新任担当者のための会社法実務講座 第446条 剰余金の額 |
Ø 剰余金の額(446条) 株式会社の剰余金の額は、第1号から第4号までに掲げる額の合計額から第5号から第7号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。 一 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額 イ 資産の額 ロ 自己株式の帳簿価額の合計額 ハ 負債の額 ニ 資本金及び準備金の額の合計額 ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 二 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を控除して得た額 三 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(次条第1項第2号の額を除く。) 四 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(第448条第1項第2号の額を除く。) 五 最終事業年度の末日後に第178条第1項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額 六 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における次に掲げる額の合計額 イ 第454条第1項第1号の配当財産の帳簿価額の総額(同条第4項第1号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く。) ロ 第454条第4項第1号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額 ハ 第456条に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額 七 前2号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 ü 剰余金とは 剰余金は、株主に対する分配可能額を算出する出発点となる数値であり、「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」からなるものです(446条、461条2項)。貸借対照表の「資本剰余金」及び「利益剰余金」の項目は準備金を含めた資本金以外の資本の大項目で、これに当たりません。 ・その他資本剰余金:資本剰余金の項目に含まれるもののうち、資本準備金以外のものを言います(会社計算規則76条4項)。それは資本取引から生ずるもので、具体的には次にあげるものが含まれます。 ア.自己株式処分差益(会社計算規則14条2項、17条2項、18条2項、40条1項) イ.財産価格填補責任等の履行のために支払われた額(会社計算規則21条) ウ.合併等の組織再編行為の際に生ずる合併差益等のうち資本金・資本準備金とされなかった額(会社計算規則35条2項他) エ.資本金の減少額のうち欠損填補・資本準備金への繰り入れに使用されなかった額(会社計算規則27条1項1号) オ.資本準備金の減少額のうち欠損填補・資本金への組入れに使用されなかった額(会社計算規則27条1項2号) ・その他利益剰余金:利益剰余金の項目に含まれるもののうち、利益準備金以外のものを言います(会社計算規則76条5項)。損益取引から発生する当期純損益金額が累積したものと言えます。 その内訳として、「任意積立金」及び「繰越利益剰余金」は、当期純利益金額が株主への財産分配または利益準備金の積み立てに使用されず、留保されている部分です。「当期未処理損失」は当期純損失金額が準備金の取崩等により填補されずに累積しているものです。 ü
剰余金の額(446条) 剰余金の額の算出の基準となるのは、「その他資本剰余金」の額及び「その他利益剰余金」の額です。その額の計算は、以下の@の加算額の合計からA控除額の合計を控除することで得ることができます。 @加算額(最終事業年度末日後の「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」の増加の合計額) ・最終事業年度の末日における「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」の合計額(446条1号) 条文にしたがえば、最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額です。 イ 資産の額 ロ 自己株式の帳簿価額の合計額 ハ 負債の額 ニ 資本金及び準備金の額の合計額 ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 つまり、 イ+ロ−(ハ+ニ+ホ)…(A) の式で計算されます。 上記のうち、イ〜ニは、最終事業年度の末日における貸借対照表上に計上されている額です。ホは会社計算規則149条に定められています。つまり、会社計算規則149条では、「法第446条第1号ホに規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第1号に掲げる額から第2号から第4号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。」としています。 1 法第446条第1号イ及びロに掲げる額の合計額 2 法第446条第1号ハ及びニに掲げる額の合計額 3 その他資本剰余金の額 4 その他利益剰余金の額 つまり ホ=イ+ロ−(ハ+ニ+その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額)…(B) 上記の(A)式に(B)式を代入すると イ+ロ−(ハ+ニ+ホ) =イ+ロ−(ハ+ニ+(イ+ロ−(ハ+ニ+その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額))) =その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額 つまり、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額です。 ・最終事業年度の末日後の自己株式処分差損額(446条2号) 例えば帳簿価額100円の自己株式を120円で処分した場合、20円がこれに当たります。自己株式処分差益または差損はその他資本剰余金を増減させるので、剰余金の増減をもたらします。 ・資本金の減少額(446条3号) 資本金減少差益です。たとえば、資本金1000万円の会社がその資本金の額447条に従って100万円減少し、減少分の一部または全部を準備金に組み入れられなかったような場合で、かつ欠損補填をしなかった場合、400万音が該当します。これはその他資本剰余金となるので、剰余金の増加をもたらします。 ・備金の減少額(446条4号) 準備金減少差益です。資本金の減少額と同じように、例えば、準備金500万円の会社その準備金の額を448条の手続きにより100万円減少し、減少分の一部または全部を資本金に組み入れなかったような場合で、かつ欠損填補をしなかった場合の100万円が、これに当たります。これはその他資本剰余金となるので剰余金の増加をもたらすのです。 ・吸収型再編受入行為の際の「その他資本準備金」及び「その他利益準備金」の増加額(446条7号、会社計算規則150条) 会社計算規則150条に定められています。 A控除額(最終事業年度末日後の「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」の減少の合計額) ・最終事業年度の末日後に消却した自己株式の帳簿価額(446条5号) 自己株式の消却をした時のその自己株式の帳簿価額です。この場合は自己株式の帳簿価額分だけその他資本剰余金が減少するので(会社計算規則24条)、剰余金の増減をもたらします。 ・剰余金の配当をした場合の「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」の減少額(446条6号) 剰余金の配当をした場合の配当額です。この場合は、446条6号に定める額だけその他利益剰余金またはその他資本剰余金が減少するので(会社計算規則23条)、剰余金の減少をもたらします。 ・分割会社が剰余金の額を減少した場合の減少額(446条7号、会社計算規則150条) ・資本金または準備金への繰入額(446条7号、会社計算規則150条) 会社計算規則150条に定められています。 Ø
関連する会社計算規則 ² その他資本剰余金の額(会社計算規則27条) @株式会社のその他資本剰余金の額は、第1款及び第4節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。 1 法第447条の規定により資本金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(同項第2号に規定する場合にあっては、当該額から同号の額を減じて得た額)に相当する額 2 法第448条の規定により準備金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(資本準備金に係る額に限り、同項第2号に規定する場合にあっては、当該額から資本準備金についての同号の額を減じて得た額)に相当する額 3 前2号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を増加すべき場合 その他資本剰余金の額を増加する額として適切な額 A株式会社のその他資本剰余金の額は、前3款及び第4節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。 1 法第450条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額 2 法第451条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額 3 前2号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を減少すべき場合 その他資本剰余金の額を減少する額として適切な額 B前項、前3款及び第4節の場合において、これらの規定により減少すべきその他資本剰余金の額の全部又は一部を減少させないこととすることが必要かつ適当であるときは、これらの規定にかかわらず、減少させないことが適当な額については、その他資本剰余金の額を減少させないことができる。 ・その他資本剰余金の増加 その他資本剰余金が増加するのは、会社計算規則第2編第3章第1節第1款(会社計算規則13〜21条)及び同章第4節(会社計算規則35〜39条)に定める他は、次の場合だけです。 1)資本金の額を減少した場合で資本準備金に組み入れない場合(447条) 2)資本準備金の額を減少した場合で資本金に組み入れない場合(448条) 3)これらのほか、その他資本剰余金の額を増加すべき場合 3)の「その他資本剰余金の額を増加すべき場合」には「その他資本剰余金の額を増加する額として適切な額」だけその他資本剰余金が増加するのですが、「その他資本剰余金の額を増加する額」と「その他資本剰余金を増加する額として適切な額」は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」を斟酌して決定されます。例えば、自己株式を処分した場合の処分差益がこれに当たります。 ・その他資本剰余金の減少 その他資本剰余金の額が減少するのは、会社計算規則第3章第1節第1〜3款、同章第4節に定めるほかは、次の場合だけです。 