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第441条 臨時計算書類
 

 

Ø 臨時計算書類(441条)

@株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(以下この項において「臨時決算日」という。)における当該株式会社の財産の状況を把握するため、法務省令で定めるところにより、次に掲げるもの(以下「臨時計算書類」という。)を作成することができる。

一 臨時決算日における貸借対照表

二 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書

A第436条第1項に規定する監査役設置会社又は会計監査人設置会社においては、臨時計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役又は会計監査人(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会及び会計監査人、指名委員会等設置会社にあっては、監査委員会及び会計監査人)の監査を受けなければならない。

B取締役会設置会社においては、臨時計算書類(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。

C次の各号に掲げる株式会社においては、当該各号に定める臨時計算書類は、株主総会の承認を受けなければならない。ただし、臨時計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合は、この限りでない。

一 第436条第1項に規定する監査役設置会社又は会計監査人設置会社(いずれも取締役会設置会社を除く。) 第2項の監査を受けた臨時計算書類

二 取締役会設置会社 前項の承認を受けた臨時計算書類

三 前2号に掲げるもの以外の株式会社 第1項の臨時計算書類

 

ü 臨時計算書類とは(441条1項)

会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(臨時決算日)における会社の財産の状況を把握するため、法務省令で定めるところにより、臨時決算日における貸借対照表及び臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書(臨時計算書類)を作成することができます(441条)。株主総会の招集の通知に際しての株主への提供、公告あるいは電磁的方法による公開が要求されていないことを除けば、計算書類に関する規律と重なります。

臨時決算日における状況については、有価証券報告書提出会社には四半期報告書の提出が求められているのに対して、会社法では株主や債権者に適時に財務状況等の開示制度を整備することを重要視したことが臨時計算書類制度導入の背景にあると指摘する人もいます。しかし、臨時計算書類の作成は義務付けられているわけではなく、会社の任意に任されています。実際のところ、臨時計算書類導入の最も重要な目的は、会社が臨時会計年度中の損益、自己株式処分対価及び剰余金の配当や自己株式の取得を行うことを可能にするところです。

・臨時会計年度

臨時計算書類作成に係る期間(臨時会計期間)は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日が臨時決算日までの期間とされています。臨時決算日の選定については、中間決算日に相当する日や四半期決算日に相当する日などといった制約はなく、も任意に定めることができます。また、同一事業年度中に、複数回臨時計算書類を作成すことができます(会社計算規則158条5号)。

ü 臨時計算書類の作成

各事業年度に係る計算書類は事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければなりません(会社計算規則59条3項)が、それとおなじように臨時計算書類は、臨時会計年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければなりません(会社計算規則60条2項)。

計算書類には一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする(431条)と規定されていますが、臨時計算書類には、そのような規定がありません。一方で、臨時計算書類の作成は強制されているものではないこと、臨時計算書類の作成は、分配可能額に臨時損益計算書の対象期間における利益や自己株式処分対価を含めるために行われるという面が強いことから、少なくとも実績主義によることが求められると考えられます。また、有価証券報告書に対する四半期報告書の会計実績主義による会計処理を求めています。

ü 臨時計算書類の監査(441条2項)

各事業年度係る計算書類及びその附属明細書と同様に、臨時計算書類についても、監査を受けなければなりません。ここでいう監査は会計監査人による監査のみならず、監査役等による監査を含みます。

ü 取締役会の承認(441条3項)

取締役会設置会社においては、臨時計算書類は取締役会の承認を受けなければなりません(441条3項)。これは、臨時計算書類の作成は重要な業務執行の1つであり、302条4項の規定により当然に取締役会の承認を要すると考えられます。また、取締役及び執行役の第三者に対する損害賠償責任の関係でも、「計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、または記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録」(429条1項)したときは、取締役及び執行役は、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うものとされており、臨時計算書類に虚偽記載があったとき場合には計算書類に虚偽記載があったときと同様の責任を負うものとされています。

また441条3項括弧書きの「前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の監査を受けたもの」というのは、取締役会が会計監査人の監査報告及び監査役等の監査報告を踏まえて承認するか否かを判断することができるようにするためです。もし、会計監査報告または監査報告を踏まえて承認すれば、取締役としては承認するにあたって注意を怠らなかったことを主張・立証しやすいからです。また、取締役会の承認の後に会計監査人などの監査を受けなければならないとすると、監査を踏まえて修正された臨時計算書類についてまた会計監査人などの監査を受けなければならないことになります。さらに、計算書類などの承認に関する特則(441条4項但書)との関連で、取締役会の承認の時点で臨時計算書類が確定すると解されるからです。

ü 株主総会の承認(441条4項)

臨時計算書類は、原則として、株主総会の承認を受けなければならないものとされています(441条4項)。

ただし、臨時計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、臨時計算書類についての株主総会の承認を要しない。会社計算規則135条に従えば、臨時計算書類についての会計監査報告の内容に監査の対象となった臨時計算書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に準拠して、@臨時計算書に係る期間の財産及び損益の状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められる旨またはそれに相当する事項が含まれていること、Aその会計報告に係る監査役等の監査報告の内容として会計監査人の監査の方法または結果を相当でないとする意見がないこと、Bその会計監査報告に係る監査役等の監査報告に付記された内容が会計監査人の監査の方法または結果を相当でないとする意見がないこと、C承認特則規定に規定する臨時計算書類が監査を受けたものとみなされことが要件となります。

