コーポレートガバナンス・コード 2018年の改訂 |
コーポレートガバナンス・コードの改訂の経緯や趣旨は、色々なところで解説されているし、実務上はそれでどうするかが中心となるので、ここでは省略します。金融庁の東証のホームページをはじめ、色々なところで説明されているので、適当に見てけばよろしいのではないかと思います @改訂の全体像 今回(2018年6月)の改訂で14の原則が変更・更新されます。 内訳 基本原則 0 原則 6 補充原則 8 ※対象となる上場会社の中で市場一部及び二部の上場会社は、この改訂される14の原則について自社が実施しているか否かの仕分けをすることか必要となります。 一方、それ以外の東証ジャスダック及びマザーズの上場企業は基本原則へに対応を義務付けられていて、今回の改訂では基本原則についての変更も追加もないので、仕分けは必要ではないということになります。ただし、任意にすべての原則に対応している会社や、これから市場一部や二部に変更しようとしている会社は自主的に仕分けすることになります。 改訂の内容としては、変更9、新設5で、その結果、コ−ポレートガバナンス・コードの原則総数は73から78に増えました。 その結果、改訂されたコ−ポレートガバナンス・コードの全体像を原則の一覧としてページの最後に付しておきます。 A改訂の概要 今回の改定は、次の5点について、コーポレートガバナンス改革を巡る課題としてあげ、その対策として関係するコーポレートガバナンス・コードの原則を改訂するようになっています。 1.経営環境の変化に対応した経営判断 コーポレートガバナンス改革は、経営陣による果断な経営判断を促すことを通じ、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促すことをねらいとしているが、多くの企業において経営環境の変化に対応した果断な経営判断が行われていないというのが実情。投資家からは、企業の取り組みとして事業の選択と集中(経営ビジョンに即した事業ポートフォリオの見直し)に期待しているのに対して、企業の側では現状における体力強化を志向している。それが投資家からは資本コストを上回るリターンも上げられず微温的と映る。以上のような現状の認識から次のような課題と対策をあげている。 ・事業ポートフォリオの見直しなどの果断な経営判断とそれに伴う方針の明確化 ・自社の資本コストの的確な把握 ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード⇒原則5−2 2.投資戦略・財務管理の方針 投資家の多くは、企業の手元資金について、適正な水準を上回っていると認識している。極言すれば、成長に向けて資金を有効に活用できていない。これに対して企業側は適正な水準と認識し、両者の認識にギャップがある。一方で、手元資金の水準がどの程度が妥当なのかについて、明確な考え方がない企業が多い。以上のような現状の認識から次のような課題と対策をあげている。 ・戦略的・計画的な設備投資・研究開発投資・人材投資等の実施 ・手元資金の活用を含めた適切な財務管理の方針の策定・運用 ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード⇒原則5−2 3.(1)CEO選解任 ・客観性・適時性・透明性あるCEOの選解任プロセスの確立(独立した指名委員会の活用等) ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード⇒原則3−1、補充原則4−1B、4−3A B 3.(2)取締役会の機能発揮等 ・取締役会がその役割を果たすための十分な知識・経験・能力とジェンダー・国際性などの多様性の確保 ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード ⇒補充原則4−2@、原則4−8、補充原則4−10@、原則4−11 4.政策保有株式 ・政策保有株式の保有目的や保有に伴う便益・リスクの検証と政策保有に関する方針の明確化 ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード⇒原則1−4、補充原則1−4@ A 5.アセットオーナー ・自社の企業年金の運用に関する資質を備えた人材の計画的に登用・配置するなどの母体企業としての取組 ※関連して改訂するコ−ポレートガバナンス・コード⇒原則2−6 基本原則1.株主の権利・平等性の確保 原則1−1. 株主の権利の実質的な確保のための適切な対応 補充原則1−1@ 取締役会による、株主総会で相当数の反対票があった場合の反対理由や原因の分析、株主と対話の要否の検討 補充原則1−1A 総会決議事項の一部を取締役会に委任することの検討、委任する際の条件 補充原則1−1B 株主の権利(例:違法行為の差止めや体表訴訟提起に係る権利など)行使を妨げないような配慮 原則1−2. 