新任担当者のための会社法実務講座
第444条 連結計算書類
 

 

Ø 連結 計算書類(444条)

@会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類(当該会計監査人設置会社及びその子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を作成することができる。

A連結計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。

B事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。

C連結計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては、監査委員会)及び会計監査人の監査を受けなければならない。

D会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、前項の監査を受けた連結計算書類は、取締役会の承認を受けなければならない。

E会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前項の承認を受けた連結計算書類を提供しなければならない。

F次の各号に掲げる会計監査人設置会社においては、取締役は、当該各号に定める連結計算書類を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。この場合においては、当該各号に定める連結計算書類の内容及び第4項の監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。

一 取締役会設置会社である会計監査人設置会社 第5項の承認を受けた連結計算書類

二 前号に掲げるもの以外の会計監査人設置会社 第4項の監査を受けた連結計算書類

 

ü 連結計算書類

連結計算書類は、株式会社及びその子会社から成る企業集団の財産・損益状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの(444条1項)で、具体的には、連結貸借対象表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書から成ります(会社計算規則61条)。子会社を有する会計監査人設置会社であれば、連結計算書類を作成することができます(444条1項)。

なお、金融商品取引法上の連結財務諸表は、上記に加えて、連結注記表、連結キャッシュ・フロー計算書、連結附属明細書があります。かつ内容的にも、連結財務諸表の方がかなり詳しい内容となっています。

また、事業年度の末日において大会社であって。金融商品取引法上有価証券報告書を内閣総理大臣に退出しなければならない会社は、連結計算書類を作成しなければなりません(444条3項)。

ü 連結計算書類を作成できる会社、作成しなければならない会社(444条1項、3項)

連結計算書類を作成することができる会社は会計監査人設置会社に限られます。このように限定された趣旨は、会社法上の連結計算書類の情報としての有用性を高めるという観点からは、必ずしも会計の連結計算書類の情報としての有用性を高めるという観点からは、必ずしも会計の専門的知識と経験を十分に有しているとは限らない監査役または監査役会の監査のみを受けるのではなく、会計監査人の監査を受けることが適正な連結計算書類を作成させるという観点からと考えられます。つまり、会社単体の計算書類であればともかく、連結計算書類の監査を適切に行うためにはかなり高度な会計及び監査の専門的知識と経験が必要であると考えられるからです。

他方で、大会社のうち、金融商品取引法上、内閣総理大臣に有価証券報告書を提出する義務を負っている会社は連結計算書類を作成しなければなりません(444条3項)。大会社に限定されているのは、大会社は会計監査人を設置しなければならない一方で、企業集団の財産および損益の開示の必要性が高く、連結計算書類の作成を要求してもそのコスト負担が過重であるとはいえない会社に義務を課すという観点からであり、有価証券報告書提出会社に限定しているのは、そのような会社は、連結財務諸表を作成することを義務づけられており、連結財務諸表作成の体制が整っているため、会社法上の連結計算書類の作成が強制されことによる追加コスト負担が小さいと考えられたためです。

ü 連結計算書類の作成

連結計算書類は業務執行の一環として、取締役または執行役が作成します(374条1項)。

・電磁的記録

計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(436条3項)や臨時計算書類と同様に、連結計算書類も電磁的記録をもって作成することができるとされています。これはペーパーレス化を可能にするためです。ここで電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいい、会社法施行規則224条は、電磁的記録とは、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調整するファイルに情報をきろくしたものと定めています。

連結会計年度

各事業年度に係る連結計算書類の作成に係る期間(連結会計年度)は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日から、当該事業年度の末日までの期間とされています(会社計算規則62条)。すなわち、連結計算書類を作成する会社の事業年度と一致する連結会計年度を単位として連結計算書類を作成することが求められています。したがって、事業年度が1年であれば連結会計年度も1年ということになります。これは、連結計算書類は監査役、監査役会、監査等委員会または監査委員会オ世ぞ会計監査人の監査を受けるものとされ、また、定時株主総会の招集通知に際して提供されるため、連結計算書類を作成する会社の事業年度に対応して作成される必要があるからです。

・作成基準

会社計算規則では、連結貸借対照表は会社の連結会計年度に対応する期間に係る連結会社の貸借対照表の資産、負債及び純資産の金額を基礎として(会社計算規則65条)、連結損益計算書は会社の連結会計年度に対応する機関に係る連結会計の損益計算書の収益、費用、利益、損失の金額を基礎として(会社計算規則66条)、連結株主資本等変動計算書は会社の連結会計年度に対応する期間に係る連結会社の株主資本等を基礎として(会社計算規則67条)、それぞれ作成しなければならないと定めています。また、連結計算書類の作成にあたっては、連結子会社の資産及び負債の評価並びに連結子会社に対する投資とこれに対する当該連結子会社の資本との相殺消去その他必要とされる連結会社相互間の相殺消去をしなければならないとされ(会社計算規則68条)、原則として、非連結子会社及び関連会社に対する投資については、持分法により計算する価額をもって連結貸借対照表に計上する(会社計算規則69条)とされています。さらに、連結の範囲(会社計算規則63条)、事業年度に係る期間の異なる子会社がある場合の取り扱い(会社計算規則64条)などについて規定されています。

しかし、連結計算書類の具体的な作成基準については、必ずしも詳細な規定は設けられていません。したがって、計算関係書類の場合と同様に、一般に公正妥当と認められている企業会計の慣行に従う(431条)とする原則に従うことになります。

ü 連結計算書類の監査と承認

・連結計算書類の監査報告期限(444条4項)

連結計算書類については、会計監査人が事業年度の連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過したまでに監査報告の内容を通知しなければなりません(会社計算規則130条)。

会計監査人は一般に公正妥当と認められている監査の基準に従って会計監査人監査を行います。一般に公正妥当と認められる基準としては、企業会計審議会「監査基準」、日本公認会計士協会による実務指針などが含まれます。

監査役、監査等委員会、監査委員会は会計監査人から連結計算書類に関する会計監査報告を受領した日から1週間以内に監査報告の内容を通知しなければなりません。(会社計算規則132条1項1号)

監査役、監査役会、監査等委員会または監査委員会による監査については、とくに基準が存在しないため、連結計算書類が連結会計年度にの企業集団の財産及び損益の状況を全ての重要な点について適正に表示しているどうかについて意見を述べることができる程度の監査手続を踏めば足りると考えられます。そのためには、監査役等は、職務を行うために必要あるときは、子会社に対して事業の報告を求め。または子会社の調査をすることができます(381条3項405条2項)。

・連結計算書類の承認(444条5項)

取締役会設置会社においては、連結計算書類は、444条4項の監査を受けた後、取締役会の承認を受けなければなりません(444条5項)。これは、連結計算書類の作成は重要な業務執行の1つであり、この規定がなくても、362条4項の規定により、取締役会の承認を要するものと解されることになるのを、ここで確認的に規定したとも考えられます。とりわけ。連結配当規制適用会社では、連結貸借対照表上の数値によって分配可能額が変動し(会社計算規則158条)、連結貸借対照表が適正に作成されていない場合には、取締役等は分配可能額を超えてなされた剰余金の配当等に係る支払義務を負う可能性があることからも、取締役会における承認が必要であるのは当然ことと言えるでしょう。

また、連結計算書類については株主総会の承認が必要とされていないため、取締役会の承認の時点で連結計算書類が確定すると解されているため、そのためには、取締役会の承認よりも前の時点で会計監査人の会計監査及び監査役等の監査がなされていることが必要となります。つまり、会計監査報告、監査報告を踏まえて連結計算書類の承認を取締役会が行うのです。

※決算短信の開示

事業年度終了後、上場会社は金融商品取引所を通じて「決算短信」の形で報道期間等に対して決算発表を行いますが、それは、通常、計算書類などについてこの取締役会の承認があった段階で行われます。

ü 定時株主総会招集通知に際しての提供

・提供すべき書類

取締役会は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対して取締役会の承認を受けた連結計算書類を提供しなければなりません(444条1項)。計算書類に係る監査報告及び会計監査報告と異なり、連結計算書類に係る監査報告及び会計監査報告を株主総会の招集通知にの際に提供することは求められていません。これは論理的には、連結計算書類の作成日は計算書類の作成日以降になり、したがって、連結計算書類の監査期間として計算書類の監査期間と同じ程度の期間を確保しようとすると、株主総会の日の2週間前までに発しなければならない招集通知に際して、連結計算書類に係る会計監査報告及び監査報告を提供するのに無理があるからです。

しかし、会社が任意に連結計算書類に係る会計監査報告及び監査報告を株主総会の招集通知の際に株主に提供することは禁止されていないので、連結決算等の日程を早期に終わらせて、実際に株主に提供している会社も少なくないです。

・過年度事項の提供

連結計算書類を提供する際には、当該連結会計年度より前の連結会計年度に係る連結計算書類に表示すべき事項(過年度事項)を併せて提供することができます。この場合に、連結計算書類の提供をする時における過年度事項が会計方針の変更その他正当な理由により当該連結会計年度より前の連結会計年度に相当する事業年度に係る定時株主総会において報告したものと異なっている場合、修正後の過年度事項を提供することができます(会社計算規則134条2項)。過年度事項を併せて提供することは、株主にとっては情報提供を受けることになるのだから、やっていけないことではないわけです。そして、このような情報提供との関連では、過年度事項の修正に関する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行が存在しないことは、提供の障害とはならないでしょう。

ü 定時株主総会への提出または提供

取締役は、取締役会の承認を受けた連結計算書類を、定時株主総会に提出し、株主総会において、その内容を報告し、かつ、監査役及び会計監査人の監査の結果を報告しなければなりません(444条7項)。連結計算書類精度は、基本的に情報提供、企業内容開示のための制度であり、連結配当規則適用会社を除き、分配可能額の算出とは直接結びついていないからです。

ü 連結計算書類の備置き・株主への送付

取締役会設置会社は、定時株主総会の招集通知に際して連結計算書類を株主に提供することが要求されており(444条6項)、取締役会設置会社以外の会社でも、定時株主総会に連結計算書類を提出します(444条7項)。しかし、連結計算書類の備置き・閲覧・謄写については規定が設けられていません。また、連結計算書類に係る会計監査報告及び監査報告を招集通知の際に提供することも要求されていません。連結計算書類の備置き・閲覧・謄写についての規定が設けられなかったのは、有価証券報告書提出会社のみ連結計算書類の作成が義務付けられているからです。なお、有価証券報告書は金融商品取引法に基づいて公衆の縦覧に供されています。

ü 連結計算書類の虚偽記載と責任

故意または過失により、連結計算書類に記載し、または記録すべき重要な事項について、虚偽の記載または記録するは取締役または執行役の任務懈怠に当たるので、それによて会社に損害が生じたときには、その取締役・執行役は会社に対して損害賠償責任を負います(423条)。他方、計算書類等の場合とは異なり、429条2項の適用がなく、第三者に対しては、民法上の不法行為の要件を満たさない限り損害賠償責任を負うことはありません。なお、連結計算書類に虚偽記載をしたことに対する過料の制裁は定められていません。

 

Ø 関連する会社計算規則

² 連結計算書類(会社計算規則61条)

法第444条第1項に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるいずれかのものとする。

1 この編(第120条から第120条の3までを除く。)の規定に従い作成される次のイからニまでに掲げるもの

イ 連結貸借対照表

ロ 連結損益計算書

ハ 連結株主資本等変動計算書

ニ 連結注記表

2 第120条の規定に従い作成されるもの

3 第120条の2の規定に従い作成されるもの

4 第120条の3の規定に従い作成されるもの

 

・連結計算書類の意義

連結計算書類は、支配従属関係にある2つ以上の会社から成る企業集団を単一の組織とみなして、連結計算書類を作成する会社(親会社)が企業集団の財産及び損益の状況を総合的に報告するために作成するものです。連結計算書類は連結貸借対照表、連結損益計算書、連結資本等変動計算書及び連結注記表の4つとされています。

