4.株主総会の実務(2)~文書
(3)株主総会参考書類
定款変更に関する件「定款について」
 

 

●「定款」とは何か

定款は会社関係者の利害を調整する一種の自治規則と言うことができます。株式会社は、営利を目的とする法人であり、その活動が小規模なものであれば制限を設ける必要はありませんが、大規模になれば、利害関係人の範囲も広くなり、調整の必要性が生じてきます。例えば、株主からの出資を受けるだけでなく、借入・社債発行等により資金調達を行ないますが、この場合、株主と債権者との間に利害調整が必要になってきます。

そこで、会社の事業目的や会社にとって最適な自治規則を定款に定めることにより、利害調整を図っていると言えます。

また、定款はね会社を設立するに際して、その作成に当たった発起人だけではなく、将来株主となる者についても拘束する効力を持つと理解されているため、会社設立後に、事業目的の追加等の定款変更が必要となる時は、株主総会の特別決議が必要とされています。

な、定款には、会社の組織、株式に関する事項、活動等を定める根本規則を意味する実質的意義における定款と、これを記載した書面を指す形式的意義における定款があります。会社法27条でいう定款は、このような書面としての定款を指しています。会社設立に当たっては、この書面としての定款を作成して、発起人が署名または記名捺印し、公証人の認証を受ける必要があります。

 

●定款の記載事項

定款の記載事項には、定款に必ず記載することを要し、その事項の記載を欠くときは定款全体の無効をきたす絶対的記載事項、定款をもって規定しておかなければその事項について効力が生じない相対的記載事項の他、会社法29条に基づき、会社法の規定に違反しないものを記載する任意的記載事項の3種類があります。このうち、任意的記載事項は、公の秩序、善良の風俗に反しない内容でなくてはならないとともに、会社法及び法務省令の強行法規に反しない内容でなくてはならない。任意的記載事項であっても、自治規則として、取締役、監査役、株主を拘束する効力を有する規定もあります。

①絶対的記載事項(会社法27条、37条)

・目的

・商号

・発行可能株式総数

・本店の所在地

※原始定款の記載事項として上記のほかに次の2点

・会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

・発起人の氏名または名称及び住所

②相対的記載事項の例

(1)株式に関する事項

・取締役会決議による自己の株式取得(会社法165条2項)

・単元株式数(会社法188条1項)

・単元未満株式に係る権利制限(会社法189条2項)

・株式の内容についての特段の定め(会社法107条2項)

・種類株式の内容及び数(会社法108条2項)

・株主名簿管理人の設置(会社法123条)

・単元未満株式買増制度(会社法194条1項)

(2)株主総会に関する事項

・株主総会の付議事項(会社法295条2項)

・普通決議の決議方法に関する別段の定め(会社法309条1項

・特別決議の定足数の過半数以外の割合(3分の1以上)設定と決議要件の加重(会社法309条2項

・株主総会招集通知のインターネット開示(94条1項、133条3項、計算書類規則133条4項、同134条4項)

(3)株主総会以外の機関に関する事項

・株主総会、取締役以外の機関の設置(会社法326条2項

・役員選解任定足数の過半数以外の割合(3分の1以上)設定と決議要件の加重(会社法341条)

・取締役選任に関する累積投票の排除(会社法342条1項)

・補欠として選任された監査役の任期(会社法336条3項)

・補欠の役員選任の決議の効力に関する別段の定め(96条3項)

・取締役会及び監査役会の招集通知期間の短縮(会社法368条1項392条1項

・取締役会決議要件の加重(会社法369条1項

・取締役会の書面決議(会社法370条

・役員等の責任免除(会社法426条)

・社外取締役、社外監査役、会計参与、会計監査人との責任限定契約(会社法427条)

(4)その他の事項

・会社の公告方法(会社法939条)

・基準日の設定(会社法124条)

・剰余金の配当等の決議機関の特則と株主総会決議しない旨の定め(会社法459条、460条)

・中間配当(会社法454条5項)

・株主権の行使要件の緩和(会社法297条1項、同303条2項、同35条1項等)

③任意的記載事項の例

・株式取扱規程

・株主総会の招集権者及び議長

・議決権行使の代理人資格限定

・取締役及び監査役の員数

・代表取締役及び役付取締役に関する事項

・取締役会及び監査役会の招集手続

・取締役会及び監査役会の決議方法

・取締役会規程、監査役会規程

・取締役及び監査役の報酬

・常勤の監査役

・事業年度

・配当金支払請求権の除斥期間

定款規定の配列としては、総則、株式、株主総会、取締役及び取締役会、監査役及び監査役会、計算の6章とするケースが多いようです。

 

●定款の効力

定款は、それを作成した発起人のみならず、会社に加入する株主及び会社の機関を当然に拘束する効力を有しています。ただし、法令の強行法規に反する定款の規定は無効とされます。

