原則4−10.
【任意の仕組みの活用
 

 2018年の改訂されたコードからまず見ていき、改訂前の原コードについての説明は、その下に続けます。 

 【補充原則4−10.@】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会などの、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

参考として、比較のために改訂前の原則を下に示しておきます

 【補充原則4−10.@】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会などの、独立した諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

 

〔変更された点〕

例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会などの、独立した諮問委員会を設置することなどにより、

この原則についての改訂で大きく変わったのは、上記の冒頭の「例えば」の語と末尾の「など」の語を削除したことです。この変更によって、これまでは、任意の諮問委員会を設置するということは、「経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため」に「独立社外取締役の適切な関与・助言を得る」ということの例でした。つまり、この補充原則で求められていたのは、独立社外取締役の適切な関与と助言を受けることでした。そのための手段の例として任意の諮問委員会を設ける方法を紹介していたというわけです。従って、企業は諮問委員会を設置していなくても、独立社外取締役の関与・助言を受けていればよかったのです。しかし、今回の変更によって、諮問委員会の設置ということは例示ではなくなりました。それに替わって、諮問委員会の設置ということは原則になりました。つまり、委員会を設置すること自体を原則が求めることになりました。それゆえ、この原則の内容は、任意の諮問委員会を設置して、そこで独立社外取締役の関与と助言を受けなければならない、という内容にかわったというわけです。したがって、委員会を設置していなければコンプライにはなりません。金融庁が、コーポレートガバナンス・コード改訂案に寄せられたパブコメへの回答の中で、次のように述べています。“フォローアップ会議の議論において、CEOをはじめとする経営陣幹部や取締役の指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たっては、独立性・客観性ある手続を確立することが重要とま指摘があり、そうした指摘を踏まえ、補充原則4−10@においては、監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、指名委員会・報酬委員会などの独立した諮問委員会を設置することを求めることとしたものです。”

また、もうひとつの原則の文言の変更として、「指名委員会・報酬委員会などの、独立した」という文言の挿入もされています。この前半の「指名委員会・報酬委員会などの、」については設置すべき諮問委員会についての例示と考えてよいと思います。それは「などの」という言葉が添えられているからで、指名委員会・報酬委員会を設置することを求めるのであれば、直接そう言えばいいのですが、そうではなくて「などの」という言葉がついているので、その前にある「任意の」という語と相俟って、「指名委員会・報酬委員会のような」委員会を求めるという意味合いになっています。これに対して後半の「独立した」というのは、設置すべき委員会が備えていなければならない条件です。これは、金融庁のパブコメに対する回答の中でも述べられています。“補充原則4−10@の「任意の」とは、会社法上設置が要求されるものではない諮問委員会であることを明確にする趣旨であり、補充原則4−10@を「コンプライ」する上では、コードが求める独立した諮問委員会を設置することが必要になります。”

それでは、改訂された原則の内容全体を確認しましょう。まず、この原則の対象外となるのは、上場会社で監査役会設置会社あるいは監査等委員会設置会社で取締役会の中で独立社外取締役が過半数以上の会社と指名委員会等設置会社です。この補充原則はこれら以外の上場会社に対して求めをしています。そして、補充原則の求めている内容です。求めているのは次の2点です。

1)任意の諮問委員会を設置すること

2)諮問委員会において、独立社外取締役の適切な関与・助言を得ること

ただし、その諮問委員会の条件として次の点が求められます。

1)取締役会の下に設置すること。→取締役会の諮問委員会であるということ

2)独立社外取締役を主要な構成員とすること

3)独立した委員会であること→取締役会以外のどの組織の下にもならないこと、取締役会の下にあっても取締役会の諮問内容の検討については取締役会の指示などはうけないこと

〔実務上の対策と個人的見解〕

この補充原則の趣旨は経営幹部や取締役の指名や報酬の決め方の面から経営陣が果断な経営をして企業を成長させるようにすることです。そのために指名や報酬の決定手続に客観性・透明性が求められ、その際に独立社外取締役を活用することを求めているわけです。従って、形式的に新委員会を設置していればよいというものではないでしょう。金融庁は、パブコメに対する回答の中で次のように述べています。“補充原則4−10@は指名・報酬など特に重要な事項の検討に際して、実効的に独立社外取締役の関与・助言を得ることを求めるものであり、形式的に諮問委員会を設置することのみでは、補充原則4−10@への対応としては不十分と考えられます。改訂の趣旨を踏まえ、こうした事項の検討に際して、実効的に独立社外取締役の関与・助言が得られるよう、それぞれの諮問委員会の具体的な役割を明確化するなど、個々の上場会社において工夫がなされることが重要と考えられます。また、こうした点については、対話ガイドライン3−2及び3−5の趣旨を踏まえ、投資家と上場会社の間で建設的な対話が行なわれることが期待されます。”ちなみに対話ガイドラインを参考のために下に示しておきます。

