新任担当者のための会社法実務講座 第309条 株主総会の決議 |
Ø 株主総会の決議(309条) 株主総会の決議方法は三種類に分類できます。 @株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 A前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。 1.第140条第2項及び第5項の株主総会 2.第156条第1項の株主総会(第160条第1項の特定の株主を定める場合に限る。) 3.第171条第1項及び第175条第1項の株主総会 4.第180条第2項の株主総会 5.第199条第2項、第200条第1項、第202条第三項第4号及び第204条第2項の株主総会 6.第238条第2項、第239条第1項、第241条第三項第4号及び第243条第2項の株主総会 7.第339条第1項の株主総会(第342条第3項から第5項までの規程により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。) 8.第425条第1項の株主総会 9.第447条第1項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。) イ 定時株主総会において第447条第1項各号に掲げる事項を定めること。 ロ 第447条第1項第1号の額ガイの定時株主総会の日(第439条前段に規定する場合にあっては、第436条第3項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。 10.第454条第4項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。) 11.第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会 12.第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会 B前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。 1.その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会 2.第783条第1項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第3項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。) 3.第804第1項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。) C前三項の規定にかかわらず、第109条第2項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。 D取締役会設置会社においては、株主総会は、第298条第1項第2号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第316条第1項若しくは第2項に規定する者の選任又は第398条第2項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。 ü
株主総会の議事 株主総会の議事は、会社法の規定のほか定款その他の会社の内部規則および慣行に従って運営されるのが普通です。株主総会の議題には報告事項と決議事項があります。 ・議長 株主総会においても、他の会議体と同様に議長がその議事運営を主宰します。議長の権限については315条に規定が置かれていますが、このような法定の権限を有する議長の存在は必須ではありません(会社法施行規則72条3項5号)。 株主総会の議長の選任について、旧商法では定款に定めがなければ総会で選任するように規定されいましたが、会社法ではなくなりました。定款で株主総会の議長を定めてもいいというのは29条に規定されていますが、定款で議長を定めていない場合には、株主総会の議長を総会で選解任するというのは、株主総会に限らず会議というものの一般的な原則であり、株主総会もこの原則に従うのは当然のこととして、あえて会社法で規定するまでもないというのが立法者の考えだったようです。また、この議長となることができる資格については、株主総会に出席できることが前提ですから、株主、取締役などの役員に限られることになります。多くの会社では、定款で、議長を社長と定め、社長に事故・支障あって出席できないときは他の取締役が社長に代わって議長となると定めています。このように定款で議長に関して定めていても、それは株主総会ごとに、いちいち議長を選任する手間を省くためのものにすぎないから、株主総会において議長を選任する決議(普通決議)があれば、その決議の内容が優先します。また、少数株主によって招集された株主総会(297条4項)においては、議長に関する定款の規定はなく、議長を選任することが必要となります(広島高裁岡山支部決定昭和35年10月31日)。