新任担当者のための会社法実務講座 第111条 定款の変更の手続の細則 |
Ø 定款の変更の手続の細則(111条) @種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第108条第1項第6号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。 A種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第108条第1項第4号又は第7号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。 一 当該種類の株式の種類株主 二 第108条第2項第5号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主 三 第108条第2項第6号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主
会社による株式の取得に関わる種類株式を発行する会社において種類株式についての定款変更の手続きについての特則です。 種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して取得条項付株式とする場合、または取得条項を変更する定款の変更については、その種類株式を有する株主全員の同意を得なければなりません。会社の発行する全部の株式を取得条項付株式に変更する定款変更または取得条項付株主気の取得条項を変更する定款変更については110条で、これに対して種類株式としての取得条項付株式については、この111条で定款変更の手続きを規定しています(111条1項)。 種類株式発行会社が、ある種類の株式の内容として、株式の譲渡による取得について会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける場合、または全部取得条項付種類株式とする旨の定款の定めを設ける場合の定款変更については、種類株主による種類株主総会決議をしなければなりません(111条2項)。 ü
種類株式に取得条項を設け、または取得条項を変更する定款変更(111条1項) 種類株式発行会社が、ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該週類株の株式として108条1項6号に掲げる内容、すなわち取得条項についての定款の変更をしようとするときは、当該種類株式を有する株主全員の同意を得なければなりません。取得条項が設けられると、取得条項付株式の株主の意思によらず会社による取得の効果が生じさせることが可能となり、取得条項付株式の株主は株主としての地位を失うことになるから、会社が種類株式発行会社でない場合において、会社が発行する全部の株式について取得条項を付し、また取得条項を変更する定款変更をするためには、110条に則って株主全員の同意を得なければなりません。これに対して。種類株式について取得条項を付し、または取得条項を変更するには、111条に則って、当該種類株式の株主全員の同意を得なければなりません。取得条項を付すこと、またはその変更をすることの利害は、種類株式の株主ごとに一様ではないので、そのような定款変更については各種類株式の株主に委ねられています。 ただし、取得条項を廃止する旨の定款変更の場合には、当該種類株主全員の同意を得る必要はありません。取得条項が廃止されれば、株主としての地位を喪失する根拠がなくなるからです。ただし、この場合は通常の定款変更と同様の手続きが必要なのは言うまでもありません。 ü
種類株式を譲渡制限株式とする定めを設ける定款変更(111条2項) 種類株式について譲渡制限株式とする定めを設ける場合の定款変更は、当該種類の株式の種類株主、第108条第2項第5号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主、あるいは第108条第2項第6号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主という種類株主(111条2号1〜3号)を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じません(111条2項)。この種類の株主総会決議は、特殊決議として、種類株主総会において議決権を行使することのできる株主の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上に当たる多数の賛成をもって決議しなければなりません。これは、種類株式発行会社でない株主会社で発行するすべての株式を譲渡制限株式とする定款変更する場合(309条3項)と同じ決議のレベルとなっています。 また、種類株式を有している株主だけでなく、取得請求権の行使(111条2項2号)や取得条項の適用(111条2項3号)により会社の株式の取得の対価として譲渡制限株式とされる種類株式の交付を受けることとなっている種類株主の株主総会決議も要するものとされているのは、これらの種類の株主も譲渡制限株式とされる種類株式の潜在的な株主として種類株主総会により定款変更についての賛否の決定に参加すべきこととされているからです。ただし、当該種類株主総会で議決権を行使できる種類株主がいない場合は、この限りではありません(111条2項但書)。定款に種類株式を発行する旨の定めがあるが、実際に種類株主がいない場合や会社が当該種類株式の全部を自己株式として取得し保有している場合などが、これに当たります。 この場合の種類株主総会決議では、反対する種類株主の株式買取請求権が認められます(116条1項2号)また、譲渡制限株式とする定めが設けられる種類株式を目的とする新株予約権についても、新株予約権の買取請求権が認められます(118条1項2号)。 種類株式について譲渡制限株式とする定めを設ける定款変更については種類株主総会決議をしなければなりませんが、譲渡制限株式とする定款の定めを変更する定款変更については、種類株主総会決議を要するものとはされていません。譲渡制限がすでに付されている種類株式である以上、譲渡制限の内容を変更するとしても、特別に111条による種類株主総会決議を要するほどのことではないと考えられているためです。 ü
種類株式を全部取得条項付種類株式とする定めを設ける定款変更(111条2項) 種類株式発行会社がある種類株式の内容として、全部取得条項付種類株式(108条1項7号)とする定款の定めを設ける場合の定款変更は、当該種類の株式の種類株主、第108条第2項第5号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主、あるいは第108条第2項第6号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主という種類株主(111条2号1〜3号)を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じません(111条2項)。この種類株主総会は、特別決議によることを要するとされており(324条2項1号)、取得条項の場合にように種類株式の株主全員の同意が必要(111条1項)とはされていません。全部取得条項が設けられると、株主総会の特別決議により取得が行われ、個々の種類株主はその意思に反して取得を強制されることになりますが、全部取得条項付種類株式とする定款変更については反対株主の株式買取請求権が認められています(116条1項2号)。さらに定款変更後に株主総会決議により取得を決定する場合にも、反対株主には裁判所に対する価格の決定の申立てをする権利が認められています(117条)。これらの事情で種類株式の株主全員の同意を要するまでもないという考えからです。 また、種類株式を有している株主だけでなく、取得請求権の行使(111条2項2号)や取得条項の適用(111条2項3号)により会社の株式の取得の対価として全部取得条項付とされる種類株式の交付を受けることとなっている種類株主の株主総会決議も要するものとされているのは、これらの種類の株主も全部取得条項付株式とされる種類株式の潜在的な株主として種類株主総会により定款変更についての賛否の決定に参加すべきこととされているからです。ただし、当該種類株主総会で議決権を行使できる種類株主がいない場合は、この限りではありません(111条2項但書)。定款に種類株式を発行する旨の定めがあるが、実際に種類株主がいない場合や会社が当該種類株式の全部を自己株式として取得し保有している場合などが、これに当たります。 種類株式について全部取得条項付株式とする定めを設ける定款変更については種類株主総会決議をしなければなりませんが、全部取得条項付株式とする定款の定めを変更する定款変更については、種類株主総会決議を要するものとはされていません。全部取得条項がすでに付されている種類株式である以上、全部取得条項の内容を変更するとしても、特別に111条による種類株主総会決議を要するほどのことではないと考えられているためです。 ü
定款変更についての登記等 発行する種類株式の内容は登記事項であるから(911条3項7号)、この条文で規定されている定款変更をした場合には変更登記をしなければなりません(909条)。したがって、取得条項付株式の定款変更(111条1項)については、当島申請書に株主全員の同意があったことを証する書面、譲渡制限株式や全部取得条項付株式の定款変更(111条2項)の定款変更については、種類株主総会の議事録を添付しなければなりません(商業登記法46条1項)。 関連条文 取締役の選任等に関する種類株式の定款の定めの廃止の特則(112条)
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