Ø
取締役等の説明義務(314条)
取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
株主総会において、株主は会議の目的たる事項について質問を行い、それに対して取締役や監査役が回答し説明するのは、会議の一般原則として、当然のことです。あるいは、取締役としても株主の信頼を得て、誤解による解任を防止したり、報酬を要求するためには積極的に説明するのが本来のあり方であろうと思います。だから、この条文があるから取締役に説明義務が発生するというものではない、というのがこの条文の基本的な意味です。でそもそも、制定当初の旧商法にはこの条文はありませんでした。では、なぜこのような条文があるのか。この内容の条文は昭和56年の商法改正で新たに加えられたものです。その理由は、当時の株主総会の状況にありました。その当時の株主総会は総会屋が跳梁跋扈し、議事の運営は総会屋の振る舞いによって左右されていました。もし、かりに株主が株主総会の場で議題について質問しても、それに対して総会屋が「議事進行」の動議を提出し、議長がこの動議を総会屋の賛成多数で可決して、株主の質問に答えることなく、議案を採決してしまう。そういう議事運営が横行していました。このようなやり方は、株主の質問する権利を侵害するもので、その権利を保障するために、このような条文がつくられたと言われています。しかし、その後、この条文は総会屋に逆に利用されることとなりました。総会屋は、この条文を利用して延々と質問をして総会の引き延ばしをして、長時間総会をもたらすことになりました。
ü 説明義務
株主総会が会議体であることを前提とする限り、そこには討論が期待され、その討論には必然的に質疑応答も含まれます。株主総会は会議体であることから、当然に会議の参加者である株主の質問する権利及びその質問対する回答の義務が想定されていることになります。しかし、現実の株主総会の運営は、会社が議題・議案を提案し、株主はすでに用意された議題・議案を審議するという形式をとっています。これは所有と経営の分離が進んだ会社ほど明確に現われます。会社法では、取締役会設置会社の場合には、取締役会で決定した議題以外の事項を株主総会で決議できないと規定しています(309条5項)。したがって、株主総会参加者の質問権と説明義務といっても、実際には、株主の質問権と会社側(取締役等)の説明義務とに分化されているわけです。
しかし、そうであれば会社法は株主の質問権を規定することはなく、取締役の説明義務だけを一方的に規定しています。それは、株主の権利とすると濫用の危険があると企業実務の側から示されたためと言われています。それゆえ、取締役の説明義務の規定は株主の質問権を認めたことと趣旨は同じと考えられています。
株主は、株主総会において、その議決権の適切な行使をするために必要な範囲において、会議の目的たる事項について説明を求めることができ、取締役、会計参与、監査役、執行役は、株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた事項について必要な説明をしなければならない。議決権のある株主は、その保有する議決権数の多寡にかかわらず、説明を求めることができます。ただし、単元未満株主は株主総会に出席できないため、質問することはできません。質問の内容が曖昧であったり抽象的であったりする場合には、説明義務は生じないと考えられており、これは裁判例もあります。
株主から適法に質問権が行使されたにもかかわらず、取締役が説明を拒絶したときは、決議の方法が法令に違反するものとして決議取消事由となります(831条1項1号)。ただし、質問事項が、@会議の目的である事項に関しないものである場合、A株主共同の利益を著しく害する場合、Bその他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合には、説明を拒否することができます。この場合の立証責任は会社側にあります。
株主総会前に事前質問状を送付されることがあります。これは株主が株主総会において説明を求める事項を予告したもので、株主総会での質問と同一視することはできません。説明義務は、株主総会で説明を求められて、はじめて発生します。
ü 説明義務者