また、裁判所によって招集される株主総会(307条1項、359条1項)の場合も同じです。 ・議事運営 株主総会の開会に先立って、出席者が総会に出席する資格を有しているかを確認する必要があります。確認の方法については、代理人を通じて議決権を行使する場合には代理権を証明する書面を会社に提出することを要するとされています(310条1項)が、このほかには規定はありません。通常、株主本人であるか否かの確認は、株主総会招集通知とともに送付される議決権行使書用紙、出席票等を通じて行われます。電磁的方法によって招集通知を送付し電子投票をする株主の場合には、確認の方法はとくに法定されていませんが、あらかじめ割り当てられたパスワードを議決権行使の際に入力する等の方法が考えられています。 株主総会の議事運営は、通常、冒頭に議長が開会を宣言し、続いて、定款の定めに従って議長に就任する旨、および決議に必要な定足数が満たされている旨が宣言される。これに続き審議に入ると、会議体の一般原則に従い、議案の提案者による提案理由の説明、出席者からの質疑、それに対する応答という形で議事が進行します。取締役・会計参与・監査役・執行役は、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、その事項について必要な説明をしなければならないことについては明文の規定がおかれています(314条)。 株主総会は、議長の閉会宣言により終了します。ただし、閉会宣言が不当になされた場合には、総会は終了しないとみなされます(東京地裁判決昭和29年5月7日)。 〔参考〕株主総会の運営─受付 株主総会の受付は、株主総会当日に来場した株主の応対を担当します。株主総会は株主を構成員とする会社の最高意思決定機関ですから、万が一株主以外の者が入場し、決議されてしまった場合や、逆に株主であるにもかかわらず入場を断ってしまった場合には決議取消事由となります。実際の受付の実務は2つの係に分担します。 ・受付係─来場者の資格審査です。議長の指示によって株主としての入場資格審査をし、社長に代わって入場許可を出します。 ・集計係─前日の議決権行使書による行使の締切時限までに行使された株主数及び議決権個数に、当日出席した株主の出席者数及び議決権個数を加え、最終的な出席者数及び議決権個数を算出します。ここで、株主総会の出席者が定足数を充たしているかを確認しているわけです。 入場資格審査 @)株主本人 総会会場への入場資格、つまり議決権があるかどうかについての確認は、会社から株主宛に送付した議決権行使書用紙(または委任状用紙)の持参確認により行なうことが一般的です。全国株懇連合会による「株主本人確認指針」では、会社法124条第1項に規定する集団的権利にあたり、短期間に大量・迅速に処理することを勘案し、発行会社が作成し、株主の登録住所宛に送付された書類等の提出をもって確認することで、本人確認がされたと認められるとしています。 ※議決権行使書を持参していない場合 イ.まず株主確認が必要であるため、「受付整理票」等に株主名、住所、所有株数および議決権行使書の返送の有無等を所定欄に記入してもらう。これと株主名簿の記載事項が一致すれば、入場を認める。 ロ.株主名簿との一致が確認できない場合は、住所変更等の事情の有無、時期等の確認に加え、名刺、運転免許証等の提示を求め、本人との同一性を推認できれば入場を認めても差し支えない。 ハ.同一性が確認できない場合は、入場を断る事となる。 A)代理人 定款に代理人本人が株主であると規定されている場合は、まず代理人が株主であるかの審査をします。その後、代理人であることを証明する書類(委任状等)の提出をうけ、その委任状等が真正であるかどうか、そして定款で代理人の数を1人と限定している場合には、人数を確認します。 B)代理人の例外的な場合 (a)法人株主 法人株主の場合、法人の代表者本人が出席することは少ないので、株主である法人の使用人がその代理人として出席します。この場合、株主でない者による議決権代理行使を認めることができるとされています。法人株主の確認方法については、「議決権行使書(委任状)を提出させた」、「名刺・身分証明書等の提出を求めた」、「職務代行通知書の提出を求めた」等により行われている。 (b)法定代理人 未成年者の株主の親権者、成年後見人等法定代理人については、戸籍抄本、登記事項証明書等によって、代理権を有することを確認し、本人確認のうえ入場を認めることになります。ただし、株主名簿に登録された法定代理人については通常の株主と同様の対応でよい。 (c)弁護士 弁護士による議決権の代理行使については、判例も画一的に代理人の資格についての基準が明確になっているわけではなく、代理行使を否定したケースと肯定したケースに二分されています。株主以外の弁護士を代理人として総会に参加させたい旨の申出があり、入場を認める場合、総会当日に弁護士資格や本人確認、委任状の有効性等を確認するのは手間がかかるため、事前に先方株主や弁護士に必要書類等を案内し、了承をとっておくとともに総会当日も一般受付とは別とし、不測の事態に備え顧問弁護士にも立ち会ってもらうことが考えられます。 (d)外国人株主 外国人株主等は、通常ノミニー名義で株主を保有する実質株主ではあるが、株主名簿上の株主でないことになります。このため、問題点も多く、それについて、株式懇話会が「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」を公表しています。基本的には、入場は認めるものの、株主としてではなく傍聴者の扱いとしているところが多いようです。なお、この件については、東証のコーポレートガバナンス・コードでも補充原則1−2Dでとくに取り上げています。 C)その他の非株主 介添人、株主の家族(株主が同伴者(非株主)として子供を伴って来場した場合、株主が子供である場合の親、高齢者の付き添い)、通訳といった例がありますが、原則として株主でない場合には入場できません。 〔参考〕株主総会の運営─総会シナリオ 株主総会の実際の運営は、会社がシナリオ(議事進行要領)を作成し、議長をはじめとして、そのシナリオに従って議事進行や付随する運営を行います。 議事の進行方法(審議方式)には、大別して、個別審議方式と一括上程一括審議方式があり、シナリオも審議方式により異なってきます。個別審議方式の場合は、概ね、@報告事項の報告(監査報告を含む)、A事前質問状に対する一括回答、B質疑応答、C議案の上程、D議案の審議、E議案の採決という順序となります。これに対して一括上程一括審議方式の場合は、@→C→A→[B・D]→Eという順序です。ここでは、一括上程一括審議方式のシナリオの概要を以下に示してみます。 @議長就任宣言 法的に必要な手続ではないが、一般に、自身が議長を務めることとその根拠(定款の定め等)を述べるケースが多い。 A開会宣言 実務上、株主総会の開会時刻が明確となるよう、議長が「開会」の旨を宣言している。開会宣言の後に、議長就任宣言をすることとする例もあり、どちらでも差し支えない。 B議事進行方法の確認 議長の議事整理権の行使として、株主の発言は、報告事項の報告および議案の内容説明が終了した後に、まとめて受け付ける旨を説明する。 C議決権数等の報告 議決権を有する株主数とその議決権数、および出席株主数とその議決権数等を報告し、定足数が充足されていることを宣言する。実務上は、開会時刻の5分前や10分前の時点の集計結果に基づき、報告する例が多い。最近は、より採決の時点に近い数値を明らかにするため、会議の冒頭ではなく、報告事項の報告が終了した後の段階等で報告を行う例もある。 D監査役の監査報告 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類等が法令もしくは定款に違反しまたは著しく不当な事項があると認めるときは、調査の結果を株主総会に報告しなければならないが、そうでない限り、法的には、株主総会において監査報告をする必要はない。もっとも、実務上は、大多数の会社において、監査報告が行われている。 E報告事項の報告 多くの大会社では、事業報告と計算書類(連結・単体)が定時株主総会の報告事項となる。報告事項のすべての項目を読み上げるのは時間がかかるため、具体的に説明する対象を、事業報告の主要な項目(例えば、事業の経過および成果と対処すべき課題)と連結または単体の計算書類の一方のみとし、その余は「お手元の書類に記載の通り」である旨を説明することが多い。 近年は、株主総会のビジュアル化が進んでいる。報告事項の報告を、パワーポイントのスライドとナレーションを用いて行うといった方法が浸透してきている。 F決議事項の議案の内容説明 出席株主に対して、受付で招集通知を配布しているのが通例であるから、議案の内容についても、招集通知の内容をすべて読み上げる必要はなく、要点を説明したうえで、お手元の書類に記載のとおりと説明すれば足りる。 G審議(質疑応答) ここで、報告事項および決議事項について、株主から、質問、意見、動議の提出を含む一切の発言を受け付ける。審議を終了した後は株主からの発言を一切受け付けないため、このような審議方法について、予め議場に出席した株主の過半数の同意を得て進める例も多い。 議長は、議事整理権に基づき、合理的な範囲内で、1人当たりの質問数や質問時間を制限することもできる。 質疑の打切りは、一般論としていえば、審議の時間が十分に経過しており、ひととおりの質問は出ていると考えられる状況にいたったところで、議場に諮って、出席株主の過半数の同意を得て行うことが多い。 H決議事項の議案の採決 採決の方法には、挙手、拍手、投票など、いくつかの方法が考えられるが、どの方法を採用するかは、議長の合理的な裁量に委ねられている。予め提出された議決権行使書および委任状や、当日出席予定の大株主による議決権行使によって、すべての議案が可決されることが株主総会前に判明している場合、拍手によるのが通例である。 I閉会宣言 議長は、株主総会の目的事項がすべて終了したところで、閉会を宣言する。これによって、株主総会は終了する。 ü
