新任担当者のための会社法実務講座
第410条 招集権者
 

 

Ø 招集権者(410条)

指名委員会等は、当該指名委員会等の各委員が招集する。

 

ü 指名委員会等の運営

会社法410条から414条では指名委員会等の運営について具体的に定めています。その内容は監査役会の運営に関する規定と基本的に同じです。それならば、監査役会に関する条文の準用ですませばよいところですが、もともと監査役会と指名委員会等とでは会社の機関としての性格も権限も異なるのと、細かなところで違いがあるので準用では間に合わず、別に規定を設けたといえそうです。その違いは、執行役に関する特別規定(411条3項)があるほか、取締役による委員会議事録の閲覧謄写に関する特別規定(413条2項)が設けられていること、さらに、指名委員会等は取締役会の内部機関であるため、委員会の決議については、監査役会ではなく、取締役会と同様の規定が設けられていること(412条369条393条)などです。

ü 招集権者

各委員会の招集権者については、当該委員会の各委員が招集する旨が明確に規定されています。これについては、取締役会とは異なり、当該委員会または取締役会の決議により、もちろん定款をもってしても、特定の委員の独占的な招集権を認めることはできない(361条1項但書)。これは監査役会におけると同趣旨の規定です(391条)。

監査役会が独占的な招集権者を認めない理由としては、監査役会の主たる機能は監査役間の連絡機関であり、各監査役に監査役会の招集権を認めても実務が混乱するおそれは少ないこと、監査役間の緊密な連携のためには各監査役の監査役会招集権を認める必要があることのほか、とりわけ各監査役は独立の監査機関として対等の立場で監査業務を遂行することが求められることなどから、特定の監査役に独占的な監査役会招集権を認めると監査役の間に事実上の上下関係を生じさせる恐れがあることだとされています。

これに対して、各委員会の場合は、各委員が独立にその職務を執行するものとはされていません。したがって、この規定の理由は監査役会のばあとはことなります。つまり、各委員が委員会を招集する必要があると考えためです。

監査役会の場合と同様、各委員会規則において、当該委員会の特定の委員を委員会の原則粋な招集者(第一次招集権者)とすることはできます。このような定めがある場合には、原則として、その特定の委員より当該委員会が招集されます。しかし、この場合、他の委員の委員会招集権が制約されるわけではありません。各委員は、必要があると認めるときには、適宜、委員会を招集することができます。 

 

関連条文

第1款.委員の選定、執行役の選任等

   委員の選定等(400条)

  委員の解職等(401条)  

  執行役の選任等(402条)  

  執行役の解任(403条)  

第2款.指名委員会等の権限等

  指名委員会等の権限等(404条)  

  監査委員会による調査(405条)     

  取締役会への報告義務(406条)  

  監査委員会の執行役等の行為の差止め(407条)  

  指名委員会等設置会社の執行役又は取締役との訴えにおける会社の代表等(408条)  

  報酬委員会による報酬の決定の方法等(409条)

第3款.指名委員会等の運営 

  招集権者(410条) 

  招集手続等(411条)  

  指名委員会等の決議(412条)  

  議事録(413条)  

  指名委員会等への報告の省略(414条)  

第4款.指名委員会等設置会社の取締役の権限等 

  指名委員会等設置会社の取締役の権限(415条)   

  指名委員会等設置会社の取締役会の権限(416条)   

  指名委員会等設置会社の取締役会の運営(417条)   

  執行役の権限(418条)  

  執行役の監査委員に対する報告義務(419条)   

  代表執行役(420条)   

  表見代表執行役(421条)   

  株主による執行役の行為の差止め(422条)   

 
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