株主総会における株主の権利行使に係る環境整備 補充原則1−2@ 株主総会において株主が適切な判断を行うための的確な情報提供 補充原則1−2A 株主総会議案の検討期間の確保、招集通知の発送に先立ったウェブ公表 補充原則1−2B 株主総会関連の日程の適切な設定 補充原則1−2C 議決権の電子行使のための環境整備(議決権電子行使プラットフォームの利用等)、招集通知の英訳 補充原則1−2D 信託銀行名義で株式を保有する機関投資家の議決権行使への対応 原則1−3. 資本政策の基本的な方針の説明 原則1−4. 政策保有株式がある場合の、縮減に関する方針・考え方など政策保有に関する方針の開示、取締役会での保有目的、便益やリスクと資本コストの査定、保有の適否の検証、検証の内容についての開示 補充原則1−4@ 取引の縮減を示唆することなどにより、政策保有株主による売却等を妨げないこと 補充原則1−4A 政策保有株主との間で会社や株主共同の利益を害するような取引を行わないこと 原則1−5. いわゆる買収防衛策についての必要性・合理性を検討、株主への十分な開示 補充原則1−5@ 自社の株式が公開買付に付された場合の取締役会の考え方の説明、株主が公開買付けに応じる権利を不当に妨げないこと 原則1−6. 支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす増資やMBO等について適正な手続の確保、株主への十分な説明 原則1−7. 関連当事者間の取引を行う場合の利益相反防止手続の策定・開示 基本原則2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働 原則2−1 ステークホルダーへの価値創造と企業価値向上の基礎となる経営理念の策定 原則2−2 ステークホルダーと適切な協働のための行動基準の策定、実践、国内外の事業活動への浸透。 補充原則2−2@ 行動準則が、形式的な遵守にとどまらず実質的に実践されているかの取締役会によるレビュー 原則2−3 社会・環境問題をはじめとするサスティナビリティーを巡る課題への適切な対応 補充原則2−3@ 取締役会によるサスティナビリティー(持続可能性)を巡る課題への積極的・能動的な対応 補充原則2−5@ 経営陣から独立した内部通報窓口の設置、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律の整備 原則2−6 企業年金の機能発揮のための人事面・運営面における取組み内容の開示、利益相反の管理 基本原則3.適切な情報管理と透明性の確保 原則3−1 以下の情報開示の充実 (1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画 (2)コードの諸原理を踏まえた、ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針 (3)経営陣幹部・取締役の報酬決定の方針と手続 (4)経営陣幹部・取締役・監査役候補の選解任・指名の方針と手続 (5)個々の営陣幹部・取締役・監査役の選解任・指名についての説明 補充原則3−1@ 取締役会によるひな型的な記述や具体性を欠く記述を避けた、付加価値の高い情報開示(法令に基づく開示を含む) 原則3−2 外部会計監査人による適正な監査を確保するための適切な対応 補充原則3−2@ 監査役会による外部会計監査人の選定・評価基準の策定、独立性と専門性をゆうしているかについての確認 補充原則3−2A 取締役会・監査役会による、十分な監査時間の確保、外部会計監査人から経営陣幹部へのアクセスの確保、監査役・内部監査部門・社外取締役と外部会計監査人との連携の確保、外部会計監査人の不正発見、不備・問題点の指摘への会社側の対応体制の確立 基本原則4.取締役会の責務 原則4−1 取締役会による経営理念等の確立、戦略的な方向づけ、経営戦略や経営計画等についての建設的な議論の実施、戦略的な方向づけを踏まえた重要な業務執行の決定 補充原則4−1@ 経営陣に対する委任の範囲の明確化、概要の開示 補充原則4−1A 中期経営計画の実現に向けた最善の方法及び未達の場合、次期計画への反映 補充原則4−1B 最高経営責任者の後継者計画の策定・運用への主体的関与、後継者候補の育成のための適切な監督 原則4−2 取締役会による経営陣からの提案についての十分な検討、経営者幹部の迅速・果断な意思決定の支援、経営者の報酬のインセンティブ付け 補充原則4−2@ 客観性・透明性ある手続による報酬制度の設計と具体的な報酬額の決定、中長期的な業績と連動する報酬の割合、現金と自社株報酬の割合の適切な設定 原則4−3 取締役会による会社の業績等の適切な評価と人事への適切な反映、正確な情報開示の監督、内部統制やリスク管理体制の整備、関連当事者との利益相反の適切な管理 補充原則4−3@ 公正かつ透明性の高い手順による経営陣幹部の選解任 補充原則4−3A 客観性・適時性・透明性ある手続によるCEOの選任 補充原則4−3B CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続の確立 補充原則4−3C コンプライアンス・内部統制体制の適切な構築、運用の監督 原則4−4 監査役(会)による独立した立場からの適切な判断、能動的・積極的な権限行使、取締役会への意見発信 