補充原則1−4.A
 

 

 【補充原則1−4.A】

上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない

 

〔形式的説明〕

この補充原則は、補充原則1−4@と同じように、今回の改訂において新たに追加されたものです。この補充原則も政策保有株式の発行会社に対するガバナンスです。補充原則1−4@が保有会社から売却の意向を示された時、いわば特定の時の行動に対する規律であるのに対して、この補充原則は普段の行動に対する規律です。つまり、発行会社は株式の持ち合いを続けてもらうために、株主である相手の会社と無理してまでメリットのない取引を続けることは、会社や株主にとって損害を与えることになるだけでなく、政策保有株式の縮減を妨げる行為となるので、行なうべきではないということです。つまり、補充原則1−4@では売却を引き止めるために現在続けている取引を交換条件として利用したわけですが、ここではそういう意向が示されないように利用するというものです。

 

〔実務上の対策と個人的見解〕

この補充原則も、補充原則1−4@と同じように、やってはいけないという規律です。しかし、補充原則1−4@が特定の場合のことであるのに対して、この補充原則は普段の全般的な行動を対象としています。だから、現にやっていないということの検証が必要となるかもしれません。この場合経済合理性のない取り引きをしてまで持ち合いを続けさせるようにしていることをやってはいけないわけですから、経済合理性のない取引行為を確認すればいいわけです。実際のところ、経済合理性のない取引行為とは、赤字の取引であることとほぼ一致すると思います。したがって、赤字にはならないで、すこしでも利益が出ているのであれば、そこに経済合理性がないとはいえないわけです。まともな会社であれば、赤字の取引行為が発生すれば経理上でも、管理上でも確認しているはずで、赤字は避けようとするし、赤字の場合には原因を検証する作業をするはずです。その作業の中で、赤字の取引の相手先に持ち合い株式の発行会社があった場合に、合理的な理由が見当たらない場合は、この補充原則の抵触する可能性がでてくる、ということになるでしょうか。なお、この原則でやってはいけない、当の行動を意図的に実行している会社は、当然エクスプレインということになると思います。


関連するコード        *       

基本原則1.

原則1−4.

補充原則1−4.@

 

 
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