原則3−2.
【外部会計監査人】
 

 

 【原則3−2.外部会計監査人】

外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資家に対して責務を負っていることを認識し、適切な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきである。

 

〔形式的説明〕

外部会計監査人(公認会計士または監査法人)は、情報利用者である株主や投資家に対して、監査等を通じて上場会社が開示する情報の信頼性を担保する立場にあります。この原則は基本原則3.の適切な情報開示を手続きの透明性をもって行なうことで、株主や投資家にとって有益な情報開示となるために、情報の信頼性を担保させるものとして適正な監査を確保させるためのものといえます。実際に、何をすべきかについては、補充原則で具体的な施策が列挙されています。他の原則では、一般的な施策の概説が提示され、補充原則では、とくに重点を置くべきものや一般原則の例外として考えられるものが挙げられていますが、この原則に限っては、原則で総論を提示し、具体的な各論を補充原則で提示しています。したがって、コンプライの判断は、補充原則がコンプライであれば、この原則は自動的にコンプライということになると考えられます。

 

〔開示事例〕

大東建託

当社では、監査役会や経理部門等の関連部門と連携し、監査日程や監査体制の確保に努め、外部会計監査人の適正な監査を確保しています。

 

〔外部会計監査人による監査報告書透明化の動き〕

@監査報告書透明化の動き

2016年3月に金融庁は「会計監査の在り方に関する懇談会」を開催し会計監査の品質向上に向けた提言をまとめました。その主な内容は以下の3点です。

a)監査法人のマネジメント強化を目指した「監査法人のガバナンス・コード」の導入→2017年実施

b)会計監査に関する情報の株主等への提供を目指した会計監査に関する開示内容の充実

c)監査法人の独立性の確保を目指した監査法人のローテーション制度についての検討

とくに、上記のうちのb)の開示内容の充実については2015年1月に国際監査・保証基準審議会(IAASB)は国際監査基準(ISA)701として「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な事項のコミュニケーション」を発表しました。この基準では、財務諸表が適正と認められるか否かの監査意見に加え、会計監査人が会計監査を行う上で重要と判断した項目であるKAM及びKAMを記載すると判断した理由や対応等に関する記述が求められました。それらをまとめて監査報告の透明化としてもとめられました。

2015年12月に金融庁のCGコードのフォローアップ会議に対してICGNよりコーポレートガバナンス向上のために望むこととして、監査に関するKAM開示を含む内容の意見書を提出しています。

AKAM(監査上の主要な事項)の導入

KAMとは「監査人が統治責任者にコミュニケーションを行った事項から選択され、当事業年度監査において監査人の職業的専門家としての判断によっても重要であると判断された事項」と定義されています。このKAMの導入によって、コーポレートガバナンスの改善、スチュワードシップ活動の高度化、監査品質の改善を通じた財務報告サプライチェーン全体の品質向上が図れるとしています。

@)KAMの選択プロセス

KAMの選定は、監査人が統治責任者(CEOまたはCFO)とコミュニケーションを行った項目の中から、特に注意を払った事項(ステップ1)、監査において最も重要な事項(ステップ2)を考慮して決定します。各ステップの内容としては以下の通り。

ステップ1:特に注意を払った事項

・特別な検討を必要とするリスク又は重要な虚偽表示リスクが高いと評価された領域

・重要な経営者の判断を伴う領域(例えば、複雑な会計上の見積り)に関連する重要な監査人の判断

・重要な事象又は取引が監査に与える影響

ステップ2:監査において最も重要な事項

・統治責任者とのコミュニケーションの内容及び程度

・想定される財務諸表の利用者が財務諸表を理解する上での重要性

・対応するために必要な監査作業の内容及び範囲

・関連する会計方針の内容、複雑性または主観性

・不正又は誤謬による、修正済みの虚偽表示及び集計された未修正の虚偽表示の性質及び金額的又は質的な重要性(該当する場合)

・当該事項に関連して識別された内部統制の不備の程度(該当する場合)

・監査手続の適用、手続の結果の評価、及び適合性と証明力のある証拠の入手の際に伴う困難の内容及び程度

A)KAMの記載事項

KAMの記載事項として、以下の事項について簡潔かつバランスのとれた説明の提供を意図して記載することとされています。

KAM関連の記載内容:KAM選定の理由、監査上の対応

(@)財務諸表に関連する開示の場合は関連する開示情報への参照が常に含まれること

(A)KAMが監査においても重要な事項である理由

(B)当該事項に対する監査上の対応

このうちKAMの記述だけでなく、KAM選定の理由及び監査上の対応に関する情報は重要となります。監査上の対応に関しては、監査人の対応又はアプローチの特徴、実施した手続の簡潔な説明、監査人の手続の結果を示す記述、当該事項に関する主要な所見が記載することとされています。

すでに国際監査基準(ISA)701が導入されている英国で、監査報告書においてKAMとして実際に上げられた項目は、主につぎのようなものです。のれんの減損リスク、保有資産の減損リスク、収益認識の不正リスク

また、監査に関する深い知識を必ずしも有していない財務諸表利用者も理解できるよう、決まり文句的な表現は避けて、各社特有の表現が望ましいとされています。

 

 

関連するコード        *       

基本原則3.

補充原則3−2.@

補充原則3−2.A

原則4−4.

原則4−5.

 
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