説明義務者は取締役、会計参与、監査役及び執行役です。このうち誰が、株主の質問に答えて説明するのかについては、議長が議事整理権に基づいて判断し、議長が自ら答弁するか、あるいは説明者を指名します。質問者である株主が特定の取締役を回答者に指名した場合でも、議長は株主の指名に拘束されることはありません。また、より適切な説明を行なうことを目的として、役員以外の使用人、子会社の役員、顧問弁護士等も、議長の発言許可に基づき、取締役等に代わって質問に対する答弁を行うことが出来ます。
これらの義務者は総会に出席して、株主の求めに応じなければならないので、とくに規定されているわけではありませんが、株主総会に出席する義務を説明義務の前提として負っています。ただし、この出席義務は取締役及び監査役の善管注意義務にもとづくもので、やむをえない欠席は認められています。
また、議題や議案に対して株主から質問があった場合、取締役等に説明義務がありますが、株主総会の場で、その説明義務を取締役等のうち誰が履行するかについては、仮に質問した株主が説明すべきものを指定しても、原則として会社はそれに拘束されることはありません。なぜなら、説明義務の対象となる取締役等は会社の機関としてのそれを指すものであるし、誰が実際に説明をすべきかは基本的に質問の内容や趣旨に応じてもっともふさわしい者が客観的に定まるはずだと考えられています。実際には、質問を受けた段階で議長が誰に説明させるかを判断し、説明者を指名することになります。
取締役:株主から経営を受託した者として、また株主総会における議題ないし議案の提案者として、株主に対して説明する義務を負います(348条1項、349条1項・4項、362条2項、363条1項)。株主から質問された場合、取締役全体に説明義務があり、その中の誰かが適切な説明をして義務を履行すれば。全体として義務から解放されることになります。例えば、ある取締役の管轄する事業について質問でも、取締役会決議によって業務執行取締役を選定し(363条1項2号)、業務執行取締役の権限事項について株主から質問があった場合には、その他の取締役は取締役会を通じて、業務執行取締役を監督する義務を負うので、取締役全員に説明義務があることになります。通常は、議長である代表取締役が説明を行うか、担当取締役を説明者として指名します。必要な場合には、履行補助者として使用人に説明させることもあります。
監査役:取締役の職務執行などの監査が職務で、また監査報告書による監査結果をもとに、取締役が株主総会に提出する議案や書類について、法令や定款に違反または著しく不当な事項がある場合には、株主総会に報告する義務を負っています(384条)。株主から監査結果と関連する質問があった場合に、各監査役に説明義務があることになります。多くの場合、監査に関する職務分担がなされているでしょうから、質問の対象となっている監査を担当した監査役が説明をすれば、すべての監査役の説明義務から解放されることになります。ただし、それほど規模の大きな会社でなければ常勤監査役が説明をしていると思います。
執行役、会計参与:各自が委嘱された業務に関して、会計参与は職務である計算書類の作成に関して説明義務を負っています。ただし、取締役とはちがって、それ以外のものについては説明義務はありません。
※取締役候補者、監査役候補者には説明義務はありません。
※定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は定時株主総会に出席して意見を述べなければなりません(398条2項)。ただし、これは意見陳述義務であって、説明義務ではありません。
※株主提案をした株主は、その提案について他の株主からの質問を受けた場合であっても、これに説明する義務を負うものではありません。なぜなら、提案株主は、職務として議案の提案をするものではないからです。他方で、取締役は株主提案についての質問であっても説明義務を負います。それによって出席株主は議題・議案に対する判断のてかがりを得ることができるわけです。もちろん、提案株主が説明義務はありませんが、説明する権利はあります。
ü 説明義務の範囲
取締役や監査役がどの程度の説明をすれば説明義務を尽くしたことになるのかについては、会議の目的たる事項を株主が合理的に判断するのに客観的に必要と認められる程度に説明することだと言われています。具体的には、どの範囲の事項を説明しなければならないかという尺度と、どの程度まで詳しく説明しなければならないかという程度の尺度の二つの尺度で判断されます。
・説明義務の範囲
