新任担当者のための会社法実務講座 第211条 引受けの無効又は取消しの制限 |
Ø 引受けの無効又は取消しの制限(211条) @民法第93条第1項ただし書及び第94条第1項の規定は、募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第205条第1項の契約に係る意思表示については、適用しない。 A募集株式の引受人は、第209条第1項の規定により株主となった日から1年を経過した後又はその株式について権利を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができない。 民法93条では、意思表示をした表意者が真意と異なることを知りながら意思表示をした場合、意思表示の相手方を保護するために、その意思表示の効力は妨げられないものの、相手方が表意者の真意を知っているか、または過失により知らなかった場合は、その相手方を保護する必要がないので、その意思表示は無効であるというものです。これが募集株式の引受の申込みの場合では、株式申込をした者(申込者)が真意と異なる申込みを行い、会社がそのことを知っているか、知りうるべきなのに過失で知らなかったときには、その申込みは無効になってしまうことになります。また、民法94条1項は、相手方と通じて行った虚偽の意思表示(虚偽表示)は相手方を保護する必要がないため無効になるというものです。これが、募集株式の引受の申込みの場合に当てはめると、申込者と会社が申し合わせて虚偽の株式申込を行うと、その申込みは無効となる、ということです。そこで、会社法では、募集株式の申込みの意思表示について、上記の民法93条及び94条1項が適用されない(211条1項)とし、株式引受けの安定と募集株式の安定を図ったというものです。 一方、募集株式の引受人が株主となった日から1年経過した後、または株式についての権利行使をした後は、錯誤を理由とした引受けの無効を主張することはできず、詐欺や脅迫を理由とする取消を主張することはできません(211条2項)。これは、引受人が株主となって一定期間経過した後の会社に関する法律関係を安定させるとともに、株式引受けの安定と募集株式の無効や取消を主張する権利の放棄とみなしました。
関連条文 第8節.募集株式の発行等 第1款.募集事項の決定等 第2款.募集事項の割当て 第3款.金銭以外の財産の出資 第4款.出資の履行等 第5款.募集株式の発行等をやめる請求 第6款.募集に係る責任等 引受けの無効又は取消の制限(211条) 出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任(213条) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任(213条の2)出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任(213条の3)
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