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第136条 株主からの承認の請求 第137条 株式取得者からの承認の請求 |
Ø 株主からの承認の請求(136条) 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。 株式会社がその発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要するという旨の定款の定めを設けている場合の株式を譲渡制限株式と呼びます(2条17号)。この譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人に譲り渡そうとするときは、発行会社である株式会社に対して、その他人が譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かを決定することを請求することができます(136条)。 「請求することができる」とは、その請求で特定された譲受人が譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かを会社が決定するように求めることを、その内容とします。この請求がなされても、承認するか否かを、会社は必ず決定しなければならないわけではありません。ただし、譲渡制限株式を譲り渡そうとする株主が承認請求した日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合には、その期間)以内に、会社が、取得を承認するか否かを決定し、かつ、その決定の内容を承認請求した株主に対して通知しなければ、その取得を会社が承認したものとなされます(145条1号)。 ü
会社の承認を要しない譲渡による取得 会社の承認を要するのは、譲渡制限株式の譲渡による取得についてです。相続や合併などの一般承継による譲渡制限株式の取得については、譲渡による株式取得に会社の承認を要するとする譲渡制限株式制度の適用はありません(134条4号)。ただし、譲渡制限株式発行会社は、一般承継によって譲渡制限株式を取得した者に対し、譲渡制限株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(174条)。 また、譲渡による取得であっても、次の場合には会社の承認を要しません。 ・対象となる譲渡制限株式を発行した会社に譲渡する場合 譲渡制限株式制度は、譲渡制限株式の取得者を会社が選択することを認める制度です。したがって、取得者が会社自身である場合は会社の取得承認手続きを必要としません(136条括弧書)。ただし、会社と株主との合意によって、会社が発行した譲渡制限株式を有償で取得する場合には、156条以下の自己株式取得規制が適用されます。 ・譲渡制限株式の指定買取人による買取り 取得不承認を決定した会社が対象譲渡制限株式を買い取る指定買取人を指定した場合ですから、取得承認請求手続を必要としないのは当然のことです(134条3号)。 ・定款に定められた承認を要しない旨の一定の場合 譲渡制限株式を発行する会社は、その内容として、一定の場合には会社が136条または137条1項の承認をしたものとみなす旨を定款で定めることができます(107条2項1号、108条2項4号)。 譲渡制限株式制度は、譲渡制限株式の取得者の選択を会社に認める制度です。したがって、一定の属性を有する者が取得者となる場合に会社の承認を要しない旨(会社の取得承認を擬制する旨)を定款に定めることが認められています。例えば、「当会社の株式を譲渡により取得するときには株主総会の承認を要する。ただし、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合を除く」や「当会社の株式を譲渡により取得するときには株主総会の承認を要する。ただし、当会社の取締役または従業員を譲受人とする場合においては、当会社が会社法136条または137条1項の承認をしたものとみなす」旨の定款の定めがあれば、但書に定められた一定の場合には会社の取得承認が擬制される、つまり承認があったとみなされます。 これに対して、一定の属性を有する株主が譲渡制限株式を譲渡する場合にのみ会社の取得承認を要する旨の定めは、譲渡制限株式の取得者の選択を会社に認める制度趣旨に適合するものではありません。このような定めは一定の株主にの譲渡承認請求手続を課すことになり、株主平等の原則に反するもので、無効となります。 ・1人会社の株主が譲渡制限株式を譲渡する場合 譲渡制限株式の制度趣旨は会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主の利益を保護することにあります。したがって、いわゆる1人会社の株主がその保有する株式を他に譲渡した場合には、定款所定の取締役会の承認がなくても、その譲渡は、会社に対する関係においても有効とみなされる(最高裁判決昭和48年6月15日)。 ・株主全員が承認している譲渡制限株式の譲渡 前項と同じように、株主全員(正確には、譲渡人株主以外の株主全員)が承認した譲渡制限株式の譲渡による取得については、会社の承認を必要としません(最高裁判決平成9年3月7日)。 ・譲渡制限株式を略式譲渡担保する場合 譲渡担保は、形式的には譲渡ですが、実質的には担保権の設定です。判例は、譲渡制限株式を譲渡担保に供することは譲渡制限株式の譲渡に当たるから会社の承認がなければ会社との関係では効力を有しないとしました(最高裁判決昭和48年6月1日)。しかしながら、譲渡制限株式を譲渡担保に供する行為自体(略式譲渡担保)は譲渡担保権の設定にすぎず、会社の取得承認を要しないと解されています。
Ø 株式取得者からの承認の請求(137条) @譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。 A前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。。 株式会社がその発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定め(定款に定めなければならない)を設けている場合における株式を、譲渡制限株式と呼びます(2条17号)。譲渡制限株式の株主がその有する譲渡制限株式を他人に譲り渡そうとするとき、その他人が取得することについて株主が承認を請求した場合(136条)と同様に、譲渡制限株式を取得した者が譲渡制限株式を取得したことについて承認を請求した場合、会社は承認をするか否かを決定することになります(137条1項)。 「請求することができる」とは、その請求をした取得者が、会社に対して譲渡制限株式を取得することについて承認するか否かを会社が決定するように求めることを、その内容とします。この請求がなされても、承認するか否かを、会社は必ず決定しなければならないわけではありません。