・連結計算書類の種類─指定国際会計基準に従って連結計算書類を作成する以外の会社(会社計算規則61条1号)

連結貸借対照表は一定の時点(連結会計年度の末日)における連結計算書類を作成する会社およびその子会社から成る企業集団の財政状態を明らかにする一覧表であり、連結損益計算書は一定の期間(連結会計年度)に連結計算書類を作成する会社及び子会社から成る企業集団が獲得した利益または被った損失を算定する過程を、収益と費用を示して、計算表示する計算書をいいます。連結資本等変動計算書は、連結貸借対照表の純資産の部の1事業年度における変動額のうち、主として、親会社株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するための計算書を言います。連結注記表は、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結資本等変動計算書により企業集団の財産または損益の状態を正確に判断するために必要な事項を表示した計算書を言います。

金融商品取引法では、連結財務諸表として、上記の4つの計算書のほかに連結キャッシャフロー計算書、連結包括利益計算書及び連結附属明細書の作成を要求していますが、会社法では求められていません。但し、会社が任意に作成して株主に提供することを妨げるものではありません。

・連結計算書類の種類─指定国際会計基準に従って連結計算書類を作成する会社(会社計算規則61条2号)

指定国際会計基準に従って連結計算書類を作成する会社は指定国際会計基準が定める種類の連結財務諸表が連結計算書類とされます。これは、金融商品取引法上の連結財務諸表を指定国威会計基準に従って作成しても、会社法上の連結計算書類を作成するにあたって、組み替えなければならないとすると、会社にとって大きな負担が生じることを考慮したためです。実際には、連結財政状態計算書、連結包括利益計算書、連結株主持分変動計算書、および重要な会計方針の概要ならびにその他の説明情報で構成される注記が最小限の連結計算書類ということになります。

 

² 連結会計年度(会社計算規則62条)

各事業年度に係る連結計算書類の作成に係る期間(以下この編において「連結会計年度」という。)は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。

 

連結会計年度はその事業年度の前の事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合には、会社成立の日)から事業年度の末日までの期間であり、連結会計年度は事業年度と一致することになります。したがって、事業年度が1年であれば連結会計年度も1年、事業年度が6か月であれば、連結会計年度も6か月ということになります。これは、連結計算書類は、監査役等及び会計監査人の監査を受けるものとされ、また、定時株主総会の招集通知に際して提供されるため、連結計算書類を作成する会社の事業年度に対応して作成される必要があるからです。

 

² 連結の範囲(会社計算規則63条)

@株式会社は、その全ての子会社を連結の範囲に含めなければならない。ただし、次のいずれかに該当する子会社は、連結の範囲に含めないものとする。

1 財務及び事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。)に対する支配が一時的であると認められる子会社

2 連結の範囲に含めることにより当該株式会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる子会社

A前項の規定により連結の範囲に含めるべき子会社のうち、その資産、売上高(役務収益を含む。以下同じ。)等からみて、連結の範囲から除いてもその企業集団の財産及び損益の状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものは、連結の範囲から除くことができる。

 

連結財務諸表規則第5条に対応して、連結の範囲を会社法の側でも規定する条文です。

・連結の範囲から除外すべき子会社(会社計算規則63条1項)

連結計算書類は、連結計算書類を作成する会社およびその子会社から成る企業集団の財産および損益の状態を示すものですから、すべての子会社を連結の範囲に含めるのが原則です。

しかし、会社計算規則63条1項では、2つの類型の子会社は連結の範囲に含めないものとしています。

. 財務及び事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。)に対する支配が一時的であると認められる子会社

ある連結会計年度の末日において、他の会社等の財務および事業の方針を決定する機関を支配できる状態にあっても、その状態が一時的である場合には、翌連結会計年度の末日には連結の範囲から外れるので、連結計算書類の期間比較可能性がない、つまり、連続性がないので前期比較して企業集団の成長を続けて見たい場合にはかえって邪魔になってしまう、そこでは連結計算書類を作成させる実益に乏しいということになります。

. 連結の範囲に含めることにより当該株式会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる子会社

連結の範囲に含めることにより会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがある子会社を含めることは、連結計算書類を作成させる目的に反するからです。しかし、具体的にどのような子会社が該当するかは解釈に委ねられています。

・連結の範囲から除外することが許される子会社(会社計算規則63条2項)

連結の範囲に含めるべき子会社のうち、その資産、売上高等からみて、連続の範囲から除いてもその企業集団の財産及び損益の状態に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものは、連結の範囲から除くことができるものとされています。これは、連結計算書類の作成にあたっては、単体の計算書類の作成に比べて大きな負担がかかるのみならず、連結子会社の経理・決算体制を整備する必要があるため、連結計算書類を作成すべき会社にとっての負担が重い一方、重要性の乏しい子会社を連結の範囲から除いても、利害関係人が企業集団の状態を認識し、意思決定することに支障はないと考えられるからです。

重要性が乏しいかどうかは、量的(比率)な観点と質的な観点から判断されることになります。

量的な観点について、条文では資産及び売上高が例示されていますが、連結計算書類の企業集団の資産や売上高の額に対するその子会社の額の比率、さらに当期純利益や利益剰余金についても同じように比率を計算し、その4つの比率の割合が、いずれも2〜3パーセントであれば量的重要性はないと判断するのが一般的です。

一方、質的な観点からは、親会社の中長期的な経営戦略上重要な子会社、企業集団の1つの業務部門(例えば製造)を実質的に担っている子会社、あるいは多額の含み損や発生の可能性の高い重要な偶発事象を有している子会社は連結の範囲から除外することはできません。

 

² 事業年度に係る期間の異なる子会社(会社計算規則64条)

@株式会社の事業年度の末日と異なる日をその事業年度の末日とする連結子会社は、当該株式会社の事業年度の末日において、連結計算書類の作成の基礎となる計算書類を作成するために必要とされる決算を行わなければならない。ただし、当該連結子会社の事業年度の末日と当該株式会社の事業年度の末日との差異が三箇月を超えない場合において、当該連結子会社の事業年度に係る計算書類を基礎として連結計算書類を作成するときは、この限りでない。

A前項ただし書の規定により連結計算書類を作成する場合には、連結子会社の事業年度の末日と当該株式会社の事業年度の末日が異なることから生ずる連結会社相互間の取引に係る会計記録の重要な不一致について、調整をしなければならない。

 

連結計算書類を作成する会社の事業年度の末日と異なる日をその事業年度の末日とする子会社がある場合の手続を定めたものです。これは、日本の会社は、ほとんどが3月末日を事業年度の末日としているのに対して、海外子会社の場合には、慣習の違いにより12月末を事業年度末とするケースが少なくないことから、こういった例は増えてきています。

原則として、その事業年度の末日が連結計算書類を作成する会社(親会社)の事業年度の末日と異なる連結子会社は、連結計算書類の作成の基礎となる計算書類を作成するために必要とされる決算を行なわなければならない(会社計算規則64条1項)。これは、連結貸借対照表は連結計算書類を作成する会社の事業年度の末日である連結会計年度の末日における企業集団の資産、負債および純資産の状態を、連結損益計算書は連結会計年度における企業集団の損益の状況を、連結株主資本等変動計算書は連結会見年度中の企業集団の純資産の変動を示すものです。それゆえ、企業集団の各会社は、それに合わせた決算をするのが原則です。しかし、企業集団の会社は、それぞれが独立の法人格を有した会社等であり、また、業種、地域(海外の場合は規制や慣習の違い)に応じて適切な事業年度の末日が異なることがありえます。ここでいう「決算」は、連結のための仮決算であり、当該子会社の監査役等や会計監査人の監査の対象となるものではなく、株主総会で承認を受けなければならないものではありません。

しかし、その子会社の事業年度の末日が連結会計年度の末日との差異が3ヶ月を超えない場合に、当該事業年度に係る計算書類基礎として連結計算書類を作成するときは、あえて連結会計年度において決算をしなくてもよい(会社計算規則64条1項但書)。これは、連結決算のための仮決算は、正規の決算と同程度の時間と費用をかけなければならず、そのような負担を回避することを、連結計算書類の有用性を著しく損わない限りで認めようとするものです。但し、この場合には、連結子会社の事業年度の末日と連結会計年度の末日が異なることから生じる連結会社相互間の取引に係る会計記録の不一致について調整をしなければなりません(会社計算規則64条2項)。これは、連結決算の手続きについて、連結会社間のさまざまな項目は相殺消去されます。その場合には、会計記録の不一致について調整を加えていくことが必要だからです。

 

² 連結貸借対照表(会社計算規則65条)

連結貸借対照表は、株式会社の連結会計年度に対応する期間に係る連結会社の貸借対照表(連結子会社が前条第一項本文の規定による決算を行う場合における当該連結子会社の貸借対照表については、当該決算に係る貸借対照表)の資産、負債及び純資産の金額を基礎として作成しなければならない。この場合においては、連結会社の貸借対照表に計上された資産、負債及び純資産の金額を連結貸借対照表の適切な項目に計上することができる。

 

連結貸借対照表は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成したそれぞれの会社の貸借対照表を基礎として作成しなければならない。これを個別財務諸表基準性の原則といいます。これは、各会社の単体の計算書類と連結計算書類との整合性を確保するという観点から重要なもので、計算書類が会計帳簿に基づいて作成される(会社計算規則59条)と同様に、検証可能性という観点からも重要なものです。

条文中の「基礎として作成しなければならない」というのは、連結の各会社の単体の貸借対照表の資産、負債及び資本の額を基礎資料として作成されますが、それぞれの単体の貸借対照表の資産、負債及び資本の額のそのまま単純合算されて連結貸借対照表の金額となるわけではなく、様々な連結手続を経て算出されることを意味しています。例えば、連結会社間の資本勘定と投資勘定との相殺消去、連結会社間の債権・債務の相殺消去、連結会社間の取引によって生じた資産に含まれる未実現利益の消去などが行われます。また、連結貸借対照表作成の基礎とされる連結会社の単体の貸借対照表の用語・様式と連結貸借対照表の用語・様式とが一致するとは限りません。勘定科目の振替や組替が行われたり、企業集団の観点から資産あるいは負債が整理される場合があります。例えば、建設業を営む子会社が連結計算書類を作成する会社から設備工事を請け負っている場合に、子会社の貸借対照表で未成工事支出金として計上されているものが、連結貸借対照表上は建設仮勘定以上に加えて、連結貸借対照表上は、個別の貸借対照表には現れない、のれんや少数株主持分が記載されることがあります。また、連結貸借対照表や連結株主資本等変動計算書上は、資本準備金とその他剰余金をまとめて資本剰余金として表示します。

また、「基礎として作成しなければならない」ということは、連結に当たって連結会社の単体の貸借対照表をまったく修正してはならないといういみではありません。まず、個別の貸借対照表が会社法・会社計算規則に違反して作成されている場合には、それを修正した上で連結を行うことになります。また、投資と資本との相殺消去、連結会社間の債権債務の相殺消去、未実現利益の消去のためには、単体の計算書類を修正しないと相殺消去が不可能です。さらに、連結計算書類を作成する会社及びその子会社の会計処理の原則や手続きに相違がある場合にそれを統一するための修正もありえます。

さらに「この場合においては、連結会社の貸借対照表に計上された資産、負債及び純資産の金額を連結貸借対照表の適切な項目に計上することができる」ものとしています。これは、例えば、貸借対照表においては資本準備金とその他資本剰余金とに分けて計上されているものを、連結貸借対照表では準備金の概念がないため、資本剰余金という1本の勘定科目で計上する必要があるからです。