法律によるみなし規定により実質上定款変更となってしまっている場合に、通常は法律施行後の最初の株主総会で形式的な定款変更決議を行なうことが一般的です。

なお、株式分割の場合の分割比の範囲内での発行可能株式総数の増加あるいは1単元の株式数の減少等のように、取締役会決議によって実質的に定款の条文の内容が変更となってしまうことが法律に明確に規定されている場合には、取締役会での決議日に定款が形式的に変更されたということになります。

会社設立後、取締役は定款を本店及び支店に備え置かなければなりません。株主及び債権者は、営業時間内であれば何時でも定款の閲覧又は謄写または謄抄本の交付等を求めることができます(会社法31条2項)。ただし、定款が電磁的記録で作成されている場合、支店において閲覧等に応じるための一定の措置がとられている場合には、支店における備え置きは必要ありません(会社法31条4項)。

 

●定款の内容(株懇モデルから)

定款の内容については、企業によって定められるもので実際の定款をホームページで公開している企業も多いので、そこで見てもらえばいいのですが、おおよそのところは横並びでどこの会社の定款でもほとんど変わらないので、そのひな型とされている株懇モデルを見ていきたいと思います。

第1章 総則

(商号)

第1条 当会社は、○○○○株式会社と称し、英文では、○○○○と表示する。

商号は絶対的記載事項ですが、英文の商号の記載は任意です。商号の選定は原則として事由です(商法11条)。しかし、競争のルールとして以下の制限があります。

1)会社の種類・営業の表示

株式会社の商号には「株式会社」という文字を用い(会社法6条2項)、他の種類の会社と誤認されるような表記をしてはなりません(同条3項)。

2)営業主体を誤認させる商号の禁止

不正の目的を持って他の会社であると誤認させるような商号の使用は禁止され(会社法8条1項)、違反の場合には罰則があります(同条2項、同法978条3号)。また、不正競争防止法でも同様の規定があり、損害賠償の対象となるとされています。

3)使用文字

商号には、日本文字、ローマ字、アラビア数字及び規定された記号の使用ができます(商業登記規則50条)。

4)同一所在場所における同一の商号の禁止

他人がすでに登記した商号と同一、かつ、本店の所在場所が同一である場合には登記することができません(商業登記法27条)。このため、会社設立または商号変更をする際には、予定した商号と同一場所で同一の商号の有無を調査する必要があります。

5)公序良俗に反する商号の禁止(商業登記法24条10号)

6)会社の支店・部門であることを示す商号の禁止

(目的)

第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。

(1)・・・・・・

(2)・・・・・・

(3)・・・・・・

(4)前各号に付帯関連する一切の事業

会社の目的は会社が営む事業の範囲であり、絶対的記載事項で、(会社法27条1号)登記事項です(同法911条3項1号)。会社の目的は、会社の権利能力の範囲を制限し(民法43条)、解散命令事由(会社法824条)、監査役による取締役会への報告(同法382条)、株主による取締役の行為の差止請求権(同法360条)、監査役による取締役の行為の差止請求権(同法385条)の存否の判断の基準となります。この目的については、以下の制限に従う限り、原則として自由とされています。

1)営利性

会社は営利事業を営むことを目的として設立された団体です。だから事業は利益を上げることができるものであることです。

2)適法性

会社は公序良俗または強行法規に違反する事業を目的とすることはできません。

3)明確性

目的の記載は明確でなければなりません。「明確性」とは、定款に記載された目的の意義が明瞭であって、何人にも理解できるということです。会社の目的である事業が明確性を有しているかどうかの判断は、①目的に用いられている語句の意義が一般の人にあきらかであるかどうか、②目的全体の意味が明らかであるかどうかを社会通念に従って判断することになります。

(本店の所在地)

第3条 当会社は、本店を東京都○○区に置く。

本店とは会社の主たる営業所のことで、絶対的記載事項で、(会社法27条3号)登記事項です(同法911条3項3号)。

会社法27条第3号における「本店の所在地」とは、会社の住所がある独立の最小行政区画(市町村。東京都については特別区)を意味するもので、定款の記載では場所(地番)まで記載する必要はありません。登記事項としては地番まで記載します(会社法911条3項3号)。

市町村合併により本店所在地の地名が変更された場合、定款の字句の変更が必要となり、定款変更手続きが必要となります。

(機関)

第4条 当会社は、株主総会および取締役のほか、次の機関を置く。

(1)取締役会

(2)監査役

(3)監査役会

(4)会計監査人

会社法では、機関設計が自由化され、株主総会と取締役以外の機関(取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会)の設置は定款自治に委ねられています(会社法326条2項)。ただし、公開大会社であれば、従来同様、取締役会、監査役及び監査役会(または委員会)、会計監査人を設置しなければならない。