株主総会の決議 株主総会における採決の方法についてはとくに法律の規定はありません。定款に別段の定めがない限りは、討議の過程で議案に対する株主の確定的な態度が明らかになり、その議案に対する賛成の議決権数が、その決議の成立に必要な議決権数に達したことが明白になれば、挙手や投票といった細かく数を確認する採決手続をとらなくても、会場の拍手を求めるとか、議長が議場に問いかけ出席者が「賛成」を唱和するといった手続でも決議は成立します(最高裁判例昭和42年7月25日)。決議の成否があきらかになれば、賛成の数を確認することは、常に必要となるわけではないということです。 ※臨時報告書による総会での議決権行使の結果開示 平成22年の内閣府令の改正により、臨時報告書によって株主総会における議決権行使の結果の開示が要求されるようになりました。具体的には、次の事項を株主総会終了後すみやかに金融庁に提出しなければなりません(企業内容の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)。 @株主総会の開催日 A決議事項の内容 B決議事項に対する賛成、反対及び棄権の意思表示にをした議決権の数、その決議事項可決されるための要件ならびにその決議の内容 C株主総会に出席した株主の議決権の数の一部をBの議決権に算入しなかった理由 これについてBからすると株主総会当日における議決権行使結果を正確に集計することが必要とされるようにも読めますが、前日までに送付された議決権行使書面および大株主からの包括委任状等の集計結果から、決議の可決要件を充たし、適法に決議が成立することが明らかな場合にはも総会当日の議決権行使結果をBの議決権件数に算入せず、その旨をCとして記載し、前日までの集計結果を開示することで足りるとされています。 ü 普通決議(1項)普通決議は、この後で説明する特別決議、特殊決議以外の決議は、特別の要件が課せられていない決議です。特別決議や特殊決議は、どのような場合に必要となるか、個別に法令に規定されています。そういう特別の規定のない、いわゆる一般的な株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の過半数の賛成により成立します。普通決議の定足数は役員選解任の決議以外、定款の定めにより自由に引き下げることができます。そのため多くの会社は、定款で法定の定足数要件をはずし、出席した株主の議決権の過半数で決議が成立する旨を定めています。但し、役員選任・解任の決議については、定款の定めによっても定足数を株主の議決権の3分の1未満と定めることはできません。そのため、多くの会社は普通決議の定足数を3分の1と定めています。 ・定足数 1)定足数の算定方法 普通決議の成立には、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席していなければなりません。この定足数は、それぞれの議題の決議のときに充たされていなくてはなりません。(そのため、総会運営において、受付の係が会場の途中入場と途中退場を厳しくチェックして、何時何分現在に会場内に出席している株主がどれくらいいるかを把握できるようにしています) 過半数を充たしているか否かを判断する際の分母となる議決権を行使することができる株主とは、すべての発行済株式総数から議決権制限株式、自己株式、相互保有により議決権が停止する株式、単元未満株式を除外した残りです。 特定の総会で議決権の代理行使を委任した場合、代理人が総会に出席すれば、本人である株主が有する議決権数は、定足数算定の際の分子となる出席した株主の有する議決権数に算入されます。議決権行使書を通じて行使された議決権の数も、出席した株主の有する議決権数に算入されます(311条2項)。また、会場で提案された原案に対する修正動議が提出されとき、議決権行使書を通じて行使された議決権の扱いについてでてすが。これを欠席として扱うと、わずかな出席者の出席のみで総会の意思決定がされてしまうことになるので、議決権行使書を通じて行使された議決権については出席扱いにした上で、修正動議には棄権したものと扱うことが一般的となっています。 2)定足数の変更・排除 定款に定めることにより、普通決議の定足数を変更することができます。より厳格に定足数を定め、決議の成立を困難にすることも、反対により緩やかな定足数を求め。決議の成立を容易にすることもできます。さらに定足数を設けず、単に総会に出席した株主の議決権の過半数で決議が成立する旨を定めることもでき、実際に奏している会社は少なくありません。 ただし、役員の選任及び解任の決議の定足数については、定款の定めによっても、議決権を行使することができる株主の有する議決権総数の3分の1未満に引き下げることはできません(341条)。 ・必要賛成数 普通決議は出席した株主の有する議決権の過半数に相当する賛成があれば成立します。 定款の定めにより、普通決議の必要賛成数を変更することができます。