ただし、譲渡制限株式を取得した者が承認請求した日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合には、その期間)以内に、会社が、取得を承認するか否かを決定し、かつ、その決定の内容を承認請求した取得者に対して通知しなければ、その取得を会社が承認したものとなされます(145条1号)。 ü 会社の取得承認を要する取得 137条が適用されるのは、譲渡制限株式の譲渡による取得についてです。ただし、137条1項によって取得承認請求をなし得る株式取得者の譲渡制限株式取得原因には、競売、公売、善意取得、譲渡担保権の実行も含まれます。 株式交換によって株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の譲渡制限株式を取得したことについては、株式交換完全子会社が137条1項の承認をしたものとみなされます(769条2項、771条2項)。株式交換完全親会社による譲渡制限株式の取得には137条の適用があることを前提としています。会社法施行規則24条は、組織変更株式交換あるいは株式移転による譲渡制限株式の取得にも137条の適用があることを前提としています。しかし、株式交換は、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の発行済株式をすべて取得することになる組織再編行為です(769条1項)。また、株式移転は、株式移転完全子会社が株式移転完全親会社を新設する組織再編行為です(774条1項)。譲渡制限株式発行会社の株主が有する全株式を移転先の会社が取得する組織再編行為です。そして、譲渡制限株式制度は、譲渡人以外の株主の利益保護を趣旨とするものです。したがって、株式交換によって株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の譲渡制限株式を取得した場合、及び、株式移転によって株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の譲渡制限株式を取得した場合には、取得承認は不要だと解されています。 なお、相続や合併などの一般承継による譲渡制限株式の取得については、譲渡による株式取得に会社の承認を要するとする譲渡制限株式制度の適用はありません(134条4号)。ただし、譲渡制限株式発行会社は、一般承継によって譲渡制限株式を取得した者に対し、譲渡制限株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(174条)。 ü 譲渡制限株式取得者による取得承認請求 譲渡制限株式を取得した者は、会社に対して、譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かの決定をすることを請求できます(137条1項)。取得者によるこの請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した譲渡制限株式の株主として株主名簿に記載された者またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければなりません(137条2項)。 譲渡制限株式の譲渡は、株券発行会社の場合には当事者の合意と株券の交付によって(128条1項)、株券発行会社ではない場合には譲渡当事者の合意によって、その効力を生じます。株券の交付を受けた株券の占有者は株主であると法律上の推定を受け(131条1項)、さらに譲渡人が無権利者であっても株式を善意取得することができます(131条2項)。一方、譲渡当事者の合意のみで譲渡される場合には、株主推定や善意取得の適用はなく、取得承認請求を単独でなし得るとすると真の株主等利害関係人の利益を害するおそれがあります。そこで、取得したことについての承認請求は原則として取得者と譲渡制限株式の株主として株主名簿に記載された者とが共同してなさなればならないとされました。 ・単独で取得承認を請求できる場合 次の場合には、請求者が株主である蓋然性が高く利害関係を害する恐れが少ないので、取得者単独で取得承認を請求できることとされています(137条2項、会社法施行規則24条)。 @)株券発行会社でない場合(会社法施行規則24条1項) @137条1項の請求を命じる確定判決あるいはそれと同一効力を有するものの内容を証する書面その他の資料を提供して請求したとき。 A競売によって取得したことを証する書面その他の資料を提供して請求したとき。 B組織変更株式交換あるいは株式移転によって株式全部を取得した会社が請求したとき。ただし、この場合にはそもそも取得承認は不要と解されます。 C197条2項に基づき売却された所在不明株主の譲渡制限株式の取得者が代金全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求したとき。法定の売却手続きを会社が行う場合であり、また、譲渡制限株式の株主として株主名簿に記載されている者は所在不明株主なので、取得者の単独請求となります。 D株券喪失登録日の翌日から1年経過日以降に株券喪失登録者である譲渡制限株式取得者が請求したとき。株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款変更がなされても、定款変更日の翌日から1年を経過するまでは、株券喪失登録者が株主名簿に記載されていない場合にはその者の株券喪失登録は抹消されません。この限りにおいて株券喪失登録は続行されますが、株券は再発行されません。この場合には株券提示による取得承認請求はできません。 E234条2項あるいは235条2項に基づいて、取得条項付株式の取得や株式分割などに際して生じた端数の合計数に相当する譲渡制限株式が売却された場合に、その取得者が代金全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求したとき。 A)株券発行会社である場合(会社法施行規則24条2項) @譲渡制限株式取得者が株券を提示して請求したとき。 A組織変更株式交換あるいは株式移転によって株式全部を取得した会社が請求したとき。 B197条に基づいて、競売あるいは売却された所在不明株主の譲渡制限株式の取得者が、代金全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求したとき。 C234条あるいは235条に基づいて、取得条項付株式の取得や株式分割などに際して生じた端数の合計数に相当する譲渡制限株式が競売あるいは売却された場合に、その取得者が代金を全部支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求したとき。
関連条文 株主の請求によらない株主名簿の記載事項の記載又は記録(132条) 株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録(133条)(134条) 株式会社による買取りの通知(141条) 指定買取人による買取りの通知(142条) 譲渡等の承認請求の撤回(143条) 売買価格の決定(144条) 株式会社が承認したとみなされる場合(145条 |