(公告方法)

第5条 当会社の公告方法は、電子公告とする。ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、○○新聞に掲載して行う。

公告方法とは、株主および登録株式質権者に対する公告(会社法124条3項、201条4項、219条1項、440条、849条4項等)の方法を指し、相対的記載事項であり、定款で定めない場合は官報に掲載する方法となります(同法939条4項)。

公告方法は、①官報に掲載する方法、②時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、③電子公告のいずれかでなければならない(同法939条1項)。また、電子公告を公告方法とする場合には、自己その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、官報または時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法を予備的に定めていくことができる(同法939条3項)。

 

第2章 株式

(発行可能株式総数)

第6条 当会社の発行可能株式総数は、○○万株とする。

発行可能株式総数(会社が発行することができる株式の総数)は絶対的記載事項(同法37条1項)ですが、これは会社の設立の時までに定めればよいものです。発行可能株式総数は、非公開会社を除いて、発行済株式総数の4倍を超えて増加することはできません(同法113条3項)。発行可能株式総数は、株主の有する持株比率が取締役会議による株式の発行により低下する限度を定めたものである。発行可能株式総数は、発行済株式数はもちろん、新株予約権の行使により増加すべき株式数も含め発行可能株式総数の範囲内でなければならない。

(単元株式数)

第7条 当会社の単元株式数は、1,000とする。

(単元未満株式についての権利)

第8条 当会社の株主は、その有する単元未満株式にいて、次に掲げる権利以外の権利を行使することができない。

(1)会社法第189条第2項各号に掲げる権利

(2)会社法第166条第1項の規定による請求をする権利

(3)株主の有する株式数に応じて募集株式の割当ておよび募集新株予約権の割当てを受ける権利

(4)次条に定める請求をする権利

会社法では、単元未満株式の権利については定款自治により、会社法189条2項1~5号および会社法施行規則35条で定める権利以外の権利を制限することが認められています(会社法189条2項)。このモデルの考え方は、自益権は認め、法令で奪えないとされているもの以外の共益権は認めないという考え方です。もし、定款で特段の制限をしない場合、議決権以外の権利は単元株主と同じになってしまうということです。

(単元未満株式の買増し)

第9条 当会社の株主は、株式取扱規程に定めるところにより、その有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。

会社は、定款に単元未満株式を有する株主が、その単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を売り渡すことを請求することができる旨を定めることにより、単元未満株式の買増制度を採用することができます(会社法194条1項)。この単元未満株式の買増しに関する規定は、相対的記載事項であり、買増請求をすると想定される株主数や、株主に売り渡すべき自己株式の数を総合的に勘案して、採用するか否かを判断することになります。

(株主名簿管理人)

第10条 当会社は、株主名簿管理人を置く。

2.  株主名簿管理人およびその事務取扱場所、取締役会の決議によって定め、これを公告する。

3.  当会社の株主名簿及び新株予約権原簿の作成ならびに備置きをその他の株主名簿および新株予約権原簿に関する事務は、これを株主名簿管理人に委託し、当会社においては取り扱わない。

会社が株主名簿管理人を設置する場合には、定款にその旨の定めが必要です(会社法123条)。株主名簿管理人を設置するかどうかは会社の任意ですが、新たに上場する場合は、その設置が義務付けられています。また、株主名簿管理人の氏名または名称、住所及び営業所の所在地は登記事項であり(会社法911条3項11号)株式取扱規程に記載する例が大半のようです。

(株式取扱規程)

第11条 当会社の株式に関する取扱いおよび手数料は、法令または本定款のほか、取締役会において定める株式取扱規程による。

 

第3章 株主総会

(招集)

第12条 当会社の定時株主総会は、毎年6月にこれを招集し、臨時株主総会は、必要あるときに随時これを招集する。

定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に召集しなければならず(会社法296条1項)。株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる(同条2項)。定時株主総会の招集に当たり、「一定の時期」をいつにするか具体的な定めを置くことは求められていませんが、株主にとって定時株主総会の開催時期はきわめて重要な意味を持つ事項であることから、定款のこのサンプルでは定時株主総会の招集時期について定めを設けています。この株主総会の招集時期に関する定款規程は任的記載事項です。

この規定の設け方としては、このサンプルのように招集月を記載するほか、「決算期の末日より3ヶ月以内の招集」する旨を記載している例もあります。

(定時株主総会の基準日)

第13条 当会社の定時株主総会の議決権の基準日は、毎年3月31日とする。

基準日を決めたときは、その基準日の2週間前までに当該基準日株主が行使できる権利の内容を公告しなければなりませんが、定款で公告すべき事項を規定している場合は、公告が不要となります(会社法124条3項)。この基準日に関する規定は相対的記載事項です。

