新任担当者のための会社法実務講座
第229条 異議催告手続との関係
 

 

Ø 異議催告手続との関係(229条)

@株券喪失登録者が第220条第1項の請求をした場合には、株券発行会社は、同項の期間の末日が株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過する日前に到来するときに限り、同項の規定による公告をすることができる。

A株券発行会社が第220条第1項の規定による公告をするときは、当該株券発行会社は、当該公告をした日に、当該公告に係る株券についての株券喪失登録を抹消しなければならない。

 

株式会社が株式の譲渡制限の定款変更、株式の併合、取得条項付株式の取得、合併等219条1項各号の行為をする場合には、株主はその効力発生日までに、それぞれ譲渡制限となる株券、併合される株券、取得される株券、合併消滅会社の株券を会社に提出しなければなりません。提出した株主は、株券と引換に金銭等を受け取ります。その際、株券を提出できない株主の保護のため、株主からの請求によって、会社は最低でも3ヵ月の催告期間をおいて、利害関係人が異議ある場合にその期間内に述べる旨を公告し、異議がなかったら、請求した株主に、株券を提出した場合と同じ金銭等を交付することができます(228条)。

株券を喪失した者が株主等である場合、その株主等は株券喪失登録簿への登録申請による株券失効制度の活用も可能です。219条1項各号の行為が効力を生じた日に旧株券は効力を失いますが、金銭等の交付を受ける(219条2項)ための証券として、株券喪失登録簿への登録や旧株券の有効時に登録した登録の継続が認められています。

会社が、219条1項各号の行為を行った時に、旧株券を喪失した株主等が、新株券やそれに代わる金銭等の交付を受けるために、異議催告制度と株券失効制度という2つの制度が用意されています。この新株券等の取得に、異議催告では3ヵ月、株券失効では1年を要するので、株主等が会社の行為の後に、失効制度を選択して喪失登録の申請をすることは、公告の費用負担を考慮すれば別にしても、あまりないのではないかと思われます。

この229条は、異議催告制度と株券失効制度の調整を、すでに有効であった旧株券について株券失効制度によって登録していた株主等が異議催告制度に移行できるかどうかという点で行い(229条1項)、また、異議催告に移行したときの喪失登録の扱いについて規定しています(229条2項)。

ü 株券失効制度と異議催告制度の調整

株券発行会社が、その発行する株式の全部について、譲渡による株式の取得について会社の承認を要する旨の定款変更の決議を行った場合、決議で定めた定款変更の効力が生ずる日でに旧株券を会社に提出すべきことを、その効力が生ずる日の1ヶ月前までに、公告し、かつ、株主等に対して通知する(219条1項)。その際、旧株券は定款変更の効力が生ずる日に無効となります(219条3項)。旧株券を提出した株主等は、譲渡制限の記載のある新株券の交付を受けます(219条2項)。譲渡制限の効力が生じた日以後であっても、株主等は譲渡制限株式の株主ですが、旧株券を提出しない株主等に対しては、会社は新株券の交付を拒むことができます(219条2項)。旧株券を提出できない株主等は、異議催告の公告を会社に請求することができて、会社はそれに応じて、利害関係人に異議があれば3カ月以上の一定期間内に一定期間内に異議を述べることができる旨を公告します。異議催告期間内に異議がなかったときは、会社は異議催告の公告を請求した株主等に新株券を交付することができます。

・株券喪失登録抹消の続行

旧株券が有効であった時、すなわち定款変更の効力発生前に株券喪失登録の請求をしていた株主等は、定款変更の効力発生日、喪失登録日の翌日から起算して1年後に、新株券の交付を受けてもよい。

定款変更の効力発生日後に株券喪失登録の請求をし、1年経過後に新株券をもらうことも可能です。

・異議催告制度の利用

旧株券が有効であった時に、すなわち定款変更の効力発生前に株券喪失登録の請求をしていた株主等は、より早い新株券の取得を望み、異議催告の公告の請求をすることもできます。しかし、株主等の予想は精確には行うことはできません。それは、異議催告をいつ行うのかは、会社が決定するものだからです。会社は、異議催告期間の末日が、株券喪失登録日から1年後、すなわち異議催告によるよりも早く新株券を取得させるとき、に限って異議催告の公告ができるとされています(229条1項)が、この規定は会社が異議催告手続の請求の出揃うのを待った上でまとめて公告を実施するということを承認した上でのことだからです。

ü 異議催告への移行後の株券喪失登録

株券喪失登録されている旧株券について、異議催告手続の公告をする場合、会社は公告をした日に、その公告した株券の喪失登録を抹消します(229条2項)。これ以後は、異議催告制度によることになります。

株券喪失登録が抹消されるので、その喪失登録の効力はなくなり、219条1項各号の行為直前の株式を表章する株券に、名義書換の禁止、旧株券再発行の禁止、、株券喪失登録者が名義人でなかった時の旧株券が表章した株式の株主の議決権行使の禁止、旧株券の競売・売却の禁止が解除されます。

異議催告の請求は、219条1項各号の行為の効力が生じた日以後ということになります。

 

 

関連条文

  第9節.株券

  第1款.総則

株券を発行する旨の定款の定め(214条)

株券の発行(215条)

株券の記載事項(216条)

株券不所持の申出(217条)

株券を発行する旨の定款の定めの廃止(218条)

  第2款.株券の提出

株券の提出に関する公告等(219条)

株券を提出することができない場合(220条)

  第3款.株券喪失登録

株券喪失登録簿(221条)

株券喪失登録簿に関する事務の委託(222条)

株券喪失登録簿の請求(223条)

名義人等に対する通知(224条)

株券を所持する者による抹消の申請(225条)

株券喪失登録者による抹消の申請(226条)

株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合における株券喪失登録の抹消(227条)

株券の無効(228条)

異議催告手続との関係(229条)

株券喪失登録簿の効力(230条)

株券喪失登録簿の備置き及び閲覧等(231条)

株券喪失登録簿に対する通知等(232条)

適用除外(233条)

 

 
「実務初心者の会社法」目次へ戻る