新任担当者のための会社法実務講座 第205条 募集事項の申込み及び割当てに関する特則 |
Ø 募集事項の申込み及び割当てに関する特則(205条) @前2条の規定は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。 A前項に規定する場合において、募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。 B第202条の2第1項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、定款又は株主総会の決議による第361条第1項第3号に掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は、第二百三条第二項の申込みをし、又は第1項の契約を締結することができない。 C前項に規定する場合における前条第3項並びに第206条の2第1項、第3項及び第4項の規定の適用については、前条第3項及び第206条の2第1項中「第199条第1項第4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)」とあり、同条第3項中「同項に規定する期日」とあり、並びに同条第4項中「第1項に規定する期日」とあるのは、「割当日」とする。 D指名委員会等設置会社における第三項の規定の適用については、同項中「定款又は株主総会の決議による第361条第1項第3号に掲げる事項についての定め」とあるのは「報酬委員会による第409条第3項第3号に定める事項についての決定」と、「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」とする。。 会社法205条は、第三者割当の場合には、203条(引受けの申込み)および204条(申込みに対する割当て)の規定が規定が適用されないことを定めています。第三者割当てでは、あらかじめ特定の者との契約によって、募集株式の総数の引受けがなされるので、申込手続や割当手続は必要ないからです。 また、上場会社が募集株式を公募により発行する場合には、予定する募集株式の全部についての引受けを確保するために、通常証券会社がいったん募集株式の全部を引き受けた上で、これを投資家に払込金額と同一価額で売り渡す方法が採られます。205条は、このような買取引受けにも適用されます。 ü
第三者割当て 株主に「株式の割当てを受ける権利」を与えない形でなされる募集株式の発行等のうち、縁故者に対してのみ募集株式の申込みの勧誘および割当てを行う方法が第三者割当てです。実際には、募集株式の引受人との関係強化(募集株式の引受人が会社の経営に参加する、会社との業務提携を行う等)を目的とする場合とか、会社の業績が不振なため特定の大株主以外の者による募集株式の引受けが期待できない場合のように株主割当てや公募等の方法がとれない事情があるときに採られる方法です。 第三者割当ての方法で募集株式の発行等が行われる場合は、第三者による引受の申込みがなされる前に、会社と第三者との間には、すでに割り当てる株式の種類、数、払込金額等に関する合意がある場合が少なくありません、そのような合意により、第三者に対して会社から引受権が付与されます。 また、第三者割当ては、既存株主の利益を害するおそれが大きい割当方法です。すなわち、既存株主は、株主割当てのように自己の持株比率を維持することはできません。それだけ、でなく払込金額が公正な価額よりも低い場合には、財産的利益をも害するおそれがあるものです。その反面、第三者割当ては、特定の第三者が契約により募集株式の総数を引き受けるので、株主割当てや公募の場合のように、、多数の引受人を相手とする煩雑な手続きが不要で、しかも会社が調達を予定する資金が迅速に確保されるという利点があります。 ・決定機関 会社法は、募集株式を第三者割当てで発行・処分することの決定機関を定めてはいません。しかし、非公開会社では、募集事項の決定を株主総会が決定するので、その際に少なくても一定の割当方法の了解があることも考えられます。募集事項の決定を取締役会に委託する場合には、割当方法について制約するか否かは株主総会の自主的判断に委ねられることになります。 これに対しいて、公開会社では、有利発行でないかぎり、取締役会が募集事項を決定します(201条)が、その重要性から取締役会で割当方法も決議すべきという考えもあります。したがって、第三者割当てについても、取締役会の決定に基づいて、代表取締役が第三者と募集株式の総数引受契約を締結することになります。 ・上場会社の第三者割当てに関する上場規則による規制 東京証券取引所は、上場規則により、第三者割当てによる募集株式の発行等について次のように規制しています。 @)株主権の希釈化については、希釈化率300%超の第三者割当てが行われたときは原則として上場廃止とし、希釈化率25%以上または支配株主が異動するときは、株主総会決議がない限りは原則として経営陣から独立した者による第三者割当ての必要性・相当性に関する意見の入手を義務づける A)有利発行については、払込金額の算定根拠およびその具体的内容について、有利発行でないことに関する監査役等の意見を含めて開示を求める B)割当先の確認について、割当先が反社会勢力との関係がないことの確認書の提出や割当先の払込みに要する財産の損さ製の確認を求めるとともに、第三者割当てにより支配株主が異動した場合に3年以内に支配株主との取引に関する健全性が著しく毀損されている場合は上場廃止となる 東京証券取引所が、このような規制を設けた理由は、上場会社において「見せ金」ではないかと疑われる、あるいは既存株主の議決権を極端に希釈化するといった濫用的な第三者割当てによる募集株式の発行等が行われるのを防止するためです。 ・金商法に基づく第三者割当てに関する開示 第三者割当てによる募集株式の発行等に関し、金商法に基づく開示として、割当予定先の状況、募集株式に関する譲渡の制約等、発行条件(払込金額等)の合理性に関する事績、大規模な第三者割当ての場合にはその必要性等、第三者割当て後の少数株主のキャッシュ・アウトの予定等について開示することが要求されています。 ü
第三者割当てによる自己株式処分 ・基本日程 第三者割当てによる自己株式処分の手続 ・取締役会決議 @決議事項 会社は、処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない(199条1項)。 @)募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類および数) A)募集株式の払込金額(募集株式1株と引換えに払い込む金銭または給付する金銭以外の財産の額)またはその算定方法 B)金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額 C)募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは前号の財産の給付の期日またはその期間 これ以外にも申込期間、割当先とその割当株式数等を決議することもある。 A処分する自己株式数 第三者による希釈化が25%以上となる場合または支配株主が異動することになる場合は、@)経営者から一定程度独立した者による当該割当ての必要性および相当性に関する意見の入手、または、A)当該割当てに係る株主総会決議などによる株主の意思確認のいずれかが必要となる(東証上場規程432条)。 具体的には、当該第三者割当てにより割り当てられる自己株式に係る議決権の数を、当該第三者割当てに係る募集事項の決定前における発行済株式に係る議決権の総数にて除した比率が25%以上となる場合が該当する(東証上場施行規則435条の2)。ただし、資金繰りが急速に悪化していることなどにより、@)およびA)のいずれも行うことが困難であると取引所が認めた場合など、当該割当ての緊急性が極めて高い場合はこの限りではない。 種類株式発行会社においては、処分する自己株式の種類および数を決議しなければならないが、種類株式発行会社が自己株式の処分を行うに際しては、種類株主総会の開催が必要となる場合がある。 B払込金額 第三者割当ての場合における払込金額については、日本証券業協会が作成した会員証券会社向けの「第三者割当増資の取扱いに関する指針」では、「払込金額は、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額(直前日における売買がない場合は、当該直前日からさかのぼった直近日の価額)に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から払込金額を決定するために適当な期間(最長6ヶ月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる。」とされている(なお、この指針のただし書きにより払込金額を決定する場合には、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額を勘案しない理由および払込金額を決定するたの期間を採用した理由を適切に開示することが求められる点にも留意する必要がある)。この指針が絶対的なものとは言えないものの、有利発行に該当するかどうかの一つの参考となります。 なお、一定の場合において、払込金額が割当てを受ける者に特に有利でないことに係る適法性に関する監査役または監査等委員会、監査委員会の意見等を得たうえで、それを含て開示することが求められることがあり、有利発行に該当する場合は、株主総会特別決議が必要となります。 ・適時開示 @開示事項 自己株式の処分は、証券取引所の規則に基づき取締役会ただちにその決定事実を開示しなければならない(東証上場規程402条(1)a、東証上場施行規則402条の2第1項、2項)。適時開示様式例は、証券取引所のホームページよりダウンロードが可能です(適時開示様式例の「第三者割当による自己株式/自己新株予約権の処分に関するお知らせ」参照)。また、適時開示の詳細については、東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック」第2編第1章1.(2)F参照。 なお、証券取引所に対しては、公表予定日の遅くとも10日前までに、事前相談を行う必要があり、その際、開示資料(案)その他説明のための資料の提出が必要となります。 A提出書類 証券取引所に対しては、当該証券取引所の規則に従って各種書類を提出する必要があります。東京証券取引所では、前記a.の開示に従い以下の書類を提出する必要があることを定めています(東証上場規程421条、東証上場施行規則417条(1))。 @)取締役会決議通知書たは決定通知書:決議または決定後ただちに(TDnetによる開示をしていれば不要) A)募集の日程表:確定後ただちに(開示資料に必要事項が記載されている場合は提出不要) B)有価証券届出書効力発生通知書の写し:受領後ただちに(該当ある場合) C)目論見書(届出仮目論見書およびこれらの訂正事項分を含む):作成後ただちに(該当ある場合。EDINETで有価証券届出書を提出している場合は不要) D)安定操作取引関係者(金商法施行令20条3項各号に規定する安定操作取引の委託等をすることができる者)のリストの写し:金商法施行令22条2項〜4項の規定により安定操作取引をすることができる期間の初日の前日まで(該当する場合) E)有価証券通知書(変更津通知書を含む)の写し:内閣総理大臣等に提出後遅滞なく(該当ある場合) F)割当てを受ける者の全てが上場会社または証券取引所の取引参加者その他の取引所が適当と認める者であることを除き、取引所所定の「割当てを受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」:作成後ただちに(決議日の前営業日まで) 加えて、上場会社は割当てを受けた者との間で、(イ)割当後2年間において、当該株式の譲渡を行った場合にはただちに上場会社に書面によりその内容を報告すること、(ロ)上場会社は、(イ)について証券取引所に報告すること、(ハ)割当てを受けた者は、確約のための書面に記載する内容および株式の譲渡を行った場合にはその内容が公衆に縦覧に供されることに同意すること、等の内容に関する確約書を締結し、募集株式の割当て後ただちに証券取引所に提出する(東証上場規程422条、東証上場施行規則第2編第4章第2節第2款)。また、第三者割当てによる自己株式の処分により支配株主が異動した場合は、原則として、その後3年間、年度末を経過する毎に支配株主との取引状況等に関する報告書を提出する必要があります(東証上場規程601条1項、東証上場施行規則601条9項3号)。 ・機構への通知 第三者割当てにより新株式を発行する場合には、取締役会決議後すみやかにTarget保振サイトにより所定の事項を通知するが、あくまで新株を発行する場合に限るとされており、自己株式処分の場合には、機構への通知は不要です。これは、新株の発行の場合には新規記録の手続が機構を介して行われるのに対して、自己株式の処分の場合は通常の口座振替により行われることから、機構では特段の対応が不要であるためです。 ・会社法上の開示手続 会社は、払込期日(または払込期日の初日)2週間前までに、株主に対し、当該募集事項を公告し通知しなければなりません(201条3、4項)が、振替株式発行会社は公告しなければなりません(振替法161条2項)。公告は払込期日(または払込期間の初日)を含めずに2週間を確保することが必要となることから、日程次第では、取締役会の決定よりも前に公告の手配が必要となります。電子公告の場合は最低でも公告の4営業日前までに電子公告調査会社への申込みが必要です。 なお、払込期日(または払込期間の初日)の2週間前までに、有価証券届出書や臨時報告書などの届出または提出をしていない場合には、会社法201条3、4項による公告または通知義務は適用しないこととなっています(201条5項、会社法施行規則40条)。 ・金商法上の開示手続 会社法199条1項による自己株式の処分は、金商法上は「取得勧誘類似行為」として「有価証券の募集」または「有価証券の私募」に該当すると定められています。上場会社が自己株式の処分を行うに当たり「割当先が1名以上」かつ「処分価額の総額が1億円以上」の場合、会社は内閣総大臣に対して有価証券届出書を提出することが必要となります(金商法4条)。なお、処分価額の総額が1億円未満であっても、1千万円を超える場合には有価証券通知書の提出が必要となります(金商法4条6項)。 