会で討議や決議がされています。このような日本独自機関設計の強みを生かしながら、その弱点を補い実効性のあるものとして、コーポレートガバナンス・コードを見ることも可能で、この原則4−10を、そのような視点で見ることも可能です。とくに補充原則では、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社といったモニタリング・モデルではないタイプの経営体制工夫を提案しています。原則に対して、コンプライかエクスプレインかの判断については、形式的説明に譲るとして、ここでは、この機会に、この原則を生かして仕組みを検討しようという場合を考えてみましょう。

任意の委員会設置するとして、次の形態が考えられます。

・氏名委員会と報酬委員会の二つの諮問委員会を設置

・氏名と報酬の両方を扱う諮問委員会(例えば、ガバナンス委員会、氏名・報酬委員会)を設置

・監査等委員会設置会社の監査等委員会で報酬と氏名の両方を扱う

・監査等委員会設置会社で監査等委員会とは別に氏名と報酬の委員会をまとめて、または別々に設置

どのパターンにするかは、社外取締役の状況、役員や経営陣の選任や報酬決定の手続の整備状況の両方によって企業により事情が異なるでしょう。それに応じたものを選択すればいいわけです。また、氏名と報酬の両方とも委員会にするのではなく、どちから一方のみをまず、委員会にする方法もあります。

この際メンバー構成を考える際の検討事項として

・社外取締役を最大限活用する

・社内の取締役を必要以上にメンバーに入れない

・経営トップをメンバーに入れるか否か、入れる場合は自身の指名や報酬についての議論には参加させない

・監査役をメンバーにした場合、監査業務との兼ね合いも考慮する

また、役員報酬の業績連動報酬の計算方法や固定報酬の報酬枠の検討や社長の後継者の選定などの重要な検討事項の場合は、この委員会のメンバーを中心に特別検討チームを編成することも考えられます。

 

 

〔Explainの開示事例〕

本多通信工業

独立社外取締役が複数となった時点で、取締役の指名および報酬等の重要事項を検討する諮問委員会の設置を検討します。

独立社外取締役1名の段階では、取締役の指名および報酬等の重要事項に対して、独立社外取締役の助言を得ることとします。

 

デンソー

取締役の選任・報酬の検討にあたり、現在は独立社外取締役の関与・助言を得ていませんが、2016年度以降は、より透明性を確保できるよう、独立社外取締役を含めた諮問機関を設置し、適切な関与・助言を得ることを検討中です。

 

住友商事

取締役会の諮問機関として、半数以上が社外委員で構成される報酬委員会を設置しています。報酬委員会は、必要に応じ開催され、取締役及び執行役員の報酬・賞与に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申しています。

2015年度をもって上記報酬委員会を発展的に解消し、2016年度からは新たに、取締役会の諮問機関として、過半数が社外取締役で構成される指名・報酬委員会を設置することを予定しています。指名・報酬委員会においては、取締役・執行役員及び監査役の選任、指名等に関する検討、並びに取締役・執行役員の報酬体系等に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申することを予定しています。。

 

〔コーポレートガバナンス・コード実施1年後の現状と委員会プラン〕

@任意の指名・報酬委員会の現状(2016年)

本原則では、指名・報酬等の検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るための手法として任意の指名・報酬委員会の設置を例示しています。しかし、その具体的な内容には触れていません。

2016年5月でコーポレートガバナンス・コードが開始されて1年になりますが、この時点で、東証に上場している企業約3,500社のうちおよそ16%にあたる企業が法定または任意の委員会を設置しているという統計結果がでています。それらについて、少し内容を見ていきたいと思います。

(1)規模・構成

任意の指名・報酬委員会の規模については3〜5名程度の規模が、委員会を設置している企業の8割にのぼります。これは、議論の充実を図る観点から、構成員の人数を絞り込もうという考え方に基づき、また、実際上、社外役員を委員とすると、その程度の規模でないと運営が難しいという事情もあると考えられます。

また、委員の構成を見てみると社外取締役が過半数を占める企業が全体の43%に及び、社外取締役を委員長とする企業は40%を占めています。

(2)組織上の位置付け

任意の指名・報酬委員会の組織賞の位置づけについては、大多数の企業が取締役会に対する諮問機関として位置づけています。

(3)審議事項

大半の企業で、任意の指名委員会は取締役の選任議案を審議の対象とし、任意の報酬委員会は取締役の報酬の配分を審議の対象としています。

このほか、審議事項とされたものを列挙していくと、監査役の選任係る方針、独立社外役員に係る独立性判断基準、代表取締役の後継者育成計画、執行役員及び主要子会社の役員等の選任、取締役等の業績評価や取締役会の実効性評価など

(4)権限・役割

任意の指名・報酬委員会が取締役会から諮問を受け、検討結果を取締役会に対して答申する企業が大半を占めています。この他には、委員会は取締役会に勧告するという例や、取締役会が委員会の決定を尊重すると明示した例もあります。また、報酬について任意の報酬委員会が取締役会から報酬の配分について一任を受けて決定権限を有するケースもあります。

(5)運営手続・運営状況

運営手続や状況を開示している企業は少数です。

A任意の指名・報酬委員会のプラン

コーポレートガバナンス・コードの趣旨や上記の現状を踏まえて、任意の指名・報酬委員会を設置するためにたたき台として使われるためのモデル・プランを以下で考えてみました。

(1)設置の目的

@取締役会の監督機能の強化

非業務執行取締役(社外取締役)の活用、独立非業務執行取締役の助言、関与による監督機能の強化。

A取締役会の効率性

取締役会における審議事項を任意の委員会に委任し、取締役会での審議の効率化を図る。

(2)機能

取締役会からの諮問を受けて、取締役選任議案の内容(取締役候補者)の原案を策定し、取締役会に答申し、株主総会で決議された取締役の報酬額の範囲内で各取締役に報酬を配分する、ただし、取締役の個別の報酬額の決定権限はあくまで取締役会にある。

※この機能の内容については委員会独自で原案作成から代表取締役より示された原案の検討承認まで、様々な範囲が考えられる。

※取締役の指名と報酬はコーポレートガバナンスにおける最重要課題であることから、コーポレートガバナンス委員会として、これらを統一的に扱うことも考えられる。

(3)運営

@委員会の構成

委員会の構成については、社外取締役が中心になるのが適当で、委員の過半数を社外取締役とする、あるいは非業務執行取締役を過半数とする。また、各委員の選定は取締役会で決議することが望ましい。なお、代表取締役の一存でメンバーを決定することは避けたい。

A審議事項

指名に関して

@)以下の方針についての答申内容を決定する

・取締役候補者選定の方針

・取締役候補者選定の基準

・後継者の計画

A)以下の具体的内容についての答申内容を決定する

・取締役選任議案の内容

現任者の適格性

新任取締役

・役付取締役候補者

B)その他取締役の選任・解任に係る。取締役会に対する提案、提言、助言

報酬に関して

@)以下の方針についての答申内容を決定する

・取締役の報酬等の方針

・取締役の報酬基準

A)以下の個別具体的事項についての答申内容を決定する

・取締役の個人別報酬の額

・業績連動報酬の場合、各業務執行取締役の業績査定

B開催時期

株主総会参考書類への議案の記載の便宜を勘案すると、4月下旬から5月上旬の頃までに決定することが望ましい。そのために、それ以前に委員会を開催し答申原案を取締役会に通知できることが必要。

 


関連するコード        *       

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