3−2.客観性・適時性・透明性ある手続により、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOが選任されているか。こうした手続を実効的なものとするために、独立した指名委員会が活用されているか。

3.5.経営陣の報酬制度を、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた健全なインセンティブとして機能するよう設計し、適切に具体的な報酬額を決定するために、独立した報酬委員会が活用されているか。また、報酬制度や具体的な報酬の適切性が、分かりやすく説明されているか。

しかし、〔変更された点〕のところで検討しましたように、実際に東証の1部と2部の上場企業の6割が何らかの委員会を設置しているという実態をみると、ほとんどの上場企業は、この補充原則に対して実際には結果として改訂された内容に沿った対応をしていところが多いようです。そういう実態が分かっていて、敢えて改訂をしているということは、その実態では不十分という現状認識があるということです。金融庁の担当官が旬刊「商事法務」に改訂の解説を載せています(旬刊「商事法務」bQ171、P.10)が、そのなかで“補充原則4−10@は、指名・報酬などの特に重要な事項の検討に際して、実効的に独立社外取締役の関与・助言を得ることを求めるであり、形式的に諮問委員会を設置することのみでは、補充原則4−10@への対応としては不十分と考えられる。本改訂の趣旨を踏まえ、こうした事項の検討に際して、実効的に独立社外取締役の関与・助言が得られるよう、それぞれの諮問委員会の具体的な役割を明確化することなどが重要と考えられる。”としています。つまりこの補充原則をコンプライとするためには、単に諮問委員会を設置しましたでは不十分で、実質的に機能させないとだめだということで、その実質的に機能させるとは。独立社外取締役の関与・助言が得られることだということです。そのために具体的に何が必要かということについて、解説の中で次のように述べられています。“補充原則4−10@を「コンプライ」するためには、一つの委員会において同補充原則に示されている特に重要な事項の検討を行うことが可能であるのか、また、適当であるのかとの点について、適切に検討が行なわれるべきものと考えられる。また、これらの特に重要な事項の検討に際して、諮問委員会が実効的にその役割を果たすことができるよう、委員の構成や委員会の権限等についても適切に検討が行われるべきと考えられる。”としています。

では、実務としてどうするか、まずは任意の委員会の現況について次に簡単に紹介しておくので、それを見てもらって、それで簡単にまとめて見ましょう。

まず、任意の委員会を設置しないとなれば、そこでエクスプレインです。しかし、単に設置しただけでは不十分と解説されているので、どうするかということで。まず、単に設置しただけでなく、ちゃんと運営される、最低限、定期的に委員会が開かれて、そこで議論がされていなければなりません。つまり、形式的に名目上やったことにするではだめだということです。そのためには、委員会についてその内容、権限と責任、そこで何を決めるかといったことや、決めたことの効力はどのくらいなのか、といったことや、委員会の規模や構成、招集の手続や議事録といったことを明確に決めて規程化することは必要と思われます。それからは、解説が求めていることを、その規程の内容として、どこまで織り込むかを各企業で検討するということでしょう。ただし、下で示している各企業の現況をみると、委員会の規模と構成としては、独立社外取締役を少なくとも半数は構成員としなければならないとすると、全体として3〜5人程度の規模とすることになるのではないかと思います。委員長をどうするか。そして、社外取締役に対するフォロー体制として事務局スタッフなどということを明確化する。その辺りが枠組みとして最低限必要ではないでしょうか。ちなみに、当局の解説では、監査等委員会設置会社の場合に、監査等委員会に、その役割を持たすことについてわざわざ言及していて、それを否定していません。ニュアンスとしては積極的に勧めるのてはないが、それをすることは駄目だとはいえないという感じです。

なお、ですが、この補充原則は開示義務はありません。だから、そういうことを決めたとしても、それを開示するかどうかは企業の任意です。従って、形式的にコーポレートガバナンス報告書を出すだけでいいという会社であれば、そのことを考えると形式的な対処でも、当面凌ぐことはできる、ことになります。

