新任担当者のための会社法実務講座 第209条 株主となる時期等 |
Ø 株主となる時期等(209条) @募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。 一 第199条第1項第4号の期日を定めた場合 当該期日 二 第199条第1項第4号の期間を定めた場合 出資の履行をした日 A募集株式の引受人は、第213条の2第1項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第213条の3第1項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した募集株式について、株主の権利を行使することができない。 B前項の募集株式を譲り受けた者は、当該募集株式についての株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。 C第一項の規定にかかわらず、第202条の2第1項後段の規定による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、募集株式の引受人は、割当日に、その引き受けた募集株式の株主となる。 募集株式の引受人が出資の履行をした場合に、株主となる旨及びその時期を定めるのが209条です。 ü
株主となる時期 募集株式の引受人は、出資義務を負うとともに、出資の履行によって株主となる権利を有します。出資の履行は、募集株式に定められた払込み・給付期日または払込み・給付期間内に、払込取扱場所における金銭の払込み、または払込金額に相当する現物財産の給付によって行わなければなりません。払込み・給付期日または払込み・給付期間内に出資の履行をしない引受人は、募集株式の株主となる権利を失います。したがって、募集株式の発行等は、募集事項に定められた募集株式の数のうち、現実に出資の履行がなされた部分のみ効力を生じます。 ・払込みまたは給付期日が定められた場合 出資の履行の払込みまたは給付期日が定められた場合には、株主は、その期日に出資の履行をしなければなりません。現実の払込みでは、払込期日よりも前の日に、払込取扱場所における払込みされることが多く、その場合には払込期日に払込みが充当されます。この場合には、引受人は払込期日に出資の履行をした募集株式の株主となります(209条1項1号)。それは、払込期日から株主となることを定めることにより、新株の効力も払込期日に発生するので、払込期日から株式を譲渡することができ、とくに上場株式については迅速な取引が可能になるからです。 ・払込みまたは給付期間が定められた場合 会社法では、募集株式の出資について、払込みまたは給付期日ではなく、払込みまたは給付期間を定めることもできます。その理由は、金銭の払込み時点と株式取得時点を可及的に接近させるためです。払込みまたは給付期間を定めた場合には、その期間内で出資がされることになりますが、株主となる時期は特定の日(払込の初日とか末日)ではなく、出資の履行をした日とされています(209条1項2号)。それで、同一の募集の募集株式であっても、引受人の出資の履行日により、株主となる時期が異なることになりますが、そこに特段の不都合はないと考えられるからです。 ü
変更登記 募集株式の発行等は、209条1項によって引受人が株主となる日に、効力を生じます。新株式の発行の場合には、記載事項である資本金額及び発行済株式総数に変更が生じるので、変更が生じた時から2週間以内に変更登記をしなければなりません(915条1項)。募集事項で、払込みまたは給付期間を定めた場合には、払込みまたは給付期間の末日現在で、その末日から2週間以内に変更登記をしなければなりません。 ü
取締役の株式報酬の株主となる日(209条4項) 上場会社は、361条1項3号に掲げる事項についての定めに従い株式会社の募集株式を引き受ける者の募集をするときは、募集株式の払込金額または現物出資に関する事項を定めることを要しない。この場合に、株式会社は,募集株式について、取締役の報酬等として株式の発行もしくは自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする出資の履行を要しない旨、および募集株式を割り当てる日(割当日)を定めなければならない(202条の2第1項)。この場合、報酬として募集株式を引き受けた取締役は割当日にその募集株式の株主となります(209条4項)。 関連条文 第8節.募集株式の発行等 第1款.募集事項の決定等 第2款.募集事項の割当て 第3款.金銭以外の財産の出資 第4款.出資の履行等 株主となる時期(209条) 第5款.募集株式の発行等をやめる請求 募集株式の発行等をやめる請求(210条) 第6款.募集に係る責任等引受けの無効又は取消の制限(211条) 不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任(212条)出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任(213条) 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任(213条の2) 出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任(213条の3)
|