そして、連結財務諸表会計基準17項は、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一する」と定めていて、これは、連結計算書類との関連でも一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行であると考えられます。同一の環境下にあるにもかかわらず、同一の性質の取引等について連結会社間で会計処理が異なっている場合には、その単体の計算書類を基礎とした連結計算書類が企業集団の財産及び損益状態の適切な表示を損なうことは否定できないからです。ただし、連結計算書類作成会社と各子会社は、それぞれの置かれた環境の下で経営活動を行っているため、連結会計において連結計算書類を作成する会社と各子会社の会計処理を画一的に統一することは、かえって連結計算書類が企業集団の財産及び損益の状態を適切に表示しなくなるということも考えられるため、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については、原則として、会計処理を統一することが求められると考えられます。

 

² 連結損益計算書(会社計算規則6条)

連結損益計算書は、株式会社の連結会計年度に対応する期間に係る連結会社の損益計算書(連結子会社が第64条第1項本文の規定による決算を行う場合における当該連結子会社の損益計算書については、当該決算に係る損益計算書)の収益若しくは費用又は利益若しくは損失の金額を基礎として作成しなければならない。この場合においては、連結会社の損益計算書に計上された収益若しくは費用又は利益若しくは損失の金額を連結損益計算書の適切な項目に計上することができる。

 

連結損益計算書は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成したそれぞれの会社の損益計算書を基礎として作成しなければならない。これを個別財務諸表基準性の原則といいます。これは、各会社の単体の計算書類と連結計算書類との整合性を確保するという観点から重要なもので、計算書類が会計帳簿に基づいて作成される(会社計算規則59条)と同様に、検証可能性という観点からも重要なものです。

 

² 連結株主資本等変動計算書(会社計算規則6条)

連結株主資本等変動計算書は、株式会社の連結会計年度に対応する期間に係る連結会社の株主資本等変動計算書(連結子会社が第64条第1項本文の規定による決算を行う場合における当該連結子会社の株主資本等変動計算書については、当該決算に係る株主資本等変動計算書)の株主資本等(株主資本その他の会社等の純資産をいう。以下この条において同じ。)を基礎として作成しなければならない。この場合においては、連結会社の株主資本等変動計算書に表示された株主資本等に係る額を連結株主資本等変動計算書の適切な項目に計上することができる。

 

連結株主資本等変動計算書は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成したそれぞれの会社の連結株主資本等変動計算書を基礎として作成しなければならない。これを個別財務諸表基準性の原則といいます。これは、各会社の単体の計算書類と連結計算書類との整合性を確保するという観点から重要なもので、計算書類が会計帳簿に基づいて作成される(会社計算規則59条)と同様に、検証可能性という観点からも重要なものです。

 

² 連結子会社の資産及び負債の評価等(会社計算規則6条)

連結計算書類の作成に当たっては、連結子会社の資産及び負債の評価並びに株式会社の連結子会社に対する投資とこれに対応する当該連結子会社の資本との相殺消去その他必要とされる連結会社相互間の項目の相殺消去をしなければならない。

 

この条文は、連結計算書類の作成に当たっての相殺消去について定めるもので、連結財務諸表規則9条に対応する規定です。

・資本連結

親会社の子会社に対する投資と、これに対応する子会社の資本を相殺消去し、消去差額が生じた場合は当該差額を連結調整勘定として計上するとともに、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を少数株主持分に振り替える一連の手続きを資本連結と言います。この手続きについては、企業会計基準委員会・企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」で定められており、連結計算書類との関連でも、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行と認められています。

ア)支配取得日における資本連結の手続

a)子会社の資産及び負債の評価

支配取得日なおける資本連結に当たって、子会社の資産及び負債は、すべて、支配獲得日の時価により評価されます(全面時価評価法)(連結財務諸表会計基準20項)。全面時価評価法は、親会社が子会社を支配した結果、子会社が企業集団に含まれることになったという事実を重視するものです。

なお、評価差額に重要性が乏しい子会社の資産及び負債は、個別貸借対照表上の金額によることができるとされています。また、実務上の便宜を図るという観点から、支配獲得日、株式の取得日または売却日等が子会社の事業年度の末日以外の日である場合には、当該日の前後いずれかの事業年度の末日に支配の獲得、株式の取得または売却が行われたものとして処理することができると考えられています。

b)投資と資本の相殺消去

親会社の投資と子会社の資本の相殺消去に当たって、親会社の子会社に対する投資(子会社株式、子会社出資金など)の金額は、支配獲得日の時価となります。支配獲得日に算定した子会社の資本のうち親会社に帰属する部分を投資と相殺消去し、支配獲得後に生じた子会社の利益準備金及び評価・換算差額等のうち親会社に帰属する部分は、利益剰余金及び評価・換算差額等として処理します。親会社の子会社に対する投資とこれに対する子会社の資本との相殺消去に当たり、差額が生じる場合は、その差額はのれんとなります。

イ)支配獲得後における資本連結の手続

a)子会社株式等を追加取得した場合の処理

子会社株式・子会社出資金を追加取得した場合には、子会社の資本に対する親会社の持分は増加し、少数株主持分は減少します。すなわち、追加取得日における少数株主持分の額に基づいて、追加取得した子会社株式・子会社出資金に対応する持分だけ少数株主持分から減額し、追加取得により増加した親会社の持分を算定し、追加取得分を追加投資額と相殺消去するとともに、これにより生じた差額は、のれんまたは負ののれんとして処理します。

b)子会社株式を一部売却した場合の処理

子会社株式を一部売却した場合であっても、親会社と子会社の支配関係が継続しているときには、子会社の資本に対する親会社の持分は減少し、少数株主持分が増加します。この場合には、売却した株式に対する持分を親会社の持分から減額し、少数株主持分を増額するとともに、売却による親会社の持分の減額と投資の減少額との間に生じた差額は、子会社株式の売却損益の修正として処理します。また、売却に伴うのれんの償却額についても、未償却分のうち売却した子会社株式に対応する額を子会社株式の売却損益修正として処理します。

・連結会社相互間の取引高の相殺消去

連結会社相互間の商品の売買その他の取引に係る項目は、相殺消去しなければなりません。なお、会社相互間取引が連結会社以外の会社を通じて行われている場合であっても、その取引が実質的に連結会社間の取引であることが明確であるときは、この取引を連結会社間の取引とみなして処理します。

・連結会社間の債権債務の相殺消去

連結会社相互間の債権と債務とは、相殺消去しなければなりません。相殺消去の対象となる債権または債務には、前払費用、未収収益、前受収益及び未払費用で連結会社相互間の取引に関するものを含みます。連結会社が振り出した手形を他の連結会社が銀行割引した場合には、連結貸借対照表上、借入金に振り替えます。引当金のうち、連結会社を対象として引き当てられことが明らかなものは調整します。連結会社が発行した社債で一時所有のものは、相殺消去の対象としないこともできます。

・未実現損益の消去

ア)少数株主が存在する子会社から親会社への売上取引に係る未実現損益の消去

原則として、未実現損益を全額消去し、親会社の持分と少数株主持分とにそれぞれの持ち分比率に応じて負担させます(全額消去・持分按分負担方式)。すなわち、連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は、その全額を消去し、売手側の子会社に少数株主が存在する場合には、未実現損益を、親会社と少数株主の持分比率に応じて重要性が乏しい場合には、消去しないこともできます。

イ)減価償却資産に含まれる未実現損益の消去に伴う減価償却費の修正計算

減価償却資産に含まれる未実現損益にの消去に伴う減価償却費は毎期修正します。

ウ)連結会社間で棚卸資産等を時価により売買することにより生ずる内部損失の消去

連結会社間で棚卸資産、固定資産その他の資産を時価により売買することにより生ずる内部損失のうち、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる未実現損失については、消去しません。

 

² 持分法の適用(会社計算規則69条)

@非連結子会社及び関連会社に対する投資については、持分法により計算する価額をもって連結貸借対照表に計上しなければならない。ただし、次のいずれかに該当する非連結子会社及び関連会社に対する投資については、持分法を適用しないものとする。

1 財務及び事業の方針の決定に対する影響が一時的であると認められる関連会社

2 持分法を適用することにより株式会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる非連結子会社及び関連会社

A前項の規定により持分法を適用すべき非連結子会社及び関連会社のうち、その損益等からみて、持分法の適用の対象から除いても連結計算書類に重要な影響を与えないものは、持分法の適用の対象から除くことができる。

 

この条文は、連結計算書類の作成に当たって持分法を適用すべき投資の範囲を定めるもので、連結財務諸表規則10条に対応する規定です。

・持分法

持分法とは、投資会社が、被投資会社の純資産及び損益のうち当該投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の金額を事業年度ごとに修正する方法です。

持分法の適用手続きは、@投資会社の投資日における投資とこれに対応する被投資会社の資本との相殺消去、A投資の日以降における被投資会社の利益または損失のうちに投資会社の持分または負担に見合う額の算定と投資の額の増額・減額並びに当該増減額の当期純利益への算入、B連結会社と持分法適用会社との間の取引に係る未実現損益の消去、C被投資会社から受け取った配当金に相当する額の投資の額からの減額、というように実施されます。持分法の適用に際しては、被投資会社の計算書類について、資産および負債の評価、税効果会計の適用等、原則として、連結子会社の場合と同様の処理を行いますが、重要性の乏しいものについては、これらの処理を行わないことができると考えられています。

持分法の適用に当たっては、投資会社は、被投資会社の直近の計算書類を使用します。投資会社と被投資会社の決算日に差異があり、その差異の期間内に重要な取引または事象が発生しているときには、必要な修正または注記を行います。

・持分法の適用対象(会社計算規則69条1項)

非連結子会社および関連会社に対する投資については、持分法により計算した価額をもって連結貸借対照表に計上しなければなりません。

ただし、非連結子会社および関連会社のうち、@財務及び事業の方針の決定に対する影響が一時的であると認められる関連会社、A持分法を適用することにより会社の株主の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる非連結子会社及び関連会社に対する投資については、持分法を適用しません。これは、連結の範囲に含めない子会社を定める会社計算規則63条と同じ趣旨です。

・持分法の対象から除くことができる会社等(会社計算規則69条2項)

持分法の適用に当たっては、大きな事務負担がかかるだけでなく、対象会社の経理・決算体制を整備する必要があるため、連結計算書類作成会社にとっての負担が重い一方、重要性が乏しい非連結子会社あるいは関連会社を持分法適用の対象から除いても、利害関係人は連結計算書類は会社及びその子会社から成る企業集団の財産及び損益の状態をその意思決定のために必要な程度まで正確に判断することができると予想されるからです。

重要性が乏しいかどうかの基準としては、損益等が例示されているが、当期純損益及び利益剰余について、会社の当該金額、連結の範囲に含められる子会社当該金額のうち会社の持分に見合う額の合計額及び持分法適用の非連結子会社・関連会社の当該金額のうち会社の持分に見合う額の合計額に持分法を適用しない非連結子会社・関連会社の当該金額のうち連結計算書類を作成する会社の持分に見合う額の合計額の占める割合を、それぞれ基準とするのが一般的です。

 

² 注記表の区分(会社計算規則98条)

@注記表は、次に掲げる項目に区分して表示しなければならない。

1 継続企業の前提に関する注記

2 重要な会計方針に係る事項(連結注記表にあっては、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項及び連結の範囲又は持分法の適用の範囲の変更)に関する注記