1)その他資本剰余金を減少して資本金に組み入れる場合(450条) 2)その他資本剰余金を減少して資本準備金に組み入れる場合(451条) 3)これらのほか、その他資本剰余金の額を変更すべき場合 3)の場合は、「その他資本剰余金の額を減少する額として適切な額」が減少します。 ※「前項、前3款及び第4節の場合において、これらの規定により減少すべきその他資本剰余金の額の全部または一部を減少させないこととすることが必要かつ適当であるときは、これらの規定にもかかわらず、減少させないことが適当な額については、その他資本剰余金の額を減少させないことができる」(第3項) この条文の内容と上記3)の適用については、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」に委ねられると解されています。例えば、3)の例として、自己株式を処分した場合で自己株式処分差損を生じた場合が挙げられます。また、新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合など、会社計算規則25条2項に挙げられているような場合にも、資本の額や資本準備金の額を減額するしかないと考えられます。 この条文の適用例としては、例えば、企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」12項は、「〔自己株式の処分及び消却〕の会計処理の結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金をゼロとし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する」と定めており、期末においてその他資本準備金をマイナスとする処理を認めていません。この場合には、この条文に該当するものと解されています。 ²
その他利益剰余金の額(会社計算規則29条) @株式会社のその他利益剰余金の額は、第4節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。 1 法第448条の規定により準備金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(利益準備金に係る場合に限り同項第2号に規定する場合にあっては、当該額から利益準備金についての同号の額を減じて得た額)に相当する額 2 当期純利益金額が生じた場合、当該当期純利益金額 3 前2号に掲げるもののほか、その他利益剰余金の額を増加すべき場合 その他利益剰余金の額を増加する額として適切な額 A株式会社のその他利益剰余金の額は、次項、前3款及び第4節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。 1 法第450条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額 2 法第451条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第1項第1号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額 3 当期純損失金額が生じた場合、当該当期純損失金額 4 前3号に掲げるもののほか、その他利益剰余金の額を減少すべき場合 その他利益剰余金の額を減少する額として適切な額 B第27条第3項の規定により減少すべきその他資本剰余金の額を減少させない額がある場合には、当該減少させないことが適当に相当する額をその他利益剰余金から減少させるものとする。 ・その他利益剰余金の増加 その他利益剰余金が増加するのは、会社計算規則第2編第3章第4節(会社計算規則35〜391条)及び同章第4節(会社計算規則35〜39条)に定める他は、次の場合だけです。 1)利益準備金の額を減少した場合で資本金に組み入れない場合(448条) 2)当期純利益金額が生じた場合 3)これらのほか、その他利益純剰余金の額を増加すべき場合 3)の「その他利益剰余金の額を増加すべき場合」には「その他利益剰余金の額を増加する額として適切な額」だけその他利益剰余金が増加しますが、「その他利益剰余金の額を増加すべき場合」と「その他利益剰余金の額を増加する額として適切な額」は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」を斟酌して決定されます。 ・その他利益剰余金の減少 その他利益剰余金の額が減少するのは、この条文の第3項、会社計算規則第2編第3章第1節第款、同章第4節に定めるほかは、次の場合だけです。 1)その他利益剰余金を減少して資本金に組み入れる場合(450条) 2)その他利益剰余金を減少して利益準備金に組み入れる場合(451条) 3)当期純損失金額が生じた場合 4)これらのほか、その利益剰余金の額を変更すべき場合 4)の場合は、「その他利益剰余金の額を減少する額として適切な額」が減少します。 ²
最終事業年度の末日における控除額(会社計算規則149条) 法第446条第1号ホに規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第1号に掲げる額から第2号から第4号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。 1 法第446条第1号イ及びロに掲げる額の合計額 2 法第446条第1号ハ及びニに掲げる額の合計額 3 その他資本剰余金の額 4 その他利益剰余金の額
