新任担当者のための会社法実務講座
第183条 株式の分割
 

 

Ø 株式の分割(183条)

@株式会社は、株式の分割をすることができる。

A株式会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 株式の分割により増加する株式の総数の株式の分割前の発行済株式(種類株式発行会社にあっては、第三号の種類の発行済株式)の総数に対する割合及び当該株式の分割に係る基準日

二 株式の分割がその効力を生ずる日

三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類

 

株式の分割とは、たとえば、1株を10株とし、あるいは2株を3株とするというように株式を細分化することです。それは、端株にも当然効力を及ぼし、1株を10株に分割したときは、それまでの10分の1の端株は1株になり、100分の1の端株は10分の1の端株になります。株式の分割をしても、会社財産は増加せず、発行済株式総数が増加するだけであり、したがって1株の価値は小さくなります。しかし、各株主は、その増加した数の株式を自己の持株数に応じて与えられるから、株主の会社に対して有する割合的地位には変わりがありません。株式の併合が1株の単位を引き上げるものであるのに対して、株式の分割は1株の単位を引き下げるものです。株価の高い会社が、1株の市場価格を下げて投資家が購入しやすいようにし(市場性を高める)、あるいは1株当たりの利益配当の額を減ずるようにする等の目的のために用いられています。また、合併の準備工作として行われることもあります。

ü 株式分割権限

株式分割は、株式併合とは逆に株主の持株数が分割割合に応じて比例的に増加するので、株式分割によっても株主の地位にし、実質的な変動はありません。そこで、株主の持株数に関する行為なので、原則として株主総会決議が必要となります。しかし、取締役会設置会社では、取締役会で決議することにより行うことができる(183条2項)。指名委員会等設置会社では、取締役会は株式分割の決定を執行役に委任することができます(416条4項)。

原則としては、株式の分割は株主の地位に関する事項であるので、株主総会の権限事項と言えます。しかし、会社法が、株式分割の決定は取締役会設置会社では取締役会の権限としているのは、株式分割によって株主の地位に実質的な変化が起こるわけではないからで、一方で、株式分割を機動的に行うことができるように図ってのことです。したがって、取締役会設置会社でも、定款で株式分割を株主総会の決議事項とすることもできます(295条2項)。

ü 株式分割事項

会社が株式を分割するためには、その都度、株主総会決議(取締役会設置会社は取締役会決議)によって、次の事項を定めなければなりません(183条2項)。すなわち、株式分割の割合、株式分割の基準日(割当日)、株式分割の効力発生日(分割日)、そいて、種類株式発行会社の場合は分割する株式の種類です。

なお、剰余金の額を減少して資本金の額を増加したし上で、株式を分割する場合を、実務上、株式配当と呼ぶことがあります。とはいえ、株式配当という法定の会社行為があるわけではなく、剰余金の資本金への組み入れと株式分割を連続して行う場合にすぎません。

・株式分割の割合

株式分割の割合とは、分割する各種類の株式についての、分割によって増加する株式総数の分割前の発行済株式総数に対する割合です。例えば、10株を11株に分割する場合、分割の割合は10分の1になります。もっとも、株主総会決議では、「10株を11株に分割する」と参考書類などに記載されます。

株式の分割によって発行済株式総数が増加します。この増加した発行済株式総数も定款に定められた発行可能株式総数以内でなければなりません。したがって、分割の割合はこの限度で制約を受けています。この点については、184条2項に特則が規定されています。

なお、株式の時価総額を増大させるために、1株を100株に分けるような非常に大きな割合の株式分割を栗木返す方法を用いる事例もでてきました。株式流通市場の健全性保護、投資家保護の観点から問題がないとは言えません。東京証券取引所は、上場会社に対してその株式分割によって流通市場に混乱をもたらすことのないように努める義務を課しています。さらに、上場株式の株式分割が流通市場に混乱をもたらすおそれのある場合の公表措置を定めています。

・株式分割に係る基準日と株式分割の効力発生日

株式分割の基準日と効力発生日は区別されています。基準日での株主とその持株数を確定し、各株主に割り当てる株式数を確定するという作業はーに要する日数を考慮して効力発生日を定めることができます。効力発生日は、基準日から3カ月以内の日でなければなりません(124条2項)もちろん、株式分割の基準日と効力発生日を同一の日とすることも可能です。

その日における株主名簿上の株主が株式分割によって増加する株式の割り当てを受けることになる基準日を定めるので、株式分割をする会社は、基準日の2週間前までに、その基準日と183条2項各号に定められた事項を公告しなければなりません(124条3項)。これは、名義書換未了株主に注意を促すという意義があります。なお、振替株式については、株式分割の基準日での株主を、振替機関は発行会社へ速やかに通知しなければならず、この通知を受けた会社では、基準日に株主名簿を書き換えることができるようになります。

・種類株式発行会社の場合

種類株式発行会社の場合には、分割する種類の株式を定めなければなりません。つまり、株式分割の際に、株式の種類ごとに異なる取扱い(分割するか否か、分割割合、基準日、効力発生日)ができます。分割割合等を同じにしても、分割する種類ごとに分割が行われます。したがって、種類ごとに分割決議が必要です。ただし、定款にこの定めがあれば、ある種類株式の株主に株式分割が損害を及ぼすおそれがあるときには、その種類株式を有する反対株主は、会社に対して公正価格での買取を請求することができます(116条1項3号イ)。

株式分割に伴って、ある種類株式の株主に損害を与えるおそれがあるとき(例えば、株式分割によって、分割される種類株式の株主の議決権割合に比して他の種類株式の株主の議決権割合が低下する場合)には、その種類株主総会の決議がなければ株式分割の効力は生じません(322条1項2号)。もっとも、その種類株式の内容として種類株主総会を要しない旨を定款で定めることもできます(322条2、3項)。なお、議決権の割合を変えないように、単元株制度を利用し、分割の比率が大きい種類株式の単元株式数を増加することも考えられます。

ü 株式分割の登記

株式分割式を行った会社は、効力発生日から2週間以内に変更登記をしなければなりません。

株式分割登記申請に必要な書類は以下の通りです。

・変更登記申請書

・株主総会議事録(取締役会非設置会社の場合)又は取締役会議事録(取締役会設置会社の場合)

・株主リスト(株主総会の決議を行った場合のみ)

・委任状(代理人に申請を依頼する場合のみ)

  

関連条文

  第1款.株式の併合

株式の併合(180条)

株主に対する通知等(181条)

効力の発生(182条) 

  第2款.株式の分割

株式の分割(183条)

効力の発生等(184条)

  第3款.株式無償割当て

株式無償割当て(185条)

株式無償割当てに関する事項の決定(186条)

株式無償割当ての効力の発生等(187条)

 
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