補充原則3−2.@
 

 

 【補充原則3−2.@】

監査役会は、少なくとも下記の対応を行うべきである。

(@)外部会計監査人候補を適切に選定し外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定

(A)外部会計監査人に求められる独立性と専門性を有しているか否かについての確認

 

〔形式的説明〕

@この補助原則が求めていること

この原則はOECDコーポレート・ガバナンス原則XC「財務諸表が会社の財務状況及び経営成績をすべての重要な観点において適切に示しているとの、外部からの客観的な保証を取締役会及び株主に提供するために、年次監査は、独立の能力・資格を備えた監査人によって実施されるべきである」を参考にして規定されたものです。したがって、外部会計監査人が、上場企業の開示する情報の信頼性について責任を負っていることを踏まえて、その監査の適正性を確保するために、その外部会計監査人の選解任のプロセスに客観性を求めているものです。なお、平成26年の会社法改正によって、会計監査人の選解任は監査役会が決定することとなったため、この補充原則は監査役会に対するものとなっています。

補充原則で示されている2つの事項について、見ていきたいと思います。

(@)会社法の改正によって、会計監査人選解任は監査役会が決定することとなったことに伴い、定時株主総会の事業報告の記載事項である「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」は監査役会が、それに準拠するものとなります。また、ここで、ここで求められている「外部会計監査人を適切に評価するための基準」は、この「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」と重複するところが多いと考えられます。両方とも、会計監査人選解任プロセスの客観性を確保するという目的で共通しているからです。なお、監査役会が会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定を行う場合の対応については、日本監査役協会が指針を公表しており、選任候補者の概要、欠格自由の有無、内部管理体制、監査報酬の水準、独立性に関する事項等職務遂行に関する事項等について、経営執行部門から十分な報告を受けるとともに、経営執行部門において適切な検討プロセスを経ているか確認すべきものとしています。

いずれにせよ、この補充原則では基準の策定を求めているため、基準を策定していなければ、コンプライとならず、エクスプレインが必要となるわけです。

(A)外部会計監査人の独立性、専門性を確認するというもので、確認方法は合理的と考えられる方法を選択することになります。この補充原則においては、いかなる場合に解任または解任・不再任議案の提出を行うかについての方針のみならず、その判断の前提となる評価に当たっての考慮要素等を記載することも考えられます。

こちらは(@)とは違って基準の策定を求めているのではなく、会計監査人の独立性の確認をすることをもとめています。そのための確認の基準が策定されているかは問われていません。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

@評価基準を策定する─公表されている参考基準

評価基準の策定が求められるわけで、既に評価基準が作成してある会社はコンプライでいいのですが、そうでない会社は、評価基準を作成しなければなりません。とはいえ、外部会計監査人に対する評価基準の開示義務はなく、いろいろと探しても、開示されているケースはないので、悩ましいというのが現状ではないかとおもいます。参考にできるものとしては、日本監査役協会が「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を発表しましたので、それが唯一と言っていいかもしれません。

以下で、簡単に評価項目と、それについての留意点を列挙してみますが、それを会社の実情に合わせて、適宜項目の追加又は削除をしていって、基準の骨格をつくって、あとは運用しながら洗練させていく、ということになるのでしょうか。

 

第1 監査法人の品質管理

1−1 監査法人の品質管理に問題はないか。

@品質管理に関する責任

監査法人は、監査業務の品質を重視する風土を監査法人内に醸成できるように、適切な方針及び手続を定めているか。

・方法及び手続においては、理事長になどの監査法人における最高経営責任者又は理事会が、監査法人の品質管理のシステムに関する最終的な責任を負っていることが明確にされているか。