補充原則4−4@ 監査役会の独立性と高度な情報収集能力による実効性向上、社外取締役との連確保 原則4−5 取締役等によるステークホルダーとの協働の確保、会社や株主共同の利益のための行動 原則4−6 業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用の検討 原則4−7 以下の役割・責務に留意した独立社外取締役の有効な活用 (1)経営の方針や経営改善に関する助言 (2)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じた経営の監督 (3)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反の監督 (4)少数株主等のステークホルダーの意見の取締役会への反映 原則4−8 独立社外取締役の2名以上の選任、3分の1以上選任することが必要と考える会社における十分な人数の選任 補充原則4−8@ 独立社外取締役による客観的立場に基づく情報交換・認識共有(例:独立部外者のみを構成員とする会合の開催) 補充原則4−8A 独立社外取締役による経営陣や監査役との連携体制の整備(例:互選による「筆頭独立社外取締役」の決定) 原則4−9 取締役会による独立性判断基準の策定・開示、取締役会における建設的な検討への貢献が期待できる候補者の選定 原則4−10 任意の仕組みの活用による統治機能の充実 補充原則4−10@ 独立した諮問委員会の設置による指名・報酬等の設計における独立社外取締役の関与・助言 原則4−11 取締役会における知識等のバランス、ジェンダーやむ国際性を含む多様性と適正規模を考慮した構成、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法律に関する知識を有する監査役の選任(全員)、財務・会計の十分な知見を有する監査役の選任(1名以上)、取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価による機能向上 補充原則4−11@ 取締役会全体の知識等のバランス、多様性、規模に関する考え方の策定、取締役の選任に関する方針・手続の開示 補充原則4−11A 取締役・監査役によるその役割・責務を適切に果たすための時間・労力の振り向け、他の上場会社役員の兼任の抑制、兼任状況の開示 補充原則4−11B 取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価の概要の開示 原則4−12 取締役会による私有闊達で建設的な議論・意見交換を尊ぶ気風の醸成 補充原則4−12@ 取締役会の審議の活性化のための対応 (1)会日に先立った取締役会資料の配布 (2)取締役に対する十分な情報提供 (3)年間の取締役会開催スケジュールや(予想される)審議事項の決定 (4)審議項目数・開催頻度の適切な設定 (5)審議時間の十分な確保 原則4−13 取締役・監査役による能動的な情報入手、会社に対する追加の情報提供の要求、取締役・監査役の支援体制の整備 補充原則4−13@ 取締役による会社に対する追加の情報提供の要求、監査役による適切な情報入手 補充原則4−13A 取締役・監査役による会社の費用による外部専門家の助言の取得 補充原則4−13B 内部監査部門との連携確保、社外役員に必要な情報を提供するための工夫(例:社内との連絡・調整にあたる者の選任) 原則4−14 取締役・監査役による役割・責務の理解と必要な知識の習得等の研鑽、トレーニングの機会の提供・斡旋や費用支援、取締役会による状況の確認 補充原則4−14@ 取締役・監査役による役割・責務の理解と会社の事業等に必要な知識の取得、その継続的な更新の機会の獲得 補充原則4−14A 取締役・監査役に対するトレーニング方針の開示 基本原則5.株主との対話 原則5−1 株主からの対話への合理的な範囲での前向きな対応、取締役会による株主との建設的な対話促進の体制整備・取組みに関する方針の承認・開示 補充原則5−1@ 経営陣幹部または取締役による株主との対話への対応 補充原則5−1A 株主との建設的対話促進の方針 (1)建設的な対話に目配りをおこなう経営陣または取締役の指定 (2)対話を補助する社内関係部門のの有機的な連携のための方策 (3)個別面談以外の手段の充実 (4)株主の意見・懸念の経営陣幹部や取締役会への適切・効果的なフィードバック (5)インサイダー情報管理に関する方策 補充原則5−1B 自らの株主構成の把握、株主による把握作業への協力 原則5−2 会社の資本コストの把握、収益計画や資本政策の基本的な方針、収益力・資本効率等に関する目標の提示、事業ポートフォリオの見直し、設備投資等に関する方針・計画の株主に対する明確な説明 下のインデックスの各原則の説明と実例を踏まえて、コーポレート・ガバナンス報告書の想定作成事例を考えてみました。実現性には乏しいと思いますが、こちらから
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