新任担当者のための会社法実務講座 第411条 招集手続等 |
Ø 招集手続等(411条) @指名委員会等を招集するには、その委員は、指名委員会等の日の一週間(これを下回る期間を取締役会で定めた場合にあっては、その期間)前までに、当該指名委員会等の各委員に対してその通知を発しなければならない。 A前項の規定にかかわらず、指名委員会等は、当該指名委員会等の委員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。 B執行役等は、指名委員会等の要求があったときは、当該指名委員会等に出席し、当該指名委員会等が求めた事項について説明をしなければならない。 ü
招集の通知(411条1項) ・招集の時期 委員会を招集しようとする委員は、委員会の日の1週間前までに、当該委員会の各委員に対して、招集通知を発しなければなりません(411条1項)。この場合の招集期間の1週間とは、民法の期間計算の原則により、まる1週間を意味します(民法140条、初日不算入原則)。 委員会の法定の招集期間は取締役会の定めにより短縮することができます(411条1項但書)。取締役会や監査役会の場合には招集通知期間の短縮には定款の定めが必要(368条1項、392条1項)でしたが、委員会は取締役会の内部機関であることから、取締役会の決議により期間短縮ができることになっています。ただし、委員会の決議では期間の短縮はできません。 ・招集通知の内容と通知方法 招集通知の方法に制限はありません。取締役会の場合と同様に、書面や電磁的方法だけでなく口頭でも有効です。実務上は、社外取締役である委員の存在に留意して書面や電子メールなどの方法が採られています。 招集通知には、委員会開催の日時と場所を特定しなければなりません。その通知により、委員は委員会に出席できなければならないので、そのために必要な事項を記載しなければなりません。 他方で、目的事項を示す必要はないとされています。株主総会の招集通知は会議の目的事項を記載しなければなりませんが、取締役会や委員会の場合とは違います。株主総会の場合には、株主に対して、総会に出席するかどうかを判断する材料として、また出席するとしてその準備の材料として、議題の記載が要求されるのに対して、取締役会や委員会の場合には、取締役や委員はその職務として取締役会や委員会に出席する義務があり、それに出席するかどうかの自由がなく、また、出席したら、業務執行に関する諸般の事項が議題とされることを予期すべきだからです。したがって、例えば、招集通知に一定の事項を議題とする旨の記載がなされていても、それに拘束されることなく、それ以外の事項も議題にすることができる。つまり、議題ないし議案は各取締役や委員が提起することができる。そういうところが株主総会と違うと考えられています。また、会議の目的事項が特定されている招集通知であっても、当該目的事項に特別利害関係を有する委員に対しても招集通知を発しなければなりません(298条2項)。 ü
招集手続の省略(411条2項) 各委員会の招集手続きは当該委員会の委員に出席する機会を確保することを目的とするため、当該委員会の委員全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく開催することができます(411条2項、300条、368条2項、392条2項)。すべての委員が当該委員会に出席する必要はありません。定例会の定めがあるときは、委員会の委員全員が明示的または黙示的に招集手続の省略に同意していると解されています。 また、委員会の委員が一堂に会して審議及び決議することに同意するときは、招集手続の有無は問題となりません(全員出席委員会)。 ü
執行役に対する出席・説明要求(411条3項) 各委員会に出席して審議に参加し議決に加わることができるのは、当該委員会の委員に限られます委員でない取締役のほか執行役は、当然には、委員会に出席し意見を表明することはできません。しかし、委員会の職務執行上、執行役や取締役等の意見聴取や説明が必要となる場合があります。このたる、委員会は、執行役と取締役、さらに会計参与に対して当該委員会に出席することを要求することができ、当該執行役等は当該委員会に出席して、委員会の求めた事項について説明しなければなりません(411条3項)。執行役の出席を求めるのは、主として執行役の職務執行に対する監査機能の実質化のためと考えられます。また、取締役に対しては、取締役の職務執行に対する監査機能の実質化と共に、委員会の緊密な連携のためであり、通常、他の委員会の委員である取締役の出席が求められることになります。 各委員会は、その委員会の決議に基づいて、執行役等の出席説明を要求します。委員会においては、誰に出席を求めるのか、どのような事項について説明を求めるのか、いつ開催される委員会に出席を求めるのか、決議されることになります。委員会の名において出席を求める際、執行役等に対して説明を求める事項を特定することなどは合理的であすが、それが義務付けられているわけではありません。説明を求める事項を特定して出席を求めた場合でも、委員会は、必要と認められるときは適宜、執行役等については当該指定事項以外の事項についても質問することができます。それに対して、執行役等は誠実に説明しなければなりません。委員会の委員は善管注意義務を尽くして、質問し、対する執行役等は善管注意義務を尽くして説明しなければなりません。 指名委員会においては、取締役の選解任策定との関連において、当該取締役の出席を求めて、その職務執行状況等について説明を受けることがあると考えられます。他の取締役、とりわけ監査委員からの意見を聴取する場合などが考えられます。報酬委員会においては、とりわけ、執行役の報酬との関連で執行役や監査委員である取締役から説明を受けることがあると考えられます。そして、監査委員会では、より日常的に執行役等からその職務執行状況の説明を受けることなどが考えられます。なお、執行役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、ただちに、当該事実を監査委員に報告しなければなりません(419条)が、これを監査委員会において報告することもできます。 この場合の執行役等の対象に会計監査人は含まれていません。指名委員会や報酬委員会の業務との関係では会計監査人の出席を求める必要がないからです。しかし、監査委員は会計監査人と連携して会計監査業務を遂行し、内部統制システムとの関連においても監査委員会と会計監査人の連携を図ることが求められています。従って、監査委員会は会計監査人に委員会への出席を求めることができる解することができます(会社法施行規則111条3項)。 監査委員会が選定する監査委員は、執行役等のほか使用人に対しても職務執行事項の報告を求めることができます(405条)。なお、委員会が使用人に出席を求め質問することができる旨の一般規定はありません。これも、指名委員会や報酬委員会が使用人から直接に説明を求める必要がないからと考えられます。
関連条文 第1款.委員の選定、執行役の選任等 第2款.指名委員会等の権限等 指名委員会等設置会社の執行役又は取締役との訴えにおける会社の代表等(408条) 第3款.指名委員会等の運営 招集手続等(411条) 第4款.指名委員会等設置会社の取締役の権限等 執行役の権限(418条) |