(招集権者および議長)

第14条 株主総会は、取締役社長がこれを招集し、議長となる。

2.  取締役社長に事故があるときは、取締役会においてあらかじめ定めた順序に従い、他の取締役が株主総会を招集し、議長となる。

会社法296条3項では、株主総会は、少数株主が裁判所の許可を得て招集する場合を除いて取締役が招集することと規定されています。また、株主総会招集にあたっては、株主総会の日時及び場所、目的である事項があるときは当該事項、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨、その他法務省令で定める事項を取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)は定めなければならない(会社法298条1項、4項

株主総会の招集は取締役が単独で行なうことができますが、株主総会の招集というのは最重要事項ですから、一般的には、定款に招集権者を「取締役社長」や「取締役会長」に特定し、この特定された取締役が事故等により招集行為ができない場合に備えて、これに代わって招集手続を執行する取締役の順序を定めています。このような定款に基づかない招集行為に対しては、招集手続きが定款に違反している場合として、決議取消原因となる可能性があります(会社法831条1項1号)。

一方、株主総会の議長は、定款で定めることはできますが、たとえ定款に定めがなくても、株主総会の場で選解任できるのは当然ということで、とくに会社法での規定はありません。そこで、総会のたびにいちいち議長を選任することの煩わしさ議場の混乱を避けて、定款にあらかじめ議長を規定してしまうことが一般的になっていると考えられます。また、議長は総会の招集権者と違って特に資格要件は必要ありませんが、通常は、会社の最高地位のものとして社長があたることとなっています。

(株主総会参考書類等のインターネット開示とみなし提供)

第15条 当会社は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類、事業報告、計算書類および連結計算書類に記載または表示をすべき事項に係る情報を、法務省令の定めるところにしたがいインターネットを利用する方法で開示することにより、株主に対して提供したものとみなすことができる。

定款に定めることを条件に、株主総会の招集において、株主総会参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類に対して、招集通知を発出すときから株主総会日の3ヵ月後までの間、インターネットに啓示することによりも株主総会参考書類、事業報告、計算書類や連結計算書類について、その掲示した部分はそれらの書類に記載がなくても、それをもって株主に提供したものとみなされます(94条1項、133条、計算書類規則133条4項)。ただし、この規定があっても記載を省略することができない項目があります。

(決議の方法)

第16条 株主総会の決議は法令または本定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行なう。

2.  会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行なう。

会社法の定める株主総会の決議事項は、普通決議事項、特別決議事項、特殊決議事項に区分できます。

・普通決議

会社法又は定款に別段の定めがある場合を除いて、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の過半数を持って行なうことを要件とする(会社法309条1項)。普通決議事項としては、特別決議、特殊決議以外の一般的な議案ということになりますが、代表的なものとして、計算書類の承認、剰余金の配当の決定、取締役・監査役の選任と報酬の決定、自己株取得枠の承認などが挙げられます。

・特別決議

特別決議とは、株主総会での重要事項についての決議方法であり、決議要件が普通決議より厳しくされているもので、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数を持って行なうことを要件とするものです(会社法309条2項)。特別決議事項としては、定款変更、募集株式・募集新株予約権の有利発行、合併、株式交換・移転、会社分割、資本の減少ならびに株式併合の決議等があげられます。

・特殊決議

議決権を行使することのできる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行なうことを要件とします(会社法309条3項)。このような特殊決議を要するのは発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款変更等が挙げられます。

そこで、定款の本条文についてですが、第1項は普通決議に際して定足数の条件を排除したものです。これは、会社法の同じ条文で、定款の定めにより定足数を引き上げ又は軽減することができるとされていることによるものです。ただし、普通決議の中でも、役員の選任決議については、定足数を議決権の3分の1未満にできない(会社法341条)とされているので、定款の中で別に規定を設けることが必要です。

そして、第2項については特別決議の定足数を、法律で定められた限度である議決権の3分1まで引き下げた規定です。これも定足数の軽減には定款に規定することが必要なためです。これらの規定は、株主総会の円滑な運営を図る(ということは会社提案の議案について、定足数も賛成票の確保が徐々に難しくなっていることなどから、承認可決を得やすくしようという)ものです。

(議決権の代理行使)

第17条 株主は、当会社の議決権を有する他の株主1名を代理人としてその議決権を行使することができる。

2.  株主または代理人は、株主総会ごとに代理権を証明する書面を当会社に提出しなければならない。

株主は株主総会の議決権の行使を代理人に委ねることが認められています。その場合は代理権を証する書面(委任状)を会社に提出することが必要になります(会社法310条1項)また、書面の提出の代わりに、会社の承諾により電磁的方法による提供も認められています(同条3項)。議決権の代理行使は、株主に議決権行使の機会を保障するために認められた権利であることから、定款の規定をもってしても代理人による議決権行使を不当に妨げることはできません。しかし、株主総会が株主以外の第三者によって撹乱されることを防止し会社の利益を保護するという観点から、定款の規定をもって、合理的な理由による相当程度の範囲で代理人資格を制限することについては有効とする判例があり、この定款の第1項はそれに従ったものです。この議決権の代理行使に係る定款規定は相対的記載事項です。

