新任担当者のための会社法実務講座
第141条 株式会社による買取りの通知
第142条 指定買取人による買取りの通知
 

 

Ø 株式会社による買取りの通知(141条)

@株式会社は、前条第1項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。

A株式会社は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下同じ。)に前条第1項第2号の対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。

B対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、前条第1項第2号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、当該株券発行会社に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。

C前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、株券発行会社は、前条第1項第2号の対象株式の売買契約を解除することができる。

 

譲渡制限株式の譲渡等承認請求者は、取得承認請求とともに取得不承認の場合の対象制限株式買取請求もできます(138条1号ハ、2号ハ)。この買取請求がなされた場合において、取得不承認を決定した会社は、対象株式を買い取らなければなりません(140条1項)。この場合、会社は株主総会の特別決議により140条1項に基づく買取事項を決定しなければなりません(140条2項)。これらの決定をしたとき、会社は譲渡等承認請求者に対して、この決定した買取事項を通知(買取通知)しなければなりません(141条1項)。そして、この通知をしようとするときは、供託を証する書面を交付しなければなりません(141条2項)。

ü 会社による買取通知

・通知期間

会社による買取となる場合には、譲渡等承認請求者に取得不承認の通知をした日から40日(定款でこれを下回る期間に定めた場合にはその期間)以内に買取事項を通知しなければなりません。それができなかった場合、指定買取人による買取通知が会社による取得不承認の通知の日から10日以内に通知された(142条)場合あるいは会社と譲渡等承認請求者との合意によって別段の定めをした場合を除き、会社が取得を承認したとみなされます(145条)。なお、会社による買取通知が不承認通知の日から40日以内と、指定買取人の買取通知の10日以内に比べて期間が長くなっているのは、買取事項を決定するために株主総会を招集しなければならないからです。

・買取通知の法的性質

買取通知は、譲渡等承認請求者が行った対象譲渡制限株式の買取請求に対する承諾ということになります。買取通知によって、通知を受けた譲渡等承認請求者と会社との間で対象譲渡制限株式の売買契約が成立することになります。ただし、対象譲渡制限株式の移転は売買代金が支払われたときです。

ü 暫定買取代金の供託

会社が買取通知をしようとするときに、1株当たり純資産額に会社が買い取る対象譲渡制限株式の数を乗じて得た額を暫定買取代金として、本店所在地の供託所に供託し、かつ、その供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければなりません(141条2項)。

暫定買取代金の供託は、対象譲渡制限株式の買取代金支払債務の履行を担保し、譲渡等承認請求者の投下資本回収の確実性を高める趣旨を有するものです。

この暫定買取代金は、買取通知があった日から20日以内に、売買契約の当事者である譲渡等承認請求者あるいは会社が裁判所に売買価格決定の申立て(144条2項)をしなかったときに、売買価格とされる金額です(144条5項)。

会社と譲渡等承認請求者との対象譲渡制限株式の売買契約の売買価格が確定した時は、供託された金額に相当する額を限度として、売買代金の全部または一部を会社は支払ったものとみなされます(144条6項)。

・供託証明書の交付

買取通知には、供託を証する書面をこうふしなればなりません(141条2項)。これは、事前にあるいは買取通知と同時に供託を証する書面の交付を要し、かつ、それまでに供託を証する書面のこうふがなければ、買取通知は効力を認められないことを意味しています。

ü 株券の供託

会社の譲渡制限株式について暫定買取代金の供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、交付を受けた日から1週間以内に、会社が買い取る譲渡制限株式の株券を供託所に供託しなければなりません。そして、譲渡等承認請求者は、遅滞なく、会社に対して株券の供託をした旨を通知しなければなりません(141条3項)。

株券発行会社の株式譲渡には株券の交付を要する(128条1項)ので、会社の買取通知によって譲渡等承認請求者と会社との間に債権:契約としての株式売買契約が成立すると、譲渡等承認請求者は会社に株券引渡し義務を負います。つまり、譲渡等承認請求者に株券の引き渡しを拒む余地を与えないように、あらかじめ株券を供託させています。譲渡等承認請求者が1週間以内に株券を供託しなければ、対象株式の売買契約の解除権が会社に発生するという不利益を譲渡等承認請求者が受けることになります。

 

 

Ø 指定買取人による買取りの通知(142条)

@指定買取人は、第140条第4項の規定による指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。

一 指定買取人として指定を受けた旨

二 指定買取人が買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)