〔任意の指名・報酬委員会の状況について〕

@規模

任意の指名・報酬委員会の規模については、図表1及び2のとおり、3〜5名とする場合が多いようです。これは議論の充実を図る観点から、構成員の人数を絞り込もうとする考え方に基づくと考えられます。また、委員の半数以上を社外取締役や社外監査役の社外者としようとすると、全体が3〜5名程度の規模とするのが運営しやすいからと考えられます。

A委員の属性

委員の属性については、図表3のとおり、社外取締役が最も高い割合を占めています。委員長については、図表4のとおり、社内取締役を委員長とする場合が最も多く、これに社外取締役を委員長とする場合が続くようです。

B委員会の組織上の位置付け

任意の指名・報酬委員会の組織上の位置づけを明示している企業の中では、取締役会に対する諮問機関としてこれを位置づける例が大多数のようです。他方で、数は限られてはいるものの、代表取締役に対する諮問機関としてこれを位置づける企業もあるようです。この場合、代表取締役が自らの裁量により任意の委員会の答申結果を取締役会に付議しないこととする余地が理論的には生じ得ます。そのため、委員会の判断が尊重されることを確保する観点からは、たとえば、委員会の答申結果を取締役会に付議しない場合には、代表取締役が取締役会でその理由を説明することとするなど、一定の制度・運用上の手当てを行うことが考えられるでしょう。

C委員会の審議事項

大半の企業の事例で、任意の指名委員会では取締役の選任議案を審議の対象とし、任意の報酬委員会では取締役の報酬の配分を審議の対象としています。このほか、以下のような事項を任意の指名・報酬委員会の審議の対象としている例があります。

任意の委員会の審議事項  

監査役の選任に係る方針

三菱商事、旭化成

独立社外役員に係る独立性判断基準 三井住友トラストホールディングス、京都銀行

代表取締役等の後継者計画

富士通、日本ガイシ

執行役員および主要な子会社の役員等の選任・報酬

MSAD インシュアランスグループホールディングス、J・フロントリテイリング

取締役等の業績評価

資生堂、サンゲツ

取締役会の実効性評価

三菱総合研究所、十六銀行

また、独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることを重視する観点からは、取締役の選任議案・報酬配分等に限らず、その前工程・後工程や、執行役員や子会社の役員等に係る選解任・報酬等をも、任意の指名・報酬委員会の審議対象とすることが、選択肢のひとつとなり得ると考えられます。

D委員会の権限・役割

任意の指名・報酬委員会が取締役から諮問を受け、検討結果を取締役会に対して答申することとする会社がほとんど大多数です。このほか、以下のとおり、任意の指名・報酬委員会が取締役会に対して自らの決定結果を「勧告」することとする例や、取締役会が委員会の決定を「尊重する」、「最大限尊重する」などの例もあります。

任意の委員会の権限・役割の明示例

 

「尊重」

アシックス

「十分に尊重」

パイオニア

「最大限尊重」

ブックオフコーポレーション

「勧告」

エイチ・ツー・オーリテイリング

任意の委員会の設置及び決定が取締役会で尊重されるべき旨を自社定款で規定

第一生命保険

さらには、任意の報酬委員会が取締役会から報酬の配分について一任を受け、その決定権限を有するとしている企業もあります(カシオ計算機、古河電気工業など)。

取締役・監査役の選任議案については、会社法上、取締役会で最終的に審議・決議を行うこととされているため、こうした事項について、任意の委員会の意見が取締役会の決議において十分に尊重されることを事実上担保しておく観点からは、前述のように、「勧告」、「尊重」といった旨を明示することが望ましいといえるでしょう。

また、報酬の配分のうち金銭報酬については、判例の見解に従う限り取締役会から代表取締役への再一任決議が認められており、この考え方に基づくのであれば、任意の諮問委員会への一任も、少なくとも同委員会の全員が取締役である場合には認められることとなる。他方で、ストックオプションについては、取締役会で一定の事項を決議する必要があることに留意する必要があります。

このほか、数は限られているものの、代表取締役等が原案を策定し、任意の指名・報酬委員会は当該原案を審議することとするなど、任意の委員会の役割を原案の審査にとどめている企業もあます。このような場合には、任意の指名・報酬委員会が指名・報酬等について「関与・助言」する程度は相対的に狭くなるでしょう。