A職業倫理及び独立性

・ 監査法人は、職業倫理の遵守に関する方針及び手続を定め、以下の事項を含めて、それらの方針及び手続が遵守されていることを確かめているか。

・監査法人は、独立性が適切に保持されるための方針及び手続を定め、以下の事項を含めて、それらの方針及び手続が遵守されていることを確かめているか。

・監査法人は、独立性に違反した場合の報告及びこれに対する適切な対応に関する方針及び手続をさだめているか。

・監査法人は、監査業務の主要な担当者の長期間の関与に関して、以下の事項に係る方針及び手続を定めているか。

.監査業務の主要な担当者が長期間に亘って継続して同一の監査業務に従事している場合、独立性を阻害する馴れ合いを許容可能な水準に軽減するためのセーフガードの必要性を決定する規準を作成すること

.監査実施の責任者、審査担当者及びローテーションの対象となるその他の者に対して職業倫理に関する規定で定める一定期間のローテーションを義務付けること。

・会社から非監査証明業務を受嘱している場合、受嘱業務やその報酬額が独立性を阻害するおそれがないか。

B監査契約の新規の締結及び更新

・ 監査法人は、監査契約の新規の締結及び変更の判断に関する方針及び手続を定め、監査法人の規模及び組織、当該監査業務に適した能力及び経験を有する監査実施者の確保の状況、並びに、以下の場合を含め、監査契約の新規の締結及び更新の判断に重要な影響を及ぼす事項等を勘案し、適切な監査業務を実施することができるか。

C監査実施者の採用、教育・訓練、評価及び選任

・監査法人は、監査実施者の採用、教育・訓練、評価及び選任に関する方針及び手続を定め、監査業務を実施するために必要な能力、経験及び求められる職業倫理を備えた監査実施者を確保しているか。

・監査法人は、監査実施者の選任と構成に関する方針及び手月を定め、企業事業内容等に応じた適切な監査を実施するための能力、経験及び独立性を有するとともに、監査業務に十分な時間を確保できる監査実施者を選任しているか。

D業務の実施

・監査法人は、監査業務の実施に関する品質管理の方針及び手続を定め、監査に必要な情報及び技法を蓄積し、監査実施者に適時かつ的確に情報を伝達するとともに、適切な指示及び指導を行う体制を整備し、監査業務の品質が合理的に確保されるようにしているか。

・監査法人は、監査法人内外の適切な者から専門的な見解を得るための方針及び手続を定め、監査実施の責任者がそれらを遵守していることを確かめているか。

・監査法人は、監査実施者間又は監査実施の責任者と監査業務に係る審査担当者等との間の判断の相違を解決するために必要な方針及び手続を定め、それらの方針及び手続に従って監査実施の責任者が判断の相違を適切に解決していることを確かめているか。

・監査法人は、監査業務に係る審査に関する方針及び手続を定め、企業の状況などに応じて審査の範囲、担当者、時期等を考慮し、監査手続、監査上の判断及び監査意見の形成について、適切な審査が行われていることを確かめているか。

・監査法人は、監査業務に係る審査の担当者として、十分な知識、経験、能力及び当該監査業務に対する客観性を有する者を選任しているか。

E品質管理システムの監視

・監査法人は、品質管理のシステムに関する日常的監視及び監査業務の定期的な検証を含む品質管理のシステムの監視に関する方針及び手続を定め、それらが遵守されていることを確かめているか。

・監査法人は、品質管理のシステムの日常的監視及び監査業務の定期的な検証によって発見された不備及びこれに対して改善すべき事項が、品質管理のシステムの整備に及び運用に関する責任者並びに監査実施の責任者に伝えられ、必要な措置が講じられていることを確かめているか。

・監査法人は、監査業務に係る監査実施者の不適切な行為、判断並びに意見表明、関連する法令に対する違反及び監査法人の定める品質管理システムへの抵触等に関して、監査法人内外からもたらされる情報に対処するための方針及び手続を定め、それらが遵守されていることを確かめているか。