株主は株主総会において、その議決権の適切な行使をするために必要な範囲において、会議の目的たる事項(議題)について説明を求めることができます。説明義務は、これに対して株主総会の招集通知に記載され適法に株主総会の議題とされた会議の目的事項の範囲内でのみ認められると考えられています。又、合理的平均的な株主の立場において、報告事項について合理的理解、決議事項については議案の賛否の合理的判断のために、取締役等が必要な範囲内で情報提供をおこなわなければなりません。ここでいう、合理的平均的な立場の株主というのは、一般的な平均的な株主という程度で、質問株主がたまたま深い理解があるからと言って説明をを必要以上に簡略化することは許されないし、逆に株主の理解力に難点がある場合でも、ことさら詳細な説明が求められるわけではないということです。ただし、議題に関連するからと言って、無限定な範囲で説明義務があるわけではなく、詳細に過ぎる質問、仮定に基づく質問、遠い過去または将来の事項、法律解釈上の議論、細かな計数。個別の取引に関する質問などについては説明義務の対象とならないとされています。
さらに、株主総会においては、招集通知記載の議題から一般的に予見しうる範囲を超えて決議することはできず、決議をしても手続違反(831条1項1号)として決議取消事由となるほか、場合によっては無効原因となります。従って、株主総会の議題以外の事項について、たとえ出席株主の多数決をもって説明を求められても、取締役等は、その請求に応じる義務はありません。
〔参考〕実際の会議の目的事項
株主総会の説明義務の範囲は会議の目的事項に限られることになりますが、実際のところ会議の目的事項の範囲になるかならないかという区分けはきわめて難しいて考えられます。例えば、多くの上場企業で取締役の任期を1年間としているので、毎年の定時株主総会では取締役の選任を議題としています。この場合、取締役候補の中には必ず再認となる者が含まれているはずです。その場合には前期の実績を踏まえて再認ということになります。これについて、株主が取締役の前年の実績について質問するということになれば、この1年間で経営者として取締役がかかわったこと、つまりは会社の経営に関するすべてが質問の範囲に含まれてくると考えることも可能です。一方、取締役の選任は、これから1年間の経営に従事する人を選択するわけですから、これから会社をどうして行くかということについての質問はすべて説明義務の範囲に含まれると考えることが可能です。つまり、会議の目的事項の範囲内という限定は、実際のところはあってないものと同じと考えられます。
さらに、開かれた総会とか、コーポレートガバナンス・コードの影響から株主との対話の機会という考え方を徹底すれば、株主からの質問に対して積極的に説明するという姿勢を会社は求められている状況にもあります。
※株主の質問権、取締役の説明義務は議題・議案の範囲内という制約があるとすると、株主はその範囲外の事項に関して株主総会の場で質問する、あるいは意見を表明することはできないのか。一方、取締役はこれに対する説明義務を負うのか。そもそも、議題に関連しない事項については、説明の拒絶事由と314条但書に明記されています。しかし、一般的な株主の権利としては認められないのか。実際の株主総会で、ある質問をしようとした株主が、議題に関連する質問をするのか、または議題と無関係な質問をするのかは、質問されてみないと分かりません。その意味では事実上、株主総会の場で株主は議題との関連性にかかわらず質問や意見表面をすることができることになります。また、その内容が議題に関連しているかどうか判断できる前に株主の質問や意見表明を遮った場合には、決議の方法の著しい不公正とみなされる可能性があります。実際のところ、IR的な観点や株主に理解を得るために、議題と関連のない質問に対しても積極的に説明していこうというのが最近の株主総会の傾向になってきています。
ü 説明の程度
・報告事項についての説明義務
原則として、計算書類及び事業報告ならびにこれらの附属明細書の記載事項が基準となり、これを若干補足する程度で認められると考えられています。これらの書類についての閲覧請求権と会計帳簿についての閲覧請求権が区別され、後者については請求権者が限定されていることとの整合性からも、この考え方は合理的と考えられています。
ただし、大幅な変動が生じた項目があれば、その理由等について、また会計監査報告または監査報告において記載されている項目や具体的に違法行為と関連が指摘された事項については、その内容について説明する必要があると考えられています。