ただし、定款で代理人資格が議決権を有する株主に限定されている場合であっても、株式会社や公共団体等の法人株主が、その従業員や職員を代表取締役の代理人として株主総会に出席を求めた場合に、これを拒めないとされています。

 

第4章 取締役および取締役会

(員数)

第18条 当会社の取締役は、○○名以内とする。

会社法326条1項において、株式会社は、1人または2人以上の取締役を置かなければならない、と規定されています。また、取締役会設置会社の場合には、取締役は3人以上で泣ければならないと規定されています(会社法331条4項)。しかし、員数の上限については規定されていません。しかし、この定款サンプルのように多くの会社では会社の規模や業態に応じて員数の上限を設けています(任意的記載事項)。

なお、取締役が法律上の最低員数を欠いた時は、臨時株主総会を招集して新たに取締役を選任するか、仮取締役の選任を裁判所に申請する(会社法346条2項)かの、いずれの措置を講じなくてはなりません。そうならないために、取締役を選任する場合に、最低員数以上の員数を選任したり、万が一の場合に備え補欠の役員を選任しています(会社法329条2項)。

(選任方法)

第19条 取締役は、株主総会において選任する。

2.  取締役の選任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行なう。

3.  取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。

取締役の選任は株主総会で行うものとされています(会社法329条1項)。第1項は、この会社法の規定を確認したものです(任意的記載事項)。第2項は取締役の選任決議に関する定足数を明記するもので、この定款のサンプルの16条で決議の方法を規定して普通決議の定足数を排除していますが、その例外として特に規定しています。会社法341条で、取締役選任決議に際して定款で規定しても定足数を3分の1未満に引き下げることはできないとしているためです(任意的記載事項)。なお、会社法の規定があるため、定款16条の規定はこれに抵触し、この19条2項の規定がない場合でも、会社法が適用されて3分の1の定足数になるというのが通説の見解です。

第3項は累積投票制度を排除する旨を明記した規定です。

(任期)

第20条 取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

会社法332条1項では、取締役の任期、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の主決のときまで(会社法332条1項)

会社法459条1項では、剰余金の配当等を取締役会で決定するための条件として、会計監査人設置会社であることと取締役の任期が1年であること等が定められています。そこで、このサンプルの規定では、1年としています。上場会社では、取締役の任期を1年とする会社が多数派になってきています。

(代表取締役および役付取締役)

第21条 取締役会は、その決議によって代表取締役を選定する。

2.  取締役会は、その決議によって取締役会長、取締役社長各1名、取締役副社長、専務取締役、常務取締役各若干名を定めることができる。

取締役会設置会社は、代表取締役を定めなければなりません(会社法362条3項)。取締役会設置会社の場合、取締役は特に選定された者以外は業務執行権を有しないこととされているため(同法363条1項)、代表取締役を定めない状態にあっても、取締役全員が会社を代表することとはなりません。取締役会設置会社においては、取締役会が教務執行の決定の全てを行うことが原則ですが、取締役会は、会議体であるので、会社を代表してその決議を執行する機関を必要とします。この会社の目的である具体的事業活動に関する行為について、その執行に当たる機関が代表取締役です。代表取締役は執行機関です。

この定款サンプルの第1項は、その会社法362条3項を確認したもので、任意的記載事項です。第2項は、役付取締役は会社法上の制度ではありませんが、業務執行取締役の職務内容、経験等に応じて、「副社長」「専務」「常務」等の呼称を付与して業務執行を行なわせることが多いことから、ここに加えられたものです。これは、多くの会社で「役付の指定」=「業務執行取締役の指定」と明確に認知されているともいえないことによるものです。

(取締役会の招集権者および議長)

第22条 取締役会は、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会長がこれを招集し、議長となる。

2.  取締役会長に欠員または事故があるときは、取締役社長が、取締役社長に事故があるときは、取締役会においてあらかじめ定めた順序に従い、他の取締役が取締役会を招集し、議長となる。

取締役会の招集権者について、会社法366条1項は、原則として各取締役が招集権を有するとされていますが、定款または取締役会で定めた時は当該取締役が招集することとされていますので、第1項では、招集する取締役を明確にするため、取締役会を招集すべき取締役を取締役会長とすることを定めています(任意的記載事項)。また、取締役会の議長の選任方法については、会社法には、とくに規定されていないので、各会社の内規等で定めても差し支えありません。何の定めもない場合には、取締役の互選により定めることができます。しかし、重要事項として定款で規定するのが一般的になっています。

