新任担当者のための会社法実務講座
第326条 株主総会以外の機関の設置
 

 

Ø 株主総会以外の機関の設置(326条)

@株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない。

A株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置くことができる。

第1節で株主総会に関する規定があって、ここでは株主総会以外の会社の機関についての総論的な規定が集められています。株主総会とそれ以外という分け方をしているのは、ここで規定されている機関と株主総会とで大きな違いがあるからです。その違いとは、株主総会は会社の持分所有者である株主が直接参加していますが、それ以外の機関は参加していません。その代わりに株主でない者が直接参加しています。こちらは株式会社における車の両輪年で株主に対しる経営者による機関なのです。具体的にいうと、取締役及び取締役会、そして監査役(監査役会)です。つまり、ここで規定されているのは経営の組織・機関です。

株主総会は、株主による意思決定の場ですから株式会社は必ず置かなければなりません。しかし、株式会社の経営は、事業の内容や経営環境によって千差万別であり、株式会社はそういうものに適した経営をしていかなければなりません。そのため、経営体制は各会社が自主的に選択できるわけで、どのような経営体制を選択するかは定款に規定することで、株主の承認を受け有効となります。

ü 各機関相互の関係

ア.株主総会と取締役会の関係

株主総会決議事項は、法令・定款で定められた事項に限定されていますが、昭和25年の商法改正以前は、このような株主総会の権限を限定するような規定はありませんでした。この昭和25年の改正によって株主総会の決議事項は会社の基本的事項に限定されることになりました。その結果、株主総会は、それまでは会社の最高の機関であるとともに万能の機関とされていたのに対して、この改正によって、会社の最高の機関ではあるが、万能の機関ではないことになりました。この昭和25年の商法改正は株主総会の権限を縮小することになりましたが、それは決して株主の企業所有権を制限しようとするものではなく、会社事業の経営に関する株主の合理的意思を反映させたもの言えます。すなわち、株主は原則として会社事業の経営については知識・経験を有せず、したがって業務執行の具体的内容についてもすべて株主総会で決議することができるとすることは、会社事業の観点から見て不適当であるので、株主総会の決議事項を基本的事項に限って、それ以外の業務執行に関する事項の決定については、経営の専門家である取締役が構成する取締役会の委ねることにしたのです。しかし、株主が会社事業の経営の関心がある場合があり、また法定事項ではないが総会の権限とすることを要求する場合があるので、法定事項でなくても定款で定めることにより株主総会の権限とすることができるものとしたのです。

イ.取締役会と代表取締役の関係

取締役会は、業務執行に関する意思決定機関であると同時に業務執行に関する監督機関でもあります。取締役会が業務執行に関する意思決定機関であるという事は、株主総会の招集、株式や社債の発行、会社財産の処分、営業所の設置、組織再編等の業務執行に関する決定を取締役会が行うということです。この決定を実行するのは業務執行機関である代表取締役ないし業務執行取締役です。取締役会の、このような権限に関連して、取締役会が業務執行機関である代表取締役に対して、どの範囲で業務執行に関する意思決定を委ねることができるかが問題となります。一方では、業務執行に関する意思決定権が取締役会にあるといっても、日々の営業取引等の日常の業務執行についてまですべて取締役会が決定しなければならないというのでは、取締役会が会議体であることからいっても煩雑であり、またそのような事項の決定は代表取締役に委ねても弊害はない。しかし、他方で、どんな事項でも代表取締役に委ねてもよいということになると、代表取締役の権限が強くなりすぎて、専横的になってしまう可能性が生じ、取締役会による業務執行の監督機能が働かなくなるおそれがあります。そこで、会社法は特定の重要事項の決定については取締役会で決定しなければならないとしています。それが昭和56年の商法改正で明文化されました。

ウ.取締役会と監査役の関係

取締役が業務執行に関する監督機関であることに関連して、そのことと監査役が業務執行に関する監督機関であることの関係が問題となります。取締役会における監督権限は業務執行の適法性だけではなく、その妥当性にも及びます。これに対して監査役の監督権限は適法性監査に限られます。例えば、企業の海外進出に関して、取締役会は、その時期に海外に進出するのが妥当かどうかを判断する権限を有し、それが妥当でないと判断すれば、取締役会として、そのような海外進出の決定をしないことができます。しかしこれに対して、監査役は、その取締役会の決議には参加できません。監査役の権限は著しく不当な場合を含む意味での適法性監査に限られます。このように業務執行に対する取締役会における監督と監査役による監査とでは、その監督ないし監査の範囲が異なり。取締役会の方が監査役より広いというのが違いです。このうち、適法性については取締役会も監査役も同じ適法性であっても、内容的な差異があります。すなわち、監査役はもっぱら業務監査のみをする職務とするものであって、そのために会社法は監査の手段としての様々な権限を与えていて、かつ、その地位の取締役会や代表取締役からの独立性を保障して不安なしに監査を続けることができるようにするためです。それに対して取締役会の構成員である取締役には配慮がなされていないで、実際上は業務担当取締役ないし使用人兼務取締役として、業務執行体制の中に上下の関係で組み込まれているので、一方で業務執行の一翼を担いながら、他方で取締役会の構成員として、取締役会による業務執行の監督を進めるという職務を負っています。

ü 取締役の員数(1項)

取締役会設置会社の取締役は3人以上でなければなりません(331条5項)。これは、取締役会が3人以上の取締役で構成されなければならないからです。しかし、取締役会設置会社以外の株式会社の取締役は、1人以上でも認められます(326条1項)。いずれの場合も、定款上、最低限あるいは最高限度の員数に関する定めをすることができます。実際には、取締役会設置会社の定款には取締役の員数の最高限度のみを定めて、最低限度は会社法の3人に従っているケースがほとんどです。

ü 取締役会設置会社以外の会社の取締役

取締役会設置会社以外の株式会社では、定款で特定の取締役の業務執行を制約しない限り、各取締役が会社の業務を執行できます(2条7号)。すなわち、取締役が1人の場合は、単独で業務執行の決定およびその執行を行うことができます。取締役が2人以上ある場合には、業務執行に関する意思統一がなければ会社の運営は事実上できませんが、定款に別段の定めがある場合を除き、形式のいかんに関わらず取締役の過半数で業務執行の決定を行えばよいわけです(348条2項)。つまり、取締役会設置会社以外の会社でも、第三者機関である取締役が業務執行を行いますが、比較的少数の株主と個々の取締役との信頼関係、取締役相互の緊密な接触といった会社の実態に配慮し、業務執行方法は会社の自治に任されています。現在設立されている中小企業の大多数は、この形態を選択していると考えられます。


 

関連条文

取締役会等の設置義務等(327条)

社外取締役を置いていない場合の理由の開示(327条の2)

大会社における監査役会の設置義務(328条)

 

 
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