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会計参与、監査役、会計監査人の選任、解任、辞任または不再任についての意見の陳述
会計参与、監査役、会計監査人の選任、解任、辞任または不再任について、これらの者たちの独立性を確保しようとするものです。具体的には、会計参与、監査役、会計監査人に選任、解任、辞任または不再任について、株主総会の場で意見陳述の機会を認めることによって、株主に判断材料を提供し、株主総会における審議が慎重に行われることを確保するするとともに、取締役による取締役と異なる意見をもつ会計参与、監査役、会計監査人の不当な解任や不再任や取締役と密接な関係にある者の会計参与、監査役、会計監査人への選任を牽制するというものです。
監査役については、この株主総会における意見陳述権によって、監査役の選任、解任に関する議案の決定についての取締役会における意見陳述(383条1項)を補強する効果が期待されています。
また、会計参与、監査役、会計監査人の辞任について、辞任した者及びそれ以外の会計参与、監査役、会計監査人に株主総会の場で意見陳述する権利を認めることによって、取締役が異なる意見を持つ会計参与、監査役、会計監査人に辞任を強要することを牽制し、あるいは会計参与、監査役、会計監査人が自発的に辞任した場合でも、その背後にある取締役等との意見対立を株主に知らせる機会を確保しようとするものです。
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意見を陳述することができる事項
@会計参与
会計参与は、株主総会において、会計参与は自らの選任、他の者の会計参与としての選任、自らの解任、他の会計参与の解任について意見を述べることがでます(345条1項)。また、会計参与を辞任した者、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができます(345条2項)。
※なお、定款を変更して会計参与という会社の機関を廃止することにした場合も、在任していた会計参与は任期を途中で終了させられることになります(334条2項)ので、解任と似ていますが、この場合には、会計参与の意見陳述権は認められていません。その理由は、会計参与の意見陳述権は会計参与の身分保障を目的とした規定で、それは会社が会計参与制度を採用していることを前提にした上でのことで、会計参与制度を維持させることは、その目的の範囲外のことだからです。
会計参与り意見陳述は株主総会において議決権を行使する株主にとっての判断材料となるため、会計参与が株主総会における意見の表明を求めていることを株主に知らせず採決した場合や、株主が会計参与の意見聴取を求めているにもかかわらず、これを無視して採決した場合には、株主総会の決議が著しく不公正であるとして、決議取消の訴えの対象となる可能性があります。
A監査役
監査役は、株主総会において、自らの選任、他の者の監査役としての選任、自らの解任、他の監査役の解任、および他の監査役の辞任について、意見を述べることができます(345条4項)。また、監査役を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができます(345条4項)。
なお、監査役が任期満了で退任した場合には、辞任の場合とは違って、退任したこと、つまりは任期満了で再任されなかったことや、そのことについて意見を述べることは、この対象にはなりません。また、会社が経営陣の体制を変えて、例えば監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に変更する場合には、体制を変更した時点で監査役は廃止となりますが、その場合の各監査役については任期を繰り上げて満了した退任ということになり、意見陳述の対象外となります。
B会計監査人
会計監査人は、株主総会において、自らの再任、他の者の会計監査人としての選任、自らの解任、他の会計監査人の解任、自らの不再任、他の会計監査人の不再任及び他の会計監査人の辞任について、意見を述べることができます(345条5項)。会計参与や監査役の場合とちがって、意見陳述の対象に不再任が加えられているのは、会計監査人は、任期満了時に定時株主総会において別段の決議がされなかった場合には自動的に再任されたとみなされるたる、会計監査人を再任しないことが独立の決議事項となるからです。なお、会計参与及び監査役は、株主総会における説明義務の主体として株主総会に出席していることが前提とされているのに対して、会計監査人は、常に株主総会に出席しているわけではないため、条文では会計監査人の意見陳述権だけでなく株主総会への出席権を認めています。
また、会計監査人を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨及びその理由を述べることができます(345条5項)。さらに、会計監査人については、株主総会に加えて監査役、監査役会、監査等委員会、監査委員会による解任も認められているため、監査役、監査役会、監査等委員会、監査委員会により会計監査人を解任された者も、解任後最初に招集される株主総会で解任についての意見を述べることができます。
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意見陳述者に対する株主総会の招集・日時・場所の通知
@会計参与
会計参与は、株主総会における説明義務の主体であり(314条)、株主総会への出席義務を負っているため、株主総会に出席するために株主総会の招集とその日時・場所は当然に知らされるはずです。これに対して、会計参与をすでに辞任した者は、このような事情が存在しないため、この人の意見陳述の機会を確保するために、取締役は、その者に対して、辞任後最初に招集される株主総会について、株主総会を招集する旨、その日時と場所を通知しなければなりません(345条3項)。
A監査役
監査役も、会計参与と同じように株主総会における説明義務の主体であり(314条)、株主総会への出席義務を負っているため、株主総会に出席するために株主総会の招集とその日時・場所は当然に知らされるはずです。これに対して、監査役をすでに辞任した者は、このような事情が存在しないため、この人の意見陳述の機会を確保するために、取締役は、その者に対して、辞任後最初に招集される株主総会について、株主総会を招集する旨、その日時と場所を通知しなければなりません(345条3項)。
B会計監査人
会計監査人は、会計参与や監査役とは違って株主総会における説明義務を負ってはいません。しかし、定時株主総会で会計監査人の出席を求める決議があって場合は、その株主総会に出席して意見を述べる義務を負うことになる(389条)ので、それに備えて、株主総会に出席できるように定時株主総会の招集と日時・場所を通知されているのが一般的です。そうであれば、株主総会における意見陳述の機会は確保されているということになります。しかし、臨時株主総会には会計監査人の出席が要請されることはないため、定時株主総会の場合とは事情が異なってきます。
なお、会計監査人を辞任した者及び監査役、監査役会、監査等委員会、監査委員会により会計監査人を解任された者については、これらの者の意見陳述の機会を確保するために、取締役は、これらの者に対して、辞任後または解任後最初に招集される株主総会について、それを招集する旨と、その日時、場所を通知しなければならないものとされています(345条3項)。
C実際の実務対応
現職の会計参与、監査役、会計監査人は、会計監査人と監査役は株主総会に出席するわけでありますし、定時株主総会であれば、会計監査人には総会に出席する可能性があるので、上場会社であれば、会場に待機してもらっていると思います。それ以外にも会社法監査のスケジュールを組むときに総会日を周知させることになるので、その時の日程表を残しておけば、通知した証拠となるわけです。また、計算書類を監査する際に、株主総会招集通知や参考書類を参考資料として交付するのが一般的なので、そこで総会の日時や場所を会計監査人は知ることができる。
辞任した会計参与、監査役、会計監査人が、辞任後最初に招集される株主総会の通知をするという場合、これらの人が株主である場合には、株主には招集通知が送付されるので、それが本件の通知を兼ねることになると思います。問題は株主でない場合です。この場合には、この人たちに特別に通知をする必要がありますが、上場会社であれば、株主総会の招集通知の送付は証券代行に依頼しているので、このときに株主以外で特別に送付する対象として、この人たちを事前に登録しておいて、株主への通知と同時に招集通知を送付するように手続をしておくと、送付の記録も得られることになります。