新任担当者のための会社法実務講座 第206条 募集株式の引受 |
Ø 募集株式の引受(206条) 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。 一 申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数 二 前条第一項の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数。 204条の割当てを受けた者及び契約に基づき募集株式の総数を引き受けた者が、募集株式の数についての引受人となります(206条)。 ü
募集株式の引受人 ・募集株式の引受け 募集株式の引受行為は、募集株式の引受契約(会社に対する入社契約)であると解され、申込みと承諾によって成立します。募集が行われる場合には、引受けの申込みがあると、会社は割当てを行い、申込者に通知します。その際、会社は申込者が書面に記載した引受希望株式数の範囲内で割当株式を決定することができます(204条1項後段)。 民法上の契約の成立の場合には、承諾者が申込みに条件を付し、その他変更を加えて承諾した時は、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされ(民法528条)、その結果、申込者はさらにこれを承諾するか否かの裁量を有することになります。これに対して、募集株式の引受の申込みの場合、このような民法の適用はなく、会社が割り当てた株式数について募集株式の引受契約が成立し、申込者は、割当てを受けた数の募集株式の引受人となります。206条1号は、その趣旨を定めたものです。株主割当ての場合も、206条1号に含まれると考えられています。しかし、この場合は、会社の割当行為は不要です。 これに対して、第三者割当てや買取引受け(募集株式総数の引受け)の場合には、契約により募集株式の総数について引受けがなされます。この場合も、申込手続や割当手続はとられないものの、契約により募集株式の引受けが成立し、契約により引受けをなす者が募集株式の総数の引受人となる点では変わりがありません(206条2号)。 ・引受人の地位 このように、引受人とは、募集株式の引受契約により募集株式として引き受けた者をいい、会社に対して出資義務を負うとともに、その義務の履行によって株主となる権利を有する者です。このような引受人の地位を権利株と呼びますが、会社に対抗することはできません(208条4項)。 関連条文 第8節.募集株式の発行等 第1款.募集事項の決定等 第2款.募集事項の割当て 募集株式の引受(206条) 第3款.金銭以外の財産の出資 第4款.出資の履行等 第5款.募集株式の発行等をやめる請求 第6款.募集に係る責任等 引受けの無効又は取消の制限(211条) 不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任(212条)出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任(213条) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任(213条の2) 出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任(213条の3)
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