E委員会の運営

任意の指名・報酬委員会は委員の選解任や招集手続、議事録の保存義務などの運営について、会社法上の規律の対象とならないため、その運営の実態が外部からは把握し難いところがあります。このような点に関する外部からの潜在的な懸念を解消する観点からは、委員会の運営手続や運営状況をあわせて開示することが考えられます。なお、英国コーポレートガバナンス・コードおよびニューヨーク証券取引所の上場規則では、指名・報酬委員会の規約を開示すべきとされており、こうした例に倣うことも今後は検討の対象になり得ると思います。

〔任意の指名・報酬委員会と指名委員会等設置会社の法定の指名・報酬委員会を比べてみる〕

 

任意の委員会

指名委員会等設置会社における指名委員会・報酬委員会

位置づけ 

会社法上の機関ではなく、その性格は会社の自治による任意の機関

その性格、機能、構成等は各社の裁量に任されることになるが、通常指名委員会等設置会社における指名委員会・報酬委員会に準じた機能を持つものと設定することが想定されます。

具体的には、各委員会は諮問された事項について審議し、原案を策定してこれを取締役会に答申する。委員会が答申した原案を取締役会は付議し、審議の上、決議決定されることになる。ただし、原則として、取締役会は答申された原案に拘束されないことに留意する必要があります。

会社法上法定された機関

委員会の委員は、取締役の中から取締役会の決議で選定され、各委員会の選定された委員は当該委員会の職務の執行状況を取締役会に遅滞なく報告しなければならず、各委員会の委員でない取締役も、各委員会の議事録を閲覧・謄写する権限を有している(会社法413条2項、417条3項)ことから、委員会は取締役会の内部機関ないし下部機関と解されています。

指名委員会、報酬委員会は法定設置機関であり、各委員会の決定は取締役会でも覆せないとされています。

 
機能    
指名委員会  

会社法上、役員の候補者に係る取締役会の決定権が留保されている限り、当該候補者の原案の策定を任意の委員会の諮問事項とすることは認められていると考えられている。

株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する権限を有する(会社法404条1項)。

報酬委員会

指名委員会と同様諮問機関とし、取締役会からの諮問事項に答申する。また、取締役の個人別報酬等の額を決定することを特定の取締役に一任することができると解されている。そのため、少なくとも任意の報酬委員会の構成員全員が取締役である場合には、報酬委員会に報酬等の額の決定を一任することも可能と考えられる。

執行役・取締役・会計参与が受ける個人別の報酬額の内容を決定する権限を有する(会社法404条3項)。

構成員

コーポレートガバナンス・コードに基づく各委員会の設置の趣旨からすれば、社外取締役が中心となることが適当であると考えられ、委員の過半数が社外取締役か、少なくとも非業務執行取締役が過半数であるべきと考えられている。

各委員会は、それぞれ委員である取締役3名以上で組織され、委員は取締役会で選任される(会社法400条1項、2項)。また、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならないと規定されている(会社法400条3項)。

制度的担保

委員会の答申には法的拘束力はなく、会社としての機関決定はあくまでも取締役会の決議であり、各委員会の答申結果が最終結論になる制度的保証はない。取締役会においては、委員会の主たる構成員が少数派であることが多いことから、多数決による決議では答申が否定される可能性がある。

そのため、任意の委員会の答申結果が取締役会において一定程度の尊重が払われる仕組みを考える必要がある。

会社法により最終的な決定権限を有する(会社法404条3項、416条4項5号)。

 

 

 

 

原コードについての説明です。

 【原則4−10.任意の仕組みの活用】

上場会社は、会社法が定める機関設計のうちの会社の特性に応じて最も適切な形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機構のそらなる充実を図るべきである

 

 【補充原則4−10.@】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

 

 

〔形式的説明〕

この補充原則は、原則4−10の会社の機関設計の中でも、とくにし取締役の指名・報酬等の重要な事項を検討する際に独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきとしている。しかも、監査役設置会社や監査等委員会設置会社で、独立社外取締役が取締役の過半数に達していないという、独立社外取締役が、このような事項に関して関与を推進することが明確に制度化されていない会社に対象を絞っています。

取締役会による取締役候補者の指名や各取締役の報酬の決定というものは、企業統治の根幹を成すものであり、会社と取締役との間で利益相反を起こす可能性の高い事項です。したがって、これらの事項について独立社外取締役の適切な関与・助言を求めることを目的としています。