また、処分価額が前記要件に該当しない場合であっても、1年間を通じて行われた募集において、自己株式の処分価額を含めた額が1億円以上となる場合には、通貨規定により有価証券届出書の提出が必要となります。 有価証券届出書(有価証券通知書)に記載すべき内容は法定されているが、具体的には、開示府令に定められている各社様式に従い記載することになります。また、提出された内容に形式上の不備がある場合や記載内容に事実に反する場合、あるいは内容に重要な変更が生じた場合等には、訂正届出書(変更通知書)を提出することが必要となります(金商法7条、開示府令5条)。 なお、有価証券届出書の提出が必要となる場合は、目論見書の作成・交付も必要となります(金商法13条)。また、発行価額の総額が1億円以上で本邦以外の地域で募集される場合は臨時報告書の提出が必要となりす(金商法24条の5)。 有価証券届出書は、原則として受理されてから15日を経過した日にその効力を生じます(金商法8条1項)。その訂正報告書が提出された場合には中1日でその効力が発生することがあります(金商法8条3項)。組込方式または参照方式による場合はおおむね中7日程度でその効力が発生します。当該届出の効力が発生するまでは、募集による株式の取得をさせてはならない(金商法15条1項)ことから、総額引当契約の締結は、当該届出の効力発生日以降に行うのが無難と考えられます。 ・株式の申込みの手続等 @会社法上の手続 @)会社は、引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければなりません(203条1項、会社法施行規則41条)。なお、次に掲げる事項を記載した金商法2条10項に規定する目論見書を、申込みをしようとする者に対して交付している者に対して交付している場合、その他募集株式の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合(会社法施行規則42条)には、適用しないこととなっています。実務としては、次のA)で必要となる株式申込証を添付した募集株式の要領を記載した書面(自己株式処分に関する割当通知)を交付することとなります。 ・商号 ・金銭の申込みをすべきときは、払込み取扱いの場所 ・発行可能株式総数(種類株式発行会社は、各種類の株式の発行可能種類株式総数を含む) ・会社(種類株式発行会社を除く)が発行する株式の内容として会社法107条1項各号に掲げる事項を定めているときは、当該株式の内容 ・会社(種類株式発行会社に限る)が会社法108条1項各号に掲げる事項につき内容の異なる株式を発行することとしているときは、各種類の株式の内容(ある種類の株式につき108条3項の定款の定めがある場合において、当該定款の定めにより会社が当該種類の株式の内容を定めていないときは、当該種類の株式の内容の要領) ・単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数(種類株式発行会社は、各種類の単元株式数) ・会社法施行規則41条5号に掲げる定款の定めがあるときは、その規定 ・株主名簿管理人を置く旨の定款の定めがあるときは、その氏名または名称および住所ならびに営業所 ・定款に定められた事項(前記に掲げる事項を除く)であって、当該会社に対して募集株式の引受けの申込みをしようとする者が当該者に対して通知することを請求した事項 A)引受人は、申込みをする者の氏名または名称および住所ならびに引き受けようとする種類株式の数を記載した書面(すなわち株式申込証)を会社に交付しなければならない(203条2項) B)会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければなりません(募集株式が譲渡制限株式である場合には、取締役会の決議による)。会社は払込期日(または払込期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません(204条)。 C)前記@)〜B)の手続は、会社と募集株式を引き受けようとする者との間で総数引受契約を締結する場合には適用しないとされています(205条)。同契約書(実務では「総額引受契約書」と表記されることが多い)には前記@)の記載内容を盛り込むのが通常です。 〔参考資料〕総額引受契約書の記載例