A指定買取人は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額に同項第2号の対象株式の数を乗じて得た額を株式会社の本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。

B対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、第1項第2号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、指定買取人に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。

C前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、指定買取人は、第1項第2号の対象株式の売買契約を解除することができる。

 

譲渡制限株式の譲渡等承認請求者は、取得承認請求とともに取得不承認の場合の対象制限株式買取請求もできます(138条1号ハ、2号ハ)。この買取請求がなされた場合において、取得不承認を決定した会社は、対象株式を買い取る者を指定することができます(140条4項)。この指定を受けた者は、指定買取人としての指定を受けた旨、および、指定買取人が買い取る譲渡制限株式の数を、譲渡等承認請求者に通知(買取通知)しなければなりません(142条2項)。これらの決定をしたとき、会社は譲渡等承認請求者に対して、この決定した買取事項を通知(買取通知)しなければなりません(141条1項)。そして、この通知をしようとするときは、供託を証する書面を交付しなければなりません(141条1項)。

ü 買取事項通知

買取通知は、譲渡等承認請求者が行った対象譲渡制限株式の買取請求に対する承諾に当たります。つまり、買取通知によって、通知を受けた譲渡等承認請求者と通知をした指定買取人との間で対象譲渡制限株式の売買契約が成立することになります。買取通知は、会社の取得不承認の通知の日から10日以内に通知しなければなりません。そうでない場合には、会社が取得を承認したと見なされます(145条2号)。

ü 暫定買取代金の供託

指定買取人が買取通知をしようとするときに、1株当たり純資産額に指定買取人が買い取る対象譲渡制限株式の数を乗じて得た額を暫定買取代金として、株式発行会社の本店所在地の供託所に供託し、かつ、その供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければなりません(141条2項)。

暫定買取代金の供託は、対象譲渡制限株式の買取代金支払債務の履行を担保し、譲渡等承認請求者の投下資本回収の確実性を高める趣旨を有するものです。

この暫定買取代金は、買取通知があった日から20日以内に、売買契約の当事者である譲渡等承認請求者あるいは指定買取人が裁判所に売買価格決定の申立て(144条2項)をしなかったときに、売買価格とされる金額です(144条5項)。

指定買取人と譲渡等承認請求者との対象譲渡制限株式の売買契約の売買価格が確定した時は、供託された金額に相当する額を限度として、売買代金の全部または一部を会社は支払ったものとみなされます(144条6項)。

・供託証明書の交付

買取通知には、供託を証する書面をこうふしなればなりません(141条2項)。これは、事前にあるいは買取通知と同時に供託を証する書面の交付を要し、かつ、それまでに供託を証する書面のこうふがなければ、買取通知は効力を認められないことを意味しています。

ü 株券の供託

会社の譲渡制限株式について暫定買取代金の供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、交付を受けた日から1週間以内に、指定買取人が買い取る譲渡制限株式の株券を供託所に供託しなければなりません。そして、譲渡等承認請求者は、遅滞なく、指定買取人に対して株券の供託をした旨を通知しなければなりません(141条3項)。

株券発行会社の株式譲渡には株券の交付を要する(128条1項)ので、指定買取人の買取通知によって譲渡等承認請求者と指定買取人との間に債権:契約としての株式売買契約が成立すると、譲渡等承認請求者は指定買取人に株券引渡し義務を負います。つまり、譲渡等承認請求者に株券の引き渡しを拒む余地を与えないように、あらかじめ株券を供託させています。譲渡等承認請求者が1週間以内に株券を供託しなければ、対象株式の売買契約の解除権が会社に発生するという不利益を譲渡等承認請求者が受けることになります。

 

 

関連条文

  株式の譲渡(127条)

 株券発行会社の譲渡(128条)

 自己株式の処分に関する特則(129条)

 株式の譲渡の対抗要件(130条)

 権利の推定等(131条)

株主の請求によらない株主名簿の記載事項の記載又は記録(132条)

株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録(133条)(134条) 

親会社株式の取得の禁止(135条) 

株主からの承認の請求(136条)

株式取得者からの承認の請求(137条)

譲渡等承認請求の方法(138条)

譲渡等の承認の決定等(139条)

株式会社又は指定買取人による買取り(140条)

譲渡等の承認請求の撤回(143条)

売買価格の決定(144条)

株式会社が承認したとみなされる場合(145条

 
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