3 会計方針の変更に関する注記

4 表示方法の変更に関する注記

5 会計上の見積りの変更に関する注記

6 誤謬の訂正に関する注記

7 貸借対照表等に関する注記

8 損益計算書に関する注記

9 株主資本等変動計算書(連結注記表にあっては、連結株主資本等変動計算書)に関する注記

10 税効果会計に関する注記

11 リースにより使用する固定資産に関する注記

12 金融商品に関する注記

13 賃貸等不動産に関する注記

14 持分法損益等に関する注記

15 関連当事者との取引に関する注記

16 一株当たり情報に関する注記

17 重要な後発事象に関する注記

18 連結配当規制適用会社に関する注記

18の2 収益認識に関する注記

19 その他の注記

A次の各号に掲げる注記表には、当該各号に定める項目を表示することを要しない。

1 会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表 前項第1号、第5号、第7号、第8号及び第10号から第18号までに掲げる項目

2 会計監査人設置会社以外の公開会社の個別注記表 前項第1号、第5号、第14号及び第18号に掲げる項目

3 会計監査人設置会社であって、法第444条第3項に規定するもの以外の株式会社の個別注記表 前項第14号に掲げる項目

4 連結注記表 前項第8号、第10号、第11号、第14号、第15号及び第18号に掲げる項目

5 持分会社の個別注記表 前項第1号、第5号及び第7号から第18号までに掲げる項目

 

・注記表の区分(会社計算規則98条1項)

会社計算規則98条1項の条文は財務諸表等規則8条の2及び連結財務諸表規則13条に倣ったものですが、若干の省略があります。すなわち、有価証券に関する注記、デリバティブ取引に関する注記、退職給付に関する注記、企業結合あるいは事業分離等に関する注記は要求されていませんし、リース取引、税効果会計あるいは関連当事者との取引に関する注記として注記すべき内容も簡略化されています。なお、ストック・オプションに関する注記は事業報告に含められることになっています(会社法施行規則123条)。

これは、個別注記表や連結注記表を作成する会社は必ずしも有価証券報告書提出会社のように経理組織が充実しているとは限らないし、規模が小さく、大きな会計コストをかけることが合理的でない会社もあるということ、一部の開示項目は事業報告において開示されること、及び計算書類と連結計算書類の作成時期は有価証券報告書の作成時期より早めであること、これらの理由から、事務負担の問題などから簡略化されたものと考えられます。

・一定の会社の個別注記表に表示することを要しない項目及び連結注記表に表示することを要しない項目(会社計算規則98条2項)

会計監査人設置会社ではあるが、連結計算書類を作成する会社でない会社については、持分法損益等に関する注記は要求されません。これは、持分法損益に関する注記は、連結計算書類の作成義務があるにもかかわらず、重要な子会社が存在しないために連結計算書類を作成しない株式会社について、関連会社に対する投資について持分法を適用した損益等及び開示対象特別目的会社がある場合のその概要等を開示させることに意味があるからで、連結計算書類の作成を作成しない会社に持分法損益等に関する注記を要求すると、その負担が重くなり、連結計算書類の作成を義務付けないとしている会社法の趣旨にそぐわないと考えられるからです。

同じような趣旨で、会計監査人設置会社以外の公開会社の個別注記表には持分法損益などに関する注記を含めることは要求されていないほか、継続企業の前提に関する注記、会計上の見積りの変更に関する注記、連結配当規制適用会社に関する注記は要しないとされています。連結配当制度適用会社に関する表示を要しないとされているのは、会計監査人設置会社でなければ会社法上の連結計算書類を作成できない(444条1項)のですが、連結配当適用会社は連結計算書類を作成している会社でなければならないので、連結配当制度適用会社にはなり得ないからです。継続企業の前提に関する注記を要しないとされているのは、継続企業の前提に関する注記は会計監査人による監査との関連でとくに重要性があるもので、この注記は会計監査人の意見があってこそ有用性が確保されるからです。会計上の見積りの変更に関する注記を要しないのは会社の負担を考慮してのものと考えられます。

非公開会社で会計監査人を設置しない会社の個別注記表について、継続企業の前提に関する注記、会計上の見積りの変更に関する注記、貸借対照表等に関する注記、損益計算書に関する注記、税効果会計に関する注記、リースにより使用する固定資産に関する注記、金融商品に関する注記、賃貸等不動産に関する注記、持分法損益等に関する注記、関連当事者との取引に関する注記、一株当たり情報に関する注記、重要な後発事象に関する注記、連結配当規制適用会社に関する注記の表示は要求されません。これは、公開会社以外の会社であって会計監査人を設置していない会社については私的自治を広く認めることが適当であるし、個別注記表を作成するための負担が過重にならないようにする必要があるからです。また、公開会社以外の会社であれば、株主の数が少なく、株主が会計帳簿閲覧等請求権(433条)を有していることもあり得るからです。しかし、重要な会計方針に係る事項に関する注記、会計方針の変更に関する注記、表示方法の変更に関する注記、誤謬の訂正に関する注記は計算書類を的確に理解し、期間比較に当たって注意を喚起するために不可欠であるし、株主資本等変動計算書にかんする注記は、1年に何回でも剰余金の配当等を行えることを前提とする株主等にとって重要な情報であるし、その注記をすることの会社にとっての負担は軽いと考えられ、省略は認められていません。

同じ理由で、持分会社の個別注記表にも、重要な会計方針に係る事項に関する注記、会計方針の変更に関する注記、表示方法の変更に関する注記、誤謬の訂正に関する注記及びその他の注記を表示しなければならないことになっています。

連結注記表には、継続企業の前提に関する注記、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項及び連結の範囲または持分法の適用の範囲の変更に関する注記、会計方針の変更に関する注記、表示方法の変更に関する注記、会計上の見積りの変更に関する注記、誤謬の訂正に関する注記、連結貸借対照表に関する注記、連結株主資本等変動計算書に関する注記、金融商品に関する注記、賃貸等不動産に関する注記、1株当たり情報に関する注記、重要な後発事象に関する注記及びその他の注記を含めなければなりません。この中で、連結損益計算書に関する注記が要求されていないのは、関係会社との取引の相殺消去・未実現利益の消去や持分法の適用によってある程度連結損益計算書に反映されているからです。また、連結配当規制適用会社に関する注記は単体の計算書類レベルで意義を有するに過ぎないため、連結注記表に表示させるまでもないと考えられるからです。

なお、この条文で省略することが認められている事項であっても、場合によっては会社計算規則98条1項19号及び116条に基づいて注記をしなければならないこともありえます。

 

² 注記の方法(会社計算規則99条)

貸借対照表等、損益計算書等又は株主資本等変動計算書等の特定の項目に関連する注記については、その関連を明らかにしなければならない。

 

特定の項目に関連する注記は、その関連が明らかになるように記載することが要求されています。注記の多くは、貸借対照表・連結貸借対照表、損益計算書・連結損益計算書または株主資本等変動計算書・連結資本等変動計算書に記載されている1つまたは複数の項目に関連するからです。

この場合の「特定の日」とは、必ずしも1つの項目に限らず、複数の項目も「特定の項目」にあたると言えます。

「関連が明らかになるような記載」とは、ある注記が特定の項目の注記であることを利用者が明瞭に判断できるような方式によればよく、さまざまな方式によることが考えられます。

 

² 継続企業の前提に関する注記(会社計算規則100条)

継続企業の前提に関する注記は、事業年度の末日において、当該株式会社が将来にわたって事業を継続するとの前提(以下この条において「継続企業の前提」という。)に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるとき(当該事業年度の末日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合を除く。)における次に掲げる事項とする。

1 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容

2 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策

3 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由

4 当該重要な不確実性の影響を計算書類(連結注記表にあっては、連結計算書類)に反映しているか否かの別

 

・継続企業の前提に関する注記

継続企業の前提に関する注記は、会社法の施行の際に初めて要求されるようになったもので、財務諸表等規則8条の27に倣ったものです。

継続企業の前提に関する注記を要求しているのは、計算書類作成会社が継続企業であることは、会社計算規則に基づく計算書類作成の暗黙の前提となっているため、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象や状況がある場合には、それを適切に注記することが求められる場合があると考えられるからです。継続企業の前提とは会社が将来にわたって事業を継続するとの前提をいいます。例えば、のれんや繰延資産の計上、法的債務性を有しない負債性引当金の計上などについては継続企業の前提があってはじめて有効となるので、継続企業の前提が成立しない場合には、「継続企業の前提が成立しないこと」を前提として貸借対照表を作成することになります。継続企業の前提に重要な疑義を抱かせるような事象または状況があるにすぎない場合には、継続企業の前提に基づいて計算関係書類を作成するため、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせるような事象または状況が必ずしも計算関係書類に反映されていないことを利用者が認識し、また利用者が計算関係書類を用いて意思決定するようなこと防ぐため、継続企業の前提に関する注記が要求されると考えられます。

・継続企業の前提に重要な疑義を抱かせるような事象または状況

企業会計審議会「監査基準の改訂について」(平成14年1月25日)三6(3)では、「継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象や状況としては、企業の破綻の要因を一義的に定義することは困難であることから、財務指標の悪化の傾向、財政破綻の可能性等概括的な表現を用いている。より具体的に例示するとすれば、財務指標の悪化の傾向としては、売上の著しい減少、継続的な営業損失の発生や営業キャッシュ・フローのマイナス、債務超過等が挙げられる。財務破綻の可能性としては、重要な債務の不履行や返済の困難性、新たな資金調達が困難な状況、取引先からの与信の拒絶等が挙げられる。また、事業の継続に不可欠な重要な資産の毀損や権利の失効、重要な市場や取引先の喪失、巨額の損害賠償の履行、その他法令に基づく事業の制約等も考慮すべき事象や状況と考えられる」としていました。また、財務諸表等規則ガイドライン8の27−2は、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」とは、「監査基準にいう継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況をいうものとし、債務超過、売上高の著しい減少、継続的な営業損失の発生、継続的な営業キャッシュ・フローのマイナス、重要な債務の不履行、重要な債務の返済の困難性、新たな資金調達が困難な状況、取引先からの与信の拒絶、事業活動の継続に不可欠な重要な資産の毀損又は喪失若しくは権利の失効、重要な市場又は取引先の喪失、巨額の損害賠償の履行、法令等に基づく事業活動の制約等が含まれることに留意する。なお、これらの事象又は状況が複合して、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況となる場合もあることに留意する」としています。

そして、日本公認会計士協会・監査・保証実務委員会報告74号「継続企業の前提に関する開示について」4項は、財務指標として、売上高の著しい減少、継続的な営業損失の発生または営業キャッシュ・フローのマイナス、重要な営業損失の発生または当期純損失の計上、重要なマイナスの営業キャッシャフローの計上、債務超過を、財務活動関係として、営業債務の返済の困難性、借入金の返済条項の不履行や履行の困難性、社債等の償還の困難性、配当優先株式に対する配当の延滞又は中止、営業活動関係としては、主要な仕入先からの与信または取引継続の拒絶、重要な市場又は得意先の喪失、事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分、法令に基づく重要な事業の制約、その他として、巨額な損害賠償金の負担の可能性、ブランド・イメージの著しい悪化を例示しています。

・注記することを要しない場合

継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する場合であっても、当該事象または状況を解消し、または改善するための対応をすれば、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められなくなるときには継続企業の前提に関する注記は要求されません。また、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する場合であって、当該事象または状況を解消し、また改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときであっても、当該事業年度の末日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合には注記をすることを要しない。これは、当該事業年度の末日後に重要な不確実性が認められなくなった時には、むしろ、注記をしない方が有用な情報となる面があるからと考えられます。

・注記すべき事項

@当該事象または状況が存在する旨およびその内容

例えば、「当社グループは、当連結会計年度において、〇〇百万円の当期純損失を計上し、〇〇百万円の債務超過となっている」というように記載をすることが考えられます。

A当該事象または状況を解消し、または改善するための対応策

募集株式の発行等の資金調達、返済条件の見直し・債務免除の要請、資産の処分、経営の合理化(不採算事業からの撤退、人員の整理など)、他の同等な市場または得意先の開拓などが考えられます。これらは「当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応及び経営計画」としてまとめることができます。ここで注記される経営者の対応及び経営計画は、計算書類または連結計算書類の作成時に策定されているものであって、実行可能性があるものでなければならないのは当然のことです。

