新任担当者のための会社法実務講座
第359条裁判所による株主総会招集の決定
 

  

Ø 裁判所による株主総会招集の決定(359条)

@裁判所は、前条第5項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、取締役に対し、次に掲げる措置の全部又は一部を命じなければならない。

一 一定の期間内に株主総会を招集すること。

二 前条第5項の調査の結果を株主に通知すること。

A裁判所が前項第1号に掲げる措置を命じた場合には、取締役は、前条第5項の報告の内容を同号の株主総会において開示しなければならない。

B前項に規定する場合には、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)は、前条第5項の報告の内容を調査し、その結果を第1項第1号の株主総会に報告しなければならない。

 

少数株主の申立てにより裁判所が選任した検査役が、会社の業務および財産の状況について必要な調査を行い、その結果を裁判所に書面(または電磁的記録)により報告し(358条5項)、かつ会社及び検査役の選任の申立てをした株主に対しその書面の写し等を提供しなければなりません(358条7項、会社法施行規則229条5号)。裁判所は検査役の報告を受け、必要があると認めるときは、職権により、取締役に対して、@一定期間内に株主総会を招集すること、またA検査役の調査の結果を株主全員に通知することを命ずることができます(359条1項)。この@の措置が命じられた場合には、取締役は、検査役の報告の内容をその株主総会において開示し、かつ、取締役がその報告の内容を調査した結果を株主総会に報告しなければなりません(359条2項、3項)。これらの命令は、裁判所の職権により裁判(決定)をもってなされます(非訟事件手続法171条)。取締役はこの決定に対して通常抗告により不服申立てをすることができます(非訟事件手続法201条)。

裁判所が株主総会招集命令をした場合には、取締役は、取締役会設置会社の場合でも取締役会決議を必要とすることなく、裁判所の定めた期間内に株主総会を招集しなければなりません。株主総会においては、取締役は検査薬の調査結果に関する報告の内容を開示し(359条2項)、かつ、取締役及び監査役はその報告を調査した結果を報告しなければなりません(359条3項)。一方、裁判所が調査結果通知命令を出した場合には、取締役は、遅滞なく株主名簿に記載または記録されたすべての株主の住所に宛てて検査薬の調査結果に関する報告の内容を通知しなければなりません(126条1項)。株主総会の招集及び株主に対する通知はいずれも会社の行為ですから、そのための費用は当然に会社が負担します。検査役による会社の業務及び財産の状況に関する調査の結果が株主に開示されたことにより、会社において自治的に適切な善後処置がとられることを会社法は期待しています。例えば、株主が取締役等の責任を追及するための代表訴訟を提起し(847条)、取締役等の違法行為の差止を請求し(360条422条)、また取締役等の解任決議のため株主総会の招集を請求する(297条)など、各種の行動が考えられます。

取締役が裁判所の命令に違反して株主総会を招集しなかったとき、また株主総会において検査役の調査結果に関する報告の内容を開示しなかったときには、過料に処せられます(976条)。調査結果通知命令に違反した場合も同様です。

関連条文

業務の執行(348条) 

株式会社の代表(349条) 

代表者の行為についての損害賠償責任(350条) 

代表取締役に欠員を生じた場合の措置(351条)

取締役の職務を代行する者の権限(352条) 

株式会社と取締役との間の訴えに置ける会社の代表(353条) 

表見代表取締役(354条) 

忠実義務(355条)

競業及び利益相反取引の制限(356条)

取締役の報告義務(357条) 

業務の執行に関する検査役の選任(358条)

株主による取締役の行為の差止(360条)

取締役の報酬等(361条)

 

 
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