また、第2項は取締役会長に事故あるとき社長に、というようなことを明らかにしておくことは、実務上便宜であるから、第2項として規定されています。

(取締役会の招集通知)

第23条 取締役会の招集通知は、会日の3日前までに各取締役および各監査役に対して発する。ただし、緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。

2.  取締役および監査役の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ないで取締役会を開催することができる。

取締役会の招集通知は、原則として会日の1週間前までに取締役および監査役全員に発することが必要とされています(会社法368条1項)が、定款によりその期間を短縮することが認められています。そこで、第1項は取締役会の開催の機動性を高めるために、期間の短縮を図るように定めています(相対的記載事項)。

第2項は、会社法368条2項を確認したもので、取締役および監査役の全員が招集通知を経ない取締役会の開催に同意した場合には、適法に取締役会を開催することができることを明記したものです(任意時記載事項)。なお、監査役の同意を要件とするのは、監査役は取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条1項)という意見陳述権によるためです。

(取締役会の決議の省略)

第24条 当会社は、会社法第370条の要件を充たしたときは、取締役会の決議があったものとみなす。

取締役会の決議の目的事項について、取締役の全員が書面または電磁的記録により提案に同意の意思表示をし、かつ監査役が特に異議を述べないときは、当該提案を可決する旨を定款で定めることができる(会社法370条)ことに則った規定です。

取締役会の決議の省略について定款の定めを必要とする理由としては、取締役会は本来、取締役の協議と決議に基づき業務執行の決定を行なうことにより、取締役の相互監督を前提として適切な結論を導くことを目的として定款に設置される機関であるところ、決議の省略を認めることは定款の予定する取締役会制度の枠組みに重大な例外となるということから定款にさだめなければならないとされています。決議を省略すること自体は、各取締役の同意や監査役の異議の対象とされていませんが、提案内容に異議はないものの、取締役会において慎重に審議することが必要と考える場合には提案に対して異議を述べることが考えられます。

(取締役会規程)

第25条 取締役会に関する事項は、法令または本定款のほか、取締役会において定める取締役会規程による。

取締役会の運営方法や付議事項について、取締役会規程に委ねる旨の授権規定と考えられます。このサンプルでは、取締役会運営の基本規定であることを考慮して、規定しています(任意的記載事項)。ただし、株式取扱規程の場合とは異なり、会社と株主の間の関係を拘束するものではないため授権規定である必要はないという考え方もあります。

(報酬等)

第26条 取締役の報酬、賞与その他の業務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益(以上も「報酬等」という。)は、株主総会の決議によって定める。

会社法では取締役がその職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益を「報酬等」として定義され、定款で定めない時は、株主総会の決議で定めることとされています(会社法361条)。しかし、経済情勢の変動への柔軟な対応等の理由で、報酬を定款で記載する例はなく、株主総会での決定になっている会社が大多数です。このモデルのサンプルでは、これを注意的に規定しているといえます(任意的記載事項)。

(取締役の責任免除)

第27条 当会社は、会社法第426条第1項の規定により、任務を怠ったことによる取締役(取締役であった者を含む。)の損害賠償責任を、法令の限度において取締役会の決議によって免除することができる。

2.  当会社は、会社法第427条第1項の規定により、非業務執行取締役との間に、任務を怠ったことによる損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく責任の限度額は、○○万円以上であらかじめ定めた金額または法令が規定する額のいずれか高い額とする。

①役員の責任免除について

役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人)がその任務を怠ったときには、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされており、この責任は層株主の同意がなければ免除する子はできないとされています(会社法423条1項、424条)。

また、利益供与責任、違法な剰余金の配当等に関する賠償責任についても、層株主の同意による免除が定められています(会社法120条5項、462条3項)。

②役員の責任軽減について

上記①にもかかわらず、役員等が職務を行なうことについて善意でかつ重大な過失がないときは、役員等の損害賠償責任に対しての次のような減免の制度があります。

1)株主総会決議による責任の一部減免

株主総会の特別決議によって賠償責任額から会社法に定める最低責任限度額を控除した額を限度として賠償責任額を免除することができる(会社法425条)。

2)定款に定めた場合の取締役会決議等による責任の一部減免

定款に責任免除に関する定めを設けている会社では、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、取締役会の決議により、会社法に定める最低責任限度額を控除した額を限度として、賠償責任を免除することができます。ただし、総株主の議決権の100分の3以上(定款で下回る規定とすることは可能)の議決権を有する株主が異議を述べたときは、これによる免除はできない(会社法426条)。

