新任担当者のための会社法実務講座
第148条 株式名簿の記載事項
第149条 株主名簿の記載事項を記載した書面の交付等
第150条 登録株式質権者に対する通知等
 

 

Ø 株式名簿の記載事項(148条)

株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、次に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。

一 質権者の氏名又は名称及び住所

二 質権の目的である株式

 

登録株式質の対抗要件である株主名簿への記載・記録を会社に対して請求できるのは、質権者ではなく質権設定者です(148条)。ただし、これは株券発行会社の株式及び株券不発行の会社の株式で振替株式でない株式について適用されます。振替株式については、総株主通知の制度により、株主名簿への質権者の氏名等の記載・記録がなされるからです(社債株式振替法161条1項)。

実際には、登録株式質が用いられることは稀で、その理由として質権設定者が株式に質権を設定したことを発行会社に知られたくないからだと言われています。また、質権者として登録株式質が必要であると考えるのであれば登録されたことを確認の上で融資等を行えば足りることなどを仮名が得れば、発行会社に知られてもよいという質権設定者の意思を確認するという段階を踏むこの制度は、合理的と言えます。

なお、当事者間で登録株式質とするとの合意があるにもかかわらず、質権設定者がその合意に反して株主名簿への記載・記録の請求を行わず、あるいは遅延させ、その結果、質権者が損害を被った場合には、質権設定契約の債務不履行として、設定者は質権者に対して損害賠償責任を負うことになります。

 

 

Ø 株式名簿の記載事項を記載した書面の交付等(149条)

@前条各号に掲げる事項が株主名簿に記載され、又は記録された質権者(以下「登録株式質権者」という。)は、株式会社に対し、当該登録株式質権者についての株主名簿に記載され、若しくは記録された同条各号に掲げる事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

A前項の書面には、株式会社の代表取締役(指名委員会等設置会社にあっては、代表執行役。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。

B第1項の電磁的記録には、株式会社の代表取締役が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

C前3項の規定は、株券発行会社については、適用しない。

 

株券発行会社でない会社の株主は、会社に対して、株主名簿記載事項を記載した書面の交付または株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができます(122条1項)。この株式の株主は、株券を用いて自己が株主であることを証明することができないため、株主名簿記載事項を記載・記録した書面・記録により、自己の株主としての地位を証明できるようになっています。

登録株式質権者についても同じことがあります(149条)。株券不発行会社では、質権者が株券を用いて自己の質権者をとしての資格を証明することができませんが、149条に基づき交付・提供された書面・記録により、自己が質権者であることを示すことができます。株券発行会社の場合には株券があるので149条の適用はありません(149条4項)が、振替株式については149条の適用は排除されません(社債株式振替法161条)。

書面の場合には代表取締役が署名または記名捺印し(149条2項)、電磁的記録の場合には電子署名を付さなければなりません(149条3項、会社法施行規則225条1項3号)。

この請求があったにもかかわらず、書面や電磁的記録の提供を拒んだ場合や、虚偽の記載・記録をした場合には、100万円以下の過料に処せられます。

 

 

Ø 登録株式質権者に対する通知等(150条)

@株式会社が登録株式質権者に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該登録株式質権者の住所(当該登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

A前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

 

株主に対する通知・催告は、株主名簿に記載・記録された住所に宛てて発送すればよく、たとえ到達しなくても、通常到達すべきであった時に到達したものとするという120条の規定と同じようなことが、登録株式質権者との関係でもあることを150条は規定しています。

株主名簿に記載・記録された住所に通知・催告さうすれば、転居、郵便・通信手段の事故などにより、実際に到着しなかったり、到着が遅れたりしても、会社は免責され、通常到達すべきであったときに到達したものとみなされます(150条2項)。

 

 

関連条文

  株式の譲渡(127条)

 株券発行会社の譲渡(128条)

 自己株式の処分に関する特則(129条)

 株式の譲渡の対抗要件(130条)

 権利の推定等(131条)

株主の請求によらない株主名簿の記載事項の記載又は記録(132条)

株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録(133条)(134条) 

親会社株式の取得の禁止(135条) 

株主からの承認の請求(136条)

株式取得者からの承認の請求(137条)

譲渡等承認請求の方法(138条)

譲渡等の承認の決定等(139条)

株式会社又は指定買取人による買取り(140条)

株式会社による買取りの通知(141条)

指定買取人による買取りの通知(142条)

譲渡等の承認請求の撤回(143条)

売買価格の決定(144条)

株式会社が承認したとみなされる場合(145条)

株式の質入れ(146条)

株式の質入れの対抗要件(147条)

株式の質入れの効果(151条)

    〃        (152条)

    〃        (153条)

    〃        (154条)

 

 
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