会社法では附属明細書の作成を義務付けられており(435条2項)、計算書類及び事業報告の記載を補足する内容について法定記載事項しています(会社法施行規則128条、会社計算規則117条)。したがって、計算書類の報告及び事業報告の議題に関して説明が求められた場合、附属明細書の記載内容を口頭で反復する程度に説明すれば、一般の株主においては客観的に報告事項を理解できると考えよく、附属明細書レベルを超えた細かい内容や数値について説明する必要はないという考え方が一般的です。
・決議事項についての説明義務
原則として、株主総会参考書類に記載されている事項に若干補足説明する程度でよいと考えられています。
株主総会参考書類は、書面投票制度において、株主がその記載事項を読めば書面による議決権行使が適切になされることを前提として法定された情報の提供です(301条1項、会社法施行規則73条)。したがって、取締役が株主総会を招集し、議案を提案して決議を求めるに際しての説明義務の範囲は、株主総会参考書類の記載内容が一般の株主か合理的に賛否の判断をなすために必要かつ十分な情報であると考えられます。
・IRの観点、株主との対話という観点からの説明
開かれた総会、株主との対話の場としての総会という観点から、本来法的に説明義務はなくても、IR、SR上の観点から説明することが有益であると考えられる事項、また株主の関心度の高いトピック等については、法律的な説明義務にとらわれず、議長の判断で説明することが望ましいと考えられます。
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説明の範囲・程度の具体例
・役員選任議案
取締役選任議案について、株主が判断の手がかりを獲得するためには、具体的な候補となっている人物の経営能力や適確に関する情報です。したがって、株主から質問があった場合には、この点について説明から洩らすことはできないと考えられます。取締役再任議案の場合ならば、従前の職務執行状況や実績にについて説明を行うことで、経営能力に関する情報を提供していくことになります(東京地裁判決平成16年5月13日)。もちろん、説明義務の履行にあたっては一般的・平均的な株主が合理的に判断できる範囲で説明すれば足りるから、個別の職務執行の内容について説明をしなければならないというものではあれません。その人物の経営能力が理解できる範囲で、従前の職務執行状況を概括的に説明すればよいと考えられています。
・役員報酬議案
役員報酬の議案について、これを取締役自身に決定させると、自ら高額の報酬を決めてしまって株主の利益を害する危険、つまり会社から不相当な額の財産が流出してしまう危険があります。株主総会で決議することは、その危険を防止するものです。したがって、報酬の総額、つまり、全体としていくら支払われるかが株主には明らかにならなければなりません。逆に株主から個々の取締役の報酬額について質問された場合、それは会社法の趣旨からすれば役員報酬議案の賛否の合理的判断に必要不可欠な情報ではなく、説明をしなかったからと言って当然に説明義務違反となるわけではないということです。
なお、使用人兼務役員の使用人分の給与については、使用人としての給与という事実が、取締役報酬の実質的な額を左右することになる場合、使用人の給与に関する質問に対しては、使用人の給与体系とその体系に従った支給の事実については説明すべきこととなると考えられます(最高裁判決昭和60年3月26日)。
また、退職慰労金については、実務的には退職慰労金の贈呈のみが株主総会において提案され、その支給金額、時期および方法については、その決定について一定の基準に従うことを前提にして、取締役会に一任すると決議されるのが一般的です。これでは、株主にとっては役員報酬議案の一環であるといっても、会社から流出する財産がどの程度かわかりません。しかし、これについては、多くの会社は総会前から本店に退職慰労金の基準を記した書類を備え置いて株主の閲覧に供することで対応しています(会社法施行規則82条2項但書)。そこで、株主総会の場において、株主から退職慰労金の額や一定の基準を明らかにするように質問された場合、支給基準に確定された基準が存在すること、その基準が閲覧可能であること、そしてその内容が支給額を一律的に算出できることを説明すれば、これによって会社からの流出額を知ることができるから説明義務が尽くされると考えられています(東京地裁判決平成16年5月13日)。
・計算書類の報告
