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第297条 株主による招集の請求
 

 

Ø 株主による招集の請求(297条)←少数株主権の行使

株主総会の招集は、いわゆる少数株主権のひとつです。少数株主権とされたのは権利の濫用を防ぐためです。この権利は取締役の解任等を議題とする臨時株主総会の招集のために行使されるケースがほとんどではないかと思います。296条により、株主総会は原則として取締役が招集するものですが、その取締役や取締役会が株主総会の招集を決定せず、取締役が株主総会を招集しないときがあります。そのような取締役による株主総会開催の不当な遅延や不開催に対処できるようにし、また株主に株主総会における意思決定のイニシアチブをとる機会を与えるという制度です。

実際にはめったに起こらないことですが、法律にある以上は可能性はあるということで知っておく必要はあるでしょう。

@総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

A公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは「有する」とする。

B第1項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。

C次に掲げる場合には第1項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。

1.第1項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行なわれない場合

2.第1項の規定による請求があった日から8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会招集の決議が発せられない場合

ü 少数株主権の持ち株要件(1項)

総株主の議決権の100分の3(定款による条件引き下げは可能)以上の議決権を、6ヶ月前から引き続き有する株主は、取締役に株主総会の招集を請求することができます。

・「総株主の議決権の100分の3」の数え方

この議決権の数は単独の株主によるものとは限らず、複数の株主の有する議決権を合わせて、その合計でもこの持ち株要件を満たすことができます。ただし、この場合には端株や単元未満株は除きます。

また、総株主の議決権の数というのは行使可能な議決権の数で単元未満株や端株は対象外とされます。(第3項)

・株式の保有期間

6ヶ月間という持ち株保有期間は請求の時から遡って算定されることになります。

※上記の6ケ月の保有期間の議論については株主提案権のところを参照して下さい。

※公開会社でない取締役会設置会社設置会社の場合には、この6ヶ月間という保有期間の制限はなくなります。つまり、請求の時点で100分の3以上の保有があればいいわけです(2項)。

※100分の3以上の保有という要件は招集請求の時には充たしていなければなりませんが、4項により裁判所の許可を得る場合には、その許可の判決が確定するまでは保有していなければならないとされています。これは、同じような少数株主権の行使で会社の業務や財産を調査するための検査役の選任についての裁判で、そのような判決があった(大審院判決大正10年5月20日)ことからの類推です。しかし、さらに考えてみれば、この制度の本来の目的は株主総会を開くことであり、その株主総会に招集を請求した当の株主が、その資格を喪失しているのでは、何のために総会の招集を請求したのか、筋が通らないと考えられます。したがって、その株主総会終結の時までは保有しているべきという考え方があり、それは当然のことと思います。

ü 総会招集の手続(1項、4項)

上記の要件を満たした少数株主は。会議の目的である事項及び招集の理由を示して、取締役に株主総会の招集を請求します。この請求は、旧商法では書面による請求とされていましたが、会社法ではその制限はありません。ただし、いつ請求したかが明らかになっている必要があるので、公的な証拠が残るものとして書面を書留郵便で送ることが手堅い方法と考えられます。実務としては内容証明郵便が使われています。

この請求を受け取った取締役は遅滞なく総会招集の手続を始めることになります。株主の請求に対して、取締役はは株主総会を招集するか否かを判断し、決定しなければならず(298条)、株主総会を招集することを決定した場合は取締役が株主総会を招集することになります(296条3項)。取締役が少数株主の請求に応じて書面または電磁的方法でする株主総会の招集通知には、少数株主が請求の際に示した株主総会招集通知には、少数株主が請求の際に示した株主総会の目的である事項を記載・記録しなければなりません(299条4項、298条1項)。しかし、少数株主が示した招集理由までも掲げる必要はかいと考えられています。また、少数株主の請求に基づく招集であることをとくに掲げるひつようもないと考えられています。なお、少数株主の請求に基づくものであっても、取締役が招集する場合に、書面による投票あるいは電磁的方法による投票を採用するときは、取締役は、招集通知に際して株主総会参考書類・議決権行使書面を交付するか、電磁的方法で提供しなければなりません(301条、302条)。もし、この請求後遅滞なく総会招集の手続が行われない場合、あるいは請求の日から8週間以内を開催日とする株主総会招集通知が発せられない場合(つまり、請求の日から6週間以内に招集通知が届かない場合)には、その請求をした株主は裁判所の許可を得て、みずから株主総会を招集することができます(4項)。

