新任担当者のための会社法実務講座 第119条 新株予約権の価格の決定等 |
Ø 新株予約権の価格の決定等(119条) @新株予約権買取請求があった場合において、新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、当該新株予約権付社債についての社債の買取りの請求があったときは、当該社債を含む。以下この条において同じ。)の価格の決定について、新株予約権者と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、定款変更日から60日以内にその支払をしなければならない。 A新株予約権の価格の決定について、定款変更日から30日以内に協議が調わないときは、新株予約権者又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。 B前条第8項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、定款変更日から60日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも、新株予約権買取請求を撤回することができる。 C株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。 D株式会社は、新株予約権の価格の決定があるまでは、新株予約権者に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。 E新株予約権買取請求に係る新株予約権の買取りは、定款変更日に、その効力を生ずる。 F株式会社は、新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、新株予約権証券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。 G株式会社は、新株予約権付社債券が発行されている新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、その新株予約権付社債券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。 新株予約権買取請求により、新株予約権者は自己の有する新株予約権を「公正な価格」で買い取ってもらうことになります(118条)。その買取価格の決定手続、買取価格および利息の支払、効力発生時期などを規定したのが119条です。なお、新株予約権買取請求の対象である新株予約権が、新株予約権付社債に付されたものである場合において、当該新株予約権付社債についての社債の買取請求があった場合には、当該社債を含む買取請求価格を決定しなければなりません(119条1項括弧書)。 ü
新株予約権の買取価格の協議と支払期間(119条1項) 新株予約権の買取価格の決定について、会社法では、株式買取請求権の価格決定の手続きと同様に、裁判所による価格決定の申立てによるのではなく、まず、当事者間で協議を行うこととしています(119条1項)。裁判所による公正な価格の決定には困難が伴い、鑑定費用なども高額になることが予想されるため、できるだけ当事者間の協議により価格決定をすることが望ましいと考えられているからです。 当事者間に協議が調ったときは、会社は効力発生日から60日以内に支払いをしなければなりません(119条1項)。 ü
裁判所に対する価格決定の申立て(119条2項) 新株予約権の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、新株予約権者又は会社は、期間満了の日後30日以内に、裁判所に価格決定を申し立てをすることができます(119条2項)。新株予約権の価格決定手続は非訟事件とされます。 ü
新株予約権買取請求の撤回(119条3項) 買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得ない限り、その株式買取請求を撤回することはできません(116条6項)。しかし、効力発生日から30日以内に協議が調わない場合で、効力発生日から60日以内に価格決定の申立てがなされないときには、その期間満了後は、株主は、いつでも新株予約権買取請求を撤回することができます(119条3項)。つまり、価格決定申立期間の経過は、新株予約権買取請求の失効事由ではなく、会社の同意なしに買取請求を撤回できることとしました。 ü
利息の支払い(119条4項) 会社は、裁判所が決定した買取価格に対する効力発生日から60日経過後において、年6分の利率により算定して利息を支払わなければならない(119条4項)。 このような利息の法的性質は、従来は買取代金債務の遅滞として遅延利息と解されてきましたが、弁済期の経過により債務者たる会社の帰責性を問わず自動的に発生する年6分の法定利息と解されるようになりました。 ü
新株予約権買取請求の効力の発生(119条6項) 株式買取請求の対象とされた株式の移転は代金の支払いの時に効力を生じることになります(117条6項)。これに対して、新株予約権買取の効力は定款変更日に発生します(119条6項)。 ü
代金の支払(119条7項) 会社は、証書が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、新株予約権証書と引き換えに、その株式の代金を支払わなければならない(119条7項)。この内容は、新株予約権証券および新株予約権付社債券を含め、株式、新株予約権および新株予約権付社債の買取請求権に共通するものとなっています。 振替新株予約権の買取を行う場合について、振替株式の買取の場合と同様に会社法の特例が認められています(119条8項)。株主から会社への振替が行われる必要がありますが、振替の申請は振替新株予約権の記録を有する者しか行うことができず、また、買取に係る会社の代金の支払いと、買取請求を行った新株予約権者による振替の申請を同時履行の関係に立たせる必要があることから、会社は、請求新株予約権者に対して振替新株予約権の代金の支払いをするのと引き換えに振替新株予約権について会社の口座を振替先口座とするか振替を新株予約権者の直近上位機関に対して申請することができます(社債株式振替法183条)。 関連条文 取締役の選任等に関する種類株式の定款の定めの廃止の特則(112条)
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