新任担当者のための会社法実務講座 第451条 準備金の額の増加 |
Ø 準備金の額の増加(451条) @株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 減少する剰余金の額 二 準備金の額の増加がその効力を生ずる日 A前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 B第1項第1号の額は、同項第2号の日における剰余金の額を超えてはならない。 ü 準備金の額の増加 会社法では、資本金、準備金、剰余金という計数について、それぞれの間での変動がみとめられることになり、ここでは剰余金からの法定準備金への組み入れを認めています。それは、これらの計数は、もっぱら配当拘束がかかるか否かいう点と、その額を減少させる場合の要件の違いの点のみからなので、計数間の振替自体は、一定の手続きを前提とすれば、これを否定する理由はないとされている。 剰余金を準備金に組み入れるのは、会社に資金を留保するが、資本金よりは弾力性のある準備金に組み入れたいという場合もあるでしょうし、剰余金の配当に際して積み立てが必要となる額をあらかじめ積んでおきたいという場合に利用されることになると思います。なお、資本取引と損益取引の峻別という観点から、資本準備金に組み入れすることができるのはその他資本剰余金、利益準備金に組み入れることができるのはその他利益剰余金とされています。 ü
組み入れることができる剰余金 条文の上ではたんに剰余金となっているのですが、資本取引と損益取引の峻別という観点から、資本準備金に組み入れることができるのはその他資本剰余金、利益準備金に組み入れることができるのはその他利益準備金に限られています(会社計算規則26条1項、28条1項)。両者から同時に双方に組み入れてもよいし、どちらか一方のみを組み入れてもいい。 ü
組入決定機関(451条1項、2項) 剰余金を準備金に組み入れる場合には、株主総会決議によることが必要です(451条2項)。その決議において、減少する剰余金の額、準備金の増加が効力を生ずる日を定めなければなりません(451条1項)。この場合、組入先が財源により異なるので、減少する剰余金の額は、その他資本剰余金、その他利益剰余金ごとに定める必要があります。 この組入の決議は普通決議で決定されます(309条1項)。これもこれらの計数の変動は株主総会によることに統一されている(448条)ことによるものですが、拘束力が強くなる剰余金の資本組み入れを普通決議でできるとしていることから、より拘束力の弱い準備金への組み入れは普通決議で足りるというわけです。この剰余金の準備金への組み入れについても、定時株主総会に限らず、臨時株主総会決議でも可能です。定款の定めにより、この組入れを取締役会等に委ねることはできません(295条3項)。 組入れの効力が株主総会の決議で定めた日に生ずるのも、剰余金の資本金への組み入れの場合と同じです。この組入れにより、組み入れた額と同額の、資本準備金額、利益準備金額の増加が発生します(会社計算規則26条1項、28条1項)。 ü
組入限度額(451条3項) 組み入れる剰余金の額は、組み入れの効力発生日の剰余金の額の範囲内でなければなりません(451条3項)。 その他資本剰余金のみを資本準備金として組み入れる場合でも、その他利益剰余金がマイナスである等により、446条により算定される剰余金の額がその他資本準備金を下回っている場合には、その剰余金の額の範囲内でのみ組み入れが可能なこと、また、決議後剰余金の額が、決議で定めた組入額より減少した場合の効力は、剰余金の資本組入れの場合と同様です。 ü
開示 この変動は株主資本の区分内での変動であり、株主資本等移動計算書・連結株主資本等移動計算書において開示されます(会社計算規則96条2〜4項、7項)。 関連条文 会計の原則(431条) |