※この株主には総会を招集する権利があることとなり、株主名簿やそのほかの総会に招集すべき株主を通知するために必要な書類を閲覧、謄写することができます。また、株主総会招集の決定は、この場合取締役会ではなく、この株主が決定することになり、招集通知の発出や参考書類の交付等も株主が行います。その場合の費用負担は株主が負います。ただし、決議が成立した場合で会社にとり有益な費用であった場合には、株主は会社に対して合理的な額を求償できるといわれています(民法702条)。

ü 招集許可の申立て(4項)

株主総会の招集請求をした株主は、@招集請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、又はA招集請求があった日から8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、会社の本店所在地の地方裁判所に対し、申立手数料1000円を支払って、株主総会の招集許可の申立てをすることができます。なお、会社が上場会社の場合には、個別株主通知を行った後、4週間以内に許可申立てを行う必要があります(社債、株式などの振り替えに関する法律154条、施行令40条)。

株主総会招集許可申立書の添付書類は、以下のとおりです。

@会社の登記事項証明書

A会社の定款

B持株要件の疎明資料

 ※例えば、株主名簿、株主名簿記載事項証明書(会社法122条)、株券、個別株主通知を行った際に口座管理機関(証券会社)から受け取った受付票等が考えられます。

C株主総会招集請求書(内容証明郵便)及び郵便物配達証明書

D取締役が株主総会の招集を怠っていることの疎明資料

裁判所は、会社の代表取締役等を呼び出し、会社側の意見を聴取する機会を設けます。

裁判所から会社に対して株主総会の開催を勧告した結果、会社が任意に株主総会を開催し、それを受けて株主側が申し立てを取下げるというケースが多いですが、状況次第で、裁判所に招集許可の決定を即日で出して頂くことも不可能ではありません。争点となるのは、通常、@持株数の要件又はA申立権濫用のどちらかです。濫用が認められるのは、株主総会を招集することに実益がなく、かえって有害であり、申立人に害意があるという場合に限られています。実益がない例として、分配可能額(461条2項)のないことが明白なのに剰余金配当を株主総会の目的とするような議題そのものが無意味な場合であり、有害な例としては、会社の信用を害する目的や取締役に対する嫌がらせ目的などの場合があげられます。そして、申立人の主観的目的や動機が不当であることのみでは足りず、申立てに係る株主総会の目的事項が客観的に見て不法または不当なものではなく、株主総会の審議を求めることが無益ないし無意味と言い難いときは、申立てを排斥で数、申立人の主観的目的・動機が不当であり、株主総会の目的事項も会社の利益に適合せず、決議が成立する見込がないことが客観的に明らかな場合にのみ権利濫用と認めるべきと考えられています。許可申立て後に会社が株主総会を招集した場合、会社が招集した株主総会の日が、招集請求から8週間以内であれば、裁判所は許可申立てを却下することになります。ただし、裁判実務では、裁判所が会社側に対して至急株主総会を開催するように勧告し、会社側がこれに応じて少数株主が請求した目的の事項と同一の事項を議題とする株主総会の招集手続をし、株主総会開催後にその議事録を裁判所に提出した上で、少数株主が招集許可申請を取り下げるという経過をたどって、その間、裁判所は申立てに対する判断を留保する扱いをしています。

会社が招集した株主総会と裁判所の許可決定により少数株主が招集した株主総会が競合した場合には、同一事項につき会社が株主総会を開催する権限は失われると解されており、会社が招集した株主総会は無権限者による招集となり、その決議は不存在と考えられることになります。

少数株主による株主総会招集の許可の裁判は非訟事件であり(868条1項)、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものです。許可の申請をする場合には、申立人は、取締役が株主総会の招集を怠っている事実を説明しなければなりません(869条)。裁判実務では、取締役の意見を求めるのが一般的です。もう指定をする裁判には、理由を付さなければなりません(871条)。許可申立ての裁判は決定をもってなし、裁判を受ける者に対する告知によってその効力を生じます。許可申立てを認容する決定には、不服を申し立てることはできません(874条4号)。申立てを却下する決定には、申立人に限り、即時抗告ができます。