1−2 監査法人から、日本公認会計士協会による品質管理レビュー結果及び公認会計士・監査審査会による検査結果を聴取した結果、問題はないか。

・品質管理レビューにおける改善勧告事項又は検査による指摘事項がある場合は既に改善済みか、若しくは根本的な原因に基づく適切な改善計画が策定されているか。

第2 監査チーム

2−1 監査チームは独立性を保持しているか。

1 監査チームは、関連法令、監査の基準及び監査法人の品質管理手続を遵守しているか。

2 監査チームの担当者が会社と長期又は密接な関係を有する場合に、会社の利益に過度にとらわれるという馴れ合いが生じていないか。

3 監査チームの職業倫理及び独立性に関する適切な研修を受ける時間が確保されているか。例えば監査チームの各メンバーの職業的専門家としての倫理、独立性等に関する研修の受講状況等。

2−2 監査チームは職業的専門家として晴雨名注意を払い、懐疑心を保持・発揮しているか。

1 監査チームは、会社の監査を実施するために必要かつ適切な水準で専門的な知識と技能を習得し、維持しているか。

2 監査チームは、注意深く、適時に会社の求める項目を含む専門業務を提供しているか。

3 監査チームは、適用される職業的専門家としての基準(例えば監査基準等)を遵守しているか。

4 監査チームは、虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、経営者の主張を批判的に評価する姿勢を有しているか。

5 監査チームは、監査の実施過程で入手した情報と説明を批判的に評価しているか。

6 監査チームは、財務諸表の虚偽表示につながる可能性がある経営者の動機を理解しようと努めているか。

7 監査チームは、先入観を持っていないか。

8 監査チームは、監査の全過程を通じて、職業的懐疑心を保持・発揮しているか。

9 監査チームのメンバーは、他のメンバーの判断を批判的に検討しているか。

10 監査チームのメンバーは、経営者の説明を批判的な態度で検討し、結論を出すまで事象を調査する粘り強さを持っているか。

11 監査チームのメンバーは、入手した他の証拠との不整合や、文書や質問への回答の信頼性に疑問を抱かせるような証拠に注意しているか。

2−3 監査チームは会社の事業内容を理解した適切なメンバーにより構成され、リスクを勘案した監査計画を策定し、実施しているか。

1 監査チームは、全体として、必要な能力を有しているか。

2 監査チームは、会社の事業を理解しているか。

3 監査チームは、合理的な判断を行っているか。

4 監査実施の責任者は、リスク評価、リスク対応手続の立案、監査業務の監督及び査閲に積極的に関与しているか。

5 監査チームのメンバーが実施している詳細な監査手続は、監査チームの上位メンバーにより適切に指揮、監督及び査閲されているか。また、監査チームのメンバーは、短期かつ頻繁に入れ替わることなく、合理的な範囲で継続して従事しているか。

6 監査実施の責任者及び監査チームのメンバーは、効果的な監査を実施するのに必要な時間が割り当てられているか。

7 監査チームは、会社の経営環境や業界を取り巻く経済環境を踏まえたリスク分析を実施しているか。また、認識しているリスクに前回分析からの変更点はないか。

8 監査チームは、リスク分析を踏まえた監査計画を策定しているか。のた前期からの変更点は何か。

9 監査チームは、経営者や内部監査部門等とのコミュニケーションを踏まえ、関連する監査の方法についても意見交換し、監査計画に適切に反映させているか。

10 監査チームは、期中における経済環境や経営環境の変化に対応して、監査計画を適切に修正しているか。

第2 監査報酬等

3−1 監査報酬(報酬単価及び監査時間を含む、以下同じ。)の水準及び非監査報酬がある場合はその内容・水準は適切か。

1 監査報酬、会社の規模、複雑性、リスクに照らして合理的であるか。

2 例えば監査内容の変更等(実施範囲及び時期、手続の変更等)により監査報酬を増減する場合は、その理由について監査役等に説明があるか、また、その理由は合理的か。

3 監査報酬の前期からの変動額及び変動割合、監査実施の責任者及び監査チームのメンバーのチャージ時間の前期からの変動時間及び変動割合は、合理的か。

4 前年度の計画と実績の乖離内容の分析を踏まえた監査時間、報酬単価になっているか。

5 監査役は、非監査証明業務の受嘱に関する方針及び手続について、会計監査人から説明を受けたか。なお、非監査報酬の額によっては、会計監査人の独立性を阻害するおそれのあることに留意する。