3)責任限定契約

非業務執行取締役等(非業務執行取締役、会計参与、監査役、会計監査人)については、定款で規定することにより、責任限度を報酬の2年分またはあらかじめ定款で規定した額のいずれか高い方に限定する責任限定契約を締結することができます(相対的記載事項、会社法427条)。非業務執行取締役等について、巨大な賠償責任を負担するリスクを軽減することにより、社外取締役等への就任に対する萎縮的効果を過度に生じさせないよう、あらかじめ定めた額または報酬の2年分のいずれか高い額を賠償限度とする責任限定契約を会社・非業務執行取締役間で締結しておくことは合理的であり、この定款第2項ではその趣旨で規定を設けています。「○○万円以上」を具体的に定める場合には、非業務執行取締役等に対する報酬額と均衡を図る必要がありますが、非業務執行取締役等に対する報酬の実態に応じて、きわめて低廉な額となることもありえます。

4)責任軽減の実施要件

具体的な責任軽減を行なうために取締役会が免除決議を行なう際には、取締役会の決議時点にこり定款規定が存在している必要があると考えられています。これによれば、就任時に責任軽減の定款規定が存在していた会社の取締役に就任した者にとって、その後の定款削除によって取締役会決議による責任軽減が受けられなくなることとなって、就任時の期待を裏切ることになってしまいます。しかし、この定款規定は、事後免責の手続要件を緩和したにすぎないという趣旨からすれば、取締役会における責任軽減決議の際に定款規定が存在しなければ、取締役会の決議は軽減できないと考えるのが自然でしょう。

一方、非業務執行取締役等と会社との間で責任限定契約を締結した場合には、契約により非業務執行取締役等の責任限度額が定められるため、この問題は生じないことになります。その意味で、非業務執行取締役等との責任限定契約に関する定款規定は、非行執行取締役等との間で責任限定契約を締結するための要件であると考えられています。

5)登記および開示

この定款の規定に基づき、取締役の責任軽減規定を設けた場合、決議後2週間以内に登記を行なわなければなりません(会社法915条1項)。なお、取締役と監査役の選任議案を上程する場合、株主総会参考書類には、「会社法第427条第1項の契約を締結しているとき又は当該契約を締結する予定があるときは、その契約の内容の概要」を記載することとされています。また、非業務執行取締役等と責任限定契約をしている場合には、当該契約の内容を事業報告に記載することとされています。

 

第5章 監査役および監査役会

(員数)

第28条 当会社の監査役は、○○名以内とする。

会社法では、監査役は必ず設置しなければならない機関とはされていませんが、取締役会設置会社(指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、公開会社でない会計参与設置会社は除く)は監査役を置かなければなりません(会社法327条2項)。

監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち、半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。社外監査役とは、過去にその会社又は子会社の取締役、会計参与もしくは執行役または支配人その他使用人となったことがない者を指します(会社法2条16号)。監査役の員数の上限の規定はありませんが、定款で規定することは可能です(任意的記載事項)。

(選任方法)

第29条 監査役は、株主総会において選任する。

2.  監査役の選任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行なう。

監査役の選任の決議方法を規定した定款の条文です。この定款の19条の取締役の選任に関する条文に準ずる条文です(会社法329条1項、341条)。累積投票制が適用されない店は、取締役の専任の場合とは異なります。

会社法では、定款にあらかじめ規定を置かなくても補欠者を予選することが認められています。

(任期)

第30条 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2.  任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとする。

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうちで最終のものに関する定時総会終結の時までであり、これを短縮も伸長もできないこととされています(任意的記載事項、会社法336条1項)。第2項は、補欠で選任された監査役の任期を退任監査役の残任期間するための規定です。ただし、このような任期の調整を行なわないのであれば、この2項は不要となります(相対的記載事項、会社法336条3項)。

増員のため選任された監査役の任期は、原則どおり「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」で、取締役の場合とは異なり、定款によっても、他の監査役と任期の調整を図ることはできません。

また、辞任した監査役は、その後最初に招集される株主総会に出席してその旨および理由を、他の監査役も辞任について意見を述べることができます(会社法345条1項、4項)。この辞任した監査役の理由・意見は事業報告に記載することとされています(会社法施行規則121条)。

(常勤の監査役)

第31条 監査役会は、その決議によって常勤の監査役を選定する。

監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりません(会社法390条3項)。この定款の条文は、これを受けたものです(任意的記載事項)。常勤ということの明確な定義はありませんが、営業時間中は常に監査を行なう態勢にあり、その間、監査業務に専念するする義務を負うという意味であると考えられます。

(監査役会の招集通知)

第32条 監査役会の招集通知は、会日の3日前までに各監査役に対して発する。ただし、緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。

