新任担当者のための会社法実務講座 第312条 電磁的方法による議決権の行使 |
Ø 電磁的方法による議決権の行使(312条) @電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。 A株主が第299条第3項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。 B第1項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。 C株式会社は、株主総会の日から3箇月間、第1項の規定により提出された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。 D株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。 平成13年の商法改正で電子投票制度が導入され、それが会社法に引き継がれています。その導入の経緯としては、IT技術を利用して株主の権利行使の機会を拡大させるためでありました。当時、IT技術が急速に進歩、普及しつつあり、会社法制もそれに対応することが求められていました。そのような社会的な要求(当時の政治家でITを“イット”と読んだ人もいましたが…)に応じるため、この商法改正で株式制度に関する改正とともに、会社関係の書類の電子化に関する法改正がなされ、電子投票制度もその一環として創設されました。このときには、すでに株主総会に株主が出席しないで議決権を行使する制度して書面投票が定着していました。電子投票は、先行する制度であった書面投票を電子化したものということができ、書面投票に準じた制度として作られました。そのため、委任状による議決権の代理行使とは異なり、瑕疵があれば総会決議にの効力に影響が及ぶと考えられる一方で、総会の場において現実の審議に応じて動議等に柔軟に対応することはできないという書面投票制度の特徴を引き継いでいます。この点でテレビ会議のような、インターネットを用いて株主総会の議論に参加するという制度とは異なるものです。 したがって、電子投票制度は、あくまで書面投票の補完として株主の議決権行使の機会を拡大させるためのものと位置付けられていて、書面投票が強制される会社で、書面投票に追加して採用できるようになっていて、書面投票の代わりに電子投票のみを採用することはできないことになっています。これは電子投票に対応できない、いわよるデジタルデバイト、株主の存在を考慮したものとされています。 それゆえ、電子投票の制度的な内容は、原則として書面投票と同じです。ただし、電磁的方法に特有のものがあるので、そこが書面投票との違いです。 株主総会の招集者は、総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使できる旨を定めることができます(298条1項4号)。この電磁的方法による議決権の行使、いわゆる電子投票制度は書面投票制度の議決権行使書面の会社への提出を電磁的記録の提出に置き換えるものです。書面投票制度と併用することも可能です。総会を物理的な場所で開催せず、遠隔通信の方法のみで行う電子総会とは別です。この制度を採用するか否かの判断は、招集者の選択に委ねられており、書面投票制度のように議決権を有する株主の数が1000人以上に会社に強制されてはいません。 電磁的方法による議決権行使が行われる場合には、書面投票制度の場合と同じく、株主に対して株主総会参考書類の交付が行われなければなりません(302条)。 電磁的方法による議決権行使が行われる場合には、招集者は、招集者が電磁的方法により総会の招集通知を発することを承諾した株主に対しては、その通知に際して、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供しなければなりません(302条3項)。それ以外の株主から、総会の会日の1週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、直ちにその事項を電磁的方法により提供しなければなりません(302条4項)。 電磁的方法による議決権の行使は、株主が、会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録に必要情報を記録し、それを法務省令で定める時までに電磁的方法で会社に提供する形で行われます(312条1〜3項)。実際には、会社が指定した議決権行使サイトを利用する方法で行われます。株主は議決権行使サイトにアクセスし、事前に会社から指定されたID(議決権行使コード)とパスワードを入力した上で、議案に対する賛否を表示します。なお、本人確認は、このときのIDとパスワードの入力によって行われることになります。 会社に提供された事項を記録した電磁的記録は、総会の日から3ケ月間、本店に備え置かれ、株主の閲覧・謄写に供されます(4項、5項)。 〔参考〕電子投票を始める場合の手続 @)株主総会招集の決議の際の電子投票をする旨の決議の内容 電子投票制度を採用する場合は、前述のとおり取締役会の決議が必要です。また、電子投票制度採用の取締役会の決議は、株主総会のつど行うのが原則ですが、以後の株主総会においても電子投票制度を採用する旨の包括的な決議をすることも可能です。 また、書面投票であれば、株主総会前日の営業時間終了までに会社に届いたものが有効で、書類というものは、一度送付したら、二度と送付できないものです。