6 監査役等は、報酬依存度に関する具体的な判断基準及びセーフガードについて、説明を受けたか。

3−2 監査の有効性と効率性に配慮されているか。

1 監査チーム内において会社から入手した情報の共有に問題はないか。

2 合意したスケジュールと報告期限は遵守されているか。

3 監査の実施過程で識別した課題を解消するため、経営者や内部監査部門等と適時な打合せが行われているか。

4 効果的かつ効率的な監査を実施するために、会社と監査の進め方について調整しているか。

5 監査チームは、ITを適切に活用しているか。

第4 監査役とのコミュニケーション

4−1 監査実施の責任者及び現場責任者は監査役等と有効なコミュニケーションを行っているか。

1 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に、近年の会計・監査の一般的動向と、それが会社に与える影響について情報を提供しているか。

2 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に、例えば経営者は重要な虚偽表示のない計算書類を作成するための内部統制を整備及び運用しているか、会計監査において制限のない質問や面談の機会が提供されているか、監査役等は有効な監視機能を使い果たしているか等、会社の会計監査対応や会計業務執行能力に対する評価について情報を提供しているか。

3 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に、以下の項目について情報を手依拠しているか。

・会社が採用している会計方針や会計上の見積もり(固定資産の減損、繰越税金資産の回収可能性、貸倒引当金など)の合理性

・事業計画等の将来予測の合理性

・確認状の発送と回答額との間に差異が発生した場合の監査手続

・関連当事者との取引に係る監査手続

不正が発生しやすい領域、形態とそれに対応する監査手続

・関連当事者との取引に係る監査手続

・不正が発生しやすい領域、形態とそれに対応する監査手続

・会社が実施する内部統制評価に係る監査手続

・特に期中で議論となった、会計処理等の事項や見解の相違に差異が生じた事項

4 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に、特別な検討を必要とするリスクと当該リスクに対応する監査手続について情報を提供しているか。

5 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に、専門家(IT専門家、年金数理人、不動産鑑定士など)の利用状況と、その業務が適切であることの評価方法について情報を提供しているか。

6 会計監査人は、内部監査部門から入手した、被監査会社の事業経営及び事業上のリスクに関する情報を、会計監査人の実施するリスク評価に役立てているか。

4−2 監査役等からの質問や相談事項に対する回答は適時かつ適切か。

1 監査役等からの専門的な見解の問い合わせに関する方針及び手続が整えられているか。

2 監査実施の責任者及び現場責任者は、監査役等に対し適切なタイミングで質問や相談事項への適切な回答を伝えているか。

第5 経営者等との関係

5−1 監査実施の責任者及び現場責任者は経営者や内部監査部門等と有効なコミュニケーションを行っているか。

1 経営者と監査チーム間で重要な見解の相違はなかったか。仮に相違があった場合、適時、適切に調整されたか。

2 監査実施の責任者及び現場責任者から経営者や内部監査部門等に対して、以下の情報が適時、適切に提供されているか。

・会社の財務報告実務に関する改善の可能性

・財務報告に係る内部統制の改善の可能性

・財務報告、会計基準に関する動向

・業界に関する視点

・会社の法令遵守に関連する事項 等

3 監査チームが問題点の指摘などにおいて、経営者をはじめとした会社側の以降に影響されることなく、自己の見解を経営者に明確に伝えているか(例えば、継続企業の前提や後発事象の開示について明確な見解を保持しているか、繰延税金資産の回収可能性、減損会計のグルーピング、貸倒引当金の計上など、見積りや判断を必要とする会計事項について経営者に追従していないかなど)。

第6 グループ監査

6−1 海外のネットワーク・ファームの監査人若しくはその他の監査人がいる場合、特に海外における不正リスクが増大していることに鑑み、十分なコミュニケーションが取られているか。

