新任担当者のための会社法実務講座 第106条 共有者による権利の行使 |
Ø 共有者による権利の行使(106条) 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
単位である株式を、株主は勝手にそれ以上に細分化して複数人で所有することはできませんが、一株を数人が共有することは認められます。 株式の共有は、正確に言えば民法264条の準共有に当たり、株主の意思に基づき生ずる場合(組合の形成等)のほか、共同相続(民法898条)等により生じます。 株式の共有者は、株主の権利を行使すべきもの1人を定め会社に通知することを必要とし、その者(権利行使者)だけが株主としての権利を行使できます(106条)。これは、共有一般の規定である民法252条及び同670条1項等に従って権利行使が行われると、それが違法に行われているかを会社が個々に確認することは、煩雑すぎるからです。会社が権利行使者による権利行使以外の方法に同意することは可能です(106条但書)が、会社の同意により、共有一般の規定に反する共有株主の権利行使が違法となるわけではなく(最高裁判決平成27年2月1日)、ある共有株主の違法な権利行使によって他の共有株主に損害が生ずれば、会社の損害賠償責任、総会決議取消などを免れないことになります。なお議決権行使ができない共有株式が発行済株式の多数を占めるため本来成立するはずのない総会特別決議が成立したものとして会社が運営されている等の特段の事情がある場合には、会社の同意がなくても、各共有者は、権利行為者としての指定なしに株主としての権利行使をすることが認められることがあります(最高裁判決平成2年12月4日)。 共有者による権利行使の決定は、通常、共有物の管理行為として、持分価格に従いその過半数でなされるものです(民法252条)。共同相続により生じた株式共有の場合にも、相続分に応じた持分の過半数で権利行使者を定め得ると判例は示しています(最高裁判決平成9年1月28日)。 関連条文 取締役の選任等に関する種類株式の定款の定めの廃止の特則(112条)
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