補充原則4−3.B |
取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分に発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである。
〔形式的説明〕 この原則は今回の改訂において新たに追加されたものです。これは、有識者委員会のフォローアップ会議での次のような議論を踏まえたものです。“適切に会社の業績等の評価を行ったうえで、CEOに問題があると認められるような場合には、CEOを解任できる仕組みを整えておくことが必要である。その際にも、取締役会が適時・適切にCEOを解任できるよう、取締役会の経営陣からの独立性・客観性が十分に確保されていることが重要である。”補充原則4−3AはCEOの選任に関する原則ですが、本原則はCEOの解任に関する原則です。 〔実務上の対策と個人的見解〕 後継者計画や選任手続に比べて、解任手続は、解任の理由、事実認定、継続困難性の評価のいずれにおいても厳密さが求められます。例えば、能力・資質、欠格事由の非該当といった取締役の選任基準が定めてあれば、この選任基準に欠けたときは解任する、一般論的に定めると、形式的には基準があることにはなります。しかし、実際には、抽象的過ぎて、実際の発動が難しいでしょう。 では、しっさいに発動できるような解任基準をより具体的に定めようとすると、一筋縄ではいきません。例えば、「不祥事で会社の名声・信用を損ねて多大な損失を生じた場合」と定めた場合、@名声・信用を損ねた事実を同判断するか、A多大な損害の金額規模をどう考えるか、B再発防止の費用発生は現任トップだけの責任か、C業績の影響が軽微だったら解任は不要か、等々の疑問が生じてしまいます。一般に、経営トップの解任は、組織内の力学や世論の空気に左右される要素が多く、ましてや辞任を固辞する経営トップに退場してもらう手続ならば、解任事由は低めに設定せざるを得ません。そうすると、解任を必要としない事案まで適用される外観を呈してしまいます。議決権行使助言組織が標榜する「〇期連続赤字」といった基準も、一律に解任事由とできるとは思えません。 【例 株式会社IRジャパン・ホールディングス】←コーポレートガバナンス報告書で取締役の解任提案基準と手続を明記 (2)解任提案基準 以下に挙げる基準に一つでも該当した場合、解任提案の対象とします。 1.反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係が認められること 2.法令もしくは定款その他当社グループの規程に違反し、当社グループに多大な損失もしくは業務上の支障を生じさせたこと 3.職務執行に著しい支障が生じたこと 4.選任基準の各要素を欠くことが明らかになったこと 【参考】機関投資家の取締役選任議案に対する議決権行使基準(企業年金連合会) a 当期を含む過去3期連続赤字決算かつ無配、あるいは過去5期において当期最終利益を通算してマイナスであり、株主価値の毀損が明らかな場合、取締役の再任議案には、肯定的な判断はできない。 b ROEが長期にわたり低迷している企業については、その原因や対応策を含め、事業計画や資本政策等について納得のいく説明あるいは取り組みが認められない場合、取締役の再任議案には、肯定的な判断はできない。 c 在任期間中に当該企業において法令違反や反社会的行為等の不祥事が発生し、経営上重大な影響が出ているにもかかわらず、再任候補者にあげられている場合には肯定的な判断はできない。なお、不祥事に伴う経営上への影響については、売上高や収益の状況、株価動向、社会的評価、企業としてのその後の対応等を総合的に勘案して判断する。 d その他株主価値を毀損するような行為が認められた場合、取締役の再任議案には、肯定的な判断はてきない。
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