新任担当者のための会社法実務講座 第140条 株式会社又は指定買取人による買取 |
Ø 株式会社等承認請求の方法(140条) @株式会社は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けた場合において、第136条又は第137条第1項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 対象株式を買い取る旨 二 株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数) A前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。 B譲渡等承認請求者は、前項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、当該譲渡等承認請求者以外の株主の全部が同項の株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。 C第1項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、株式会社は、対象株式の全部又は一部を買い取る者(以下この款において「指定買取人」という。)を指定することができる。 D前項の規定による指定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。 譲渡等承認請求者が、取得承認請求とともに、取得不承認の場合には、その対象株式の買い取りを同時に請求(138条1号ハまたは2号ハ)した場合には、取得不承認を決定した会社は、その対象となった譲渡制限株式を買い取らなければなりません(140条1項)。この場合、会社は株主総会特別決議で買取りに関する事項を決定しなければなりません(140条1、2項)。株主総会特別決議とするのは、会社にとっては自己株式の取得になるからです(155条2号)。対象となる譲渡制限株式の買い取りは、株主の投下資本回収を保障する趣旨ですから、会社以外の者か行っても差し支えないということで、会社は、対象譲渡制限株式の全部又は一部を買い取る指定買取人を指定することができます(140条4項)。この指定買取人の指定は、定款に別段の定めがなければ、取締役会設置会社の場合は取締役会決議、それ以外の会社の場合は株主総会の特別決議によらなければなりません(140条5項)。 ü
株式会社による買取り 譲渡不承認の場合の対象譲渡制限株式の買取請求に対して、取得不承認を決定した会社は、対象となる譲渡制限株式を買い取らなければなりません(140条1項)。具体的には、会社は譲渡制限株式買取の手続を踏んで買い取る(155条)ことで、会社が一定期間内にその手続きをしなければ、会社が指定した指定買取人が買取り手続を行うか、取得承認請求者と会社との合意によって別段の定めがある以外は、会社が承認請求を認めたとみなされます(145条)。したがって、所得不承認を決定した会社は、対象譲渡制限株式を買い取るための手続きをかならず行わなければならないという義務を負うわけではありません。 ・株主総会決議による買取り事項の定め 会社が買取請求対象株式を買い取る場合には、次の買取事項を株主総会の特別決議で定めなければなりません(140条1、2項、309条2項1号)。 @)対象株式を買い取る旨 A)株式会社が買い取る対象の数 特別決議となるのは、特定の株主からの自己株式の有償取得になるからです。それゆえに、買取額は分配可能額を超えてはならない(461条1項)。分配可能額を超える買取りは全部無効であり、この場合には145条3号、会社法施行規則26条3号を類推適用して会社は取得を承認したとみなされることになります。 買取事項を定める株主総会決議において、譲渡等承認請求者は議決権を行使することができません(140条3項)。ただし、その決議において譲渡等承認請求者以外に議決権を行使できる株主がいない場合には、譲渡等承認請求者が議決権を行使して決議を成立させることになります(140条3項但書)。 なお、この場合、株主はその議決権行使にあたっては会社の買取義務に拘束されるわけではありません。買取事項を定める旨の議案を否決してもかまわない。 ・買取事項の内容 取得不能の場合の対象譲渡制限株式の買取請求に対して、取得不承認を決定した会社は、対象譲渡制限株式を買い取るために次の事項を定めなければなりません(140条1、2項、309条2項1号)。 @)対象株式を買い取る旨 A)株式会社が買い取る対象の数 会社が買い取る対象譲渡制限株式の数は、原則として、譲渡等承認請求者が取得承認を求めた譲渡制限株式の全部の数です。これは、次の理由によるものです。 ア.一部のみの買取りだと、譲渡等承認請求者は残部の売却ができなくなるおそれがあること イ.譲渡制限株式制度は、既存株主の利益保護のために譲渡制限株式の譲受人を選択することを会社に認める反面として株主の投下資本拐取を保障するものであり、譲渡等承認請求を機に株主に売却残りにより不利益をこうむるようなことになれば制度趣旨に反すること ウ.譲渡等承認請求者との合意なく会社が一部についてだけ買取りを通知し、残りを指定買取人が買取を通知する方法は、譲渡等承認請求者に複数の相手方との個別の協議を強いる点で妥当でないこと エ.会社は、取得承認請求がなされた譲渡制限株式の取得を承認するか否かを決定するのであり、対象株式の伊津部についてのみの取得を承認することはできないこと(139条2項1号) 分配可能額超過名との理由で、会社が対象株式の一部しか買い取ることができない場合は、会社は、指定買取人を指定しなければなりません。この場合には、指定買取人が対象譲渡制限株式の全部を買い取ることになります。 ü
指定買取人の指定 取得不承認の場合に対象譲渡制限株式の買取請求に対して、取得の不承認を決定した会社は、対象譲渡制限株式を買い取る指定買取人を指定することができます(140条5項)。この決定は、定款に別段の定めにより指定買取人が定款で規定されている場合(定款で指定の決定機関を下部機関にすることはできません)を除き、取締役会設置会社では取締役会で、それ以外の会社は株主総会特別決議によって決められなければなりません(140条5項)。なお、指定買取人を複数指定して、譲渡承認請求者が、その中から1人を選択させることは、請求者の手間になるため認められていません。 指定買取人は原則として対象譲渡制限株式の全部を買い取らなければなりません。ただし、請求者との合意により、複数の指定買取人が共同で買い取ることや会社と指定買取人が手分けして買い取ることは可能です。
関連条文 株主の請求によらない株主名簿の記載事項の記載又は記録(132条) 株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録(133条)(134条) 株式会社が承認したとみなされる場合(145条 |