2.  監査役全員の同意があるときは、招集の手続きを経ないで取締役会を開催することができる。

監査役会は、すべての監査役で組織することとされています(会社法390条1項)。この定款の条文の第1項は、会社法で監査役会の招集通知は、原則として1週間前までに監査役全員に発することを要することとされていますが、定款の定めにより、その期間の短縮が認められていることによるものです(相対的記載事項、会社法392条1項)。取締役会は、通常、定款で招集権者を規定していますが、監査役会は、各監査役がいずれも招集権を有し、招集権者を監査役会の決議等で定めることはできないとされています(会社法391条)。

(監査役会規程)

第33条 監査役会に関する事項は、法令または本定款のほか、監査役会において定める監査役会規程による。

監査役会の運営方法や付議事項について、監査役会規程に委ねる旨の授権規定と考えられます。このサンプルでは、監査役会運営の基本規定であることを考慮して、規定しています(任意的記載事項)。

(報酬等)

第34条 監査役の報酬等は、株主総会の決議によって定める。

この定款の26条に準じた条文です。しかし、監査役の報酬は取締役の報酬とは異なるところがあります。監査役には、取締役のような業績連動型報酬は認められません(会社法387条)。業績連動型報酬については、経営の意思決定に参画しない監査役としての職務には必ずしも適合しないためです。また、会社法387条には現物報酬に関する規定はありませんが、それは監査役に対する現物報酬を禁止する趣旨ではなく、現物報酬等を壮途とする理由の説明義務が生じないという意味と考えられています。

複数の監査役がおり、その報酬について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、各監査役の受けるべき報酬額は、監査役の協議により定めます。

(監査役の責任免除)

第35条 当会社は、会社法第426条第1項の規定により、任務を怠ったことによる監査役(監査役であった者を含む。)の損害賠償責任を、法令の限度において取締役会の決議によって免除することができる。

2.  当会社は、会社法第427条第1項の規定により、監査役との間に、任務を怠ったことによる損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく責任の限度額は、○○万円以上であらかじめ定めた金額または法令が規定する額のいずれか高い額とする。

株主総会の決議による責任軽減の規定(会社法425条)、定款の授権に基づく取締役会決議による責任軽減の規定(会社法426条1項)、責任を限定する契約(会社法427条)の規定は、監査役にも適用されます(相対的記載事項)。責任限度額は報酬等の2年分とされています。

 

第6章 計算

(事業年度)

第36条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とする。

事業年度とは、会社の収支計算を明らかにするための区切りとなる期間です。この条文は定款の任意的記載事項ですが、会社の事業運営に関する基本的事項であるので、ここで規定しておくのは望ましいと言えます。

事業年度は、原則として1年の範囲内で自由に設定できますが、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間としている会社がほとんどです。

決算期を変更する場合、この条文の他に、招集(定款12条)、定時株主総会の基準日の基準日(定款13条)、剰余金の配当の基準日(定款38条)を変更しなければなりません。さらに決算期変更にと伴う経過的事業年度について附則に定める必要があります。

(剰余金の配当等の決定機関)

第37条 当会社は、剰余金の配当等会社法459条1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によって定める。

取締役の任期を1年としている会計監査人設置会社は、最終の事業年度の計算書類が法令及び定款に従い会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして会社計算規則183条で定める要件に該当する場合に限り、剰余金の配当等を取締役会決議で実施することができる旨を定款で定めることができる(会社法459条1項)とされています。この定款の規定がある会社は、これらの事項を株主総会の決議で定めないことを定款で定めることができます(会社法460条1項)。

この定款の条文は、このような規定を定めたものです。「株主総会の決議によらず」という文言が会社法460条1項の定款定めに該当します。これにより、剰余金の配当についての株主提案権が制限されることになります。剰余金をどれだけ配当に回すかはまさに経営判断であり、株主は、配当等の提案権がなくても、取締役会の決定した配当等に不満があれば、翌年の株主総会で取締役を入れ替えることができるのですから。

(剰余金の配当の基準日)

第38条 当会社の期末配当の基準日は、毎年3月31日とする。

2.  当会社の中間配当の基準日は、毎年9月30日とする。

3.  前2項のほか、基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。

この定款の条文は、剰余金の配当の基準日を定めることにより、基準日公告を不要とする規定です(会社法124条3項)。

(剰余金の除斥期間)

第39条 配当財産蛾金銭である場合は、その支払いの日から満3年を経過してもなお受領されないときは、当会社はその支払義務を免れる。

この定款規定は、剰余金の配当の支払請求権の除斥期間を定めたもので、任意的記載事項です。

配当金の支払請求権は商行為により生じたものではないため、その消滅時効期間は10年です(民法167条1項)。しかし、多くの会社では、多数の株主に対する配当事務処理の便宜と会社事務整理の必要から、定義上、支払開始日から一定期間(3~5年)経過したときは、会社は配当金の支払義務を免れる旨を規定しています。

  

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