ü 株主総会の招集及び開催(4項)

少数株主が株主総会の招集について裁判所の許可を得たときは、その株主は株主総会を招集することができます。いつまでに招集しなければならないかについては、とくに会社法に規定はありません。相当の期間内に招集の手続を行なわなければならないという他はありません。

裁判所が招集の期限を定めた場合にはその期限までの間、定めなかった場合でも、招集の許可があった時から相当の期間内は、株主が許可を得た事項と同一の議題については、取締役は株主総会を招集する権限を有さないことになります。

少数株主が裁判所の許可を得て株主総会の招集をする場合は、その招集については少数株主が会社の機関的地位に立つことになります。したがって、株主総会の招集通知は取締役ではなく、その株主の名を以って行うことになります(298条1項括弧書、299条)。株主総会参考書類、議決権行使書面の交付も同様となります(298条1項括弧書、301条、302条)。実務では、少数株主は基準日の公告も行っています。許可を得た少数株主は、株主名簿意外にも、株主総会に招集すべき株主を確知するために必要な会社の書類を、総会招集権に基づき閲覧・謄写することができます(東京地裁判決昭和63年11月14日)。その場合の費用負担は株主が負います。ただし、決議が成立した場合で会社にとり有益な費用であった場合には、株主は会社に対して合理的な額を求償できるといわれています(民法702条)。

少数株主が招集した株主総会では、ふつうは定款で社長が議長となると定めていますが、この場合は、定款規定は適用されず、あらためて株主総会で選任しなければなりません(横浜地裁判決昭和38年7月4日)。なお、そこで社長を議長に選任することには支障はないとされています。

裁判所の許可は少数株主が招集することができる株主総会の目的事項を示して許可されたものなので、その許可に基づいて招集する株主総会では、裁判所が許可した目的事項についてのみ決議できます。それに違反した決議は、株主総会決議取消の取消事由となります(831条1項)(金沢地裁判決昭和34年9月23日)。ただし、会社の業務及び財産の状況を調査とした者を選任することは、裁判所の許可に含まれていない場合でも決議することができます(315条2項)。

ü 株主総会の招集請求を受けた場合の実務対応

@招集請求の受付

招集請求を受けた会社(取締役)は、その請求が上記の会社法上規定に従ったものであるかを確認します。また、招集請求は少数株主権の行使に該当するため、その株主の個別株主通知を受領しているかを確認します(振替法154条、147条4項)。

上場会社であれば、株主から招集請求を受け場合は、適時開示を行わなければなりません(上場規程402条2号)。

次に、会社は請求ら応じて株主総会を招集すべきか否かを検討します。この場合、まず、株主の請求内容の適法性を確認します。具体的には次の3点です。

@)招集請求が権利濫用によるものでないか

A)提案された議題八木案の内容が適法であるか

B)犠打や議案の内容の特定性、明確性が十分であるか

以上について検討した結果、疑義がある場合には、議題・議案の撤回や内容の変更について、請求株主と協議することになります。その結果、会社は株主総会の招集請求に応じるか否かを決定します。

A株主が株主総会招集許可申立てをした場合

請求株主は請求後遅滞なく株主総会の招集手続きが行われない場合、または招集請求の日から8週間以内の日を株主総会の日とする招集通知が発せられない場合、裁判所の許可を得て株主総会を招集できます(297条4項)。具体的には、会社の本店所在の地方裁判所に株主総会招集許可申立てをします。

実務上は、この場合に裁判所は審理の進捗に応じて会社に株主総会の開催を事実上勧告する事例もすくなくありません。会社としては、裁判所の心証を可能な限り探り、招集許可決定の可能性が高いという見通しに立った場合には、請求株主のイニシアチブにより株主総会が開催される事態を回避するため、自主的に株主総会を招集することを検討する必要があります。