少なくとも、対象対照表日(事業年度の末日)の翌日から1年間に講じるものを記載すべきです。継続企業実務指針5項は、具体的な対応策の内容として、「借入金の契約条項の履行が困難であるという状況に対しては、企業が保有する有価証券若しくは固定資産等の資産の処分に関する計画、新規の借り入れ若しくは借り換え、又は新株若しくは新株予約権の発行等の資金調達の計画などが考えられるまた、重要な市場又は得意先の喪失については、他の同等な市場又は得意先の開拓といった計画が考えられる」としています。

B当該重要な不確実性が認められる旨およびその理由

「重要な不確実性が認められる」場合の典型例としては、対応策の内容またはその実現不可能性が最終的に固まっていない場合が想定でき、「対応策に関する先方との最終的な合意が得られていないため、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます」というような記載が考えられます。

C当該重要な不確実性の影響を計算書類に反映しているか否かの別

通常、「計算書類は継続企業を前提として作成されており、このような重要な疑義の影響を計算書類には反映していない」というような記載となります。

・事業年度の末日後に継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が発生した場合

この場合には、継続企業の前提に関する注記は要求されません。そのような事象または状況を解消し、または改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められ、翌事業年度以降の会社の財産または損益に重要な影響を及ぼすときは、そのような重要な不確実性の存在は会社計算規則114条に規定する重要な後発事象に該当することになります。

・継続企業の前提が成立していない会社等における資産および負債の計上・評価

継続企業の前提が成立していない会社等における資産及び負債の計上及び評価を継続企業の前提が成立していることを前提とする会社計算規則の定めに従ってなすことは適切ではありません。

日本公認会計士協会・会計制度委員会研究報告第11号「継続企業の前提が成立していない会社等における資産及び負債の評価について」で、これについて指針を示しています。まが、清算中の会社では、資産は基本的に清算を仮定した処分価額により計上するとともに、負債は、基本的に債権調査により確定された評価額や清算業務に必要な費用の見積り額をもって計上し、キャッシュ・フローを伴わない項目は計上しないものとしています。他方、会社更手続の開始決定を受けた会社については、多くの負債の評価は、債権調査手続きにより確定する一方で、資産は、基本的には事業の清算を仮定するのではなく、更生後の事業の継続を仮定した時価により計上します。

 

² 重要な会計方針に係る事項に関する注記(会社計算規則101条)

重要な会計方針に係る事項に関する注記は、会計方針に関する次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。

1 資産の評価基準及び評価方法

2 固定資産の減価償却の方法

3 引当金の計上基準

4 収益及び費用の計上基準

5 その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項

 

貸借対照表及び損益計算書が示す会社の財産及び損益の状態を理解するために、その数値がどのような前提に基づいて作成されているかを知ることが重要です。ところが会社計算規則および一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行においては、例えば、資産の評価の方法、固定資産の減価償却の方法あるいは引当金の計上の方法として複数の方法が認められており、会社によって採用している会計方針が異なる可能性があります。そこで注記で会社の会計の方針を表すことが要求されているのです。しかし、一般的に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して、代替的な会計処理方法が認められていない場合には、その会計方針を注記する必要はないとされています。また、「重要性の乏しいものを除く」とされているので、原則的な会計処理方法を採用している場合には注記を要しないと解されています。

代替的な会計処理方法が認められており、原則的な会計処理方法が明らかでない場合には、例えば、取得価額を付したのか、時価を付したのか、適正な価格を付したのかなどを注記しなければなりません。また、棚卸資産や有価証券の評価方法についても、先入先出法、総平均法、移動平均法等がありますが、これらも注記しなければなりません。さらに、固定資産の減価償却の方法としても、定率法、定額法、級数法、生産高比例法などがあり、これらも注記しなければなりません。同様に引当金の計上の方法についても、統計的にあるいは保険数理計算によって算定する方法、個別的に見積もる方法その他合理的な簡便法による方法などがあり得るので、会計方針の注記が必要となります。 

 

 

² 連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記等(会社計算規則102条)

@連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記は、次に掲げる事項とする。この場合において、当該注記は当該各号に掲げる事項に区分しなければならない。

1 連結の範囲に関する次に掲げる事項

イ 連結子会社の数及び主要な連結子会社の名称

ロ 非連結子会社がある場合には、次に掲げる事項

(1)主要な非連結子会社の名称

(2)非連結子会社を連結の範囲から除いた理由

ハ 株式会社が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等を子会社としなかったときは、当該会社等の名称及び子会社としなかった理由

ニ 第63条第1項ただし書の規定により連結の範囲から除かれた子会社の財産又は損益に関する事項であって、当該企業集団の財産及び損益の状態の判断に影響を与えると認められる重要なものがあるときは、その内容

ホ 開示対象特別目的会社(会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第4条に規定する特別目的会社(同条の規定により当該特別目的会社に資産を譲渡した会社の子会社に該当しないものと推定されるものに限る。)をいう。以下この号及び第111条において同じ。)がある場合には、次に掲げる事項その他の重要な事項

(1)開示対象特別目的会社の概要

(2)開示対象特別目的会社との取引の概要及び取引金額

2 持分法の適用に関する次に掲げる事項

イ 持分法を適用した非連結子会社又は関連会社の数及びこれらのうち主要な会社等の名称

ロ 持分法を適用しない非連結子会社又は関連会社があるときは、次に掲げる事項

(1)当該非連結子会社又は関連会社のうち主要な会社等の名称

(2)当該非連結子会社又は関連会社に持分法を適用しない理由

ハ 当該株式会社が議決権の百分の二十以上、百分の五十以下を自己の計算において所有している会社等を関連会社としなかったときは、当該会社等の名称及び関連会社としなかった理由

ニ 持分法の適用の手続について特に示す必要があると認められる事項がある場合には、その内容

3 会計方針に関する次に掲げる事項

イ 重要な資産の評価基準及び評価方法

ロ 重要な減価償却資産の減価償却の方法

ハ 重要な引当金の計上基準

ニ その他連結計算書類の作成のための重要な事項

A連結の範囲又は持分法の適用の範囲の変更に関する注記は、連結の範囲又は持分法の適用の範囲を変更した場合(当該変更が重要性の乏しいものである場合を除く。)におけるその旨及び当該変更の理由とする。

 

・連結の範囲に関する事項(会社計算規則102条1項1号)

連結子会社の数及び主要な連結子会社の名称、非連結子会社がある場合には主要な非連結子会社の名称及び連結の範囲から除いた理由、他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有しているにもかかわらず当該他の会社等の名称及び子会社しなかった理由、財務及び事業の方針を決定する機関に対する支配が一時的であると認められること、または、連結の範囲に含めることにより当該株式会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認めれることを理由として、連結の範囲から除かれた子会社の財産及び損益の状態の判断に影響を与えると認められる重要なものがあるときに、その内容及び開示対象特別目的会社がある場合には、それに関する重要な事項を注記しなければなりません。

@連結子会社の数及び主要な連結子会社の名称

連結子会社の数及び主要な連結子会社の名称を注記させるのは、連結計算書類の対象となる企業集団の構成に関する情報として重要であると考えられたからです。すべての連結子会社の名称の注記が要求されていないのは、連結子会社が多数に上る場合にすべての連結子会社の名称を注記することは煩瑣であり、また、そのような注記によって情報の有用性が必ずしも高まるものではないからです。すべての連結子会社の名称が記載されない以上、連結子会社の数は最低限の注記事項ということになります。主要な連結子会社の名称を記載させるのは、連結子会社の数の記載だけでは企業集団についての理解が不可能であると考えられるからです。したがって、主要な連結子会社の名称の記載については、企業集団についての的確なイメージを見る者が形成できるような代表的な子会社の名称を記載すべきということになります。この名称を記載すべき、主要な子会社の選定は、連結子会社の財産及び損益の状況が連結貸借対照表等に与える影響という量的な面のみならず、質的な面にも注目してなされることが求められると考えられます。したがって、連結の範囲から除外することができるかどうかを判断する重要性の判断と密接に関連していると考えられます。

A非連結子会社がある場合には、主要な非連結子会社の名称及び連結の範囲から除いた理由

会社計算規則63条により、一定の子会社は連結の範囲から除くことが求められ、あるいは許容されています。主要な非連結子会社を注記させることにより、見る者の注意を喚起し、また、子会社はすべて連結の範囲に含めることが原則であることから、連結の範囲から除いた理由を記載することが求められます。理由を記載させることによって、連結の範囲からの不適切な除外を行わないようにしていると考えられます。

ここで主要な非連結子会社に限定しているのは、上記@と同様に、非連結子会社が多数に上る場合があり得ることを想定してのことと考えられます。主要な非連結子会社かどうかは上記@と同様の考え方で選びます。また、連結子会社の場合とはことなり、非連結子会社数の注記は求められていません。これは非連結子会社の数自体は情報としての有用性がないと考えられているからです。

B株式会社が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等を子会社としなかったときの、当該会社の名称および子会社としなかった理由

他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有しているにもかかわらず当該他の会社等を子会社としなかった場合とは、当該他の会社等が会社更生法の規定による更生手続きの開始決定を受けた会社、破産法の規定による破産手続開始決定を受けた会社その他これらの準ずる会社等であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる場合です。このような場合はそれほど多いとは言えないため、主要なものに限定することなく、当該他の会社等の名称及び子会社としなかった理由を注記することを求めています。

C非連結子会社の財産・損益に関する重要事項

財務及び事業の方針を決定する機関に対する支配が一時的であると認められる子会社あるいは連結の範囲に含めることにより連結計算書類を作成すべき会社の株主の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる子会社として、連結の範囲から除かれた子会社、及び、連結計算書類を作成すべき会社が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等のうち、会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた会社、民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社、破産法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められることにより子会社に該当しない会社等の財産または損益に関する事項で、当該企業集団の財産及び損益の状態の判断に影響を与えると認められる重要なものがある場合には、その内容を連結注記表に表示しなければなりません。

会社計算規則63条1項但し書きの規定により、連結の範囲から除くべきとされた子会社の財産及び損益の状態も、企業集団の財産及び損益の状態に影響を与えるからです。同様に、連結計算書類を作成すべき会社が他の会社議決権の過半数を自己の計算において所有していても、会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた会社、民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社、破産法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社その他これらに準ずる会社等であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる会社等は、会社法上の子会社であるにもかかわらず、ここでいう子会社には含まれないが、それらの会社等の財産及び損益の状態も企業集団の財産及び損益の状態に影響を与えるものです。したがって、利害関係人が企業集団の財産及び損益の状態を正確に把握することができるようにするためは、それらの会社等の財産または損益に関する事項で、当該企業集団の財産及び損益の状態に影響を与えると認められる重要なものを連結注記表に表示することが求められます。

D開示対象特別目的会社に関する重要事項

開示対象特別目的子会社とは、会社法施行規則4条に規定する規定する特別目的会社のうち、同条の規定により当該特別目的会社に対する出資者または特別目的会社に資産を譲渡した会社の子会社に該当しないものと推定されるものをいいます。これによって、子会社に該当しないと推定される特別目的会社も、実際には、子会社の要件を充たし、子会社に該当することがあることから、そのような特別目的会社が子会社に該当しないかどうかを適切に判断するインセンティブを、連結計算書類を作成する会社に与えるとともに、子会社に該当しないものとして連結の範囲に含められない場合であっても、そのような特別目的会社が連結計算書類を作成する会社の財産及び損益に影響を与える可能性があるので、そのような特別目的会社についての一定の重要な事項を連結計算書類の利用者に提供することには意義があると考えられます。

