新任担当者のための会社法実務講座 第383条 監査役の取締役会への出席義務 |
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取締役会への出席義務(383条) @監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が2人以上ある場合において、第373条第1項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第2項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。 A監査役は、前条に規定する場合において、必要があると認めるときは、取締役(第366条第1項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができる。 B前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監査役は、取締役会を招集することができる。 C前2項の規定は、第373条第2項の取締役会については、適用しない。 ü
監査役の取締役会への出席 監査役の取締役会への出席は1974年の商法改正によって規定化されました。これは、監査役に会社の会計監査の権限のほかに業務監査の権限が与えられことに伴い、監査役の業務監査を実効的にするために取られた法的措置です。取締役会は会社の重要な問題を審議決定し、取締役の職務の執行の状況が報告されるので、業務監査上監査役の取締役会出席は、必要不可欠といえます。監査役も取締役と同様に会社との関係は委任関係にあり善管注意義務を負うので、正当な事由がある場合を除いて、取締役会に出席しないことは善管注意義務に反すると解されています。正当な事由として考えられる場合は、病気の場合はやむを得ないとして、そのほかには緊急または重大な他の監査業務がある場合に取締役会を欠席するのは任務遂行の一環として正当な事由にあたると考えられます。それ以外の場合で継続的に欠席することは任務懈怠とみなされてもしかたがないでしょう。 ü
監査役の取締役会出席・意見陳述義務 監査役は取締役の職務執行を監査する権限を有します(381条1項)。取締役会設置会社の取締役の職務執行としては、@教務執行の決定、A業務の執行、B他の取締役の職務執行の監督、がありますが、@及びBの職務の一部は取締役会において行われます。そこで、監査役の職務執行のためには、取締役会に出席し、取締役会における取締役の職務執行のためには、取締役会における取締役の職務執行を監査する必要があります。また、監査役の監査は、取締役の職務執行を事後的に評価するだけでなく、取締役が違法・不当な業務執行をしないように防止することも含まれます。したがって、取締役会において、違法・不当な決議がなされるような場合には、監査役は積極的に意見を述べる必要があります。さらに、監査役は、取締役会へ出席することにより、会社業務に関する様々な情報を得ることができます。そのために、取締役の招集通知は各監査役にも発しなければならないとし(308条1項)、これを省略するには監査役の同意が必要です(308条2項)。また、取締役会決議を書面または電磁的記録により行う場合には、監査役に異議申述権があります(370条)。 なお、事業報告は、会社役員に関する事項として、社外監査役の取締役会への出席状況、発現状況などを含まなければなりません(会社法施行規則124条4号)。 ü
監査役の取締役会での意見陳述の内容 監査役が取締役会に出席して意見を述べることができるのは、原則として審議事項に関する意見に限られると解されます。ただし、382条により、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があるときは、取締役会で報告し、意見を述べなければなりません。 また、監査役が取締役会で意見を述べることができるのは業務監査の権限の範囲内と解されています。具体的には、適法性に関する意見に限られると、一般的に解されています。妥当性について意見陳述をする義務と責任まで認めてしまうと、業務執行権限を持たず、的確な情報収集機能やスタッフ等で取締役とは比べものにならない監査役には過重なものといえます。ただし、取締役会の議長の議事整理もしくは取締役会の決定に従って、業務執行の違法性のみならず妥当性に関して監査役が意見を述べるということは当然認められることです。 ü
特別取締役による取締役会についての特則 旧商法では、大会社には重要財産委員会を設けて特定の事項の決定をこれに委任することができるとされていました。会社法が制定された際には、この重要財産委員会に代わって特別取締役による取締役会決議の制度が設けられました(373条)が、監査役が複数の場合には、監査役の互選によって、特別取締役による取締役会に出席する監査役を定めることができる(383条1項後段)。 ü
監査役による取締役会の招集請求(382条2項) 監査役は、取締役が不正の行為をし、もしくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、または法令・定款に違反する事実または著しく不当な事実があると認めるときは、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)に報告しなければなりません(382条)。383条2項は、この382条を受けて、この義務を履行するために必要な場合には、監査役は取締役に対し、取締役会の招集を請求することができるとしています。ただし、366条1項但書により、取締役招集権者を定めている場合には、当該招集権者に対して請求できます(382条2項括弧書)。 ü
監査役による取締役会の招集(382条3項) 前項の監査役による取締役会の招集請求がなされたにもかかわらず、請求日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を会日とする取締役会の招集通知が発せられない場合に、請求者である監査役は、自ら取締役会を招集することができます(382条3項)。これは、適宜迅速な取締役会の開催を確保して、監査役の職務遂行が確実に為されることを確保する趣旨です。 ü
特別取締役による取締役会についての特則(382条4項) 特別取締役による取締役会は、適宜迅速に開催されることが予定されており、あえて監査役による取締役会の招集請求を認める必要性は薄いと判断されるため、通常の取締役会で認められている監査役による取締役会の招集請求や監査役による取締役会の招集の対象外となります(382条4項)。
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