新任担当者のための会社法実務講座 第182条 効力の発生 |
Ø 効力の発生(182条) @株主は、効力発生日に、その日の前日に有する株式(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式。以下この項において同じ。)の数に同条第二項第一号の割合を乗じて得た数の株式の株主となる。 A株式の併合をした株式会社は、効力発生日に、第百八十条第二項第四号に掲げる事項についての定めに従い、当該事項に係る定款の変更をしたものとみなす。 株主総会の株式併合決議によって定められた株式併合の効力発生日に、株式併合の効力が生じます(182条)。つまり、株主は、効力発生日の前日において有する併合株式数の数に株主総会株式併合決議によって定められた株式併合の割合を乗じた数の株式および端数を、株式併合効力発生日に有することになります。端数は金銭交付によって処理されます(235条)。 株券提出手続(219条1項2号)が必要となる株券発行会社でも、株券提出手続の影響を受けずに、株式併合決議によって定められた株式併合の効力発生日に併合の効力が生じます。株券発行会社は、株式併合の効力発生日以降遅滞なく、併合した株式の株券を発行しなければなりません(215条2項)。 なお、株式質権者には、株式併合によって株主が受けるべき株式・金銭について物上代位の効力が認められます(151条4号)。さらに、登録株式質権者は、会社から直接、併合された株式の株券の引渡しを受け、端数処理の金銭を受領します(154条)。 ü
株式名簿の書換え 株式併合の効力発生日に、会社はも併合株式に関して、その株式の株主の株主名簿上の登録株式数を併合後の株式数(効力発生日の前日において株主が有した併合対象株式の数に株主総会併合決議によって定められた株式併合の割合を乗じた数)に書き換えなければなりません(132条2項)。株式を併合した会社は、登録株式質権者(149条1項)に関しても併合した株式についてその質権者として株主名簿に登録しなければなりません(152条2項)。振替株式の場合には132条2項や152条の適用が排除され、次のように取り扱われます。 振替株式に関しては、振替機関および口座管理機関は、株式併合の効力発生日の2週間前までになされなければならない発行会社の通知に基づいて、併合日に口座上の登録株式数を減少しなければなりません。そして、振替機関からの総株主通知に基づき、発行会社は併合株式に関して株主名簿の登録株式数を減少することになります。振替株式に質権が設定されている場合には質権者の口座における質権欄に振替株式が登録されます。株式併合のときには、質権者の口座の質権欄に株主として登録されている者が総株主通知に際して発行会社に通知されます。そこで、質権者からの申出があれば、振替機関は、質権者の氏名・住所・振替株式の銘柄等を総株主通知において示さなければならず、これに基づいて発行会社は株主名簿に質権者を登録することになります。 ü
自己株式 株式無償割当ての場合(186条2項)のような自己株式を除外する規定が、株式併合に関しては定められていません。したがって、株式併合の対策となる種類の株式であれば自己株式についても併合の効力が生じます。 ただし、自己株式に資産性はなく、消却もできます(178条)。また、自己株式を株式併合の対象にしなくても、それによって株主が損害を被るわけではありません。したがって、原則として自己株式も株式併合の対象となりますが、会社は自己株式を株式併合の対象から除外する旨を定めることができると考えられます。 ü
株式併合と発行可能株式総数 株式併合の効力が生じると、併合割合に応じて株式数が減少するので、発行済株式総数が減少することになります。発行済株式総数は登記事項であり(911条2項9号)、その減少の変更登記が必要です(915条1項)。 一方、定款に定められた発行可能株式総数の変更には原則として定款変更の株主総会特別決議が必要となります(406条、309条2項)。そして、この点では、株式併合について特則は設けられていないので、定款で定められた発行可能株式総数が株主併合の効力として減少することはないと考えられます。 このように考えた結果、株式の併合によって、発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を超えることになってしまうケースもでてきます。公開会社の場合、定款変更によって発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えてはいけない(113条3項)。定款で定めた発行可能株式総数には既存株主の持株比率低下の限界を定めるという働きがあります。この4倍規制は、公開会社に対して持株比率低下の限界を定款上4分の1まで限界づけているものです。 この4倍規制は、条文の文言の通り、定款変更によって発行可能株式総数を増加する場合のみの規制であり、株式併合によって発行済株式総数が減少する場合には及ばないと解されています。 関連条文 第1款.株式の併合 効力の発生(182条) 第2款.株式の分割 第3款.株式無償割当て 株式無償割当て(185条) 株式無償割当てに関する事項の決定(186条) 株式無償割当ての効力の発生等(187条) |