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第438条 計算書類等の 定時株主総会への提出等 |
Ø 計算書類等の定時株主総会への提出等(438条) @次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。 一 第436条第1項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第436条第1項の監査を受けた計算書類及び事業報告 二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第436条第2項の監査を受けた計算書類及び事業報告 三 取締役会設置会社 第436条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告 四 前3号に掲げるもの以外の株式会社 第435条第2項の計算書類及び事業報告 A前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。 B取締役は、第1項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。 ü
定時株主総会への提出(438条1項) 取締役は計算書類及び事業報告を、その事業年度の定時株主総会に提供しなければなりません。なお、取締役会設置会社は、437条に基づき招集通知に添付して計算書類と事業報告を株主に提供しているため、株主総会には提出するだけでいいということなります(438条1項)。したがって、具体的には株主総会の場で出席株主に物理的に計算書類等を配布することまでは求めらるほどのことではなく、例えばスクリーン等に掲示することでも足りると解されています。ただし、取締役会が設置されていない会社は、定時株主総会の招集通知にに際して計算書類を提供することは求められていないので、定時株主総会において株主に計算書類及び事業報告を提供し、その報告を行い、承認を求めるということになります。したがって、取締役会が設置されていない会社の提出の具体的内容は、株主総会の場で出席株主に計算書類等を配布することとなります。 旧商法では、当初は営業報告書を含むすべての計算書類について定時株主総会の決議による承認を義務付けられていました。それが昭和56年の改正で、貸借対照表、損益計算書及び利益処分(損失処理)案のみが承認の対象となりました。営業報告書の内容は単なる事実の報告であり、貸借対照表や損益計算書のような会計方針の決定、まして利益処分案のような配当政策の決定を伴うものは承認が必要で、両者に対応を区別しました。利益の処分または損失の処理案が定時株主総会で承認を受ける計算書類の内容をなしていたと言えます。そのため、年2回以上の利益配当を行う会社では、各決算期に定時株主総会を招集することが求められました。 新たに制定された会社法では、剰余金の配当を決算手続から切り離して、株主総会の決定によっていつでも配当をけっていできるようになりました。定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集される総会となり、計算書類の承認手続きが、その内容とされました。 ü
定時株主総会での承認(438条2項、3項) 原則として株式会社は、ただし、次の439条において会計監査人設置会社に関する特則が認められているので、実際には、それ以外の株式会社は、計算書類に関して株主総会の承認を受けなければなりません(438条2項)。事業報告については、その内容を報告しなければなりません(438条3項)。 計算書類について承認を求める理由は、ひとつの会計事実について複数の会計処理いずれを適用するかといった政策的判断の余地があり得るからだと解されています。剰余金の額や分配可能額の算定の基礎となるものでもあります。 承認決議が否決された場合は、計算書類は確定しないので、取締役会は必要と認める場合には、計算書類を修正したうえで、再度、定時株主総会を招集し承認を求めなおすことになります。
関連条文 会計の原則(431条) |