新任担当者のための会社法実務講座 第191条 定款変更手続きの特則 |
Ø 定款変更手続の特則(191条) 株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第466条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。 一 株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。 二 イに掲げる数がロに掲げる数を下回るものでないこと。 イ 当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数 ロ 当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数) 単元株式数は定款に定めることとされています(188条1項)から、会社が新たに単元株式数を設定し、あるいは既存の単元株式数を変更しようとする場合には定款変更の手続きが必要であり、したがって原則として株主総会の特別決議が必要となります。それまで単元株式数を設定していなかった会社で新たに単元株式数を設定する場合、あるいは単元株式数を増加しようとする場合には、通常であれば新たに単元未満株主が発生することになるため、株主利益の保護は重要な問題となります。しかし、単元株式数の新規設定やその増加が株式分割と同時に行われる場合、数の設定の仕方によっては新たに単元未満株式を発生させないこともあります。そのような場合には株主に対して不利益を及ぼさないと考えられるから、必ずしも株主総会の決議を経る必要はない(191条)。それゆえ、必要に応じて会社が機動的に単元株式数を設定できるように、株主総会決議を要求しないという特則が導入されした(191条)。 ü
特則の内容 この特則によって、株主総会を経ずに単元株式数を設定・増加させようとする場合、次の二つの要件を充たす必要があります。 ・単元株式数と株式分割の同時性(191条1号) 単元株式数の変更が、株式分割と同時に行われる必要があります。両者が異なる時点で行われる場合には、不利益を受ける株主が発生し得るからです。例えば株式分割後ややおいてから単元株式数の設定・増加が行われる場合、たとえそれがかなり近接した時点で行われるとしても、その間に株式譲渡等が行われることによって、単元株式数の設定・増加の際には単元未満株主になるようなものが発生し得る、そのようなことを防止するためには、単元株式数の変更が株式分割と同時に行われることを求める必要があります。 ・新単元株式数と株式分割比率の関係(191条2号) 定款変更後の各株主の所有株式数を変更後の単元株式数で除した数(191条2号イ)か、定款変更前の各株主の所有株式数、ないしそれを変更前の単元株式数で除した数(191条2項ロ)を下回らないことが必要です。それを式にすると次のようになります。式の左辺は191条2号イに、右辺は191条2号ロに対応しています。 この式の右辺は変更前の各株主の議決権数であり、左辺は変更後の各株主の議決権数です。このことからすれば、191条2号は変更後の各株主の議決権数が変更前の各株主の議決権数以上であることを求めている、ということができます。この場合、条文の文言では「各株主」という語が用いられていることから、1人でも議決権が減少する株主が存在する場合には、191条に基づく株主総会決議の省略は認められないことになります。 このような要件の定めがなされているのは、各株主の有する議決権が減少しないような範囲で単元未満株式数の設定・増加を行うならば、各株主の権利は縮減しないと考えられたことによるものです。 関連条文 第1款.総則 定款変更手続きの特則(191条) 第2款.単元未満株主の買取請求 第3款.単元未満株主の売渡請求 第4款.単元未満株式数の変更等 単元未満株式数の変更等(195条) |