特別目的会社についての開示事項として、開示対象特別目的会社の概要には、開示対象特別目的会社の数、主な法形態、会社との関係が含まれます。また、開示対象特別目的会社との取引の概要には、会社と開示対象特別目的会社との取引状況(主な対象資産等の種類、主な取引形態、回収サービス業務や収益を享受する残存部分の保有などの継続的な関与の概要、将来における損失負担の可能性など)や取引の目的が該当します。開示対象特別目的会社との取引金額等については、会社と開示対象特別目的会社との間で当事業年度中に行った主な取引の金額(資産の譲渡取引額など)を注記します。

・持分法の適用に関する事項(会社計算規則102条1項2号)

連結の範囲に関する注記と同じように持分法の適用に関する注記が求められます。これは、持分法を適用することは損益の面では連結の範囲に含めるのと同様の効果をもたらし、連結の範囲に含めることの代替的性質を有するからです。表示すべき項目は以下の通りです。

@持分法を適用した非連結子会社または関連会社の数およびこれらのうち主要な会社等の名称

持分法適用会社連結計算書類が対象とする企業集団には含まれないが経済的には連結会社から成る企業集団を構成するものであるため、連結の範囲に関する事項の注記と同様、実質的にみた企業集団の構成を示すために注記が求められます。

A持分法を適用しない非連結子会社または関連会社がある場合の、それらのうちの主要な会社等の名称及び、そのような会社がある理由

持分法適用との関連では、主要なものであるかどうかは連結損益計算書損益等あるいは連結貸借対照表上の剰余金に与える影響の大きさあるいは当該他の会社に対する投資額など量的な側面に主として注目して判断されることになると考えられます。これは、子会社とは異なり関連会社は必ずしも連結計算書類を作成する会社や子会社と一体となって製造や営業活動を分担していない場合があり、地域ごとあるいは業種ごとに代表的なものを選定することが情報の有用性を高めるとは言えないからです。なお、主要な会社等の名称と、それがある理由は条文上別々に規定されているため、理由というのは、主要な会社等ごとに適用対象外とした理由を示すのではなく、主要な会社等に限定せず、非連結子会社または関連会社を適用対象外とした理由を示すことになります。

B他の会社等の議決権の100分の20以上、100分の50以下を自己の計算において所有しているにもかかわらず当該他の会社等を関連会社としなかった理由

C持分法の適用の手続きについてとくに記載する必要があると認められるもの

・会計処理基準に関する事項(会社計算規則102条1項3号)

個別注記表に記載すべき重要な会計方針に係る事項に関する注記とは異なり、「収益及び費用の計上基準」の注記は明示的に要求されていないし、その他の注記も重要なものに限られています。資産の評価の方法、固定資産の減価償却の方法、重要な引当金の計上の方法などについて、連結会社間に会計方針の差異がある場合には、それらを注記することになります。それは、連結の範囲に含められている会社ごとに示す必要はなく、重要性を勘案して、例えば、「市場価格のない有価証券はおおむね原価基準によっている」というような記載が認められています。

・連結の範囲または持分法の適用の範囲の変更に関する事項(会社計算規則102条2項)

株式の取得・処分あるいは子会社や関連会社の新株発行によって持分比率が変動し、あるいはその他の理由で支配の獲得・喪失、影響力の向上や減退があり得るため、連結の範囲を変更する必要性があり得ます。しかし、連結の範囲または持分法の適用の範囲が変更されると、連結計算書類の期間比較を適切に行うことができない可能性があるので、読者の注意を喚起するため、その旨及び変更の理由の注記が求められています。

 

² 会計方針の変更に関する注記等(会社計算規則102条の2)

@会計方針の変更に関する注記は、一般に公正妥当と認められる会計方針を他の一般に公正妥当と認められる会計方針に変更した場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。ただし、会計監査人設置会社以外の株式会社及び持分会社にあっては、第四号ロ及びハに掲げる事項を省略することができる。

1 当該会計方針の変更の内容

2 当該会計方針の変更の理由

3 遡及適用をした場合には、当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額

4 当該事業年度より前の事業年度の全部又は一部について遡及適用をしなかった場合には、次に掲げる事項(当該会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難なときは、ロに掲げる事項を除く。)

イ 計算書類又は連結計算書類の主な項目に対する影響額

ロ 当該事業年度より前の事業年度の全部又は一部について遡及適用をしなかった理由並びに当該会計方針の変更の適用方法及び適用開始時期

ハ 当該会計方針の変更が当該事業年度の翌事業年度以降の財産又は損益に影響を及ぼす可能性がある場合であって、当該影響に関する事項を注記することが適切であるときは、当該事項

A個別注記表に注記すべき事項(前項第3号並びに第4号ロ及びハに掲げる事項に限る。)が連結注記表に注記すべき事項と同一である場合において、個別注記表にその旨を注記するときは、個別注記表における当該事項の注記を要しない。

 

・会計方針の変更と遡及適用

「会計方針」とは計算書類または連結計算書類の作成に当たって採用する会計処理の原則及び手続をいうものとされ(会社計算規則2条3項58号)、「遡及適用」とは新たな会計方針を当該事業年度より前の事業年度に係る計算書類または連結計算書類に遡って適用したと仮定して会計処理をすることをいう(会社計算規則2条3項59号)ものです。会社法の下では、「会計方針の変更」は正当な理由により行われるべきとされ、ここでも「一般に公正妥当と認められる会計方針を他の一般に公正妥当と認められる会計方針に変更した場合」と規定されています。

ところで、従来の会計基準、証券取引法の委任に基づく大蔵省令ならびに商法及びその委任に基づく法務省令は、正当な理由による会計方針の変更の場合には注記による情報開示を要求してきました。しかし、国際会計基準第8号「事業セグメント」などが会計方針の変更に関し、新たに適用された会計基準等に経過的な取扱いが定められていない場合や自発的に会計方針を変更した場合には、原則として新たな会計方針の遡及適用を求めていること、会計方針の変更を行った場合に過去の財務諸表に対して新しい会計方針を遡及適用すれば、原則として財務諸表本体のすべての項目に関する情報が比較情報として提供されることになり、特定の項目だけではなく、財務諸表全般についての比較可能性が高まると考えられるため、変更及び訂正会計基準は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合には、会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められていない場合には、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用し、会計基準等に特定の経過的な扱いが定められている場合には、その経過的な取扱いに従うとする一方で、それ以外の正当な理由による会計方針の変更の場合には新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及できるものとしています。このように新たな会計方針を遡及適用すべきか否かは、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従って判断されます。

・注記すべき事項

@当該会計方針の変更の内容及び当該会計方針の変更の理由(会社計算規則102条の2第1項1号及び2号)

変更および訂正会計基準10項(2)に照らせば、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更の場合には、「当該会計方針の変更の理由」としては、「会計基準等の名称」を記載すれば足りると解されています。

A遡及適用した場合には、当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額(会社計算規則102条の2第1項3号)

変更及び訂正会計基準は、「当期の期首時点において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を算定することが実務上不可能な場合には、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用する」と定めており、過去の事業年度の一部のみについて遡及適用をすることが考えられるが、過去の事業年度のすべてについて遡及適用をした場合と過去の事業年度の一部のみについて遡及適用をした場合の両方が、この条文の「遡及適用した場合」に含まれます。

会社計算規則102条の2第1項3号で求められている注記は、変更及び訂正会計基準により求められる「表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する会計方針の変更による遡及適用の累積的影響額」の注記に対応するものです。会社法は、当期の計算書類の開示のみを求めているから、会社法上の計算書類に関して「表示する財務諸表のうち、最も古い期間」は当事業年度となるので、遡及処理による累積的影響額は、当事業年度の期首の資産、負債及び純資産の額に反映することとなるためです。

B当該事業年度より前の事業年度の全部または一部について遡及適用しなかった場合の注記事項(会社計算規則102条の2第1項4号)

ここでいう「遡及適用しなかった場合」には、次のような場合があります。

ア.会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更であって、経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱い等)に従い、過去の事業年度の全部又は一部についての遡及適用をしなかった場合。

イ.遡及適用の原則的な扱いが実務上不可能な場合。

ウ.会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合。

エ.遡及適用するに重要性が乏しいので遡及適用しなかった場合。

オ.変更及び訂正会計基準以外の「一般に公正妥当と認められる企業会計の会計慣行」により遡及適用が要求されていないため、遡及適用をしなかった場合。

また、条文の括弧書きは、「当該会計方針の変更を会計の見積りの変更と区別するのが困難なとき」について、他の会計方針の変更の場合と異なり、A)に掲げる事項の開示を要しない旨を定めています。」

@)計算書類または連結計算書類の主な項目に対する影響額

変更及び訂正の会計基準は、「表示期間のうち過去の期間について影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たりの情報に対する影響額」の注記を認めていますがも会社法においては、計算書類及び連結計算書類の開示のみが求められていることに対応して、注記の内容が変容するとともに、会社の負担に配慮して、1株当たりの情報に対する影響額の注記は要求されていません。

A)当該事業年度より前の事業年度の全部または一部について遡及適用をしなかった理由ならびに当該会計方針の変更の適用方法および適用開始時期

変更及び訂正会計基準は、原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、その理由。会計方針の変更の適用方法及び適用開始時期の注記を要求しており、これに対する注記を求めるというものです。

B)当該会計方針の変更が当該事業年度の翌事業年度以降の財産または損益に影響を及ぼす可能性のある場合であって、当該影響に関する事項を注記することが適切であるときは、当該事項

どのような場合に、これらを注記することが適切かは、変更及び訂正会計基準その他の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従って判断されます。変更及び訂正会計基準は、会計基準などに特定の経過的な取扱いが定められている場合においては、「経過的な取扱いが将来に影響を及ぼす可能性がある場合には、その旨及び将来への影響。ただし、将来への影響が不明又はこれを合理的に見積もることが困難である場合には、その旨」を、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合においては、「会計上の見積りの変更が、当期に影響を及ぼす場合は当期への影響額。当期への影響がない場合でも将来の期間に影響を及ぼす可能性があり、かつ、その影響額を合理的に見積もることができるときには、当該影響額。ただし、将来への影響額を合理的に見積もることが困難な場合には、その旨」をそれぞれ注記することを求めています。

・個別注記表の注記の省略が認められる場合(会社計算規則102条の2第2項)

変更及び訂正会計基準10項及び11項に対応して、個別注記表に注記すべき事項が連結注記表に注記すべき事項と同一である場合に、連結注記表にその旨を注記したときには、個別注記表における注記の省略を認めるという内容です。これは、個別注記表に連結注記表における注記を参照すべき旨を記載すれば、連結注記表が開示される限り、情報提供としては十分だからです。

もっとも、省略が認められるのは、本条1項3号ならびに4号ロ及びハに規定する事項に限られています。

・「重要性の乏しいもの」の判断における重要性の基準

会計方針の変更、表示方法の変更、会計上の見積りの変更及び誤謬の訂正との関連でも、計算書類・連結計算書類・連結計算書類を利用する利害関係人の意思決定への影響に注目して、重要性は判断されます。そして、重要性の判断に当たっては、計算書類・連結計算書類に及ぼす金額的な影響と質的な影響の双方を考慮にいれる必要があります。金額的重要性については、損益への影響額または累積的影響額が重要であるかどうかにより判断するというアプローチ、損益の趨勢に重要な影響を与えているかにより判断するというアプローチ、計算書類・連結計算書類の各項目への影響が重要であるかどうかにより判断するというアプローチなどがあります。具体的な判断基準は、企業の個々の状況によって異なってきます。また質的重要性は、企業の経営環境、計算書類・連結計算書類の各項目の性質等に注目して判断することが考えられます。

