新任担当者のための会社法実務講座
第198条 利害関係人の異議
 

 

Ø 利害関係人の異議(198条)

@前条第1項の規定による競売又は同条第2項の規定による売却をする場合には、株式会社は、同条第1項の株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項を公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、3箇月を下ることができない。

A第126条第1項及び第150条第1項の規定にかかわらず、前項の規定による催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主及び登録株式質権者の住所(当該株主又は登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。

B第126条第3項及び第4項の規定にかかわらず、株式が二以上の者の共有に属するときは、第1項の規定による催告は、共有者に対し、株主名簿に記載し、又は記録した住所(当該共有者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。

C第196条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定は、第1項の規定による催告については、適用しない。

D第1項の規定による公告をした場合(前条第1項の株式に係る株券が発行されている場合に限る。)において、第1項の期間内に利害関係人が異議を述べなかったときは、当該株式に係る株券は、当該期間の末日に無効となる。

 

所在不明株主の株式を競売・売却するには、会社は、所在不明株主その他利害関係人が一定期間内に異議を述べることができる旨を公告し、かつ所在不明株主およびその登録株式質権者に各別に催告しなけれはなりません(198条1項)。株主の承諾を得ることなくその株式を競売・売却するので、株式を保有する所在不明株主等に競売・売却を拒絶する最後の機会を与える趣旨の公告・催告となります。株券発行会社の場合は、競売・売却対象株式の株券を失効させる手続きでもあります(198条5項)。

ü 公告・催告事項(198条1項)

所在不明株主の株式を競売・売却する場合には、会社は次の事項を公告し、かつ対象株式の株主およびその登録株式質権者には各別に催告しなければりません(198条1項、会社法施行規則39条)。

@197条1項1号および2号の要件を充たす株式を競売または売却する旨

A競売対象株式の株主として株主名簿に記載(記録)された者の氏名(名称)および住所

B競売対象株式の数

C競売対象株式の株券が発行されている場合には、その株券の番号

D競売対象株式の所在不明株主その他の利害関係人が、3カ月以上の一定の期間内に、会社に上記競売あるいは株主に対して異議を述べることができる旨

このような公告・催告を行った競売対象株式の株主が複数いるときには、その全員の株式を競売・売却しなければなりません。一部の株主に属する株式に限定するのは株主平等原則に反するからです。また、特定の所在株主の競売対象株式が複数あるときに、その一部のみを競売・売却の対象とすることはできません。所在不明株主の株式売却制度の趣旨に合致しないからです。

会社が定めた3カ月以上の一定の期間内は利害関係人が異議を述べることができるのであるから、この期間が経過した後でなければ対象株式を競売・売却することはできません。異義申述期間内に利害関係人が異議を述べた時には、株式を競売・売却することはできません。

ü 催告の宛先(198条2項)

原則として、株主に対する会社の通知・催告の宛先は、株主名簿に登録されている株主の住所であり、これとは別に株主が通知・催告を受ける場所・連絡先を会社に通知している場合にはその場所・連絡先です(126条1項)。また、原則として登録株式質権者に対する会社の通知・催告の宛先は、株主名簿に登録されている株主・登録株式質権者の住所に発するとともに、この住所とは別に株主・登録株式質権者が通知・催告を受ける場所・連絡先を会社に通知している場合にはその場所・連絡先にも発しなければなりません(198条2項)。株主その他の利害関係人にとって株式の競売・売却処分を防ぐ最後の機会なので、公告と共に会社に手を尽くさせるという趣旨です。

なお、この場合の催告については196条1項の催告の省略は認められません(198条4項)。

ü 共有株式の場合の催告の宛先(198条3項)

原則として、共有株式に関しては、株主に対する会社の通知・催告を受領する者としてその共有者が定めて会社に通知した1人の者に対して、会社は通知・催告を行います(126条3項)この通知がない場合には、会社はその共有者のうちの1人に対して通知・催告すれば足りるということになります(198条4項)。

一方、株式が共有されているときの催告は、上記の一般原則の適用を受けずに、会社は株式を共有する各株主の株主名簿に登録されている住所に発送するとともに、この住所とは別に株主が通知・催告を受ける場所・連絡先を通知している場合はその場所・連絡先にも発送しなければなりません(198条3項)。

なお、株式が共有されている時の催告についても、催告の省略を認める196条は適用されません(198条4項)。

ü 株券の失効(198条3項)

株券発行会社では、公告に定められた異議申述期間内に利害関係人が異議を述べなかったときには、異議が述べられなかった株式の株券は異議申述期間の末日に失効します(198条5項)。その上で、会社は所在不明株主の株券を競売・売却するために再発行することになります。

 

 

関連条文

  第1款.総則

単元株式数(188条)

単元未満株式についての権利の制限(189条)

理由の開示(190条) 

定款変更手続きの特則(191条) 

  第2款.単元未満株主の買取請求

単元未満株式の買取りの請求(192条)

単元未満株式の価格の決定(193条)

  第3款.単元未満株主の売渡請求

単元未満株主の売渡請求(194条)

  第4款.単元未満株式数の変更等

単元未満株式数の変更等(195条)

  第7節.株主に対する通知の省略等

株主に対する通知の省略(196条)

株式の競売(197条)

利害関係人の異議(198条)

 
「実務初心者の会社法」目次へ戻る