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第364条 取締役会設置会社と取締役 との間の訴えにおける会社の代表 |
Ø 株式会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表(364条) 第353条に規定する場合には、取締役会は、同条の規定による株主総会の定めがある場合を除き、同条の訴えについて取締役会設置会社を代表する者を定めることができる。 【参考】353条「株式会社と取締役との間の訴えに置ける会社の代表」 第349条第4項の規定にかかわらず、株式会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が株式会社に対して訴えを提起する場合には、株主総会は、当該訴えについて株式会社を代表する者を定めることができる。 業務監査権限を有する監査役が存在しない取締役会設置会社とその取締役との間の訴えの会社の代表の定め方を規定した特則です。「第353条に規定する場合には」とあるように、353条の定めを前提とするので、業務監査権限を有する監査役がいる場合を除き、取締役会設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表者は、そのまま現在の代表取締役を定めることができる、ということです。 会社と取締役との間の訴えにおける会社と取締役との利害衝突あるいは取締役どうしの馴れ合いの可能性が考えられるので、現在の代表取締役がそのまま訴えを代表するのは適当でない場合もあるが、必要があれば、取締役会で現在の代表取締役とは異なる者を代表者に定めることができるとしています。ただし、株主総会の定めがない場合であり、株主総会の定めが取締役会よりも優先しまます。 353条では株主総会のみが訴えの代表者を定めることができるとしていたのに対して、取締役会設置会社で業務監査権限を有する監査役がいない場合は、株主総会には劣後しますが、取締役会にもその権限を付与しています。 なお、株主が取締役の責任を追及する訴えの提起を請求する場合(847条1項)には、現在の代表取締役がこれを受けることになるし、代表取締役は、株主総会による代表者の選任を付議しなければならないものでは、必ずしもない。現在の代表取締役が代表権を有するのが原則だからです。また、会社が849条3項の訴訟告知を受ける場合、および和解に関する850条2項の通知・催告を受ける場合も同様です。これは業務監査権限を有する監査役設置会社の場合は、監査役が会社を代表することになります(386条2項)。 〔参考〕監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表(386条) 監査役は、会社が取締役(取締役であった者を含む)に対しまたは取締役が会社に対して訴えを提起する場合に、その訴えについて会社を代表します(386条1項)。このような会社・取締役間の訴えにおいても会社を代表する者を一般原則通り代表取締役とすると、訴訟の相手方である取締役がその代表取締役である場合はもちろん、それ以外の取締役でも、適切な訴訟追行がされないおそれがあるので、取締役からの独立性が保障されている監査役が会社を代表することになっています。 会社の取締役の責任を追及する訴訟として、株主からは代表訴訟を提起することができますが、その前提としての、会社に対して訴えの提起を請求することが必要で、この請求を株主から受ける会社の代表は監査役です(386条2項)。しかし、監査役としては、このような請求がなされた場合に限らず、取締役の責任を追及する訴訟を提起する必要があると判断したときは、会社を代表してその訴訟を提起することができます。しかも、監査役は、その訴訟を提起する必要がある場合に、それを怠れば、任務懈怠の責任を負わされる可能性背あります。 〔参考〕監査等委員会設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等(399条の7) 監査等委員会に選定された監査等委員は、会社が取締役(取締役であった者を含む)に対し、または取締役が会社に対して訴えを提起する場合に、その訴えについて会社を代表します(399条の7第2項)。このような会社・取締役間の訴えにおいても会社を代表する者を一般原則通り代表取締役とすると、訴訟の相手方である取締役がその代表取締役である場合はもちろん、それ以外の取締役でも、適切な訴訟追行がされないおそれがあるので、独立性が保障されている監査等委員が会社を代表することになっています。 会社の取締役の責任を追及する訴訟として、株主からは代表訴訟を提起することができますが、その前提としての、会社に対して訴えの提起を請求することが必要で、この請求を株主から受ける会社の代表は監査等委員です(399条の7第5項)。しかし、監査等委員としては、このような請求がなされた場合に限らず、取締役の責任を追及する訴訟を提起する必要があると判断したときは、会社を代表してその訴訟を提起することができます。しかも、監査等委員は、その訴訟を提起する必要がある場合に、それを怠れば、任務懈怠の責任を負わされる可能性背あります。 また株主代表訴訟において被告取締役(監査等委員を除く。)を補助するため、または株式交換等完全子会社の旧株主による責任追及訴訟または最終完全親会社等の株主による特定責任追及訴訟において株式交換等完全子会社・完全子会社等の取締役・執行役を補助するために、会社がこれらの訴訟に補助参加する場合には、監査等委員全員の同意が必要とされています(849条3項2号)。 ü
取締役と会社の間の訴え 会社と取締役の間の訴えにおける取締役とされる者は、代表取締役であると取締役とを問いません。また欠員の場合の代表取締役または取締役の権利義務を有する者(351条1項、346条1項)、仮代表取締役(351条2項)・仮取締役(346条2項)、代表取締役または取締役の職務代行者(352条)も含まれます。登記上は取締役であっても、選任決議に対し就任の承諾を与えていない場合は、対象とはなりません。退任取締役が在任中の責任を追及される訴えのように、取締役であった者が対象となると考えられる。馴れ合いの可能性は、訴訟の相手方が現任の取締役である場合と退任の取締役である場合とで、それほど違いがあるとは思われないし、株主代表訴訟では、株主による退任取締役に対する訴えの提起も認められていることの整合性からも、退任取締役を除外するのは妥当ではないからと考えられるからです。 そして、会社と取締役の間の訴えの対象となる範囲について、会社が取締役に対して訴えを提起するとは、会社による取締役に対するすべての訴えの提起を意味します。このようにその範囲を広く解しているのは、取締役と会社との利害衝突あるいは取締役どうしの馴れ合いの可能性が考慮されるからです。会社が423条1項による取締役の責任を追及する場合はもちろんのこと、会社と取締役との間の取引から生じる取締役の債務の履行請求・損害賠償請求も含まれるし、取締役の会社に対する不法行為による損害賠償も含まれます。取締役が会社に対して訴えを提起するとは、取締役による会社に対するすべての訴えの提起を意味します。 ü
株主総会または取締役会による代表者の定め 株主総会は、一般に普通決議によりその訴えについての会社の代表者を定めることができます。 また、取締役が代表者を定める場合は、この点に関する株主総会による定めがない時に限られます。取締役会が代表者を定めた場合であっても、株主総会がそれと異なる定めをすれば、株主総会の定めが優先されることになります。取締役会が代表者を定める決議においては、訴訟の相手方となる取締役は、決議について特別の利害関係を有する者として議決権を行使できません(369条2項)。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数の賛成により成立します。取締役が取締役としての資格において会社法上の訴えを提起する場合も、同じです。
関連条文 取締役の報告義務(357条) 裁判所による株主総会招集等の決定(359条) |