とくに監査役設置会社や監査等委員会設置会社で、独立社外取締役が取締役の過半数に達していない場合には、取締役会の機能の独立性・客観性に関して、株主や投資家の納得を得にくくなってくるのです。そこで、独立社外取締役の関与・提言を得るために何らかの工夫が求められるのであり、その例示として任意の諮問委員会の設置を、この補助原則では挙げています。実務上、監査役会設置会社においても、独立社外取締役を構成員とする(あるいは主要な構成員とする)任意の諮問委員会を設置し、そこから意見を得ることにより、独立社外取締役の関与を強めている例は少なくあのません。したがって、この補充原則は、こうした実務がこれまで以上に取締役会の独立性及び客観性の強化に寄与する仕組みとなり、その定着が図られていくことを期待するものです。しかし、このような任意の指名委員会は、あくまでも例示であり、別の方法で独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることができるのであれば、必ずしも任意の委員会の設置を義務付けるわけではありません。別の方法として、例えば、指名・報酬について取締役会の審議に先立って、原案を作成した取締役社長が独立社外取締役に対して事前説明を実施したり、あるいは、独立社外取締役と経営陣幹部・取締役新任候補者との事前の面談機会を確保するなどして、独立社外取締役と十分な意見交換を実施するなどのことが考えられます。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

外国人投資家は取締役会をモニタリング・モデルで見てしまいます。しかし、日本企業の取締役会は業務執行を行う取締役が中心となって取締役会で討議や決議がされています。このような日本独自機関設計の強みを生かしながら、その弱点を補い実効性のあるものとして、コーポレートガバナンス・コードを見ることも可能で、この原則4−10を、そのような視点で見ることも可能です。とくに補充原則では、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社といったモニタリング・モデルではないタイプの経営体制工夫を提案しています。原則に対して、コンプライかエクスプレインかの判断については、形式的説明に譲るとして、ここでは、この機会に、この原則を生かして仕組みを検討しようという場合を考えてみましょう。

任意の委員会設置するとして、次の形態が考えられます。

・氏名委員会と報酬委員会の二つの諮問委員会を設置

・氏名と報酬の両方を扱う諮問委員会(例えば、ガバナンス委員会、氏名・報酬委員会)を設置

・監査等委員会設置会社の監査等委員会で報酬と氏名の両方を扱う

・監査等委員会設置会社で監査等委員会とは別に氏名と報酬の委員会をまとめて、または別々に設置

どのパターンにするかは、社外取締役の状況、役員や経営陣の選任や報酬決定の手続の整備状況の両方によって企業により事情が異なるでしょう。それに応じたものを選択すればいいわけです。また、氏名と報酬の両方とも委員会にするのではなく、どちから一方のみをまず、委員会にする方法もあります。

この際メンバー構成を考える際の検討事項として

・社外取締役を最大限活用する

・社内の取締役を必要以上にメンバーに入れない

・経営トップをメンバーに入れるか否か、入れる場合は自身の指名や報酬についての議論には参加させない

・監査役をメンバーにした場合、監査業務との兼ね合いも考慮する

また、役員報酬の業績連動報酬の計算方法や固定報酬の報酬枠の検討や社長の後継者の選定などの重要な検討事項の場合は、この委員会のメンバーを中心に特別検討チームを編成することも考えられます。

 

 

〔Explainの開示事例〕

本多通信工業

独立社外取締役が複数となった時点で、取締役の指名および報酬等の重要事項を検討する諮問委員会の設置を検討します。

独立社外取締役1名の段階では、取締役の指名および報酬等の重要事項に対して、独立社外取締役の助言を得ることとします。

 

デンソー

取締役の選任・報酬の検討にあたり、現在は独立社外取締役の関与・助言を得ていませんが、2016年度以降は、より透明性を確保できるよう、独立社外取締役を含めた諮問機関を設置し、適切な関与・助言を得ることを検討中です。

 

住友商事

取締役会の諮問機関として、半数以上が社外委員で構成される報酬委員会を設置しています。報酬委員会は、必要に応じ開催され、取締役及び執行役員の報酬・賞与に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申しています。

2015年度をもって上記報酬委員会を発展的に解消し、2016年度からは新たに、取締役会の諮問機関として、過半数が社外取締役で構成される指名・報酬委員会を設置することを予定しています。指名・報酬委員会においては、取締役・執行役員及び監査役の選任、指名等に関する検討、並びに取締役・執行役員の報酬体系等に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申することを予定しています。。

 

〔コーポレートガバナンス・コード実施1年後の現状と委員会プラン〕

@任意の指名・報酬委員会の現状(2016年)

本原則では、指名・報酬等の検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るための手法として任意の指名・報酬委員会の設置を例示しています。しかし、その具体的な内容には触れていません。