 

Ø 関連する会社計算規則

² 臨時計算書類(会社計算規則60条)

@臨時計算書類の作成に係る期間(次項において「臨時会計年度」という。)は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から臨時決算日までの期間とする。

A臨時計算書類は、臨時会計年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。

B株式会社が臨時計算書類を作成しようとする場合において、当該株式会社についての最終事業年度がないときは、当該株式会社の成立の日から最初の事業年度が終結する日までの間、当該最初の事業年度に属する一定の日を臨時決算日とみなして、法第441条の規定を適用することができる。

 

・臨時計算書類の作成に係る期間(臨時会計年度)(会社計算規則60条1項)

臨時計算書類の作成に係る期間(臨時会計年度)を定める規定であり、原則として、当該事業年度の前事業年度の末日から臨時決算日までの期間が臨時会計年度とされる441条1項2号から論理的に導かれる規定です。

・臨時計算書類の作成方法(誘導法)(会社計算規則60条2項)

各事業年度に係る計算書類及び附属明細書と同様、臨時計算書類は、臨時会計年度に係る会計帳簿に基づいて作成しなければなりません。

・初年度の臨時決算日(会社計算規則60条3項)

441条1項は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日を臨時決算日とすることを認めているが、株式会社の成立の日から最初の事業年度が終結する日までの期間(初年度)に、臨時計算書類の作成を認めなくてはならないという理由はなく、むしろ、例えば、株式移転により設立された会社には、臨時計算書類を作成して、剰余金の配当等を行う必要性がありえます。そこで、この条文は、株式会社についての最終事業年度がないときは、その株式会社の成立の日から最初の事業年度が終結する日までの間、当該最初の事業年度に属する一定の日を臨時決算日とみなして、その株式会社は臨時計算書類ほ作成することができると定められています。 

 

² 同一事業年度中に、複数回臨時計算書類類(会社計算規則158条5号)

5 最終事業年度の末日(最終事業年度がない場合にあっては、成立の日。第7号及び第十号において同じ。)後に2以上の臨時計算書類を作成した場合における最終の臨時計算書類以外の臨時計算書類に係る法第461条第2項第2号に掲げる額(同号ロに掲げる額のうち、吸収型再編受入行為及び特定募集(次の要件のいずれにも該当する場合におけるロの募集をいう。以下この条において同じ。)に際して処分する自己株式に係るものを除く。)から同項第5号に掲げる額を減じて得た額

イ 最終事業年度の末日後に法第173条第1項の規定により当該株式会社の株式の取得(株式の取得に際して当該株式の株主に対してロの募集により当該株式会社が払込み又は給付を受けた財産のみを交付する場合における当該株式の取得に限る。)をすること。

ロ 法第2編第2章第8節の規定によりイの株式(当該株式の取得と同時に当該取得した株式の内容を変更する場合にあっては、当該変更後の内容の株式)の全部又は一部を引き受ける者の募集をすること。

ハ イの株式の取得に係る法第171条第1項第3号の日とロの募集に係る法第百99条第1項第4号の期日が同一の日であること。

 

例えば四半期ごとに配当を行うために、事業年度中に3回、臨時計算書類を作成することが考えられます。2以上の臨時計算書類は、それぞれが最終事業年度の直後の初日から臨時決算日までを臨時会計年度とするものであるため(441条1項)、それらの臨時会計年度は一部が重なり合うこととなります。この場合に、461条2項2号及び5号をそのまま適用すると、臨時会計年度の期間損益が一部重複して分配可能額に反映されてしまうので、最終の臨時計算書類以外の臨時計算書類に係る461条2項2号及び5号の額を相殺し、最終の臨時計算書類についてのみ同号の額を反映させるようにしています。

つまり、461条2項2号に掲げる額から5号に掲げる額を、分配可能額の算定上、控除するため、2号の額があれば減算し、5号の額があれば加算することとなり、最終の臨時計算種類以外の臨時計算書について、期間利益の額または期間損失の額が相殺消去されます。

 

関連条文  

会計の原則(431条)   

会計帳簿の作成および保存(432条)    

会計帳簿の閲覧等の請求(433条)     

会計帳簿の提出命令(434条)    

計算書類等の作成及び保存(435条)   

計算書類等の監査等(436条)     

計算書類等の株主への提供(437条)  

計算書類等の定時株主総会への提出等(438条)    

会計監査人設置会社の特則(439条)     

計算書類の公告(440条)   

計算書類の備置き及び閲覧等(442条)     

計算書類等の提出命令(443条)    

連結計算書類(444条)     

資本金の額及び準備金の額(445条)    

剰余金の額(446条)    

資本金の額の減少(447条)    

準備金の額の減少(448条)    

債権者の異議(449条)    

資本金の額の増加(450条)    

準備金の額の増加(451条)    

剰余金についてのその他の処分(452条)    

 

 
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