1 会計監査人は、グループ全体の環境を理解し、量的重要性に加え質的重要性も勘案し、重要な虚偽表示リスクを適切に評価しているか。

2 会計監査人は、他の監査人の監査を適切に評価し、監査の品質に関する懸念事項の有無について把握しているか。

3 会計監査人と他の監査人との意思疎通に問題はないか。

4 会計監査人は、他の監査人が実施する監査の概要を理解し、適切なインストラクションを発信しているか。また、他の監査人との意思疎通や情報共有を十分に図っているか。

5 監査役等が求める他の監査人に係る情報及び評価(自社グループの監査に必要な能力を備えているか等)について、会計監査人から適宜提供されているか。

6 会計監査人が把握した、グループ会社の経営者かや従業員による不正又は不正の疑いに関する情報が監査役等に提供されているか。

第7 不正リスク

7−1 監査法人の品質管理体制において不正リスクに十分な配慮がなされているか。

1 不正リスクへの対応を徹底するための職員教育が行われているか(例えば、不正事例に関する知識を習得し、能力を開発できる機会が提供されているか)。

2 監査実施者の業務の監督及び査閲に関する方針及び手続に不正リスクへの対応が適切に扱われているか。

3 不正の兆候の解明等に必要となる専門家の見解の見付けのための手続゛定められているか。

4 不正リスクに関連して寄せられた情報を受け付け、関連する監査チームに適時に伝達するための体制並びに監査チームの検討内容を監査法人内で検証する体制が構築されているか。

7−2 監査チームは監査計画書画定に際し、会社の事業内容や管理体制等を勘案して不正リスクを適切に評価し、当該監査計画が適切に実行されているか。

1 監査チームは、監査計画策定に際し、会社の事業内容や管理体制を勘案して、不正リスクについて十分な分析を行っているか。

2 監査チームは、会社の規模・業容を勘案して不正リスク要因を分析し、当該不正リスク要因を踏まえた監査計画を策定し、監査を実施しているか。

3 監査チームは、期中における経済環境や経営環境の変化等による不正リスク要因の変化に敏感に対応して、監査計画を適切に修正しているか。

4 監査チームは。監査役等及び経営者等の会社関係者と不正リスク要因の分析に必要な情報の交換を適切に行っているか。

5 監査チームは、不正の兆候と判断される事項を発見した場合に、速やかに監査役等とその対応について協議が行えるよう、期中を通じて監査役等との連携を密にし、双方の認識するリスクについて、随時共有を図っているか。

6 監査チームは、不正リスクに常に留意し、監査の全過程を通じて、職業的懐疑心を保持・発揮しているか。

7−3 不正の兆候に対する対応が適切に行われているか。

1 監査チームは、不正の兆候と判断される事項を見逃すことなく、適切に監査役等に報告しているか。

2 監査チームは、不正の兆候と判断される事項を発見した場合に、品質管理体制で定める手続に従い対応しているか。

3 監査法人が監査を行っている他社において監査法人の品質管理体制に疑義が生じるような不正事例が発覚した場合に、その取り扱い等につき、監査チーム及び監査法人は、監査役等に情報を提供し、意見交換を行っているか。

A自社で評価基準をつくる

上記の評価基準をそのまま自社の基準として用いるには、あまりにも詳細で負担が大きいもの考えるところも多いのではないでしょうか。実務では、効率化させたいということで、このエッセンスをもっとコンパクトにまとめたものを作っているところが多いと思います。

まず、会計監査人職務の評価と議案とするか(不再任の提案)検討のプロセスとして、次のような流れが考えられます。

(1)会計監査人の会計監査実績のまとめ(会社によっては(@)(A)を分けなくてもよい)

(@)監査役または監査役会が実施した会計監査活動を整理

会計監査人からの報告聴取や現場立会いなどの実績、監査役会と会計監査人のディスカッション結果などの確認

(A)会計監査人の会計監査活動を把握

CFO、財務経理部門・内部監査部門責任者等から、会計監査の実績報告、常勤監査役が会計監査人作成の監査実績報告を直接聴取

(2)会計監査人の再任に関する情報収集・分析((1)と重複する場合もあるので適宜省略)

