新任担当者のための会社法実務講座 第129条 自己株式の処分に関する特則 |
Ø 自己株式の処分に関する特則(129条) @株券発行会社は、自己株式を処分した日以後遅滞なく、当該自己株式を取得した者に対し、株券を交付しなければならない。 A前項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、同項の者から請求がある時までは、同項の株券を交付しないことができる。 会社法上、自己株式を処分できるのは次の場合です。 ・引受人を募集して割り当てる場合(199条1項) ・新株予約権の行使に応じて株式を交付する場合(236条1項1号) ・取得請求権付株式の対価として交付する場合(108条2項5号ロ) ・取得条項付株式、取得条項付新株予約権の取得の対価として交付する場合(108条2項6号ロ、236条1項7号ニ) ・全部取得条項付株式の取得の対価として交付する場合(171条1項1号イ) ・単元未満株主の単元未満株式売渡請求に応じる場合(194条3項) ・株式の無償割当に用いる場合(185条) ・吸収合併、吸収分割、株式交換の対価として交付する場合(749条1項2号イ、758条4号イ、768条1項2号イ) これらの場合、株券発行会社であっても、自己株式の処分の相手方は、株券の交付がないまま株式を取得することとなります。 相手方が株主の地位を原始取得する株式の発行とは異なり、会社法では、自己株式の処分を、会社と処分の相手方との間の譲渡行為と性格づけています(128条1項但書)。このため、自己株式の処分によって、株券の交付なしに相手方が株主の地位を取得することは、株券発行会社では株券の交付なしに株式を譲渡できないという規定(128条1項)の例外と位置付けられることになります。129条は、この場合に、自己株式を処分した株券発行会社の株券発行義務を規定しています。その内容は、株式の発行に伴う株券の発行義務(215条)と同じです。 会社は自己株式を処分した日以後遅滞なく、その処分した自己株式の株券を発行しなくてはなりません(129条1項)。処分した日とは自己株式の処分が効力を生じ、相手方が株主となる日です。具体的には、それぞれのケースに応じて、つぎのようになります。 ・引受人を募集して割り当てる場合には払込期日または払込日(209条) ・新株予約権の行使による場合は行使日(282条) ・取得請求権付株式の取得の場合には取得請求の日(167条2項4号) ・取得条項付株式、取得条項付新株予約権の取得の対価として交付する場合には取得事由発生日(170条2項4号、275条3項1号) ・全部取得条項付株式の取得の対価として交付する場合には決議によって定めた取得日(173条2項1号) ・単元未満株主の単元未満株式売渡請求に応じる場合には代金支払い時(194条3項) ・株式の無償割当に用いる場合には無償割当の効力発生日(187条1項) ・吸収合併、吸収分割、株式交換の対価として交付する場合には組織再編の効力発生日(750条3項1号、759条1号、769条3項1号) 公開会社でない株式発行会社については、株主から請求があるときまで株券を発行しないことができます。これも株式発行の場合と同じ内容です(215条4項)。 関連条文 株主の請求によらない株主名簿の記載事項の記載又は記録(132条) 株主の請求による株主名簿の記載事項の記載又は記録(133条)(134条) 親会社株式の取得の禁止(135条)
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