新任担当者のための会社法実務講座 第448条 準備金の額の減少 |
Ø 準備金の額の減少(448条) @株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 減少する準備金の額 二 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額 三 準備金の額の減少がその効力を生ずる日 A前項第1号の額は、同項第3号の日における準備金の額を超えてはならない。 B株式会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らないときにおける第1項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とする。 ü 資本金への組み入れ 準備金の額を減少させることは、多くの場合、会社債権者の利益に関係するのですが、減少する準備金の額の全部を資本金に組み入れる場合は会社債権者の不利にはならないので、株主総会の普通決議により準備金の全部又は一部を資本金とすることができます(448条1項2号)株主総会の決議を要する理由は、準備金が減少し、同額だけ資本金の額が増加することは、それにより新たに準備金積み立ての必要が生じまたは積み立てるべき金額が増加することがあるゆえ、かつ、欠損が生じた際の手続が厳格になる点で、株主に対する財産分配が困難になる効果を生じさせるからです。なお、会社債権者の異議手続きは不要です(449条1項)。 株主総会で決議する内容は以下の通り ・減少する準備金の額 ・減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とする旨及びその額 ・効力発生日 ü
資本金への組み入れ以外の目的での準備金の減少 ・欠損の填補目的の場合 資本金の減少の場合と同じように欠損填補の目的で準備金の額の減少が行われることが多い。その場合の手続は株主総会で次の内容について決議します。この場合は普通決議で足りる。 ・減少する準備金の額 ・効力発生日 資本金の減少の場合には特別決議が必要ですから、相対的に簡易ということになります。なお、剰余金の分配について取締役会で決めることができる株式会社は、準備金の減少についても取締役会で決議することができます(459条1項2号)。 ※準備金の減少による欠損の填補を、原則として剰余金の処分と同じに取り扱うように会社法では考えられていると言えます。 しかも、定時株主総会において、その定時株主総会日における欠損額を超えない範囲で準備金の額を減少する旨を決議する場合には、資本金の額の減少の場合とは異なり債権者の異議手続を要しない(449条1項)とされています。 ・その他の目的の場合 減少した準備金の額は資本準備金が減少したのであれば「その他資本剰余金」に、利益準備金が減少したのであれば「その他利益剰余金」に計上され、分配可能額を増加させます。その場合の手続は株主総会で次の内容について決議します。この場合は普通決議で足りる。ただし、欠損の填補目的による減少の場合と違って、債権者の異議手続は必要となります。 ü
準備金減少の限度 減少する準備金の額は、効力発生日における準備金の額を超えることはできません(448条2項)。減少後の準備金の額がマイナスになるような準備金の減少は認められないという趣旨です。ただし、減少後の準備金の額がゼロになることについては差し支えないと解されています。 ü
準備金減少差益 準備金の減少額で、資本金としない額については、欠損(マイナスの分配可能額)の填補に当てられますが、その結果、残額があれば、それ(準備金減少差益)は、資本準備金の減少であればその他剰余金、利益準備金の減少であればその他剰余金となります。(会社計算規則27条1項、29条1項) 関連条文 会計の原則(431条) |