(@)経営執行部門から会計監査人選解任に関する意見聴取

適切な監査の実施状況などの意見聴取と協議

(A)会計監査人から以下の事項に関する聴取

会計監査人が経営執行部門と協議した重要な事項、会計監査人の独立性に関する事項、その他職務の遂行に関する事項、会計監査人の監査体制・ローテーション等

以上のプロセスで会計監査人の再任等の判断をすることになりますが、その際の評価基準として、上記の日本監査役協会の基準をコンパクトにまとめてみた例として、下のようなものが考えられます。

(1)コミュニケーション

年間を通じて、適時・適切に監査役とのコミュニケーションを行っているか。

CEO、CFO、内部監査人等とのコミュニケーションは十分か。

(2)解任事由・欠格事由

監査法人または業務執行社員は、会社法に基づく解任事由または欠格事由に該当しないか。

(3)品質管理システム

監査法人の品質管理システムは、適切な監査の確保に向けて適切な対応を行うことができる体制となっているか。

(4)独立性

監査法人及び監査チームは、公認会計士法等で求められる独立性を保持しているか。

(5)外部レビュー解任事由・欠格事由

外部レビュー(公認会計士・監査審査会検査、日本公認会計士協会品質管理レビュー)等における指摘内容に対し適切な対応が実施されているか。または確実に実施される見込みか。

(6)監査計画

業界及び会社の環境に則した監査計画を策定しているか。

必要な監査手続を実施する十分な監査時間を計画しているか。

経営者等と協議した重要な事項について監査役に説明することとしているか。

監査計画策定にあたり、監査役からの要望等を反映しているか。

(7)監査チーム

監査チームの編成は監査計画に照らし適切か。

業務執行社員の交代に関する方針、交代した場合の経緯や引継ぎ状況について説明があるか。

(8)結果報告

監査計画の実施状況とその結果について、十分な説明があるか。

監査意見に影響を与える(懸念のある)重要な事項について、適時に説明はあるか。

内部統制の重要な不備の有無と財務諸表に与える影響、当該不備に対する経営者の見解等の説明はあるか。

監査チームが発見した不正した及び不正の疑い、違法行為及び違法行為の疑いについて、適時に報告があるか。

監査時間の計画と実績の差及びその主たる要因について、説明があるか。

 

〔Explainの開示事例〕

資生堂

当社の監査役会では、会計監査人による適正な監査の確保のために、従来より会計監査人の行う監査が適正なものであるかどうかを監査するとともに、現任の会計監査人について適正な監査の実施の観点から問題がないか、また、監査の適正性をより高めるために会計監査人の変更が妥当であるかどうかなどを判断していますが、これらの判断基準については必ずしも全てが明文化されてはいませんでした。

 2016年3月に開催予定の第116回定時株主総会より、会計監査人の解任または不再任に関する議案の決定の際に会計監査人の独立性および専門性について新たな基準に照らして確認を実施するために、2015年11月末をめどに、監査役会において会計監査人候補の選定の際の評価基準を策定します。

 

大東建託

(1)外部会計監査人の監査実施状況や監査報告等を通じ、職務の実施状況の把握・評価を行っていますが、外部会計監査人候補の評価に関する明確な基準は策定していません。

今後、外部団体のガイドラインを参照するなどして、監査役会にて協議・決定する予定です。

(2)外部会計監査人との意見交換や監査実施状況等を通じて、独立性と専門性の有無について確認を行っています。

なお、現在の当社外部会計監査人である有限責任監査法人トーマツは、独立性・専門性ともに問題はないものと認識しています。


関連するコード        *       

基本原則3.

原則3−2.

補充原則3−2.A

原則4−4

補充原則4−4.@

 
コーポレートガバナンス・コード目次へ戻る