これに対して、電子投票は書類のように物体を送付するわけではないので、何度でも投票することが出来ます。したがって、最後に投票したものが有効になります。会社としては、書類であれば、郵送で届くので、原則として1日1回届くので、前日に届かなければ、それで締め切りですが、電子投票はネットで接続して投票するので時間の制限がありません。そこで、電子投票制度の採用に伴って、特定の時をもって電子投票による議決権行使の期限とする旨を定めることができます。そうするためには、株主総会招集の取締役会において、その特定の時(会社法施行規則第63条第3号ハ)を定めることができます。また、同一の株主が電磁的方法で重複して議決権を行使した場合において、その同一の議案に対する議決権行使の内容が異なるときの取扱いを定めるときは、その事項(会社法施行規則第63条第3号ヘ(2))、同一の株主が書面および伝統表で重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権行使の内容が異なるときの取扱いを定めるときは、その事項(会社法施行規則第63条第4号ロ)を定めること同時に決議することが、実務上を必要です。 A)招集通知への記載 電子投票をする旨の決議をして電子投票を始めるには、狭義の招集通知には「株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができる旨」を記載しなければなりません(299条第4項)。実務上は、電磁的方法による議決権行使ができる旨および議決権行使サイトのアドレス等を記載しています。 B)株主総会参考書類の交付 電子投票による議決権行使を採用する場合には、株主に対し株主総会参考書類を交付しなければなりません(302条第1項)。なお、会社は、電子投票により総会の招集通知を発することを承諾した株主に対しては、その通知に際して、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供しなければならないことになっています(302条第3項)。それ以外の株主から総会の会日の1週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、直ちに、その株主に対し電磁的方法により提供しなければなりません(302条第4項)。 電子投票による議決権の行使は、株主が、政令の定めに従い会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録に必要情報を記録し、それを電磁的方法により会社に提供する形で行われます(312条第1項〜3項、会社法施行令第1条第1項第7号、会社法施行規則第230条)。 電子投票による議決権行使も、書面投票と同様に株主総会の日時の直前の営業時間終了時が議決権行使の期限となります、「特定の時」を定めた場合はその時が期限とすることができます(会社法施行規則第63条第3号ハ、同第70条)。 C)会社の承諾 株主は、電子的投票のうち株主が使用するもの(たとえば、電子メールの送信、会社のウェブサイトの利用、メディア等の交付等。会社法施行規則第230条第2号)、および、ファイルへの記録の方式(添付ファイルを使用する場合の使用ソフトの形式・バージョン等。会社法施行規則第230条第2号)を示し、会社の承諾を得なければならない(会社法施行令第1条第1項第7号)ことになっています。しかし、実務上は、会社が株主名簿管理人などを通じて設置するウェブサイト(議決権行使サイト)を使用する方式のみを承諾することが一般的です。招集通知に、会社が電子投票のやり方を記載して、株主がそのとおりに投票することが現実に行われている実際です。 D)本店備置 会社に提供された事項を記録した電磁的記録は、総会の日から3ヶ月間本店に備え置かれ、株主の閲覧に供されます(312条第4項) 会社は電磁的記録をそのまま備え置くことができます。その方法は、会社法2条34号において「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法」であって法務省令で定めるもの」とされ、法務省令で定めるものとは「電子情報処理組織を利用する方法のうち、送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法」(会社法施行規則222条1項1号イ)もしくは「電子情報処理組織を使用する方法のうち、送信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて情報の提供を受ける者の閲覧に供し、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに情報を記録する方法」(会社法施行規則222条1項1号ロ)または「磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録する方法」(会社法施行規則222条1項2号)とされています。具体的には、電子メールによる方式(会社法施行規則222条1項1号イ)やウェブページ上にアップロードした情報を受信者がダウンロードすることで情報を提供する方法(会社法施行規則222条1項1号ロ)、ふるいはメディアなどの媒体に情報を記録し当該媒体を相手方に渡す方法(会社法施行規則222条1項2号)などがこれに該当します。 