剰余金の額の算出に際して、会社法446条1号ホで「法務省令で定める各勘定科目」としているのを、ここで定めています。446条1号は、最終事業年度の末日における剰余金の額を定めています。この条文の1号と2号により、446条1号のイからニまでの数値は相殺されます。したがって、446条1号の額は、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額であることになります。 なお、その他資本剰余金は、資本剰余金の項目に含まれるもののうち、資本準備金以外のものです(会社計算規則76条4項)。その他利益剰余金は、利益剰余金の項目に含まれるもののうち、利益準備金以外のものであす(会社計算規則76条5項)。いずれも、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」を斟酌して、会社計算規則13条以下に従って算出されます。 ²
最終事業年度の末日後に生ずる控除額(会社計算規則150条) @法第446条第7号に規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第1号から第4号までに掲げる額の合計額から第5号及び第6号に掲げる額の合計額を減じて得た額とする。 1 最終事業年度の末日後に剰余金の額を減少して資本金の額又は準備金の額を増加した場合における当該減少額 2 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における第23条第1号ロ及び第2号ロに掲げる額 3 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式に係る法第446条第2号に掲げる額 4 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収分割会社又は新設分割会社となる吸収分割又は新設分割に際して剰余金の額を減少した場合における当該減少額 5 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為をした場合における当該吸収型再編受入行為に係る次に掲げる額の合計額 イ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他資本剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他資本剰余金の額を減じて得た額 ロ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他利益剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他利益剰余金の額を減じて得た額 6 最終事業年度の末日後に第21条の規定により増加したその他資本剰余金の額 A前項の規定にかかわらず、最終事業年度のない株式会社における法第446条第7号に規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第1号から第5号までに掲げる額の合計額から第6号から第12号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。 1 成立の日(法以外の法令により株式会社となったものにあっては、当該株式会社が株式会社となった日。以下この項において同じ。)後に法第178条第1項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額 2 成立の日後に剰余金の配当をした場合における当該剰余金の配当に係る法第446条第6号に掲げる額 3 成立の日後に剰余金の額を減少して資本金の額又は準備金の額を増加した場合における当該減少額 4 成立の日後に剰余金の配当をした場合における第23条第1号ロ及び第2号ロに掲げる額 5 成立の日後に株式会社が吸収分割会社又は新設分割会社となる吸収分割又は新設分割に際して剰余金の額を減少した場合における当該減少額 6 成立の日におけるその他資本剰余金の額 7 成立の日におけるその他利益剰余金の額 8 成立の日後に自己株式の処分をした場合(吸収型再編受入行為に際して自己株式の処分をした場合を除く。)における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を減じて得た額 9 成立の日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(法第447条第1項第2号の額を除く。) 10 成立の日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(法第448条第1項第2号の額を除く。) 11 成立の日後に株式会社が吸収型再編受入行為をした場合における当該吸収型再編に係る次に掲げる額の合計額 イ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他資本剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他資本剰余金の額を減じて得た額 ロ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他利益剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他利益剰余金の額を減じて得た額 十二 成立の日後に第21条の規定により増加したその他資本剰余金の額 B 最終事業年度の末日後に持分会社が株式会社となった場合には、株式会社となった日における当該株式会社のその他資本剰余金の額及びその他利益剰余金の額の合計額を最終事業年度の末日における剰余金の額とみなす。 446条7号の委任を受けて、そこで規定する最終事業年度の末日後における剰余金の変動額のうちで剰余金の額の算出に際して減算・加算すべき額を規定しています。 ・第1項の規定 この条文は、最終事業年度がある株式会社における最終事業年度の末日後の剰余金額の変動について、以下の@〜Eのように規定しています。 @最終事業年度の末日後に剰余金の額を減少して資本金または準備金の額を増加した場合における減少額(会社計算規則150条1項1号) この場合には、その他資本剰余金またはその他利益剰余金が減少するため、剰余金の減少をもたらします。 A最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における会社計算規則23条1号及び2号に掲げる額(会社計算規則150条1項2号) 剰余金の配当に際して準備金積立義務がある場合には、積立分だけ剰余金の減少をもたらします。 B最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式に係る自己株式処分差益または差損(会社計算規則150条1項3号) この後のDのイに含まれます。 C最終事業年度の末日後に株式会社が吸収分割会社または新設分割会社となる吸収分割となる吸収分割または新設分割に際して剰余金の額を減少した場合における減少額(会社計算規則150条1項4号) この場合は、いうまでもなく剰余金の減少をもたらします。 D最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入れ行為をした場合における吸収型受入れ行為に係る次の額の合計額(会社計算規則150条1項5号) イ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他資本剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他資本剰余金の額を減じて得た額 ロ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他の利益剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他利益剰余金の額を減じて得た額 吸収型再編受入行為によりその他資本剰余金およびその他利益剰余金が増減するため、剰余金の加減をもたらします。 E最終事業年度の末日後に会社計算規則21条の規定により増加したその他資本剰余金の額(会社計算規則150条1項6号) 不足額や差額の填補義務が履行された場合にはその他資本剰余金が増加するため、剰余金の増加をもたらします。 ・第2項の規定 この条文は、最終事業年度がない株式会社における剰余金の変動について、成立の日を最終事業年度の末日とみて446条及び前項の算出方法を適用するという考え方に立って、以下の@〜Eのように規定しています。 @成立の日後に自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額(会社計算規則150条2項1号) 最終事業年度がある株式会社についての446条5号に相当します。 A成立の日後に剰余金の配当をした場合における当該剰余金の配当に係る446条6号に掲げる額(会社計算規則150条2項2号) 最終事業年度がある株式会社についての446条6号に相当します。 B成立の日後に剰余金の額を減少して資本金の額または準備金の額を増加した場合における当該減少額(会社計算規則150条2項3号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項1号に相当します。 C成立の日後に剰余金の配当をした場合における会社計算規則23条1号及び2号に掲げる額(会社計算規則150条2項4号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項2号に相当します。 D成立の日後に株式会社が吸収分割会社または新設分割会社となる吸収分割または新設分割に際して剰余金の額を減少した場合における当該減少額(会社計算規則150条2項5号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項4号に相当します。 E成立の日後におけるその他資本剰余金の額(会社計算規則150条2項6号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項3号に相当します。 F成立の日後におけるその他利益剰余金の額(会社計算規則150条2項7号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項4号に相当します。 G成立の日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を減じて得た額(会社計算規則150条2項8号) 最終事業年度がある株式会社についての446条2号と会社計算規則150条1項3号に相当します。 H成立の日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(会社計算規則150条2項9号) 最終事業年度がある株式会社についての446条3号に相当します。 I成立の日後に準備の額の減少をした場合における当該減少額(会社計算規則150条2項10号) 最終事業年度がある株式会社についての446条4号に相当します。 J成立の日後に株式会社が吸収型再編受入行為をした場合における当該吸収型再編に係る次に掲げる額の合計額(会社計算規則150条2項11号) イ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他資本剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他資本剰余金の額を減じて得た額 ロ 当該吸収型再編後の当該株式会社のその他の利益剰余金の額から当該吸収型再編の直前の当該株式会社のその他利益剰余金の額を減じて得た額 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項5号に相当します。 K最終事業年度の末日後に会社計算規則21条の規定により増加したその他資本剰余金の額(会社計算規則150条2項12号) 最終事業年度がある株式会社についての会社計算規則150条1項6号に相当します。 ・第3項の規定 この条文は、最終事業年度の末日後に持分会社となった場合には、446条にいう最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金とその他利益剰余金は存在しないことになる。そこで、この3項は、株式会社となった日におけるその他資本剰余金の額とその他利益剰余金の額の合計額を最終事業年度の末日における剰余金の額とみなすと規定しています。 ²