・継続性の原則

企業会計原則一般原則の5は、「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」と定め、企業会計原則注解3は、「いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない」としています。これが継続性の原則です。このような継続性の原則が商法上の「公正なる会計慣行」に当たるかは議論が分かれてきました。すなわち、公正な会計処理の方法として認められている複数の会計処理の原則または手続の間であっても、みだりに変更することは会社の財産及び損益の状況についての正しい理解を妨げることになるから、「公正なる会計慣行」のひとつであると解する。これに対して、株式会社は、本来、「公正なる会計慣行」に違反しない限り、複数の会計処理の原則及び手続のうちのいずれかを選択することができるとして継続性の原則を限定的に解する。そういう議論がありました。

会社法の下において、継続性の原則は、たとえ限定的に適用されるのが妥当と解されるにしても、情報提供の観点からは、会計方針の変更に関する注記を求めるのが望ましいし、継続性の原則の適用があるとすれば、そのような注記はなおさら必要なので、会計処理の原則又は手続を変更した場合には、その旨、変更の理由及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容を注記させることになっていました。すなわち、変更があった旨を注記することによって計算書類の読者の注意を喚起するとともに、会計処理の原則または手続の変更は、財産の額ひいては分配可能額に影響を与え、また、当期純損益の額にも影響を与えるから、会社の利害関係者に有用な情報を提供するために、当該変更が計算書類に与えている影響の内容を注記させることとしていました。もっとも、このような注記が要求されることによって、結果的には、会計処理の原則または手続の不当な変更を行わないインセンティブを与えることになりました。

 

² 表示方法の変更に関する注記等(会社計算規則102条の3)

@表示方法の変更に関する注記は、一般に公正妥当と認められる表示方法を他の一般に公正妥当と認められる表示方法に変更した場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。

1 当該表示方法の変更の内容

2 当該会計方針の変更の理由

A個別注記表に注記すべき事項(前項第二号に掲げる事項に限る。)が連結注記表に注記すべき事項と同一である場合において、個別注記表にその旨を注記するときは、個別注記表における当該事項の注記を要しない。

 

これは、企業会計基準委員会・企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」16項に対応するという位置づけです。ただし、会社法は、当事業年度に係る計算書類の開示のみを要求していることから、比較情報の開示を前提として定められています。

「表示方法」とは、計算書類または連結計算書類の作成に当たって採用する表示の方法を言います(会社計算規則2条3項60号)。

 

² 会計上の見積りの変更に関する注記(会社計算規則102の4

会計上の見積りの変更に関する注記は、会計上の見積りの変更をした場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。

1 当該会計上の見積りの変更の内容

2 当該会計上の見積りの変更の計算書類又は連結計算書類の項目に対する影響額

3 当該会計上の見積りの変更が当該事業年度の翌事業年度以降の財産又は損益に影響を及ぼす可能性があるときは、当該影響に関する事項

 

会社計算規則98条1項5号の「会計上の見積りの変更に関する注記」の内容をここで規定しています。該当する変更があるときは、会計監査人設置会社である株式会社の個別注記表及び連結注記表に表示することが求められているものです。ただし、会計監査人設置会社以外の会社の個別注記表表示することまでは求められていないと解されています。

「会計上の見積り」とは、計算書類または連結計算書類に表示すべき項目の金額に不確実性がある場合において、計算書類または連結計算書類の作成時に入手可能な情報に基づき、それらの合理的な金額を算定することを言います(会社計算規則2条3項61号)。また、「会計上の見積りの変更」とは、新たに入手可能となった情報に基づき、当該事業年度より前の事業年度に係る計算書類または連結計算書類の作成に当たってした会計上の見積りを変更することを言います(会社計算規則2条3項62号)。この場合、会計方針の変更や誤謬の訂正の場合とは異なり、遡及修正は行いません。

 

² 誤謬の訂正に関する注記(会社計算規則102の5

誤謬の訂正に関する注記は、誤謬の訂正をした場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とする。

1 当該誤謬の内容

2 当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額

 

会社計算規則98条1項6号「誤謬の訂正に関する注記」の内容を定める規定です。該当する事項があるときは、連結注記表ならびに個別注記表に表示することが求められます。。

ここでいう「誤謬の訂正」とは、「当該事業年度より前の事業年度に係る計算書類又は連結計算書類における誤謬を訂正したと仮定して計算書類又は連結計算書類を作成すること」を言います(会社計算規則2条3項64号)。

「誤謬の訂正に関する注記」は誤謬の訂正をした場合に求められているもので、誤謬の訂正を行わなかった場合には注記の必要はありません。過年度の計算書類や連結計算書類に誤謬があったときは、誤謬の訂正をすることを要しない場合であっても、誤謬の訂正をすべきか否かは、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行にしたがって判断されます。

括弧書きの「重要性の」乏しいものの、重要性の判断基準は会社計算規則102条の2での説明を参考として下さい。

 

² 貸借対照表に関する注記(会社計算規則103条)

貸借対照表等に関する注記は、次に掲げる事項(連結注記表にあっては、第六号から第九号までに掲げる事項を除く。)とする。

1 資産が担保に供されている場合における次に掲げる事項

イ 資産が担保に供されていること。

ロ イの資産の内容及びその金額

ハ 担保に係る債務の金額

2 資産に係る引当金を直接控除した場合における各資産の資産項目別の引当金の金額(一括して注記することが適当な場合にあっては、各資産について流動資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産又は繰延資産ごとに一括した引当金の金額)

3 資産に係る減価償却累計額を直接控除した場合における各資産の資産項目別の減価償却累計額(一括して注記することが適当な場合にあっては、各資産について一括した減価償却累計額)

4 資産に係る減損損失累計額を減価償却累計額に合算して減価償却累計額の項目をもって表示した場合にあっては、減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨

5 保証債務、手形遡求債務、重要な係争事件に係る損害賠償義務その他これらに準ずる債務(負債の部に計上したものを除く。)があるときは、当該債務の内容及び金額

6 関係会社に対する金銭債権又は金銭債務をその金銭債権又は金銭債務が属する項目ごとに、他の金銭債権又は金銭債務と区分して表示していないときは、当該関係会社に対する金銭債権又は金銭債務の当該関係会社に対する金銭債権又は金銭債務が属する項目ごとの金額又は二以上の項目について一括した金額

7 取締役、監査役及び執行役との間の取引による取締役、監査役及び執行役に対する金銭債権があるときは、その総額

8 取締役、監査役及び執行役との間の取引による取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務があるときは、その総額

9 当該株式会社の親会社株式の各表示区分別の金額

 

・貸借対照表及び連結貸借対照表に関する注記の内容とすべき事項

@資産が担保に供されている場合(会社計算規則103条1号)

担保に供されている資産に関する注記を求める規定です。このような注記が求められているのは、会社の資産が担保に供されている場合には、一般債権者にとって引当となる会社の資産は担保の対象となっていない資産に限られることが事実上多いし、どのような資産が担保に供されているは会社の財産状態を示すものとして重要性を有するからです。とくに、将来債権等を担保に供している場合には、将来の会社の財産及び損益の状態に重要な影響与える可能性があります。そこで、会社債権者をはじめとする利害関係者にとって適切な意思決定を可能にするための情報を提供するという観点から、注記が求められていると考えられます。この注記により、会社資産の担保余力が示され、一般債権者にとってその債権の引当となる会社の一般財産の大きさを推測することができるようになります。

ここでの「担保に供されている」とは、当該資産が質権や抵当権などの約定担保物権の対象となっていないことを意味し、留置権や先取特権などの法定担保権の対象となっていることは含まないと解されています。法定担保権の対象となっている場合にいちいち注記させることは煩瑣であり、また、先取特権が意味を持つ局面は通常の継続企業においては例外的な場合であるし、留置権の存続期間は事実上短いからです。一般に「担保に供する」という場合には約定担保権を想定するのが常識となっているからです。

資産が担保に供されていること、担保に供されている資産の内容及びその金額、担保に係る債務の金額が注記すべき事項とされており、貸借対照表の勘定科目の細目に従って、資産の種類ごとに、その帳簿価額を明らかにします。また、担保の種類も注記することが望ましいと考えられます。

A資産に係る引当金を直接控除した場合(会社計算規則103条2号)

会社計算規則78条2項に基づいて、資産に係る引当金を直接控除した場合には、貸借対照表上は、その資産に係る引当金額が判明しないので、情報提供の観点から、各資産の資産項目別の引当金の金額を表示すべき事項としています。このとき、流動資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産または繰延資産ごとにのみ一括して表示することを認めているのは、最低限、流動資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産または繰延資産という項目ごとの情報は必要であると考えられるからです。

B資産に係る減価償却累計額を直接控除した場合(会社計算規則103条3号)

会社計算規則79条2項または81条に基づいて、資産に係る減価償却累計額を直接控除した場合には、貸借対照表上・連結貸借対照表上は、資産に係る減価償却累計額も取得価額も判明しないので、情報提供の観点から、各資産の資産項目別の減価償却累計額を表示すべき項目としています。ここで、一括して注記することが適当な場合としては総合償却などを採用している場合が考えられます。このような場合には、減価償却累計額をそれぞれの科目に割り振ることが困難であるからです。また、各資産の資産項目別の減価償却累計額の重要性が乏しい場合も一括して注記することが適当な場合に当たると考えられます。

C資産に係る減損損失累計額を減価償却累計額に合算して減価償却累計額の項目をもって表示した場合(会社計算規則103条4号)

会社計算規則80条3項に基づいて、減価償却累計額及び減損損失累計額を控除項目として表示する場合に、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して、減価償却累計額の項目をもって表示したときは、減損損失累計額が含まれていることが貸借対照表上・連結貸借対照表上は判明しないので、減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨の注記が求められています。

D保証債務等(会社計算規則103条5号)

貸借対照表に計上すべき法律上の債務には、確定債務のみならず、不確定期限付債務や停止条件付債務も含まれると解されてきました。そこで条件付債務を引当金の部に計上することが認められてきました。その根拠として、@他の債務と異なり評価の問題があること、A従来の会計慣行上、引当金として取り扱われていたこと、B条件成就の時期が判明しないものが多く、これを履行期の基準によって区分表示することは事務手続きが煩雑になることなどです。ここでいう条件付債務は、法律上の債務であって、債務の確定が将来の不確定な事実の成否にかかっている債務をいい、金額及び履行期の双方が不確定の債務であって、民法上の条件を付された債務のみならず、不確定期限付債務を含むと解されていました。

保証債務は、ここでいう条件付債務に当たります。したがって、特段の事情がない限り、負債の部に計上されるはずです。しかし、会計実務では保証債務が負債の部に計上されることはありませんでした。企業会計の立場からは、保証債務は偶発債務であり、その発生の蓋然性が低いと説明されるのが通常でした。

しかし。計算書類の利用者の注意を喚起するために注記するように、ここで規定されています。ここでは、債務の内容及び金額の注記を求めています。これは、保証債務等が貸借対照表の負債の部に計上されていない場合には、保証債務等はいわば海外の負債であり、その内容が明確にならないと、計算書類の利用者が会社の財産の状態を適切に把握できない可能性があります。そして、保証債務の履行が求められる可能性は被保証者の財政状態の影響を受け、また、その保証のタイプに依存するから、被保証者ごとに被保証債務の内容及びその残高、根保証かどうかを記載します。もっとも、そのすべてについて個別に記載することがきわめて煩瑣な場合もあるので、重要であないものは一括して記載することもできると解されています。

なお、負債の部に計上した場合には、注記は不要です。

E関係会社に対する金銭債権または金銭債務を区分表示していない場合(会社計算規則103条6号)

財務諸表等規則39条は、関係会社との取引に基づいて発生した債務、前払費用または未収収益で、その金額が資産総額の100分の1を超えるものについて、その金額を注記することを求め、55条は関係会社との取引に基づいて発生した買掛金及び支払手形の合計額が負債及び純資産の合計額の100分の1を超える場合にはそれぞれの金額を、関係会社との取引に基づいて発生した債務、未払費用または前収益で、その金額が負債及び純資産の合計額の100分の1を超えるものらついては、その金額を注記するように求めています。

