新任担当者のための会社法実務講座 第227条 株券を発行する旨の定めを廃止した場合における株券喪失登録の抹消 |
Ø 株券を発行する旨の定めを廃止した場合における株券喪失登録の抹消(227条) その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をする場合には、株券発行会社は、当該定款の変更の効力が生ずる日に、株券喪失登録(当該株券喪失登録がされた株券に係る株式の名義人が株券喪失登録者であるものに限り、第225条第2項の規定により提出された株券についてのものを除く。)を抹消しなければならない。 株券発行会社は、株券を発行する旨の定款の規定を変更して、会社法の原則の株券を発行しないこととすることができます(218条)。株券廃止の定款変更が効力を生ずる日の以後は株券を発行できなくなりますが、その日に定款変更以前に発行されていた株券(旧株券)は無効となり、株券としての効力を失います。したがって、株券廃止の定款変更が効力を生ずる日の以後は、旧株券を取得した者が株主となることはありません。これに対して、効力発生日より前に旧株券を取得していた者の権利が否定されるわけではありません。ただし、株主名簿の名義書換をしていなければ、会社その他の第三者への対抗はできません(130条1項)。 このようなことから、株券廃止の定款変更が効力を生ずる日の以後は、旧株券について株券喪失登録をする意義はないことになります。したがって、その日以後の旧株券の喪失者の株券喪失登録請求はできないことになります。また、その日以前に旧株券を取得し株式を取得していても、株主名簿の名義書換を終えていなかった者は、その日以前に株券を喪失していても、その日以後は喪失登録を請求することはできません。 ü
株券喪失登録者が株主名簿上の名義人である場合 株券発行会社が株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合に、その定款の効力が生ずる前に、株主名簿の名義人がなした喪失登録を、株券を所持している者が、改正定款の効力発生前に株券を会社に提出して喪失登録の抹消を申請しているものを除き、会社は登録を抹消しなければなりません(227条括弧書)。 ・株券廃止の定款の効力発生日より前に株券提出による株券喪失登録抹消の申請がないとき 株券廃止の定款変更の効力発生日における株主名簿上の株主は、喪失登録者です。 株券廃止の定款変更の効力発生日以後、旧株券はすべて無効となり、株式の譲渡に旧株券は不要となり、株券所持は名義書換の基準ではなくなり、株式上との会社等の第三者への対抗要件である名義書換は取得者と名簿上の株主が共同で請求してはじめて行われます。株券廃止の定款変更の効力発生日前に株券提出による株券喪失登録抹消の申請がないときの、定款変更効力発生日の株主名簿上の株主は、喪失登録者であって、その日以後は、効力発生日以後は、その人の同意がなければ、株主名簿の名義書換は行われません。 したがって、この場合、株券廃止後は、喪失登録制度の目的である株式譲渡の際の株券の役割の回復を達成することはできなくなり、株主名簿上の株主による株券喪失登録を残しておいても無意味となります。会社が株券喪失登録を抹消すれば、株券廃止の定款変更効力発生日の株主名簿上の株主は喪失登録者となることに確定します。 ・株券廃止の定款の効力発生日より前に株券提出による株券喪失登録抹消の申請があったとき 名義人による喪失登録が行われ、株券を提出して登録抹消が申請され、その旨を名義人つまり喪失登録者に通知してから2週間後の日が、定款変更の効力発生日より前だった場合には、喪失登録は抹消され、株券が再発行され、それにより、喪失登録抹消の申請者に株主名簿の名義書換が行われます。 また、名義人が喪失登録者である喪失登録であっても、喪失登録抹消申請のために提出された株券についての喪失登録は抹消されません(227条括弧書後段)。株券廃止の定款変更の効力発生後は、旧株券の喪失登録はできなくなるから、抹消できないのは効力発生日より前に請求された喪失登録です。効力発生後は、喪失登録制度の目的は失われるので、登録抹消申請のないものと同じように、会社が株券喪失登録を抹消して、株券廃止の定款変更効力発生日の株主名簿上の株主は喪失登録者となることに確定させることも可能です。しかし、喪失登録者への通知から2週間すれば抹消されるのは確実であることから、定款変更の効力発生日に抹消するまでもない、ということです。 そして、名義人による喪失登録が行われ、株券を提出して登録抹消が申請され、その旨を名義人つまり喪失登録者に通知してから2週間後の日が、定款変更の効力発生日より後になる場合には、喪失登録の抹消とともに、株主名簿の名義書換を請求することができます。 ü
株券喪失登録者が株主名簿上の名義人でない場合と株券廃止の定款変更 これまで述べられてきた制度の趣旨から、株券廃止の定款変更の効力発生日定めを廃止した場合に、その定款の効力が生ずる前になされた名義人でない喪失登録請求者の株券喪失登録は、その日以後も抹消されずに喪失登録簿に存続する、ということになります。 定款変更の効力発生日以後に、登録の翌日から1年後に、喪失登録を抹消された場合を除き、名義人でない喪失登録者は単独で株主名簿の名義書換を請求できます(133条2項)。 関連条文 第9節.株券 第1款.総則 株券不所持の申出(217条) 株券を発行する旨の定款の定めの廃止(218条)第2款.株券の提出 株券を提出することができない場合(220条) 第3款.株券喪失登録名義人等に対する通知(224条) 株券を所持する者による抹消の申請(225条)株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合における株券喪失登録の抹消(227条) 株券の無効(228条) 異議催告手続との関係(229条) 株券喪失登録簿の効力(230条) 株券喪失登録簿の備置き及び閲覧等(231条) 株券喪失登録簿に対する通知等(232条) 適用除外(233条)
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