新任担当者のための会社法実務講座 第384条 監査役の株主総会への報告義務 |
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株主総会に対する報告義務(384条) 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。
監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査し、法令・定款に違反しまたは著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を報告することを要する(384条)。 監査役の総会に対する意見の報告は議案または書類が法令・定款に違反し、または著しく不当な場合にのみ、すればよいと考えられます。この点は監査役の監査報告書の記載とは違っています。監査報告書では適法な場合もその旨の記載が要求されますから、また、報告は書面によっても、口頭によっても、どちらでもよく、監査役が数人の場合は、各自が意見を報告する必要がありますが、各自の意見が同じのときは、そのうちの一人が連名で報告することもできます。 これによって、株主総会の議案審議において株主が適切な判断をするのを助け、株主総会が違法・不当な決議をするのを防ぐことが期待されています。 監査役は、取締役会に出席し、意見を陳述する権利を認められています(383条)から、総会提出議案・書類が取締役会の議題になれば、そこで調査をして、法令・定款に違反し、または著しく不当な総会議案が提出されることを阻止する機会が与えられていることになりますが、監査役の意見が無視されて、そのような議案・書類が総会に提出されようとするときは、監査役は総会で意見を述べることになります。 この一般的な報告義務とは別に、監査役は監査役の任免に関する意見陳述権等、個別のケースについて意見陳述権を認められています。 ü
調査義務 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない(384条前段)。議案とは、会社法または定款の規定により。株主総会で決議される事項(議題)に関する議案であ、取締役会設置会社では取締役会が決定し(298条4項、会社法施行規則63条7号)、代表取締役が株主総会に提出するものです。書類その他は、計算書類の他報告事項を含む株主総会の判断の対象または資料として提出すべき全てものを指します。 議案が株主提案によるものである場合には、監査役の調査義務の対象にはなりません。かといって、株主総会が違法・不当な決議を防止するすることも監査役の付随的職務と考えると、これらのものを調査し、法令・定款違反たは著しく不当な事項がある場合には、株主総会に報告すべきであると考えられます。 なお、取締役等による調査の妨害に対しては制裁規定が設けられています(976条5号)。 ü
報告の内容と形式(報告義務) 監査役は、調査の結果、法令・定款違反または著しく不当な事項があると認める場合には、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない(384条後段)。監査役は取締役の職務執行が善良なる管理者の注意をもって(330条)、法令・定款または株主総会の決議を遵守して会社の利益のために忠実に行われているか(355条)を監督するので、取締役が、法令・定款違反の議案、書類等を総会へ提出することは善管注意義務ないし忠実義務違反の可能性があることから、これらの事項を認めたときは、株主総会に報告しなければなりません。なお。議案について、監査役が報告すべき調査の結果がある時は、その結果を株主総会参考書類に記載しなければなりません(会社法施行規則73条1項2号)。 ここでいう法令違反とは商法や会社法だけでなくあらゆる法令の違反か含まれます。また、著しく不当な事項とは、取締役の職務執行が善管注意義務ないし忠実義務違反となるような不当な事項を指しますが、必ずしも明白に違法性を帯びるものに限られるものではあません。 報告は書面によっても、口頭によっても、どちらでもよく、監査役が数人の場合は、各自が意見を報告する必要がありますが、各自の意見が同じのときは、そのうちの一人が連名で報告することもできます。監査役が報告をするためには、株主総会において報告に関する質問に対して説明するために(314条)株主総会に出席する必要があります。 なお、監査役による虚偽の申述または事実の隠蔽に対しては、過料の制裁があります(976条6号)。
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