このようなことを踏まえて会社計算規則では、貸借対照表の分量が大きくなるため区分表示は求めないものの、区分表示をしない場合には注記を求めています。このような注記が求められる趣旨は、関係会社と会社との間には支配従属・影響関係が通常認められ、その結果、会社と関係会社一般との間の取引について特殊な事情が生ずる可能性があります。例えば、通常の場合、親会社は自己の好む者を子会社の取締役に選任することが可能です。その結果、親会社と子会社との間では通常の取引条件とは異なる条件で取引されることもあるし、場合によると子会社が親会社に商品その他の資産を売却したことにして利益を計上する可能性もあります。さらに、親子会社が実質的または経済的に1つの企業体であるとすれば、親子会社間の債権債務は一般の債権債務とは同等には考えられず、それらを分けて表示しないと会社の財産の状態について誤解が生ずることになりかねません。そこで、会社が関係会社に対して有する金銭債権及び金銭債務を区分表示することによって、利害関係者の注意を喚起することが望ましいので、区分表示をしない場合には個別注記表らおける表示を求めています。

なお、連結注記表への注記を要しないとされているのは、連結貸借対照表の作成に当たって、連結子会社に対する金銭債権、金銭債務は相殺消去されること、連結貸借対照表は企業集団の財政の状態を示すものであることから、関係会社に対する金銭債権、金銭債務の区分表示する実益が少ないからです。

F取締役、監査役及び執行役との間の取引による取締役、監査役及び執行役に対する金銭債権(会社計算規則103条7号)

取締役、執行役又は監査役との間の取引による取締役、執行役および監査役に対する金銭債権について注記が求められます。ここでいう「取引」とは、取締役についていえば、取締役が会社の製品その他の財産を譲受け会社に対し自己の製品その他の財産を譲渡し会社から金銭の貸付けを受け、その他自己または第三者のために会社との間でなす取引を意味します。なお、ここでの「取引」はいわゆる直接取引に限定されています。さらに、そのような取締役、執行役又は監査役と会社との間の「取引」による取締役、執行役又は監査役に対する金銭債権の注記を求め、取締役と会社との取引による第三者に対する金銭債権の注記は求められていません。注記が要求される金銭債権に貸付金、売掛金、受取手形。未収金、立替金等が含まれます。

なお「その総額」を記載することを求められているので、取締役、執行役又は監査役に区分して、あるいは金銭債権の種類別に注記する必要はありません。

このような規定が設けられているのは、取締役、執行役又は監査役との間の取引は通常の取引条件によらないで行われる可能性があり、また、取締役、執行役又は監査役に対する債権を計上しつつ、会社が弁済を求めないために実質的には贈与などと同じことになります。また、取締役、執行役又は監査役に対する債権を貸借対照表に計上することによって粉飾が行われる可能性も考慮されています。すなわち、取締役等と会社との間の不適切な取引の可能性及び架空債権、焦付債権の存在の可能性について利害関係者の注記を促します。公開会社の利害関係者は、さらに取締役等との間の取引にかんする注記として個別注記表に含められ、または附属明細書に記載されるので、詳細な情報を得ることができます。

なお、連結注記表への記載を要しないのは、連結計算書類を作成する会社の事務負担を過剰なものとしないためと言われています。

G取締役、監査役及び執行役との間の取引による取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務(会社計算規則103条8号)

取締役、執行役又は監査役との間の取引による取締役、執行役又は監査役にたいする金銭債務に関する注記を求める規定です。この内容や趣旨は7号の場合と同じです。

H親会社株式(会社計算規則103条9号)

親会社株式は関係会社株式に含まれるものですが、親会社株式を取得することは例会的に認められ、親会社株式は相当の時期に処分しなければならないとされています(135条3項)。したがって、情報提供観点から、注記することが求められているのです。

 

² 損益計算書に関する注記(会社計算規則104条)

損益計算書に関する注記は、関係会社との営業取引による取引高の総額及び営業取引以外の取引による取引高の総額とする。

 

個別注記表に表示される損益計算書に関する注記について規定しています。

関係会社とは、会社の親会社、子会社及び関連会社(会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等)ならびに他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等を言います(会社計算規則2条3項22号)。

営業取引及び営業取引以外の取引には、組織再編行為は含まないと解されています。これは、組織再編行為は取引法上の行為ではなく、組織法上の行為であると従来から考えられてきました。組織再編行為については、それ自体が開示事項となっているので、計算書類の注記として開示しなくても不都合はないと考えられるからです。

なお、親会社、子会社、兄弟会社、関連会社その他の関係会社、主要株主等との間の取引に関する事項が関連当事者との取引に関する注記として公開会社の個別注記表または附属明細書に含められます。

 

² 株主資本等変動計算書に関する注記(会社計算規則105条)

株主資本等変動計算書に関する注記は、次に掲げる事項とする。この場合において、連結注記表を作成する株式会社は、第2号に掲げる事項以外の事項は、省略することができる。

1 当該事業年度の末日における発行済株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の数)

2 当該事業年度の末日における自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの自己株式の数)

3 当該事業年度中に行った剰余金の配当(当該事業年度の末日後に行う剰余金の配当のうち、剰余金の配当を受ける者を定めるための法第124条第1項に規定する基準日が当該事業年度中のものを含む。)に関する次に掲げる事項その他の事項

イ 配当財産が金銭である場合における当該金銭の総額

ロ 配当財産が金銭以外の財産である場合における当該財産の帳簿価額(当該剰余金の配当をした日においてその時の時価を付した場合にあっては、当該時価を付した後の帳簿価額)の総額

4 当該事業年度の末日における当該株式会社が発行している新株予約権(法第236条第1項第4号の期間の初日が到来していないものを除く。)の目的となる当該株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類及び種類ごとの数)

 

株主資本計算書に関する注記に含めるべき事項を定めています。なお「連結注記表を作成する株式会社は、第2号に掲げる事項以外の事項は、省略することができる」とされているのは、連結注記表には事業年度末日における自己株式の数は記載されていないからです。そのほかの1、3、4号と同じ事項が連結注記表に含められています。

@当該事業計年度の末日における当該株式発行会社の発行済株式の総数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の総数)(会社計算規則105条1号)

株主資本等変動計算書において資本金額の変動及び変動事由が開示されるので、これに関連する情報として、開示事項とされています。

A当該事業年度の末日における自己株式(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの自己株式の数)(会社計算規則105条2号)

期間、数量等の制限なく自己株式を保有できるため、期末における自己株式の数が重要であることに加え、会社の自己株式の数は、行使され得る議決権の数を利害関係人が判断する上で有用な情報です。

また、貸借対照表上の自己株式の金額と比較することによって、自己株式の取得価額が過大でないかを判断することができ、将来における自己株式処分損益の可能性を推測することができます。

B当該事業年度中に行った剰余金の配当に関する事項(会社計算規則105条3号)

株主資本等変動計算書においては、その他資本剰余金の額及びその他利益剰余金の額の変動及び変動事由が開示されるので、これに関連する情報としても開示事項とされています。連結ベース化単体ベースかについて、開示されるのは計算書類を作成する会社(単体)ベースについての情報であり、連結株主等変動計算書に関する注記というより、株主資本等変動計算書に関する注記です。開示すべき事項は、@配当財産が金銭の場合には、株式の種類ごとの配当金の総額、1株当たりの配当額、基準日及び効力発生日、A配当財産が金銭以外の場合には、株式の種類ごとに配当財産の種類並びに配当財産の帳簿価額、1株当たり配当額、基準日及び効力発生日、B基準日が当期に属する配当のうち、配当に当たって減少させる剰余金の種類、です。

C当該事業年度の末日における当該株式が発行している新株予約権の目的となる株式の数(会社計算規則105条4号)

「発行している新株予約権の目的となる株式の数」とは、発行している新株予約権の権利が行使されたものと仮定した場合の増加株式数を言います。なお、ここでいう「新株予約権」にはストック・オプション等も含まれます。 

 

² 連結株主資本等変動計算書に関する注記(会社計算規則106条)

連結株主資本等変動計算書に関する注記は、次に掲げる事項とする。

1 当該連結会計年度の末日における当該株式会社の発行済株式の総数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の総数)

2 当該連結会計年度中に行った剰余金の配当(当該連結会計年度の末日後に行う剰余金の配当のうち、剰余金の配当を受ける者を定めるための法第124条第1項に規定する基準日が当該連結会計年度中のものを含む。)に関する次に掲げる事項その他の事項

イ 配当財産が金銭である場合における当該金銭の総額

ロ 配当財産が金銭以外の財産である場合における当該財産の帳簿価額(当該剰余金の配当をした日においてその時の時価を付した場合にあっては、当該時価を付した後の帳簿価額)の総額

3 当該連結会計年度の末日における当該株式会社が発行している新株予約権(法第236条第1項第4号の期間の初日が到来していないものを除く。)の目的となる当該株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類及び種類ごとの数)

 

連結株主資本計算書に関する注記に含めるべき事項を定めています。

@当該連結会計年度の末日における当該株式会社の発行済株式の総数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の総数)(会社計算規則106条1号)

株主資本等変動計算書において資本金額の変動及び変動事由が開示されるので、これに関連する情報として、開示事項とされています。連結ベースではなく、計算書類を作成する会社(単体)についての情報であり、連結株主資本等変動計算書に関する注記というよりは、株主資本等変動計算書に関する注記です。

A当該連結会計年度中に行った剰余金の配当に関する事項(会社計算規則106条2号)

株主資本等変動計算書においては、その他資本剰余金の額及びその他利益剰余金の額の変動及び変動事由が開示されるので、これに関連する情報としても開示事項とされています。連結ベース化単体ベースかについて、開示されるのは計算書類を作成する会社(単体)ベースについての情報であり、連結株主等変動計算書に関する注記というより、株主資本等変動計算書に関する注記です。開示すべき事項は、@配当財産が金銭の場合には、株式の種類ごとの配当金の総額、1株当たりの配当額、基準日及び効力発生日、A配当財産が金銭以外の場合には、株式の種類ごとに配当財産の種類並びに配当財産の帳簿価額、1株当たり配当額、基準日及び効力発生日、B基準日が当期に属する配当のうち、配当に当たって減少させる剰余金の種類、です。

B当該連結会計年度の末日における当該株式会社が発行している新株予約権(法第236条第1項第4号の期間の初日が到来していないものを除く。)の目的となる当該株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類及び種類ごとの数)(会社計算規則106条3号)

「発行している新株予約権の目的となる株式の数」とは、発行している新株予約権の権利が行使されたものと仮定した場合の増加株式数を言います。なお、ここでいう「新株予約権」にはストック・オプション等も含まれます。

 

 

関連条文  

会計の原則(431条)   

会計帳簿の作成および保存(432条)    

会計帳簿の閲覧等の請求(433条)     

会計帳簿の提出命令(434条)    

計算書類等の作成及び保存(435条)   

計算書類等の監査等(436条)    

計算書類等の株主への提供(437条)   

計算書類等の定時株主総会への提出等(438条)    

会計監査人設置会社の特則(439条)    

計算書類の公告(440条)    

臨時計算書類(441条)   

計算書類の備置き及び閲覧等(442条)    

計算書類等の提出命令(443条)   

資本金の額及び準備金の額(445条)   

剰余金の額(446条)   

資本金の額の減少(447条)   

準備金の額の減少(448条)   

債権者の異議(449条)   

資本金の額の増加(450条)   

準備金の額の増加(451条)   

剰余金についてのその他の処分(452条)   

 

 
「実務初心者の会社法」目次へ戻る