ただし、役員の選解任の決議については、必要賛成数を過半数未満に引き下げることはできません(341条)。なお、それ以外の普通決議については下限は定められていません。 反対に必要賛成数の上限を定めた規定はありません。 ü 特別決議(2項) 特別決議とは、定款変更、組織再編行為など株主の地位に重大な影響のある事項、または支配株主など一部の株主のみが利益を受けることになりがちな事項など、慎重な判断を要する事項について、普通決議より成立する要件が重い決議です。特別決議が成立するには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で引下げが可能であるが、3分の1未満にすることはできない)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(定款で引き上げることは可能)以上にあたる賛成が必要です。定款により法定の用件を加重することもできる。特別決議をしなければならない主な事項は、次のとおりです。 @組織再編等の会社の基礎の変更 定款変更(466条)、事業譲渡(467条1項)、合併(783条1項)、株式交換・株式移転(795条1項)、会社分割(804条1項)、資本金の額の減少(447条1項)、解散(471条) A株主の地位にかかわる事項 全部取得条項付種類株式の取得(171条)、株式の併合(180条2項) B株主平等の原則の上から株主の利害にかかわる事項 特定の株主からの自己株式取得(156条)、現物配当(454条) C株式の発行等にかかわる重要事項 特に有利な払込金額による募集株式や新株予約権の発行(いわゆる有利発行)(199条2項、238条2項) D会社支配にかかわる重要事項 累積投票により選任された取締役または監査役の解任(339条1項)、役員等の責任の一部免除(425条) ・定足数 1)定足数の算定方法 特別決議の成立には、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席していなければなりません。この定足数は、それぞれの議題の決議のときに充たされていなくてはなりません。(そのため、総会運営において、受付の係が会場の途中入場と途中退場を厳しくチェックして、何時何分現在に会場内に出席している株主がどれくらいいるかを把握できるようにしています)これは、普通決議と同じです。 特別決議を要する事項のうち、譲渡制限株式の買取等、特定の株主からの自己株式の取得、譲渡制限株式の一般承継人に対する株式売渡請求に関する決議において、それぞれ譲渡承認請求者、譲渡人たる特定の株主、譲渡制限株式の一般承継人は、議決権を行使できないとされています(140条3項、160条4項、173条2項)。この場合、これらの者が有する議決権は、特別決議の定足数の算定の分母となる議決権を行使することのできる株主の議決権には算入されません。 2)定足数の変更 特別決議の定足数は、定款の定めにより引き下げることができるほか、頭数等の要件を付加することもできます。株主全員の同意を擁する旨の定款の定めも有効であると解されています。定款の定めにより定足数を引き下げることもできますが、3分の1未満に引き下げることはできません。議決権ではなく株主数を基準とした定足数(頭数要件)を定めることもできます。 特別決議を要する決議事項のそれぞれについて、異なる定足数を定めることもできると考えられています。 ・必要賛成数 特別決議は出席した株主の有する議決権の3分の2以上に相当する賛成があれば成立します。 これを定款の定めにより特別決議の必要賛成数を引き上げることはできますが、引き下げることはできません。決議の成立に株主全員の同意が必要であるとすることもできます。また、決議事項こどに異なる必要賛成数を定めることもできると考えられています。 ü 特殊決議(3項) 特殊決議とは、個別に特別決議よりも重い要件が課せられている決議です。次の二つの事柄が該当します。 第1は、株式が定款変更により譲渡制限株式になり、または株主が組織再編行為により譲渡制限株式等を交付される場合である。この場合は、議決権を行使することができる株主の半数以上(定款で引上げが可能)で、かつ議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2(定款で引上げが可能)以上の賛成が要求されている。譲渡制限が付され、ガバナンスのあり方が大きく変わるなど株主各人の権利に与える影響が甚大であることによる。 第2は、公開会社でない会社において、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権の各事項について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の変更(当該定めを廃止するものを除く)を行う場合であって、この場合については、総株主の半数以上(定款で引上げ可能)で総株主の議決権の4分の3(定款で引き上げることは可能)以上の賛成が要求される。 関連条文 |