計算書類については、その確定が株主総会の承認にかかっているのが原則です(438条2項)。その趣旨はこれを通じて株主による当該事業年度における会社の概況を理解させ、取締役の監督の機会を提供する点にあります。それは同時に、取締役の選任その他の株主総会の意思決定の前提となるものでもあります。もっとも、現実には、会計の専門的な知識をもたない一般の株主に対して単に計算の結果を記載したに過ぎない書類を示してもその当否を判断することはできないと言えるでしょう。したがって、この承認は形式的なものとならざるを得ません。そこで会計監査人設置会社の場合は、特則により、計算書類の確定は取締役会が行い、その内容を株主総会で報告することとしています(439条)。
以上のような趣旨からすれば、少なくとも報告事項である計算書類に関して質問があった場合、その質問の内容にもよりますが、計算書類に記載された内容との関係で、会社の概況を合理的に理解できるような説明、あるいは取締役の経営の状況が合理的に理解できるような説明は必要であると考えられます。逆に言えば、計算書類という会社の概況把握や取締役に対する監督のための間接的な手段に過ぎないことから、その附属明細書も含め、法定の計算書類記載事項の範囲において一般的、概括的な説明がなされれば足りると考えられます。
〔参考〕株主総会の場での説明義務の実際─事前質問状がある場合の対応
@質問状を送付することの法的な意味・効果
質問状の事前送付は、質問予定事項を事前に告知することにより会社に調査の機会を与え、「説明をするために調査を要する」ことを理由とする説明拒絶(314条但書、会社法施行規則71条)ができなくなるという効果を生じさせる点に意味があります。
・「質問の予告」であって、質問そのものではない。
質問状を送付した株主が議場で実際に質問状の質問事項を質問しない限り、この質問があったことにはなりません。したがって、質問状の時点では説明義務は生じません。
※事前に質問状を送付して総会に出席した株主が、質問の意思表示をしたが議長に指名されず、結局その質問をしなかった場合には、取締役の説明義務は生じない、という裁判例があります(東京地裁、H4東京電力事件)。
・株主が質問状の朗読を要求した場合。
朗読の義務はありません(一括回答が適当)。議長が担当者に質問状を朗読させた場合に、質問状記載の質問全部について議場で質問権を行使したとみなされた裁判例があります(広島地裁H8日本交通事件)。
A一括回答の履行
・一括回答の準備
質問状送付がある場合は、原則として一括回答の準備をします(会議の目的事項と関係ない質問や客観的な説明義務の範囲を超える質問は除く)。
※相当数の質問が来ている場合に、一括回答の方法を採らずに、株主に個々の質問をさせる方式を取った場合には、質問状記載の質問事項を一から読み上げられて、会社側がそれにいちいち対応していかなければなりません。そこで、まず一括回答を行い、その上で株主の質問を受けるという方法の方が運営上効率的です。
・一括回答をする場合の留意点
ア.一括回答したら総会場で質問の機会を与えなくてもよいというのではなく、一括回答の後で議長は口頭の質問に応ずる義務がある。
一括回答で説明済みの事項について質問した場合には、「すでに回答済みである」旨答えれば足りる。
イ.質問状提出者の出欠を明らかにする必要はない。
質問者(の氏名)を明らかにする必要はない。
ウ.質問状に全部答える必要はない(説明義務がある事項については答えなくてはならない)。
回答しない理由・基準のせつめいも不要
エ.「個別上程方式」の場合は、報告事項、各決議事項(議案)毎に、それと関連する質問事項について、一括回答しなければならない。
ü 説明を拒否できる場合
質問事項が次の場合には、説明を拒否することができます(314条但書)。
その趣旨は、正当な質問する権利の行使を明確にすることによって、その権利の濫用を防止する点にあると言われています。そもそも取締役の説明義務は、株主総会の場での実質的なで公正な議論を確保することを図っていますが、これはあくまでも株主が議題・議案の審議のため、ひいては議決権行使に当たっての判断に資するためのものです。したがって、この趣旨を超える質問は却って株主総会の公正かつ円滑な運営を損うことになりかねません。この点を調整するために、314条但書で説明を拒否できる事由を規定してあります。
なお、質問を拒絶した側は拒絶事由を明かにして説明することまでは求められてしません。ただし、裁判で取締役の説明義務違反が主張された場合には、この拒絶事由は、それに対する抗弁となることができます。