2016年5月でコーポレートガバナンス・コードが開始されて1年になりますが、この時点で、東証に上場している企業約3,500社のうちおよそ16%にあたる企業が法定または任意の委員会を設置しているという統計結果がでています。それらについて、少し内容を見ていきたいと思います。

(1)規模・構成

任意の指名・報酬委員会の規模については3〜5名程度の規模が、委員会を設置している企業の8割にのぼります。これは、議論の充実を図る観点から、構成員の人数を絞り込もうという考え方に基づき、また、実際上、社外役員を委員とすると、その程度の規模でないと運営が難しいという事情もあると考えられます。

また、委員の構成を見てみると社外取締役が過半数を占める企業が全体の43%に及び、社外取締役を委員長とする企業は40%を占めています。

(2)組織上の位置付け

任意の指名・報酬委員会の組織賞の位置づけについては、大多数の企業が取締役会に対する諮問機関として位置づけています。

(3)審議事項

大半の企業で、任意の指名委員会は取締役の選任議案を審議の対象とし、任意の報酬委員会は取締役の報酬の配分を審議の対象としています。

このほか、審議事項とされたものを列挙していくと、監査役の選任係る方針、独立社外役員に係る独立性判断基準、代表取締役の後継者育成計画、執行役員及び主要子会社の役員等の選任、取締役等の業績評価や取締役会の実効性評価など

(4)権限・役割

任意の指名・報酬委員会が取締役会から諮問を受け、検討結果を取締役会に対して答申する企業が大半を占めています。この他には、委員会は取締役会に勧告するという例や、取締役会が委員会の決定を尊重すると明示した例もあります。また、報酬について任意の報酬委員会が取締役会から報酬の配分について一任を受けて決定権限を有するケースもあります。

(5)運営手続・運営状況

運営手続や状況を開示している企業は少数です。

A任意の指名・報酬委員会のプラン

コーポレートガバナンス・コードの趣旨や上記の現状を踏まえて、任意の指名・報酬委員会を設置するためにたたき台として使われるためのモデル・プランを以下で考えてみました。

(1)設置の目的

@取締役会の監督機能の強化

非業務執行取締役(社外取締役)の活用、独立非業務執行取締役の助言、関与による監督機能の強化。

A取締役会の効率性

取締役会における審議事項を任意の委員会に委任し、取締役会での審議の効率化を図る。

(2)機能

取締役会からの諮問を受けて、取締役選任議案の内容(取締役候補者)の原案を策定し、取締役会に答申し、株主総会で決議された取締役の報酬額の範囲内で各取締役に報酬を配分する、ただし、取締役の個別の報酬額の決定権限はあくまで取締役会にある。

※この機能の内容については委員会独自で原案作成から代表取締役より示された原案の検討承認まで、様々な範囲が考えられる。

※取締役の指名と報酬はコーポレートガバナンスにおける最重要課題であることから、コーポレートガバナンス委員会として、これらを統一的に扱うことも考えられる。

(3)運営

@委員会の構成

委員会の構成については、社外取締役が中心になるのが適当で、委員の過半数を社外取締役とする、あるいは非業務執行取締役を過半数とする。また、各委員の選定は取締役会で決議することが望ましい。なお、代表取締役の一存でメンバーを決定することは避けたい。

A審議事項

指名に関して

@)以下の方針についての答申内容を決定する

・取締役候補者選定の方針

・取締役候補者選定の基準

・後継者の計画

A)以下の具体的内容についての答申内容を決定する

・取締役選任議案の内容

現任者の適格性

新任取締役

・役付取締役候補者

B)その他取締役の選任・解任に係る。取締役会に対する提案、提言、助言

報酬に関して

@)以下の方針についての答申内容を決定する

・取締役の報酬等の方針

・取締役の報酬基準

A)以下の個別具体的事項についての答申内容を決定する

・取締役の個人別報酬の額

・業績連動報酬の場合、各業務執行取締役の業績査定

B開催時期

株主総会参考書類への議案の記載の便宜を勘案すると、4月下旬から5月上旬の頃までに決定することが望ましい。そのために、それ以前に委員会を開催し答申原案を取締役会に通知できることが必要。

 


関連するコード        *       

原則1−7.

基本原則2.

原則2−2.

補充原則2−2.@

基本原則3.

原則3−2.

補充原則3−2.@

補充原則3−2.A

基本原則4.

原則4−4

補充原則4−4.@

原則4−7.

補充原則4−8.@

補充原則4−8.A

原則4−9

原則4−13.

 

 
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