裁判所の招集許可決定がなされた場合には、会社は招集許可決定にかかる議題と同一議題について株主総会を招集する権限を失うため、会社の招集権限が制限されることになります。したがって、会社のイニシアチブで株主総会を開催するためには、決定前に株主総会を招集しなければなりません。なお、この決定に対する不服申し立ては許されません(874条4号)。

ü 株主が株主総会の招集許可を受けた株主総会招集の手続き

@基準日の設定・公告

株主から招集請求を受けた場合でも、臨時株主総会となるため、議決権を行使できる株主を確定させるため基準日を設定し、その基準日の2週間前までに公告を行う必要があります(124条3項)。

実際に、請求株主により招集される株主総会についても、会社が基準日を設定・公告する事例もありますが、招集許可決定は、株主に株主総会の開催に必要となる権限を付与されると解されるため、株主が基準日を設定・公告を行った事例もあります。

A総株主通知による基準日の株主の把握

上場会社は振替制度の適用を受けるため、株主名簿は総株主通知により更新され、基準日現在の株主が確定することになります。振替機関は、会社が基準日を定めた場合、会社に対して総株主通知を行わなければなりません(振替法151条1項)。その前提として、会社は振替機関に対して基準日その他の所定の事項を通知することとされています(振替法151条7項)。

B総会検査役の選任の検討

招集許可決定を受けて株主が招集する株主総会は、招集・開催・運営を株主が主導することになるため、会社としては、株主により違法または不当な招集手続きや決議方法がなされないかを監視し、実際の手続きを記録するため、総会検査役の選任(306条)を申し立てることを検討する必要があります。

C招集通知の作成・発送

招集株主は株主総会の招集に当たり、その開催日時・場所を決定します(298条1項)。開催日時と場所は法令及び招集許可決定の範囲内で招集株主が自由に決定することができます。

このような決定に基づき、招集株主は、招集通知・株主総会参考書類及び議決権行使書面の作成・発送を自ら行うこととされています(298条1項括弧書き)。この場合、会社及び会社が証券代行業務を委託している信託銀行等は、招集通知等の作成・発送に協力する義務を負わないと解されています。ただし、株主が株主総会の招集権に基づき、株主名簿その他の株主総会に招集すべき株主を確知するために必要な会社の書類を閲覧・謄写することができると解されているため、会社はこの範囲で株主に協力する義務を負います。

なお、招集通知の議題は、当然株主提案ということになりますから、それに対する会社の意見を記載することを要求することを忘れてはなりません。

※大株主・機関投資家への働きかけ

会社は、招集株主の提案議案への反対を求めて、大株主や機関投資家を中心に株主と面談し、あるいは議案に対する会社の意見を記載した書面を株主に交付するなどの働きかけを行う必要があると思われます。ただし、その際に、会社の働きかけが委任状勧誘規制に抵触しないように留意する必要があります。

ü 株主総会の招集から開催までの間の対応

@議案に対する取締役会の意見の公表等

会社としては、株主の提案議案に反対の立場である場合には、取締役会において反対意見を決議した上で、一般株主に公表して賛同を集める必要があります。具体的には、プレス・リリースのほか、大株主や機関投資家宛のレターを送付したり、個別の面談を行うこと等が考えられます。

なお、このような意見は招集通知の議案や提案理由に基づくものとなりますが、招集通知の発送を待っていると時間がないので、戦略的な観点から、裁判所による決定時に特定された議題の内容やその際の書類を参考にして、暫定的な反対意見を公表しておき、招集通知が発送されたら正式な反対意見を公表することも可能です。

また、議決権行使助言会社から株主提案の議案に関する意見(賛成推奨等)が示された場合には、会社として、その意見に対して反論、補足説明を行うことが考えられます。なお、議決権行使助言会社の意見が示される前に、面談の場を求めて、株主の提案に対する反対推奨が得られるように試みることは、当然行われるべきであると考えられます。

A委任状勧誘

委任状勧誘とは裳会社またはそれ以外の者が、株主に対して、株主総会における議決権を自己または第三者に代理公使させる(310条)ための委任状の提出を勧誘することです。招集株主の提案議案の否決を目指すためには、前項の取締役の反対意見を公表するだけでなく、委任状の勧誘を行い、会社が多くの株主から委任状を取得することが有効です。