このように記録した電磁的記録について株主から閲覧の請求があっ場合における表示方法については、「電磁的記録に記録された事項を紙面または映像面に表示する方法」(会社法施行規則226条)となります。具体的には、電磁的記録を閲覧に供する場合は、それを紙にプリントして見せるか、、あるいはパソコンモニターに表示してみせるということになります。 〔参考〕議決権行使プラットフォーム 国内外の機関投資家は、株主名簿上、自己の名義以外(信託銀行を株主名簿上の株主とする等)で株式を保有する例が多いのですが、信託銀行を通じて書面による株主総会参考書類等の交付を受けたのでは、適正に議案を検討する等の時間を確保することが難しくなります。そこで、機関投資家が迅速に電磁的方法により株主総会参考書類等の交付を受け、かつ電磁的方法による議決権行使を信託銀行等名義の情報に変換した上で行うこと可能としたシステムが議決権行使プラットフォームです。これは東京証券取引所がサービスを提供しているシステムで、東証1部上場会社の4割近くの会社がすでに利用しています。 @)プラットフォームにおける情報の流れ a)プラットフォームの採用確定 プラットフォームに参加しようとする会社は、総会基準日や総会種類(定時株主総会)等の情報をICJに提供します。その後、ICJは、基準日の到来前に、管理信託銀行、グローバル・カストディアン及び常任代理人に対して、取得した情報を送信します。 b)ICJとの参加契約締結(詳細は後記A)契約関係を参照) 会社はICJに対して、初年度に限り、プラットフォーム参加の「意向表明書」を提出し、その後、ICJとの間で参加契約を締結します。 c)管理信託銀行・グローバル・カストディアン。常任代理人との準備作業 対象となる会社の情報を受けた管理信託銀行、グローバル・カストディアン及び常任代理人は、基準日残高確定後に、会社に係る実質株主の情報、つまり、行使指図を行う機関投資家の保有株式数等の口座情報をプラットフォームに返信します。 なお、プラットフォーでは、会社法313条1項に定める不統一行使事前通知書を株主総会開催日の3日前までに株主名簿管理人に送付しています。 d)証券保管振替機構・株主名簿管理人との準備作業 プラットフォームでは、このようにして得られた実質株主の情報と証券保管振替機構・株主名簿管理人から提供される名義株主の情報の紐付けを招集通知の発送日までに完了させます。 e)招集通知の掲載作業 会社は、プラットフォーム専用の行使画面への掲載のため、招集通知の発送日の2営業日前までに招集通知の情報を TD-Net
を通じて登録します。この情報を受けたプラットフォームは、総会の議題ごとにあらかじめ設定された分類にしたがって、議題の種類ごとにコード分類し、招集通知発送日に合わせてPDF
ファイルとともにプラットフォームのサイトに掲載します。実質株主は直接これらの情報を見ることができるようになります。 なお、プラットフォームは海外機関投資家も使用しますが、株主総会の議案情報をプラットフォーム側で翻訳するため、招集通知の英訳の掲載は任意です。 f)招集通知掲載及び行使結果の送信 招集通知発送日より行使画面への掲載により、プラットフォームに登録された議案情報は、名義株主・常任代理人と契約関係にある基準日現在の実質株主に提供されます。機関投資家は予め設定しておくことで、保有銘柄に係る更新情報を電子メールで受領することができます。 同時に議決権行使も始まります。実質株主は、議案情報を閲覧、その内容の検討を行った上で、投票の指図をプラットフォームシステムに対して行います。各実質株主により入力された行使情報は、プラットフォームを通じて直接集計業務を行っている株主名簿管理人に、招集通知発送日の翌日から会社が定める行使締切日まで、1日2回フィードバックされますが、その際には各実質株主がぶら下がっている名義株主の
ID/PWが付された形で(あくまで名義株主の議決権行使の一部として)フィードバックされることになります。 A)契約関係 a)会社とICJ(参加契約) プラットフォーム参加を決定した会社は、決算月の第2金曜日を期限に、ICJに対して意向表明書を送付し、その後会社とICJとの間で参加契約を締結します。参加契約には、会社法上の電磁的方法による議決権行使の採用、プラットフォームへの議案情報の提供義務等が規定されています。会社は、前年末の時価総額規模に応じてプラットフォーム利用料を負担します。 b)ICJが締結するその他の契約 ・株主名簿管理人とICJ(システム接続契約) 株主名簿管理人はICJとの間でシステム接続契約を締結しています。プラットフォームを通じた議決権行使結果は株主名簿管理人のシステムに電子的に送信されることから、システム接続契約には、プラットフォームでのシステム処理の基準となる接続仕様書の位置付けや議決権行使に必要なID及びパスワードの授受等について規定されています。 ・管理信託銀行・常任代理人(サービス提供契約) 管理信託銀行または常任代理人はICJとの間でサヘビス提供契約を締結します。サービス提供契約は、管理信託銀行または常任代理人がICJに対して議決権行使関連事務を委託する契約で、ICJはこの契約に基づき管理信託銀行または常任代理人の使者または履行補助者として議決権行使事務を行います。この契約ではICJが行う事務の内容は、接続仕様書の位置づけ等が規定されています。 ・機関投資家(利用規約) 名義株主及び名義株主の背後にいる実質株主である機関投資家は、ICJとの間で利用規約を締結しています。利用規約は、実質株主に関する情報が名義株主からプラットフォームに提供されることも行使指図がICJの定めに従って行われること等が規定されています。 ü
