新任担当者のための会社法実務講座 第110条 定款の変更の手続の細則 |
Ø 定款の変更の手続の細則(110条) 定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第107条第1項第3号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、株主全員の同意を得なければならない。
会社の発行する全部の株式を107条1項3号に掲げる事項についての定めのある株式である取得条項付株式とする旨を定める定款の変更、または会社の発行する全部の株式が取得条項付株式である場合における取得条項についての定款の変更は、取得条項についての定款を廃止する変更の場合を除いて、株主全員の同意を得なければなりません(110条)。会社の発行する株式を新たに取得条項付株式とする定款変更、または取得条項付株式とされている場合の取得条項の変更は、取得が強制的に株主の地位の喪失またはその条件の変更という効果をもたらすことになるので、通常の定款変更の手続(466条、309条2項)による、いわゆる特別決議(過半数の株主の出席で、出席株主の3分の2以上の賛成)ではなく、株主全員の同意という特別の手続き要件が必要となります。 この特則(107条)が適用されるのは、会社が発行する全部の株式の内容として、107条1項3号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合、またはその事項についての定款の定めを変更する場合であり、会社が発行する全部の株式について取得条項を付し。または付された取得条項を変更する場合です。 なお、定款の定めを変更する場合からは、取得状況を廃止する場合が除かれてします(107条括弧書き)。これは、取得条項による株主の地位の喪失の定めが廃止されるからです。 また、会社が種類株式発行会社である場合には適用されないものとされています(107条第2括弧書き)。例えば、会社がA種類株式とB種類株式という複数の種類株式発行会社である場合、A種類株式とB種類株式の双方について、定款に取得条項を設け、または定款取得条項を変更する時は、会社の発行する全部の株式の内容として取得条項を設け、または取得条項を変更することになるから、ここで何の手当もしなければ、110条が適用されることになりますが種類株式発行会社において上記のような定款変更をする場合には111条1項により、種類株式ごとに種類株主の全員の同意を得て行うべきとしています。したがって、110条は種類株式を発行会社でない会社が適用の対象となります。 ※発行する株式の内容は登記事項となります(911条3項7号)から、110条により定款を変更した場合は変更登記をしなければなりません(909条)。この場合の登記の手続きには、登記の申請書に株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければなりません(商業登記法46条1項)。 関連条文 取締役の選任等に関する種類株式の定款の定めの廃止の特則(112条)
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