自己株式(会社計算規則24条) @株式会社が当該株式会社の株式を取得する場合には、その取得価額を、増加すべき自己株式の額とする。 A株式会社が自己株式の処分又は消却をする場合には、その帳簿価額を、減少すべき自己株式の額とする。 B株式会社が自己株式の消却をする場合には、自己株式の消却後のその他資本剰余金の額は、当該自己株式の消却の直前の当該額から当該消却する自己株式の帳簿価額を減じて得た額とする。株式会社がる。 ・自己株式の取得 自己株式を取得する場合は、自己株式に付すべき帳簿価額は所得価額です(会社計算規則24条1項)。 この取得価額とは、金銭を対価として自己株式を取得する場合には、取得のために支払った額のことでするまた、対価が金銭以外の財産で支払った場合には、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」を考慮して決めることになります。なお、自己株式を無償で取得した場合は、自己株式の数のみの増加として処理することになります(自己株式運用指針)。 ・自己株式の処分と消却 自己株式を処分または消却する場合は、減少する自己株式の額だけ自己株式の帳簿価額が減少します(会社計算規則24条2項)。具体的な帳簿価額は、会社が定めた計算方法に従って株式の種類ごとに算定します。 自己株式を消却した場合は、その自己株式の帳簿価格分だけその他資本剰余金が減少します(会社計算規則24条3項)。自己株式を処分した場合については、自己株式処分差益または差損の分だけその他資本剰余金が増減することになります。 ²
吸収分割会社の自己株式の処分(会社計算規則40条) @吸収分割により吸収分割会社(株式会社に限る。)が自己株式を吸収分割承継会社に承継させる場合には、当該吸収分割後の吸収分割会社のその他資本剰余金の額は、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号に掲げる額を減じて得た額とする。 1 吸収分割の直前の吸収分割会社のその他資本剰余金の額 2 吸収分割会社が交付を受ける吸収型再編対価に付すべき帳簿価額のうち、次号の自己株式の対価となるべき部分に係る額 3 吸収分割承継会社に承継させる自己株式の帳簿価額 A前項に規定する場合には、自己株式対価額は、同項第二号に掲げる額とする。 収集分割に際して、吸収分割会社である株式会社である株式会社が保有する自己株式を吸収分割承継会社に承継させる場合の吸収分割会社の会計処理です。 一般的には、自己株式の処分はその他資本剰余金の変動により行います。条文では1項2号の「吸収分割会社が交付を受ける吸収型再編対価に付すべき帳簿価額のうち、次号の自己株式の対価となるべき部分に係る額」と3項の「吸収分割承継会社に承継させる自己株式の帳簿価額」の差額は自己株式処分差益または差損に相当し、その額だけその他資本剰余金の額が増減します。 ²
株式交換完全子会社の自己株式の処分(会社計算規則41条) @株式交換完全子会社が株式交換に際して自己株式を株式交換完全親会社に取得される場合には、当該株式交換後の株式交換完全子会社のその他資本剰余金の額は、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号に掲げる額を減じて得た額とする。 1 株式交換の直前の株式交換完全子会社のその他資本剰余金の額 2 株式交換完全子会社が交付を受ける吸収型再編対価に付すべき帳簿価額 3 株式交換完全親会社に取得させる自己株式の帳簿価額 A 前項に規定する場合には、自己株式対価額は、同項第二号に掲げる額とする。 株式交換に際して、株式交換完全子会社が保有する自己株式を株式交換完全親会社に取得される場合の株式交換完全子会社の会計処理です。 一般的には、自己株式の処分はその他資本剰余金の変動により行います。条文では1項2号の「株式交換完全子会社が交付を受ける吸収型再編対価に付すべき帳簿価額」と3項の「株式交換完全親会社に取得させる自己株式の帳簿価額」の差額は自己株式処分差益または差損に相当し、その額だけその他資本剰余金の額が増減します。 ²
株式移転完全子会社の自己株式の処分(会社計算規則42条) @株式移転完全子会社が株式移転に際して自己株式を株式移転設立完全親会社に取得される場合には、当該株式移転後の株式移転完全子会社のその他資本剰余金の額は、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号に掲げる額を減じて得た額とする。 一 株式移転の直前の株式移転完全子会社のその他資本剰余金の額 二 株式移転完全子会社が交付を受ける新設型再編対価に付すべき帳簿価額のうち、次号の自己株式の対価となるべき部分に係る額 三 株式移転設立完全親会社に取得させる自己株式の帳簿価額 2 前項に規定する場合には、自己株式対価額は、同項第二号に掲げる額とする。 株式移転に際して、株式移転交換完全子会社が保有する自己株式を株式交換完全親会社に取得される場合の株式交換完全子会社の会計処理です。 一般的には、自己株式の処分はその他資本剰余金の変動により行います。条文では1項2号の「株式交換完全子会社が交付を受ける吸収型再編対価に付すべき帳簿価額」と3項の「株式交換完全親会社に取得させる自己株式の帳簿価額」の差額は自己株式処分差益または差損に相当し、その額だけその他資本剰余金の額が増減します。
関連条文 会計の原則(431条) |