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会社は、前記@)の通知において、会社法上の記載内容に加え、「当該処分株式は、『社債、株式等の振替に関する法律』の規定の適用がある」旨を記載しなければなりません(振替法150条2項)。 また、募集株式の引受けの申込みをする者は、自己のために開設された当該振替株式の振替を行うための口座(特別口座を除く)を会社法203条2項の書面に記載し、または205条の契約を締結する前に当該口座を当該振替株式の発行者に示さなければなりせん(振替法150条4項)。具体的には、株式申込証に証券会社等の口座番号を記入させることが考えられます。 なお、新株発行の際には、会社に対する振替口座の通知(機構 株式等の振替に関する業務規程42条2項、3項)が必要となり、この通知は当該口座を開設する証券会社等および機構を経由して行われますが、自己株式の処分の場合は不要です。 B払込手続 引受人からの資金の払込みは払込期日までに、申込期間を設けた場合は申込期日までに資金の払込みがなされなければなりません。払込みに際しては、会社はあらかじめ払込取扱金融機関との間で「募集株式申込事務取扱委託書」を締結することがあります。この場合、払込金融機関では、株式申込証と申込証拠金の確認を経て、払込期日に会社の預金口座へ入金し、株式払込取扱証明書・株式保管金証明書を会社に提出します(「募集株式申込事務取扱委託書」を締結しない場合は、前記の証明書に代えて払込取扱金融機関に設けた預金口座に係る預金通帳の写し等を会社で保管することになります。ただし、新株発行の場合と異なり変更登記手続きは不要です)。 なお、払込みが完了したことを「払込み完了のお知らせ」として任意に開示するケースがあります。 C効力発生 自己株式の処分は、払込期日の効力が発生します。新株発行の場合は、同日付で株主名簿に引受人の指名等が記録されますが、自己株式の処分の場合は既発行株式の移転となることから、株主名簿への記録はこの時点では行われず、次回の総株主通知によることとなります。したがって、期末間近の日が払込期日となる自己株式の処分の場合、期末に株主名簿に登載されず割当先に不利益が生じる可能性があるので留意が必要です。 公募増資の場合は、引受証券会社による払込金額の払込みと新規記録を同時かつとりはぐれのないかたちで行う仕組みが導入され、会社の申請により行うことができるとなっていますが、第三者割当てによる新株発行の場合は、通常はこの方式によらない方式による新株記録手続となります。一方、自己株式処分の場合は、新規記録手続ではなく通常の口座振替によることとなるため、いずれの方式をにもよらないこととなります。会社は、引受人の振替先口座を記載した振替申請書を、自己株式を管理する口座管理機関に提出します。振替の日程については、自己株式を管理する口座管理機関と事前に調整しておきます。 E割当先による株式譲渡の報告 会社は、第三者割当てによる募集株式の割当てを受けた者が確約書に定める期間内において当該募集株式の譲渡を行った場合には、譲渡を行った者および譲渡を受けた者の氏名および住所、譲渡株式数、譲渡日、譲渡価格、譲渡の理由、譲渡の方法等を記載した書面を取引所に提出します。 ü
募集株式総数の引受契約がある場合の申込みおよび割当手続 上場会社が募集株式を公募により発行する場合には、予定する募集株式の全部についての引受けを確保するために、通常証券会社がいったん募集株式の全部を引き受けた上で、これを投資家に払込金額と同一価額で売り渡す方法が採られます。このような募集株式の引受契約がある場合(第三者割当ておよび買取引受けの場合)には。引受人は契約により特定しているので、これを募集する必要はありません。また、この契約により引受株式数も定められます。したがって、205条は、このような場合に、募集株式の申込手続に関する203条および申込者に対する割当手続に関する204条が適用されない旨を定めています。ただし、募集をしない場合であっても、会社法上は募集株式の発行等に該当し、募集事項の決定に関する199条ないし、201条の規定は適用があります。 205条は、譲渡制限株式の第三者割当にも適用されます。しかし、譲渡制限株式の割当てに関する204条2項が適用されないとすると、譲渡制限株式に関する閉鎖性の維持や既存株主の支配的利益の保護が確保されないおそれがある。したがって、譲渡制限株式の第三者割当ての場合には、譲渡制限株式の割当てに関する204条2項が適用されると考えられています。 ※参考資料 買取引受契約書のひな型
関連条文 第8節.募集株式の発行等 第1款.募集事項の決定等 第2款.募集事項の割当て 募集事項の申込み及び割当てに関する特則(205条) 第3款.金銭以外の財産の出資 第4款.出資の履行等 第5款.募集株式の発行等をやめる請求 第6款.募集に係る責任等 出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任(213条) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任(213条の2) 出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任(213条の3)
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