電磁的方法による議決権行使の効力が問題となる場面 ・議決権行使の内容が不明確な場合 電子投票の場合は、議決権行使書面への記載のように株主の自由、例えば余事記載や賛否の両方に○をつけたりといったことは起こりません。それでも不明確な場合は、議決権行使書面の場合と同じように扱います。 まず、議案の全部または一部について、株主が賛否を示さないで投票した場合の扱いです。会社は、あらかじめ招集事項としてこの場合の扱いを、白紙の場合は賛成とするとか棄権とするといったように定めることが認められています(会社法施行規則63条)。この場合、賛否を登録しないと投票できないシステムに設定するようになっています。 第二に、議決権行使書面に何らかの記載はあるものの、その内容が不明確な場合です。この場合には、議決権行使書面の場合同様に、株主の意思を矛盾なく判断できるときは有効な議決権行使として扱うという基本的な方針が共有されています。この場合、議決権行使としては有効ではないとしても、出席議決権数に含めるか否かについては、出席と認める(投票は棄権)、あるいは無効として出席数にも入れないと。どちらも考えられます。 ・書面投票と電子投票による議決権の二重行使 書面投票と電子投票とを会社が併用する場合、一人の株主が、その両方を行う可能性があります。その際は、後になされた議決権行使によって、その前になされた議決権行使が撤回されたものとして取り扱うのが原則です。しかし、一方が書面、他方か電磁的方法という重複があると、どちらが前か後かを判別することが難しくなるので、どちらかの一方の方法によったもの優先させる旨を招集者が定めて、株主に対して予め通知することが認められています(298条1項5号、会社法施行規則63条)。 ・出席(委任状)と電磁的方法による議決権行使の関係 電磁的方法による議決権行使ができるのは総会に出席しない株主である(238条1項3号)ため、株主が電子投票をした場合でも、総会に出席するとその効力は失われると考えられます。これは現実に出席した場合だけでなく、代理人を出席させた場合も含まれます。そのため、電子投票を行った株主が委任状を付与した場合は、常に委任状が優先し、議決権行使書の内容にかかわらず委任状に基づく代理人の議決権行使が有効になります。これが原則です。 ・動議 書面投票と同様に電子投票は事前に示された議案に対して株主の意思を確実に示すことができる方法であり、議決権の代理行使の場合に生じるエージェンシー問題を生じさせない一方で、事前に内容を知ることが不可能な動議をはじめ、総会の場における審議への対応には限界があります。そのため、実務上は、会社の総会の運営のために大株主から総括委任状を取得して動議への準備をして会社は少なくありません。 1)議事進行上の動議 調査者の選任(316条)、延期・続行の決議(317条)、会計監査人の出席を求める(398条2項)及び休憩や議長不信任の動議といった議事進行上の動議に対しては、現在では、電子投票はその内容にかかわらず欠席扱い(出席議決権数に含めない)とされています。実際に、出席していない株主に対して、総会前にこれらの動議に関して意思決定する資料を与えることはできず、したがって意思決定もできないからです。 2)修正動議 議案を修正する動議については、欠席とすべきという見解もありますが、実際に出席しているわずかな株主によって決められてしまうという弊害が大きいので、実際には、対立する議案のひとつが可決するともうひとつのものは自動的に否決ということになるので、株主総会の議事運営において修正動議を先議にしてしまうと、電子投票を行った多数株主の意思を容易に覆すことができてしまう。そこで、現在では原案に賛成のものは修正案に反対、それ以外のものは棄権として扱うことにして、原案を先に可決してしまうという議事運営が採られています。 ・電磁的記録の改竄となりすまし インターネットを利用する場合に特有の、しかし無視できない問題です。他人が株主本人になりすまして電子投票を行った場合や、電子投票のデータが偽造・変造されるケースです。 制度導入当時の立法当局の見解としては、かりにこのような行為があったとしても、合理的なシステムを採用し、通常求められる程度の注意を払って運用していれば、通常は決議の効力に影響を及ぼすべきではない。具体的には、本人の確認方法としては、従来の書面投票の本人確認(登録した住所に送付して返送してもらうという、実際には確認していないに近い)に比べて、厳重にすると書面投票を再考しなければならなくなるため、電子署名までは必要ないとして、実務上普及している方法にならった株主ごとに割り当てられるIDとパスワードを用いた認証で十分ということ。また、データの管理についても、通常求められるセキュリティを施した上で、疑わしい状況で必要なチェックを行っていれば足りる。これらの注意が払われている限り、仮に上記の行為があっても、決議の成否に影響のない場合は裁量棄却の対象となる。そういう見解です。つまり、ハッキングで投票データが書き換えられても、決議の成否なんか分からないでしょうから、一般的なセキュリティ措置がとられていれば、書き換えられた結果が通ってしまうということになるわけです。
関連条文 株主総会参考書類及び議決権行使書の交付等(301条、302条) |