この委任状の勧誘については、法令上、勧誘に際しての被勧誘者への委任状用紙・委任状参考書類の交付義務、金融庁長官へのそれらの写しの提出義務等の手続きが定められています。なお、委任状参考書類の記載事項は、上場株式の議決権の代理公使の勧誘に関する内閣府令(委任状勧誘府令)に定められています。

B招集株主との協議

株主総会の運営については、招集株主が主導する異なるため、会社としては株主総会の運営について、株主総会が適法かつ公正に運営されることを確保する観点から、運営への会社側の関与を求めるために招集株主との協議求めることが望ましいと考えられます。この協議には、検査役の同席を求めることにも留意しておきましょう。なお、その際の協議事項としては次のことが考えられます。

@)会社の役員または従業員の同席の要請

株主が招集する株主総会であっても、取締役及び監査役は出席義務を負うことから、会社としては会社の役員を株主総会に同席させることを要請します。

また、議事録の作成及び臨時報告書の作成・提出については会社側が義務を負うため、会社として、株主総会の議事の経過の要領及び結果を把握しておくため、株主総会の事務担当の従業員を同席させることを要請します。

A)株主総会の運営方法の確認

株主が予定している株主総会の運営方法、議決権行使結果の集計、採決の方法等について確認し、適法性・公正性に疑義が認められる場合には、株主に再考を促します。また、議決権行使結果の集計結果について会社側が確認する機会を求めることも考えられます。

B)委任状・議決権行使書面の有効性等の確認

委任状の有効性を判断するのは招集権者である招集株主であるため、委任状の有効性に関する会社と招集株主の見解の相違により会社が取得した委任状の有効性が招集株主により否定されることがないように、あらかじめ委任状の様式について相互に確認しておくことが望ましいと考えられます。

同じようなことは議決権行使書面についても行うことも考えられます。

C)資料などの共有

株主総会の議事録及び臨時報告書は会社側で作成する必要があるため、そのために必要な資料について、株主総会終了後すみやかに引き渡しを受けられるよう、事前に段取りを協議しておきます。

また、会社側で議長を選出する場合には、議事運営のための資料の受け渡しの段取りを事前に協議しておきます。

C株主総会開催禁止・決議禁止の仮処分の申立て

株主総会において、招集株主により違法または不当な運営が行われたとしても、会社側、決議取消訴訟(831条1項)や決議不存在・無効確認訴訟(830条)などにより、事後的に株主総会決議の効力を争うことしかできません。

そこで、違法または不当な運営が事前に予想できる場合には、会社として、株主総会開催及び決議禁止の仮処分の申立てを行うことを検討することが考えられます。

ü 株主総会終了後の対応

@株主総会議事録の作成及び備置

株主総会の議事については、議事録を作成しなければなりません(318条1項)。その議事録の作成義務者については会社法に明確な規定はありません。

しかし、議事録の不記載や不実記載がある場合には取締役が過料に処せられる(967条)ことや、株主総会の議事録には、議事録作成の取締役の氏名を記載しなければならない(会社法施行規則72条3項)とされていることから、議事録作成が取締役の義務であることが前提とされていると解されています。

したがって、招集者が会社であるか株主であるかにかかわらず、取締役が議事録の作成義務を負うことになると解されています。

A臨時報告書の提出

上場会社は、株主総会において決議事項が決議されたときは、遅滞なく、臨時報告書により議決権行使結果を開示しなくてはなりません(金商法24条の5)。これは、株主が招集した株主総会においても、臨時報告書の作成・提出義務を負うのは会社であると解されています。


 

関連条文

株主総会の権限(295条) 

株主総会の招集(296条)

株主総会の招集の決定(298条)←株主総会招集の決議

株主総会の招集の通知(299条)←株主総会招集の決議

株主総会参考書類及び議決権行使書の交付等(301条、302条) 

株主提案(303条、304条、305条) 

検査役の選任(306条) 

議決権の数(308条) 

株主総会の決議(309条) 

議決権の代理行使(310条) 

書面による議決権の行使(311条) 

電磁的方法による議決権の行使(312条) 

議決権の不統一行使(313条) 

取締役等の説明義務(314条) 

議長の権限(315条) 

延期または続行の決議(317条)

 

 
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